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明らかな異常

 調査を始めて三日目の昼、俺達は森の異常を調べながら進んでいると少しだが違和感を感じる出来事があった。それは・・・・


「こいつらなんか強いぞ」

「そうなのか?」

「手こずる程じゃ無いけど、今まで戦ってきた奴らとなんか違う」

「ふむ・・・・」

「手伝おう!」

「いや、止めておいた方が良いと思う。こいつらなんか荒っぽい!」


 マーダーマンティスにキックホッパー、ポイズンセンチピードどれもこの森に居る奴らだけど今まで戦ってきた個体よりなんか変だ。少し手強いしこいつらが集団で行動するなんて聞いたこと無いぞ。少し離れた場所に居た筈なのに感知範囲に入った瞬間俺達目掛けて狂乱とも言えるほどの勢いで突っ込んでくるなんて・・・・色々違和感があるけど今は全て倒すのが先!俺は風魔法による加速によって近づき、マンティスの鎌を切り落としキックホッパーの蹴りを避け頭に高威力の雷の矢を叩きこみ、センチピードは風の刃でバラバラにした。最後に生きているマンティスの頭を落としてっと・・・・ふぅ


「お疲れさん」

「流石の腕前だな」

「それで戦っている時に言っていたなんか強いってどういう事だ?」

「そのままの意味だぜ。今まで戦ってきた奴より少しだけど強かった。それにインセクト系統は自我が薄いけど明らかに正気じゃない感じがしたんだよな」

「個体差でしょうか・・・・?」

「それを言ったらそれで終わりなんだけど、なんか変な感じなんだよな~」

「直接戦ったクロガネ殿がそう感じたのであれば何かあるのかもしれないな」

「正気じゃなく少しだが普通より強いか・・・・」


 個体差と言われればそれまでなんだけど、それだけじゃ拭いきれない違和感を感じたんだよな。俺の言葉にテセウ様とブレストは少し考えこんでしまった。


「そもそもこいつらが群れるのが可笑しいだろ?」

「それは確かにそうですね。系統は同じだとしてもどちらも捕食対象ですから普通はは集まりませんね」

「マンティスやセンチピードは群れを成さない生態だし、ホッパーは種類によっては群れるけどキックホッパーはそうじゃ無い筈だしな」


 前に言った通り通常群れない個体が群れを成す原因の代表的なものは


「インセクト系統の上位種が生まれた可能性があるな」


 テセウ様の言う通り上位種の存在だ。


「複数の種類を纏めているとしたらバグズクイーンかバグズキングかな。インセクトクイーンとかキングは単一の種類しか命令できないはずだし」

「そうなると大問題だぞ。ここら周辺全てのインセクト系統の魔物を操られでもすればいくらウォルマが頑強な町だとしても落とされる。すぐに父上に報告しなければ」

「待ってください、まずはここら周辺を調査してからじゃないと結論を急ぐには早過ぎると思う」

「そうしている間にも間に合わなくなる可能性があるだろう!」

「確証の無い情報を持ち帰っても無暗に町の住民達を混乱させるだけです。もし間違っていた時無駄な労力を割いて他の問題を起こしかねないと思います」

「徒労に終わるならそれはそれで良いだろう。まずは民の保護が最優先だ」


 確かにもしもバグズクイーンやバグズキングが森に生まれたとしたら、それはもう国を挙げて対処しなければならない事態となる。この森にいる無数の魔物達を操れば町一つを落とす事なんて簡単だろう。だけど、これだけの情報じゃ国は動いてくれない。決定的な証拠を持ち帰らないと、動かせるものも動かせないのだ。


「今、数体のインセクトが群れを成していたというだけの情報で全てを決めるのは早計ですし、これだけの情報じゃ対処するための軍やギルドは動いてくれませんよ!」

「だが!」

「それに、俺の感知範囲内では同じような動きをしている者は感じられません。もしもバグズクイーンが動いているのであれば他にも同じような群れが居るはずです」

「それは・・・・」


 ふぅ、これで落ち着いてくれたかな?国を巻き込む程の被害を出す存在の可能性に焦る気持ちは分かるけど、危険だからこそしっかりとした情報を掴まないと駄目なのだ。それに、そんな状況だとしたらブレストが何か言うはずなのに何も言わず考え込んでいるから多分他に何かあるんだと思う。


「言い合いは終わりか?」

「・・・・失礼しました」

「いや、テセウ様の気持ちはよく分かる。クロガネ、他に何か思いついたことはあるか?」

「もし、バグズクイーンが生まれているならもっと魔物や動物が狩られていても可笑しくないはずだ。あいつは無理やりインセクト系統の魔物を従わせることも出来るけど、自分で生むことも出来るだろ?自分の軍隊を作る気なら栄養補給の為に、魔物が狩りつくされても可笑しくないのにそれが無いのは変だ。それに支配されているなら軍隊として動き連携するはずなのにさっきの三体はその様子が見られなかった」


 落ち着いて整理してみると変な所が多いんだよな。


「あと、他に弱そうな獲物は沢山いるのにわざわざ何で食べる所が少ない俺達だけを狙ってきたのかよく分からない。俺とブレストは魔力が多いけどそれは上手く隠せてるはずだろ?」


 魔物が育つためには俺達みたいに肉や植物を食べて成長するように、魔物は魔力を食べて成長するのだ。だから魔力がある人は狙われやすいけど、そう簡単に見破られるような隠匿はして無いぞ。


「クロガネの言う通りバグズクイーンやキングにしては違和感を感じる所が多いな。それにこれが周期的に起こっている現象だという事を忘れてはいけない」

「・・・・」

「周囲を詳しく調べてから報告しても遅くは無いと思うぜ。まぁリーダーであるブレストの判断に任せるけど」

「そうだな・・・・原因をはっきりさせるのが最優先だな。クロガネ、一回単独で周囲の気配の調査と不審な動きが無いか確認してきてくれ。俺とテセウ様ロシェさんはここら辺の調査だ」

「了解した」

「畏まりました」

「んじゃ行ってくる!」

「危なかったらすぐに帰ってくるんだぞ」


 ブレストに言われた通り、俺は一旦みんなから離れて次々と木々へ移動し周囲の様子を調べることにした。魔物達が戦った後も人間が殺されたような痕跡も無いし、何かの種類が異様に少ない訳でも無いな・・・・隠匿されていても見つけ出せるように、感知は全力でしているけど変な魔力の反応は無し。インセクトも群れを成している感じは無いな・・・・異常に魔力が集まっている場所も無いし周囲で一番高い木に登って見渡しても何も異常はない。周囲を隈なく探しても何も見つけられるず時間が経ってしまった。


「ん~何も変な所が見つからないな。そろそろ合流するか~・・・・はぁ!?」


 嘘だろ。この気配って・・・・そんなあり得ない!


 ある気配を感じた俺は急いでブレスト達の元へ走った。みんなは木々や地面に異常が無いか調べていた所だったが、風のような速さで駆けてきた俺を見て驚きながら


「何か有ったのか?」

「魔物ですか?」

「クロガネ、どうした?」

「インセクトマンの気配だ!」

「何だと」

「どっちの方向だ?」

「東のかなり先!しかもそいつあり得ないんだ!」

「あり得ない?何がだ?」

「そいつ、前に倒したインセクトマンと全く同じ気配がする!!」


 俺が慌てて報告に戻って来たのは倒して今も俺のマジックバックの中に入れているマンティスのインセクトマンと全く同じ気配をしているからだ!同じ種類であれば気配が似ているのは当然だけれど、全く同じ気配というのは無い。本当に僅かに違ってくるものなんだけど、今回感じた気配は完全に前の奴と一緒だ。そんなこと死者が蘇らない限りあり得ないはずだ!


「一緒?種類がということか?」

「違う、存在そのものが一緒!全く同じなんだ!」

「そんな事あり得るはずが・・・・」

「なるほど、そいつは今どうしている?」

「前と同じようにこっちに向かってる。多分町を目指しているんだと思う」


 俺が言っている意味が分からずテセウ様とロシェさんは困惑しているが、ブレストはなぜか冷静だ。


「どれくらいで接敵する?」

「凄い速さだから、もう少しで当たる!」


 昨日と同じように周囲に居る魔物には目もくれず一直線に走ってくるインセクトマン。そろそろ視認できる距離に来るはず、さぁ来い。


「あれか」

「うん、やっぱり見た目も気配も全く同じだ」


 全てが同じなら対処法も同じだけど、今回は俺だけじゃなくテセウ様やロシェさんも居る。姿を消されて二人を攻撃されるのは防がないといけない。つまり、速攻で倒す!俺は今出来る全力の闇魔法を自分に使い、姿、音、体温、息ですら感じ取れないよう全てを消し去る。この状態は魔力の消費が大きく俺でも長くは保てないから一瞬で片を付ける!!


「消えた・・・・」

「気配もありませんね」


 全てから消え去った俺は素早くインセクトマンの背後に周り、消えたことには気付いたが俺の姿を一切感じる事が出来ないままインセクトマンは一撃で首を跳ね落とされ、四肢をバラバラにされた。


「ふぅ・・・・疲れるなこれ」

「お疲れさん」

「一体何が・・・・クロガネ殿が消えたと思ったら一瞬でインセクトマンが倒れていたのだが

「何をしたのですか?」

「あいつの攻撃は厄介なので一瞬で倒さないといけなかったので、全力で倒しただけです」


 疲れるけどこれが最善策だからな。バラバラにされたインセクトマンはきっと自分に何が起きたのか理解できないまま命を落としただろう。さて、素材を回収してこの異常を整理しないとな。

読んで頂きありがとうございます!

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