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町へ帰還

 ダンジョンの前で一日を過ごした俺達は何事も無く町へと戻る事が出来た。少し変わった事と言えば、夜の間シュナイザー様と色々な事を話して仲を深められたことぐらいかな。往復合わせて六日掛かったけど、夜も走っていれば四日程度で行けそうだな。俺達の足は全力を出した馬車より速いぐらいだから例え整備しても魔物が居なくなるわけじゃないのでそんな速さは出せないから馬車で片道三日と半日ってところかな?そこまで時間を掛けて到着した場所があのダンジョンか~・・・・う~ん、俺的には魅力が無いな。しかもその先には何も無いから結局はウォルマに戻らないといけないし~旅のついでにって訳にもいかないよな。


「ふ~予定通り帰って来れたな。案内感謝する」

「いえいえ依頼ですから」

「帰ったら溜まっている書類を片付けないとな~」

「嫌そうですね」

「俺には書類仕事は向いて無いんだよ。前線で戦ってる方がマシだ」


 まるで苦いもを食べたように顔を顰めるシュナイザー様に笑ってしまう。でも、どんなに嫌な事だとしても、最終的にはしっかりと領主の責任を果たすのがシュナイザー様だ。


「はぁ、さっさと帰るか」

「ですね」


 俺達は門へと近づいていくと門番さんは大きく手を振り


「領主様~!」

「おう、帰ったぞ~」

「慕われてますね」

「良い奴らだろ?」


 その声に防壁の上で警備をしていた衛兵達も集まり、こちらに大きく手を振ってくる。テセウの時もそうだがこうやって出迎えてくれているってことは、衛兵達と距離が近い証拠だ。普通は畏まった出迎え方をすると思うんだが、こうやって温かい出迎え方の方が俺は好きだな。ゆっくりと歩いて行き町の中に入ると、次々と声を掛けられ無事を喜ばれる。シュナイザー様は堂々とした様子でその声に応え町を進んで行くと、次は住民達からも無事を喜ぶ声が上がる。


「大人気ですね」

「俺の町は中々良い所だろ?」

「そうですね、仲が良く温かい町だと思います」

「だろ~?どうだ、この町に住むつもりは無いか?」

「残念ですけど、俺は旅をするって決めているので」

「そうか~残念だ」


 シュナイザー様直々に勧誘されちまったぜ。確かにこの町はガキは楽しそうに遊んでいるし住民達は俺を見ても嫌な顔をしない良い場所だと思うけど、俺はブレストと一緒に旅をするって決めているから断らせて貰う。その返事を聞いて残念だというが笑っているシュナイザー様。断られるのを分かっていたのに聞いたみたいだな。


「俺なんか誘わなくても優秀な人が沢山いるじゃないです」

「索敵を完璧にこなし情報収集能力と隠匿に長けていて戦闘もこなせ、勘と判断能力も兼ね備えている奴なんてそうそう居ないぞ。テセウが大きくなった時の補佐役に良いと思ったんだがな~」

「褒めてくれて嬉しいですが俺が居なくてもテセウは上手くやりますよ」

「そうか」

「それに一人で生き延びられるように今指導しているんですから」

「ふっそうだったな」


 テセウの補佐か~まぁ少し良いかもなって思っちまうけど今は旅をしたい気持ちが強い。まだ旅をして三月程度くらいしか経ってないが、プリトの街に居たらイリスさんと会うことも出来なかったしシュナイザー様の護衛をすることも出来なかっただろう。俺はもっと色々な人に遇ってもっと色々な見たことのない世界を見たい。だから、悪いけど一つの町に留まるつもりは無いんだ。そんな事を話している領主館に辿り着いた。


「さて、速くブレスト殿と交代しなければな」

「あ、ブレスト今居ませんよ」

「なんだと?」


 町に着いた時に気付いたが、町周辺にブレストの気配が無い。依頼だと有事の際の防衛力として町に留まっているはずだが、気配がしないという事は話によく出ている国境沿いにある砦で何か有ったのかな。


「気配がしないので多分砦の方に行ってるのかと。まぁ屋敷の人に聞けばすぐ分かりますよ」

「む、何か有ったのか・・・・」


 少し難しい顔になりながら門番に挨拶をしながら屋敷の中に入ると、俺達に気付いた一人のメイドが屋敷の奥へと消え他のメイド達は俺達を出迎えてくれた。


「お帰りなさいませ旦那様」

「あぁ、今戻った。俺が居ない間に何かあったか?」

「町やご家族の皆様には変わりはありませんが、砦の方で少々問題が・・・・詳しくはサピロ様からお聞きください」


 そう言うと奥へと消えたメイドがサピロさんを呼んできた。


「シュナイザー様、ご無事のお帰りのようで安心しました」

「おう、それで砦の方で何か有ったと?」

「はい、奥でご説明させていただきます」


 サピロさんの案内で執務室へやって来た。執務机には多くの書類が積まれていて一瞬嫌そうな顔をしたがいつもの席に座るとサピロさんが話し始めた。


「まずはこちらを、砦から伝令されたものです」

「・・・・なるほど」

「書状にあるように二日程前に砦でクリムゾンウルフとキメラが確認されました。数と魔物強さから考えると現状砦にいる戦力では被害が大きいと判断されたため、増援としてブレスト様に向かって頂きました」

「それでブレスト殿が居ない訳か」


 クリムゾンウルフは燃え滾る炎を身体に纏い、ありとあらゆる物を溶かし炭と化してしまう火魔法を操る大型のウルフだ。火属性の万全な耐性があればそこまで苦戦する相手では無いが逆に言えば対策が出来なければ悪夢のような魔物だ。そんなのが森に入って来られたら大火事になっちまうだろうな。キメラは複数の魔物が混じったような外見をしていて、魔法を自由自在に操りその体は刃を通さない程硬く生き物を積極的に襲う凶暴さを持っている。どちらも三級上位の相手だ。そんなのが沢山来たら衛兵も無事じゃ済まないだろう。


「はい、既に前線に到着して掃討が終わったとのことですので明日には帰られことになっています」

「流石だな」


 まぁブレストなら苦戦するような相手では無いだろうな。それよりもそんな危険な奴らを野放しているフォレシアは何なんだ?普通に自分達の国にも被害が出るだろう?難しい顔をしていたからか、シュナイザー様は


「そう難しい顔にならなくても大丈夫だぞ。ブレスト殿は無事だと書いてあるからな」

「あ、いやブレストの心配はしてないです」

「そうなのか?それじゃあ何故・・・・」

「いや、フォレシアって森に囲まれた自然豊かな国ですよね?なのに何でクリムゾンウルフなんて言う植物の天敵のような魔物を放っておくのかなって考えてたんです」

「ん?もしかしてだがフォレシアの事をそんなに知らないのか?」

「えぇ、見てからのお楽しみだという事で出現する魔物のこと以外はあまり調べて無いんです」


 万全な状態で新しい場所に行くのも良いが、危険がそんなに無いでのあれば新鮮な気持ちを楽しもうという事でフォレシアについてはそんなに調べていないのだ。ブレストも行ったことが無いって言ってたし、楽しみは後に取っておかないとな。


「なるほどな。それじゃあ俺が教える訳にもいかないか・・・・まぁ簡単に言えば国の特徴故に魔物をあまり倒さないんだよ」

「あ~それは少し聞きましたね」

「ま、行ってみればすぐ分かる。サピロ他に何か報告するものはあるか?」

「特には」

「そうか、それならクロガネ殿これで護衛依頼は完了だ」

「了解です。それじゃあ俺はこれにて失礼しますね」

「あぁご苦労様だった」

「あっそうだ。サピロさん明日からのテセウの指導に戻っても良いですか?」

「はい、テセウ様の予定は空けていますので早朝から訓練可能です」

「そうですか、それならまた明日の朝に来ますね」


 帰ってきたことだし時間も無いから明日から早速指導に戻るぞ~


「ふむ、ちょっと待ってくれ」


 今日はやる事も無いしさっさと宿に戻ろうと思って部屋を出ようとした時シュナイザー様に引き留められた。何か伝え忘れでもあったのかな?


「そういう事なら是非我が家に泊まると良い」

「えっいえ宿がありますから・・・・」

「クロガネ殿は強く大人びているがまだ十歳だ。そんな子供を治安が良いとはいえ一人で宿に泊まらせる訳にもいかないだろ。どうせ明日の朝から指導をするんだ客間が空いているから是非使うと良い」

「そんな事までお世話になる訳には・・・・」

「サピロ、メイド長と料理長にクロガネ殿が泊まられることを伝えてくれ」

「畏まりました」

「いや、その」

「夕食は是非我が家で摂ると良い。さぁ今日は疲れただろう?早速部屋に案内してやってくれ」

「はい」


 ちょ、俺の声聞こえてますか~!?断っているのにシュナイザー様に押されてしまい強引に領主館に泊まることになってしまった・・・・こんな豪華な所俺には落ち着かないって!!!


でも夕飯はクソ美味かった・・・・

読んで頂きありがとうございます!

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