EP3 『報告書』
数時間後、須崎はデスクに突っ伏す寸前の姿勢でキーボードを叩いていた。
目の下にはくっきりとした隈、手元には“地獄のレク結果報告書”。
「……議員レク結果報告書、まとめました……」
声はしぼんでいた。完全に死んだ魚の目で画面を見つめている。
そんな須崎の肩越しから、のぞき込む声。
「はぁい〜! どれどれ〜?」
にこにこ笑顔で現れたのは、レク大爆死の主犯・香山。
須崎は、画面に映し出された自分のレポートを指差す。
《本日のレクにおいて、議員の感情を著しく逆撫でし、関係性の悪化を招いたことを深く反省しております……》
「逆撫でって(笑)須崎、語彙力あんじゃ〜ん!」
「……香山さんの発言録、これどうまとめればいいんですか……?」
切実な問いに、香山は天使のような微笑みで返す。
「ん〜? そのまま書けばいいよ? 『裏金についても率直に伺った』って!」
「(書けるわけねぇだろ!!!!!!)」
須崎は叫びを内に押し込みながら、歯を食いしばる。
「あと議員の健康指導についても触れたって書いといて? “国家公務員として国民の健康を慮った”って前向きにね!」
「(地獄かよ!!)」
カタカタと震える手で修正を打ち込む須崎をよそに、香山は椅子をくるくると回し始める。
「まぁ、怒られても〜? 最悪〜? 俺たち処分されるだけだし〜?」
「(最悪じゃ済まねぇよ!!!!!)」
にこにこ笑う香山は、くるりと一回転した後に、さらりと続けた。
「なんなら辞めてもいいし〜?一緒に」
「(道連れにされる!!)」