表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/3

血の追跡者

 帰路につく人影、もうすっかり日が暮れて辺りは少し暗い。霊魔町はこの時間になると遊んでいた子どもたちも帰りきっていて車も通らないし本当に人がいない。さらに街灯もまだ灯っていなかった。

「この時間だけ不気味なんだよなー。」

独り言を漏らしながら歩く、そして視線を感じた。ただでさえ古い家が多くちょっと不気味な町、人もいないと更に怖くなる。町を警戒して勝手に視線のようなものを感じているのかもしれない。

「?」

後ろを振り返っても誰もいない。気の所為だと思いつつも少し早く歩き帰る。

そこに真っ赤な女が立っていた。


「血の追跡者、ですか?」

レーマ菓子屋で室内へ持ってきた店前の看板を置き、厨房へやってきて調理器具の片付けを手伝いながら勢椿が聞く、それを聞きビクッと奥に逃げる奏芽。あららと言い、話の種を巻いた店の店主である藤原 三幸(ふじわら みゆき)は町の怪談話を話し始めた。

「ほらちょうどこの時間ぐらいになると、この町では人影が少なくなるじゃない?」

「そういえばそうですね。」

厨房からカウンターを覗き、更に遠くの窓の外を見る。たしかに人影はないし、完全な夜ではないが夕方にしては少し暗くまだ街灯も灯っていなかった。

「不気味でしょ?でね、最近この時間に町をうろついていると...」

「いると?」

聞き返すとふふふと笑い、拭いていたトレーを置いてくるっと後ろに回る。

「血まみれの女性が後を追ってきて、襲ってくるんだって!!」

ガオーと言いながら頭をわしわしされる。

「それは怖いですね〜。」

変わらず調理器具を片付けていると、つまらなそうな顔をする。

「むぅ、やっぱり怖がらないかぁ。奏芽は引っかかったんだけどな〜。」

「え、奏芽ちゃんにしたんですか?」

手を止め振り向く、そういえばやけに周りを見回していたようなと考えていた。

「ふふふ、でもこの町は妖怪も多いし本当に存在しているかもよ?」

「うーん、それは確かにそうですが。」

勢椿は訝しんだが考えるのを一旦やめ厨房から出て帰る準備を始める。

「いつか私や奏芽が狙われるかもよ〜?」

「その冗談面白くないです。」

「勢椿くんは心配性ね。わかってるわちゃんと警戒する。」

三幸はでも勢椿くんも一応気をつけなさいねと言いい、見送った。

「...血かぁ、血の妖怪って。樹木子、野衾、飛縁魔。いや血塊か?」

妖怪知識を頭の引き出しから引っ張り出して考えつつ、独り言を言いながら歩いていく。

その背後、パシャっと音がし誰かが笑みを浮かべる。


「うわぁ!?」

朝、起きて部屋から出てくると朝日が叫んでいた。

「どしたの。なんか料理でも焦げたぁ?」

寝ぼけた頭を起しつつ、玄関を覗くと朝日がなにか封筒を持っていてその中身を見ていた。

「いや、お前これ...。」

「?」

近づいて手元を見ると、そこには勢椿の写真に血がついたものがたくさん入っていた。

「これは菓子屋で掃除してるところに多分帰っている途中、これは服を脱いでるところの写真か...。」

マジマジと写真を見る。

「は、は!?怖なにこれ!?」

かつてないほど焦り、リビングに逃げる。朝日はそれについて行き写真を机の上に置く。距離を取って改めて観察する。

「こうゆうのって、まあ言い方悪いけどあの良くないものが付いてるもんだよな。」

「でも血だよね、鉄臭いし。」

少し触ってみると冷たく、どろっと茶黒いしばらく時間がたった血が付着していた。

「それよくさわれるな。まあとりあえず悪質なストーカーと見ていいよな、警察に通報でもするか?」

「いや。とりあえず家の中で盗撮しているものがないか探してみたほうがいいかも。」

「だな、じゃあ」

背中を合わせあたりを少し見渡す。

「...解散!」

声と同時に逆方向に走り出し手分けして脱衣所やキッチンなどの部屋中を探す。

が、結局見つからなかった。写真のもとに戻り考える。

「...これお前が撮ったん?」

「俺にそんな趣味はない!!」

機械が一切見つからないとすれば同棲者を疑うのが普通だった。

「あんまりふざけるなよ。機械がない上ここに入ったとすると、妖怪か?」

「俺が見逃すと思うか?でも妖怪か、血、まさか血の追跡者?」

「血の追跡者ぁ?なんだそりゃ」

くだらねぇと言って朝日が部屋に引っ込みそうになる。

「いやちょい待ちまちまちまち!最後まで聞いてちょうだいよ。」

「はあ。」

それから三幸さんに聞いた血の追跡者についての噂を喋った。

「嘘乙」

「嘘じゃねえよ。三幸さんは信用できる。」

「でも噂なんだろ?」

「噂だけだけど全く信じないわけにはいかないだろ。」

少しムキになって机を叩く、そして乱暴に椅子に座る。勢椿は腕を組み朝日はとりあえず茶を飲む。

「三幸さんは俺の事情も知ってるし、この町に迎えてくれたのも三幸さんだ。」

「...わかった、疑って悪かったな。」

朝日が折れてやると落ち着き始める勢椿。

「分かればいいんだよ。でも結局解決にはならないよな。」

「一旦考えるのを止めるか。」

お菓子を持ってきてとりあえず食べ、ティカップが空になる。写真から目をそらす。

「なんか冷静になって考えたらさ。」

「ああ。」

「血の追跡者って女の人なんよね。」

「そうらしいな。」

カップを避けて近くにあった湯呑みを持ちズッっとお茶を飲む。ん?

「それがどうした。」

「ストーカーってことはその女の人にモテてるんだよね。」

真顔で言われる。ものすごく呆れた。

「...もう勝手に撮られて勝手に刺されろ。」

「ひどい。」


数日後___

「おはようございます。」

シーン、ショーケース以外の電気がついておらず薄暗い店内。開店前とはいえ珍しく静かな店に違和感を覚え厨房に入る。

「三幸さーん、いますかー?」

厨房にはすでに完成されたスイーツと使っていたであろう器具が置かれていて人気が無い。ものすごく嫌な感じがする。厨房から裏口に出て先にある階段を登り扉の前に立つ。チャイムを鳴らす。

「三幸さん、奏芽ちゃんいますか?勢椿です。」

変わらず返事はなくノックをする。

「三幸さんいますか?」

返事は帰ってこない、これはまずいかもしれない。

「すみません開けますよ!」

焦りのまま扉を開けるとそこには真っ赤に染まった二人がいた。

「三幸さん...?奏芽ちゃん!」

靴を脱ぎ捨てて近寄ると鉄の匂い、ではなく何だかトマトの匂いがした。

「ん?」

赤い液体をなぞって恐る恐る舐める。

「え、これトマトか?」

「はぁ!!!」

「うわッ」

いきなり三幸が起き上がり、避けようとして落ちていた缶に手を置いてしまい滑って尻餅をつく。

「とっととと、とまとが!トマトが!」

ガッチリと勢椿のかたをつかみ動揺しながら乱暴に揺らす。

「うわ、落ち着いてくださいッ、トマトがなんですか!?」

トマトトマトとしか言わない三幸。

「うう、このトマトすっぱい...」

なにかがもぞもぞと起き上がる。奏芽が顔についていたトマトを拭っていた。

「あ、奏芽ちゃんよかった。怪我とかない?」

「!?...うん。」

びっくりして少し逃げる奏芽。ほっと一息つき台所を片付け始める。

「一体何があったんですか?あちこちトマトだらけ...。」

「実は朝ごはんにトマトスープでもと思って作っていたら...。」


『奏芽〜?そろそろ起きて顔洗ってきなさい。』

『...うん。』

フラフラしながら洗面台の方へ歩いていく。

『珍しくお寝坊さんね。』

焼いていたベーコンを皿に上げ、トマトスープを作るためにトマト缶を開ける。

『うわぁ!!』

突然悲鳴が上がる。洗面台から飛び出してきて三幸にしがみつく。

『どうしたの!?』

『ち、ちちちち、ちがついたおんなのひと!!』

『え?』

顔を上げるとあちこちが真っ赤に染まった女が立っていた。

『もしかして、噂の...。すごいわ初めて妖怪を見たかも!』

『そんなばあいじゃないよ!』

『そうですわね。そのとおりですわ。』

ゆったりと女が喋りだす。

『わたくし、貴方方にはあまり用がないのでうっかりガブッとしてしまいますわよ?』

『ひえッ』

不気味に笑う女。

『えっと、妖怪には塩だったっけ?』

『おかあさんそんなのんきな!』

塩、塩と台所を見渡す。その時女が近づいてくる。

『わたくしに目をつけられたことが運の尽きでしたわね。』

『ころされる!!』

『あった!』

塩の入った容器を見つけ取ろうとし、襲いかかる女とぶつかり、バランスを崩した女が鍋の近くにあったトマト缶を掴み、宙を舞うどろっとしたトマト。瞬間、頭をぶつける。

「てことがあったの。」

「いや色々とおかしいですよね。」

三幸は、はて?と首を傾げる。

「おかあさん、ききかんりのうりょくのけつじょだよ。」

「そんな難しい言葉を知ってるなんてすごいわね〜。」

変わらず呑気な雰囲気で笑う。

「まあ無事で何よりですが、暫くは家の中でも警戒してくださいね?」

「わかってるわよ。あーあ、朝食冷めちゃったかしら。」

「ちょうしょく...、がっこう!!」

時計はすでに9時を指していた。

「ちこくなんだけど...。」

奏芽が泣きかけ、それを慰めつつそのままバタバタとその日は過ぎていった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ