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香山さんは最高にめんどくさい!!〜国家機密よりめんどくさい男が、俺の上司です〜  作者: ハツ
顔面国宝と出張したら毎晩が修羅場でした
10/12

EP1 新幹線、それは逃げられない密室

警察庁では、出張とは“逃げられない任務”の隠語である。

──警備企画課(けいびきかくか)の課長補佐、香山慎之介(かやましんのすけ)が同行する場合、特に。


「ねえ須崎(すざき)くん、窓側と通路側どっちが好き? 僕、須崎くんの方に倒れたいから通路がいいな〜」


「私が乗るのは新幹線であって、起爆装置じゃないんですけど」


午前7時45分、東京駅の新幹線ホーム。

警察庁警備局(けいびきょく)警備企画課(けいびきかくか)香山慎之介(かやましんのすけ)(28)と須崎透(すざきとおる)(30)は、北陸某県への出張に向かっていた。


本来なら、ただの業務出張。

だが──須崎はすでに、胃の奥に鈍い痛みを覚えていた。


「はい、今日のホテルの予約確認〜。出張費で抑えたから〜」


香山がひらひらと差し出した予約表に、須崎の手が止まる。


「……“ツイン1室”って、同室ってことですか?」


「そう〜。この時期どこも満室でね。ツインなら問題ないでしょ? ベッド、別だし〜」


「問題しかありません。あなたと同じ空間で眠れる人類は、いません」


「え〜〜? 須崎くん、寝相良さそうだし。じっくり観察できそうで楽しみ〜」


「それ犯罪予告って知ってますか!!」


背後のサラリーマンが咳き込み、親子連れが音もなく離れていった。


(最悪だ……この男と数時間、密室。しかも、泊まり……)


須崎の精神は、乗車前から“車内警戒モード”に突入していた。


──だが。


「ねえねえ、見て。僕の荷物、須崎くんと色違い〜」


香山が掲げたボストンバッグを見て、須崎の動きが止まる。


「……おい、それ俺が先月買ったやつの色違い……なんで知ってる」


「Amazonの“あとで買う”に入れてたでしょ? あれ参考にした〜」


「俺の買い物履歴を解析すんな!!!」


「でもさ、ペアに見えてよくない?」


「ペアって言うな!!!国家公務員にあるまじき発言だ!!!」


香山はにっこり笑って、楽しそうにバッグを抱えた。


読者よ、届け。

これは公安の出張でありながら、国家規模の地雷である。



【次回予告】

同じ部屋、ひとつのベッド。

シーツ越しの沈黙に、息が熱を帯びていく。

──「ねぇ、本当に“寝るだけ”でいいの?」


次回、「ダブルベッド、それは公安の沈黙。」


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