プロローグ
「これより国王による表彰が行われる!」
国王の側近がそう言い放つと一人の少女と国王が対面する。
「国王より申し上げる、常葉凛。其方に今回の活躍を称し褒美として我の近衛騎士を――」
国王が言い切る前に少女が割り込む。
「そんなのいい、騎士とか面倒くさいことこの上ない。それより、金と武器が……いや自動二輪車が欲しい!」
興奮気味に言い放たれた言葉に謁見の間にいる者全員が呆れた顔をする。
これは血の気の多い、でも周りからは愛される。そんな少女の物語である。
ーーー
少し昔の話をしよう。
この世界はかつて4柱の神が存在した。
もう神はいない。
それは同時に魔物の唯一の天敵がいないことを意味する。
天敵のいない魔物は主に知能を持つ人間族、森妖精、岩妖精、獣人族などの住処を攻め始めた。
これを重く受け止めた者達が種族の壁を越えて共同して魔物の殲滅を始めた。
人間族は知識を使いより強く効率的な武具を、森妖精は得意な魔法での援護と魔法の研究を、岩妖精は質の良い素材を、獣人族は鋭い五感を使い誰よりも速く危険を察知してきた。
一つでも欠けると崩れるこの関係は魔物への唯一の対抗策となった。
そして魔物との本格的な戦争が始まるのであった。
ーーー
日が昇り街が照らされる中、街を守る壁の外で冒険者と魔物が戦闘を繰り広げていた。
「くそ!戦力が足りない!このままだと防衛線を突破される!」
「何とか持ちこたえろ!今すぐに送れる戦力はない!俺らのエースが帰還するまで耐えろ!」
圧倒的な数の魔物に押されてしまう冒険者たち。
そんな冒険者たちに朗報が入る。
「……! 観測隊がエースを!『這者』を視認しました!」
「よし!全軍!下がれ! 後はあいつが、凛が片付ける!」
馬に乗りながら銃を構える少女が彼らにとっての希望だったのだ。
戦場につくと少女は意識的に落馬をし、空中で回転することで前進する力を緩めないように見事に着地をする。
手元の拳銃で周辺の魔物を駆逐する。
少女は特有の小柄な体を使い、魔物たちの股をぬけると同時にナイフで切り付けていく。
数十分後には魔物は行動不能になっていた。
「こちら這者。後処理は任せます。ギルマス……報酬……期待しておきます」
「……最初の言葉がそれか。まぁいい。報酬は期待しておけ」
馬の手綱を引っ張って街の中入っていく。
彼女こそ、この街一番の冒険者をである。