表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/12

EP1 『国会レクは地獄のはじまり』

『国家レク』とはーー

官僚人生を賭けて、官僚たちが自分たちの作った資料を、議員に「日本語で説明する」壮絶バトルのことである。


本来は「政策の意図を分かりやすくお伝えする場」なのだが、現場ではだいたいこうなる。


官僚「こちらの資料をご覧ください」

議員「これ読んでないけど、わかりやすく説明して?」

官僚「かしこまりました…(自分で読めよ)」

議員「なるほど、でもウケないから反対って言うわ」

官僚「(胃に穴空いた)」


そう、これは情報戦であり、精神戦であり、胃薬と無表情のフル活用によって成立するレクチャー劇場。

今宵もまた、香山と須崎“理解される努力”に身を捧げる……!


(※本作はフィクションです。たぶん。)




午前十時、霞が関(かすみがせき)

警察庁のエリート課長補佐・須崎透(すざきとおる)は、資料のファイルを胸に抱えたまま硬直していた。


(よし……内容は完璧……突っ込まれても対応できる……香山さんさえ、黙っていてくれれば……)


そんな祈りも虚しく、後ろからやってきたのは、件の上司、香山慎之介(かやましんのすけ)だった。資料をパタパタさせながら、ふらふら歩いてくる。


「ねえねえ、須崎くんさぁ」


嫌な予感しかしなかった。


「……なんですか」


「議員さん、疲れてるかもしれないじゃん? だからさぁ〜最初に小ネタ挟もうよ!」


にっこにこの笑顔。嫌な予感が確信に変わった。


「……小ネタ?」


「うん。”最近忙しすぎて家に帰ったら飼い猫に忘れられてました〜”とか!」


即答だった。


「やめてください。ほんとにやめてください」


「あと、“今日はあまりに緊張して資料忘れてきました〜”とか、ウケると思うんだよね」


須崎は資料をぎゅっと抱きしめながら、深く息を吸った。


「一言でも小ネタ挟んだら即退室させられますよ!! 国会議員は笑いに来てるんじゃないんです!!!」


「え〜、笑顔って大事じゃん?」


「命取りです!!!」


それでも香山は諦めない。


「じゃあ、“最近ストレスで太ってきました〜! ダイエットしてるんですよぉ”って言うだけでいい?」


「だめです!!」


「なんで?」


声をひそめて、須崎が言う。


「……今から行く議員、農水族のドンです……“太った”とか言ったらマジで殺されます……」


「え〜〜まじか〜〜〜」


その顔にはまるで危機感がなかった。


(やばい……終わった……)


緊張の頂点で、扉が開く。


「どうぞお入りください」


須崎は心の中で五体投地しながら、隣の香山に懇願した。


(頼む、香山さん、黙っていてくれぇぇぇぇぇ!!!!)


元気よく部屋に入った香山が開口一番、こう言い放つ。


「お疲れ様で〜〜す! 最近ストレスで……」


(やめろおおおおおおおお!!!!!!)



プロローグの代わりに初心者でも分かる官僚用語集を作ったので、興味のある方はぜひそちらも『作品ページ』からご覧ください。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ