硬い奴への対処
次々と湧いて来るインセクトマンとブラックスパイダーを処理し、少しの間を空けていつものインセクト三体が出たのでマーダーマンティスだけを倒し残りはテセウ様が相手することになったから休憩中。
「テセウ様かなり安定して来たよな~」
「元々訓練は十分積んできているからな。あとは、その積んできた訓練を実戦にどう落とし込むかの問題だったんだがすぐに慣れたな」
「ガキの事から鍛錬を叩きこまれるって良いよな~」
「そうか?毎日毎日血反吐が出るくらい訓練して自由な時間も無いんだぞ?」
「でも、生きられるだろ」
力が無く死んでいく奴を沢山見てきたから、どんなに苦しくても羨ましく思っちまうんだよな。死んでしまったら、全てが終わってしまうけど生きていられるならどうとでもなる。それに、生きていける力を教えて貰えるなんて贅沢だろ?
「ガキの頃から力を持てば、俺達を虐めてくる奴らに対抗出来るし生き延びることだって出来る。だけど、何も知らず何も出来ないんじゃそのまま死ぬだけだ。他人の人生を羨んで過去に文句を垂れても仕方が無いんだろうけど、どうしてもな」
もしも、しっかりとした鍛錬を積んでいれば苦労して手に入れた金を奪われなかったかもしれない。もしも、知識があれば上手く金を稼いで商人どもに騙されなかったかもしれない。もしも、俺に力と知識があればガキ共は死ななかったかもしれない。
「そうか」
「相手の苦労を知らずに勝手な事を言うのは簡単だからな。羨むのは止めだ止め。これからの事を考えなきゃな。次のウォリアーが出てきたらどうしようかな~糸の在庫は有るけどあんまり減らしたくないし、かといって俺の鎖じゃ強度不足だしな。もっと威力のある攻撃を増やさないとな」
うじうじ過去の事を思い出すのは止めだ。今俺がやるべき事は他人を羨むことより、今まで学べなかった分知識を付けて後悔したことを繰り返さないようにするだけだ。
「クロガネの戦い方は弱点を正確に見抜き、その弱点に対する息をつく暇の無い攻撃が特長だろ。そんなに威力に拘る事無いだろ」
「いくら弱点が分かったって、その弱点に確かな攻撃を与えられないんじゃ意味が無いだろ。あの装甲を簡単に斬り裂けるほどとは言わないけど、弱点ぐらいは簡単に斬り裂けるようにならないと」
ブレストの言う通り俺は手数の大さと弱点への攻撃、そして闇魔法による騙し討ちが武器だけどいくら手数が多くても相手に傷を付けられないんじゃ意味がない。それに、騙し討ちってのは初めて見るから通用する訳で、長期戦になって相手がこっちの仕掛けに慣れてこられたら圧倒的に不利になっちまうんだよ。
「まぁ確かにもう少し威力がある技を覚えても良いかもな」
「だろ?でも、錬金魔法は練習中だし俺が使える魔法も限られてるしな~風の刃を高速で回すのも良い切れ味だけどあいつ相手に長時間ナイフを当てるのは隙が大きすぎる」
「ん~まだ早いと思ったけど高位の冒険者達が使ってる技教えてやろうか?」
「え、なにそれ聞きたい!」
「まぁその前にテセウ様と交代だな」
「はーい」
聞こうと思ったら丁度キックホッパーとポイズンセンチピードと戦い終わった所だったので俺はテセウ様と交代し湧き出る魔物と戦う事にした。さて、次の相手は誰かな~あ、この気配は
「首狩りトンボか」
前に戦った時は糸を使ったけど節約したいから、他の方法で倒さないとな。でも、あの倒し方が一番楽なんだけどな~う~ん。あ、そうだ。首狩りトンボの突進を避けながら倒し方を思いついた俺はクロスボウに雷の魔力を籠め、使いたい魔法を想像して撃ち放つ。
「よし、上手く行ったな」
俺が撃ったのは分裂し相手を追いかける雷の矢を蜘蛛の巣のように形を変えた雷のネットだ。雷の魔法だから速度はあるし相手を追尾するように俺が操っているから必ず引っ掛かるし、引っ掛かったら
「ギィイ」
高威力の雷が全身に流れて動きを止め、止まったら取り囲むように雷のネットを動かして捕まえている内に気配を消して頭に一撃!頭と体を繋いでいる部分を狙った刃は簡単に両断し動かなくなった首狩りトンボは地に落ちた。
「うん、この方法中々良いな。魔力の消費も意外と少ないしこれから使ってこっと」
このクロスボウの良い所は撃ち出す矢の形や威力に効果を自由自在に変えられることだ。だからこそ、その場に適した魔法を作り出す判断力が必要なんだけどな。
「次は・・・・ブラックスパイダーの大群か」
「クロガネ、交代」
「はーい、お願いします」
「了解した」
すぐに出番が終わっちまったな。ブラックスパイダーなら脅威になるような相手じゃ無いけど、大群となると話は別だ。範囲攻撃持ってるのかな?
「ブレスト、大群相手なのに任せて大丈夫なの?」
「魔法も覚えてるみたいだから大丈夫だそうだ。もしヤバそうなら俺が一掃するし大丈夫さ」
「テセウ様って土属性だよな?髪色を見ると光も持ってそうだけど」
「お手並み拝見ってな」
テセウ様は階段から現れる大量のブラックスパイダーに対して、腰を低く落としいつもは前に構えているバトルアックスを大きく薙ぎ払うために体の後ろに先端を持ってきて体を捻り構えると、魔力をバトルアックスに集め光り輝いた瞬間思いっきり薙ぎ払うと、光の斬撃波が生まれ次々となぎ倒していく。
「おお~凄いな」
「あの歳であれが出来れば十分だな。斬撃を飛ばすのって基本だけど意外と難しいからな」
「破壊力も十分だな」
あの一撃でほぼ全て倒しきっちまったな。魔力の消費は大きそうだけど、残りの奴らは丁寧に倒せば良いし問題は無さそうだな
「それで、さっき言ってた技ってどういうのなんだ?」
「ん?あぁさっきのか。クロガネは今まで攻撃する時に魔力で強化したり魔法を使ったりして攻撃力を上げてるだろ」
「うん、それが基本だからな」
武器や体に魔力を籠めることによって強化をするのは基本中の基本だ。魔力を籠めた攻撃と籠めて無い攻撃じゃ天と地ほどの威力の差が生まれるから、高火力や切断力を望むのであれば魔力を籠めれば籠めるほど良いんだ。
「その方法を少し工夫するだけなんだ。今までは魔力を全体に広めていたがそれを一点だけに集中させ魔力を圧縮する。こういう風にな」
そう言ってブレストは剣を手に取りやり方を見せくれた。確かに剣全体に魔力が籠ってる訳じゃなくて剣先と刃だけに魔力が集中している。薄く範囲も狭いのにかなりの魔力が集まってないか?
「かなり魔力を使ってるんだな」
「おう、原理は同じだから魔力を集めれば集められる程威力は増すし範囲を限定させて薄く圧縮した方が切れ味が増すぞ」
「こう・・・・むずっ」
俺もナイフを取り出し真似をようと魔力を刃に集めるけど、魔力がブレるな・・・・錬金魔法の練習で魔力を一点に集める練習をしてたから何とか形は出来るけどすぐに揺らいでしまう。
「簡単そうに見えてかなり難しいんだよなこれ。完璧に魔力の制御をしないとすぐにブレて鈍らになるぞ」
「圧縮ってこんなに難しいのかっ」
「刃だけに薄く鋭く集めるんだぞ」
「分かってるけど・・・・!」
魔力は全ての事象に関わっている力であり、それは実態を持たない純粋な力だ。常に魔力は揺らぎ象られず自由に動いてしまうのでそれを制御するために魔法を使うんだけど、これは魔力操作だけで魔力を操らないといけないからクソ難しい。しかも圧縮までしないといけないなんて・・・・
「もっと魔力操作に慣れた頃に教えようと思ってたんだが、これを使えるようになれば格段に威力は増すぞ。練習あるのみだな」
「は~い」
矢を撃つときはクロスボウの補助によって魔力を圧縮出来ていたけど、補助なしでやるとこんなに難しいのかよ。集中しながら魔力を一点に集めるだけでも大変なのにこれをしながら戦闘とか出来る気がしない。また、訓練することが増えたな。
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