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やっと打ち止め

 時間を掛けながらもウォリアーは倒した俺は続いて現れたインセクトマンと首狩りトンボを倒し、他の魔物はテセウ様が倒すというのをくたびれるまで繰り返し一体どれだけの時間が掛かったのだろう。腹の具合からして夜ってのは分かるけど・・・・


「あぁ~まだ出てくるのかよ」

「流石に・・・・数が多すぎるな・・・・」


 俺はまだまだいけるけどそろそろテセウ様は限界だな。常に身体強化を掛けて、攻撃の際には強力な土魔法そして魔物と戦う時には集中を絶やす訳にはいかない。消耗して当然だ。ロシェさんも防御に徹しているし、攻撃を受け止めるのって結構体力使うんだぜ。だけど、まだ魔物は尽きそうにないな。


「中々に数が多いな。規模が小さいから魔力もそこまで無いと思っていたが、湧き出る魔物の数が大量って訳じゃないから消費も少ないのか」

「ブレスト、そろそろ二人は休めた方が良い」

「だな。二人共休憩を取るように」

「まだいけます!」

「駄目です。消耗した状態で戦うなんて愚の骨頂ですよ。食事を取って休憩して次の戦いに備えて下さい」

「・・・・了解した」


 自分で言いだしたことだからと責任感を持つのは良い事だけど、一瞬の隙が命取りになる戦いだから素直に休憩しておくのが良いと思うぜ。この感じだとまだまだ湧いてきそうだからな。


「クロガネ、選手交代だ。ウォリアーとインセクトマンは俺が受け持つ他は頼んだぞ」

「え~ブラックスパイダーの群れを相手するの嫌なんだけど」

「群れ相手の良い練習になるだろ?」

「は~い」


 広範囲攻撃を持たない俺からすると、単独で現れるインセクトマンやウォリアーよりブラックスパイダーの方が弱いけど面倒なのだ。それに、ウォリアーと戦うのも折角慣れてきたところだったのに~


「お、話しているとウォリアーか。そうだ、別の武器を使っている所を見せてやるって話をしてたよな」

「そういえばそうだったな」


 色々な事が有ったからすっかり忘れてたぜ。


「ん~何を使おうかな。あれにするか」


 そう言ってゆっくりとウォリアーへと歩いて行く。そんなブレストにはお構いなく、突撃し潰そうと腕を振り下ろした瞬間、ウォリアーの腕が切り飛ばされた。


「サイズ、これ使ってて楽しいんだよな」


 一瞬で腕を斬り飛ばされたウォリアーは一瞬唖然としたがすぐに立ち直り腕が無ければ足でと蹴りを繰り出したが、それを避けサイズの向きを変え流れるような動きで足も切り飛ばし四肢を失ったウォリアーは、回転しながら振られたサイズに頭も刈られ倒れた。


「ありゃ少し鋭すぎたか」

「あっさり倒し過ぎだろ」


 俺だとクソ時間が掛かり傷をつけるのも大変なウォリアーをまるで紙を切るかのように、あっさりと両断してしまったブレスト。差はかなりあると思っていたけど、こうまじまじと見せつけられるとちょっと悲しい気分になるな。見ろよ、テセウ様とロシェさんなんて食べる手を止めて驚いちまってるじゃないか。


「失敗失敗。これじゃあすぐに終わっちまうじゃないか」

「そのまま使い続ければ?次インセクトマンだぜ」

「そうするか」


 そう言って刃を上に向けながら先端を下に構えると一瞬で距離を詰めたインセクトマンがブレストに背後に現れると、首目掛けて振るわれた鎌を見ずに軽く避けそのまま勢い良く振り返り胴体を切断すると、持ち手を変え返しの刃で頭を跳ねた。


「戦いながら解説でもしてやろうかと思ったんだがな~癖で瞬殺しちまう」

「まぁ危険な状況になるより良いんじゃない?」

「何事も前向きにってな」

「ブレスト殿は色々な武器に精通しているのだな」

「剣や道中で見たハルバードの腕も相当なものでしたがサイズまで操れるのですね」

「大体の武器なら何でも出来ますよ。リクエストがあればお答えしますよ」


 どんな武器でも瞬時に作れるその魔法便利だよな~でも、魔法は作り出すだけで武器を扱う腕はブレストが今まで重ねてきた鍛錬の賜物なんだよな。


「バトルアックスは駄目だろうか?」

「勿論良いですけど、参考にするのは良くないと思いますよ」

「何故だ?俺では真似できないからか?」

「いや、俺の武器の使い方って由緒正しい型を習った訳ではなくすべて自己流なんですよ。だから、型を習っているテセウ様が真似するのは少し邪道になるかと」

「戦いに邪道も何も無いだろう」

「それ貴族が言っちゃいけない奴では?」

「テセウ様、お言葉をお選びください」


 ありゃ~それを言っちゃうか。貴族もある程度戦えるように訓練する者がいるが、そのほぼ全てが由緒正しい剣術や弓術など型が決められているものを習うのだ。何でもブレストが言うには貴族は戦いでも貴族としての振る舞いを求められるそうで、型に嵌らず冒険者のように自分の経験と勘そして本能で振るう型の決まっていない戦法というのは邪道と言われるそうだ。貴族は見栄と栄誉、そして誇りとプライドを重視するはずなんだがな~


「我ら辺境伯に求めらているものは強さだ。見栄と実践で使えない型に何の意味がある」

「学院では正統な型を求められますので・・・・」

「勿論、型の大事さは理解しているが実戦で使うかは別だ。それに型はもう習得済みだから心配も無い。父上もあんなに見た目だけの型なんか使い物にならんと仰っていたぞ」

「うわ・・・・とんでもないこと言ってるよシュナイザー様」


 うん、俺もブレストと同じこと思った。大量のブラックスパイダーを処理しながら話を聞いていたがシュナイザー様ぶっちゃけすぎないか?確かに貴族で正統なものとされている型は見栄えと決闘を重視をしたもので、乱戦が普通である実戦では使えたものじゃ無いが言っちゃ駄目だろそれ。


「クロガネ殿を見ろ、独自の型を生み出しあの歳で魔物達と渡り歩いている。俺に必要な物はああいうものだ」


 いや確かに俺のナイフとクロスボウを使う戦法は、基礎的なものはブレストから教えて貰ったものだけどより使い易くより殺傷力を高め自分の物にしたものだ。どんな武器を使うにしても基礎というのは大事だ。基礎が出来るからこそ改めて自分の技を作れるのだ。テセウ様はもうとっくに基礎が出来ているから自分の戦い方を作っても良いと思うけど・・・・それすると伝統を重んじる貴族から嫌な顔されそうだな。


「他の方達に言い顔されませんよ」

「それがどうした?我々辺境伯は僻地の領地だが国防を担っているから地位は高い。他の貴族と接する機会も領地に戻ってしまえばほぼ無いからな」

「はぁ・・・・」

「本当に・・・・シュナイザー様と言いテセウ様と言い、貴族の方と接してい感覚になりませんね」


 同感だ。何もかもが貴族からかけ離れすぎだろ。型に捕らわれないのは良いけど、それで敵を増やしちゃ面倒なことになるぞ。俺だって街に居た時はルールに従い慣例に従ってきたんだからな。色々とぶっ飛んでるテセウ様の話を聞きながら、次々現れる魔物を倒し続け、時折ブレストやテセウ様と交代しながら長い時間戦っていると、出現する数が明らかに減ってきている。


「そろそろ打ち止めだな」

「あぁ数と頻度がかなり落ちてきたな」

「・・・・どれくらい戦っただろうか」

「飯を二回挟んだから、ダンジョンに入った翌日の昼前ってところでしょうね」

「そんなにか・・・・俺は何度も休憩を貰ったがクロガネ殿とブレスト殿は凄い体力だな」

「鍛えてますから」

「魔力をそこまで消費してないので、そんなに疲れ無いんですよ」


 魔力の量と体力は密接に関わっている。単純に魔力が多ければ多い程体力が多くなるのではなく、自分が保有している魔力がどれくらい減ったかで体力の消耗が抑えられたりするのだ。俺は大群を処理する時以外は殆ど体の外に放出する魔法を使わず強化する魔法ばかりだったから魔力は結構余裕あるんだよな。


「さて、そろそろ最後の魔物みたいですね。お相手は誰かな~」

「ウォリアーだな

「んじゃ、さっさと片付けますか。最後という事で特大サービスで」


 ブレストはバトルアックスを作り出し、魔力をいつもより多く籠める。


あ、ヤバいな


 咄嗟に俺はテセウ様とロシェさんの所に行き風の障壁を張ると、ブレストは意気揚々と飛び込んで行きウォリアーに刃が当たった瞬間、岩の大輪の花を咲かせ地面へとめり込ませた。そしてその大輪の花の花弁一つ一つが爆発するかのように砕け散り地面を蹂躙する衝撃波が奔る。土煙が止んだ後にはウォリアーの影も形も無くなり笑いながら立つブレストだけが見えた。


「やり過ぎだろ」

「同感です」

「素晴らしい魔法だった」


 テセウ様目を輝かせないでください。どう考えても過剰な魔法ですし、あんなの森で使ったら森が更地になりますよ。こうして、俺達はブレストの規格外さを再度実感するのであった。

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