表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界転生したので、理想のメイドを集めていたら最強の軍団になっていた件!  作者: 廿日 皐月


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

33/51

第32話『蠢く脅威の胎動』


 街と森の中間――つい先日まで何もなかったその場所には、すでに幾つものテントが張られ、兵士たちが忙しなく行き交っていた。木々を伐り拓いて急造されたこの空間は、まるで戦場の最前線に築かれた砦のように、張り詰めた緊張に包まれている。


 その中心に据えられた大きな指令幕舎へと、僕たちは迷わず足を運んだ。


 中へ入ると、父――フレデリックが地図を広げ、数名の将校たちと低い声で言葉を交わしていた。その姿を見た瞬間、胸の奥に張りつめていた緊張が、わずかに和らぐのを感じた。


「戻ったか、クラウス」


「はい。……あの状況でしたので、念のためご報告に」


 僕の言葉に、父は短く頷いた。


「無事で何よりだ」


 その背後には、すでに帰還していたネーヴェの姿もあった。相変わらず仮面越しに表情は読み取れないが、その静かな視線が、じっと僕たちを見据えている。


「あの瘴気の“爆発”――見たと思うが、森での様子を教えてくれ」


 父の問いに、僕は瘴気溜まりで起きた出来事を簡潔に伝える。


「はい。僕たちは第二の瘴気溜まりの近くにいました。突然、森中の瘴気が一点に向かって吸い寄せられ、柱のように立ち昇ったのです」


 父の眉がわずかに寄る。


「やはりか。ネーヴェ殿の報告とも一致する……瘴気溜まりの融合と見て間違いないだろうな」


「それだけではありません。柱の発生と同時に、強大な魔力の反応がありました。」


 その言葉に、場の空気が静かに沈む。


「……強大な魔物が産み落とされたか」


 父の低い声が、指令幕舎の空気を一層張り詰めたものに変えた。


 誰もが言葉を飲み込む中、父は重々しく将校たちへ向き直る。


「――もはや、猶予はない。全軍、配置につけ。迎撃態勢を整えろ」


 その一声を皮切りに、場が一気に動き出す。


 動き始める兵たち、交わされる命令、鳴り響く指示の声。外の空気もまた騒然とするが、それは決して混乱ではなかった。


 矢筒を背負った弓兵が柵の背後に並び、槍兵は整然と前列に陣形を組む。魔導兵たちは詠唱の構えを取り、それぞれが自分の任へと向かっていく。


 まるで、これこそが彼らの“日常”であるかのように。


 そのときだった。


「報告――! 斥候部隊、帰還しました!」


 駆け込んできた若い兵が、荒く息を吐きながら声を張り上げた。


「魔物の大群が……森の奥から、こちらへ向かって進軍しています!」


 一瞬、場が静まり返る。


 父が地図に視線を落とし、瘴気の柱が発生した地点をじっと睨みつける。


「……ついに来たか」


 幕舎の外から、ざわめきが広がっていく。


 森の地平、視界の果て。そこに広がるのは、砂煙のようでいて、瘴気のようにも見える濁った灰色の波。そしてその奥に――


 確かに、蠢く“影”たちがあった。


 それは魔物の大群。低く唸る獣の声。木々を薙ぐ音。圧倒的な“数”が、地を鳴らしながらこちらに迫ってくる。


「……な、なんだあれ……」


「数が……多すぎる……」


 訓練された兵たちでさえ、初めて対峙する“異常”の光景に、ざわめきと恐怖がじわりと広がっていく。


 そのとき――


「全軍、聞け!」


 雷鳴のごとく響く一声が、全てを打ち払った。


 声の主は、フレデリック・フォン・ヴァイスベルグ。その鋭い眼差しが、兵たちを一人ひとり見据える。


「見よ、あれが敵だ! 我らが故郷を侵そうとする、愚かなる獣どもだ!」


 兵たちの視線が、一斉に森の方角へと向けられる。


「だが、怯むな。我らは人である! 盾を構え、剣を抜け。ここに立つすべてが、この地を守る最後の砦だ!」


 掲げられた剣が陽光を受け、鋭く閃いた。


「忘れるな! 我らが退けば、街も、家族も、すべてが喰い荒らされる。……ならば取れ、誇りを! 抜け、剣を!」


 息を呑むような静寂の後――


「この森を、我らが誇りで染め上げよ!」


 次の瞬間、雄叫びがあがった。


 兵たちは叫び、武器を掲げ、整然と陣を組む。まるで今この時を待っていたかのように。


 ――戦の火蓋は、今、切って落とされた。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ