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あれ、なんか似てないか?

 魔物に襲われはしたが怪我無く道を辿り夜となり、いつも通り夜番をしていると魔物の話もするが、どうしても話題はダンジョンの事になってしまう。


「まさかこの森にダンジョンが在るとは思わなかったな」

「俺も驚きましたよ」

「結果的には森の調査を終え異変の原因を取り除けたが・・・・自分の実力不足と知識不足を実感する日々だったな。家に戻ったら色々な後処理と父上に報告を書かなくてはならないな」

「大変ですね~」

「あぁ、帰ったら父上に叱られるだろうから覚悟をしておかなければ」

「えっ何でですか?」


 別にテセウ様は叱られるようなことはして無いと思うけどな~確かに所々経験不足によって判断を間違えた所は有ったけど、叱られるようなことじゃない。


「貴族としての責任と振る舞いそして判断が出来ていなかったからだ。ダンジョンが在ると知った時点でブレスト殿が言ったようにすぐに父上に知らせるべきだったのだ。俺は辺境伯の息子ではあるが、領地に関する重要な決定を下せるような権力は持っていない。だから、ダンジョンという領地の利益にもなり害ともなる重要な事項は俺が判断して良いものでは無かったのだ」

「あ~・・・・」


 テセウ様は次期辺境伯ってだけで領地に関することを決めるのはシュナイザー様だ。それなのに了承も得ず勝手な決断をしてしまったことは・・・・まぁ怒られるだろうな。


「でも、被害無く森の異変の原因を突き止めて解決したんですからそんなに怒られませんって!テセウ様大活躍ですよっ」

「思い出してくれ。そもそも俺がこの調査に参加することになったのは、恥ずべき嫉妬によるものだ。そんな理由で参加した調査で、二人に手取り足取り教えられ脅威から守られて成したことは称賛に当たるだろうか?」

「ん~あ~もうそんな面倒なこと考えないで、結果良ければ全て良しって思えばいいんですよ!」


 参加する理由が褒められたものじゃないとしても、結果は褒められるべきものになったんだし帳消しだって。


「前向きなのだな。だが、俺はその面倒なことを考えなければならない立場に居るからそれは出来ないのだ」

「ん~大変ですね貴族って。最初は羨ましいと思ってましたけど、俺には無理です」

「羨ましいか・・・・俺もクロガネ殿をそう思っていたが今は尊敬をしているよ」

「んな」

「羨ましがるのではなくクロガネ殿とブレスト殿のような知識と実力を付けたいからな」


 そんなこと言われるとは思わなかったぜ・・・・俺みたいな知識を付けても貴族の世界じゃ役に立たないと思うぜ?戦いでなら少しは役にたつと思うけどな。だがその言葉を聞いて、ダンジョンを出てからテセウ様の戦い方に変化が起きた理由が分かったぜ。


「だからブレストの動きを真似しようとしているんですか?」

「うっバレたか」

「前にも言ってましたけど、ブレストの動きは真似しない方が良いと思いますよ」

「それは」

「勿論テセウ様の実力不足や貴族の戦い方に合わないって意味じゃなく、単純にテセウ様に合わないって意味ですからね。ブレストは素早く正確な動きと人並外れた反射神経、そして膨大な魔力に強力な魔法によって戦っているからあれが成立しているのであって、テセウ様はそうじゃないですよね?」

「確かにそうだが・・・・」

「テセウ様の良い所は正面から当たれる頑強さと相手を叩き潰す破壊力、そして恵まれた身体能力だと俺は思うんです。だからブレストの真似をしたらその良い所消してしまうので勿体ないと思うんですよね」


 俺と一つしか変わらず体も少し体格が良い程度なのに、背丈ほどもあり重量もあるウォーアクスを軽々と扱いその一撃は大地に牙を残す程の威力を持っている。その歳でそこまで出来るのであればこれから先同じように鍛えていけば、優秀な重戦士に成れると思うんだよな。だから、ブレストの真似をしてその長所を消すのは惜しいと思うんだ。


「勿体ない?」

「えぇ勿体ないです。半分嫉妬みたいなものですけど、俺には持ってない一撃の重さをテセウ様は持っているんです。だからそれを消すのは勿体ない。勿論素早い動きで翻弄し重い一撃を叩きこむ戦法はありますけど、体重移動と踏み込みで一撃の重さを支える動きをするテセウ様には合わないと思うんです。まぁ、どの戦法を選ぶかはテセウ様次第ですけどね」


 これは俺の一意見なだけで、どの戦法を選び習得するのかはテセウ様次第だ。俺が強制して良い事じゃない。もしかしたら、何か特定の戦い方に憧れがあるのかもしれないしな。


「俺の戦い方をよく見ているんだな」

「流石にこんなに毎日見てたら分かりますよ」

「・・・・クロガネ殿は今言った長所を伸ばしたら俺は強くなれると思うか?」

「なれます」

「そうか・・・・じゃあその意見に従おう」

「俺の意見なんてそんなに気にしないで自分のしたいように決めて良いですよ?」

「あぁ俺がそう決めた」


 そんなあっさり諦めるなんて思わなかったぜ、俺はてっきりブレストの戦い方に憧れがあるのかと思ってけど違うのか。


「だが、その言葉の責任は取って貰おう」

「え?」

「俺が学院に行くまで俺だけの戦い方というのを教えて欲しい」

「え、ちょ待ってください。そういうのはシュナイザー様や指南役の方に教えて貰った方が・・・・」

「駄目だ。俺の長所を見つけたのはクロガネ殿だろ?強くなれると言ったのだからその責任を取って貰うぞ。まさか、嘘を付いて俺が強くなれると言った訳じゃ無いよな?」

「いや~それは~勿論嘘じゃないですけど・・・・俺冒険者ですし!」

「それなら大丈夫だ。実力のある冒険者を指南役として依頼することは貴族の中ではよくある事だからな」

「え」

「これは俺個人の依頼だから父上に依頼料を出して貰う訳にはいかないが、幸いこの調査で手に入れた魔物を買い取って貰えばかなりの額になるだろう。五級冒険者へシュナイザー家による指名依頼。さて、どうなるだろうか」


 笑顔を浮かべながら俺を問い詰め話していくテセウ様。あれ~可笑しいな、ただのアドバイスだったはずなのにどんどん指南役として稽古をつける話になってるぞ?しかも、逃げ場を綺麗に絶ってきてるし流石に俺も無責任な奴だとは思われたくない。まさか、教えた知識をこんな風に使われるなんて・・・・なんかその笑顔、楽しい事を思いついたブレストに凄く似ている気がする。そんなところは真似しなくて良いんだよ!!


「それは~・・・・」

「今回の事の重大さからして、ただ調査の報告を上げるだけでは済まず何度かダンジョンに赴き現場を確認し検証をする時間が必要になるだろう。つまり、二人は暫くの間ウォルマから離れることは出来ないはずだから、その片手間に俺に訓練を付けてくれるだけで良いからどうだろうか?」

「え~と」

「・・・・俺はこの調査でクロガネ殿とブレスト殿から沢山の事を学んだがまだ聞きたい事が沢山あるんだ。二人と話していると楽しいし、新しい自分を見つけられる気がするんだ。それに歳も近いし戦いのこと以外も色々と話してみたいんだが・・・・駄目か?」


 止めろ!そんな捨てられそうな子犬のような悲しい顔をしながらお願いをするな!ガキ達を思い出しすだろっあ~う~テセウ様の事は気に入ってるし、別に断る理由は無いけど指導役なんて俺には荷が重い。


あぁ~しゅんとするな!幻覚だと分かっているがテセウ様の頭に獣人のように耳が見える気がする・・・・はぁ腹括るか。


「駄目じゃないです。俺もテセウ様と色々話したいですからそのお話、シュナイザー様とブレストが良いと言ったら受けさせて貰います」

「本当だな?撤回は駄目だぞ」

「えぇ、勿論です」

「そうか!」


 俺が依頼を受けると言ったらテセウ様は悲しそうな顔から一転、花が咲いたかのような笑顔に変わった。はぁ、なんかとんでもない依頼を受けちまった気がするけど喜んでくれるならまあいっか。

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