森の調査二日目
完結表示になっていたため修正致しました。ご迷惑ををおかけして申し訳ございません
日が昇ったことによって自然と起きた俺は、周囲の気配を探りながら伸びをすると既にテセウ様とロシェさんは起きていてブレストは飯の準備をしていた。え、俺が一番最後ってマジか。
「おう、起きたか」
「うん、ごめん寝坊した?」
「いや、俺は起きているだけだし」
「俺も先程起きた所だ」
「同じくです」
「良かった~」
冒険者なのに寝坊したとなったら流石に恥ずかしすぎる。テセウ様はブレストと交代する時にもう少し起きていると言ったから先に寝たけど、あの後どれくらい起きていたんだろう。元気そうだし夜更かしはしてないと思うけど・・・・
「んじゃ朝飯食ったら出発だ。クロガネ、インセクトマンと会った場所はもう少し先なんだろ?」
「うん、このままのペースならあと数刻すれば着くぜ」
「それじゃあ、まずそこを目指して周囲を調査した後もっと先に行くとしようか」
「了解」
「畏まりました」
昨日食べたボアの残りを食べた俺達はまた森の奥へと進んで行く。奥に進むにつれて魔物の強さは上がり襲撃の回数も増えたけど俺一人でも十分捌けるから問題無し。なんなら素材が沢山集まるから儲けものなんだよな。
「数が増えてきたな~」
「確かにインセクト系統が多いな。特にスパイダーだが」
「しかもこいつら積極的に襲い掛かってくるよな。ブラックスパイダーって普通は巣を張ってじっとしているはずなんだけどな」
ブラックスパイダーはその名の通り、全身が黒い姿のスパイダーで特に特徴的な攻撃手段を持たない。特に危険性が無い魔物で巣を張って獲物を待つ習性を持っているはずなんだけど、何故か俺達を積極的に襲いに来るんだよな。
「ん~変異種の存在も考えた方が良いかもな」
「習性ががらりと変わってるし可能性は十分だよな」
習性が変わる理由として代表的なのが個を纏める上位種か変異種が現れることだ。数体なら個体差で済ませられるけど、こんなにも数が居るとなると個体差じゃ済ませられないんだよな。
「よし、着いたぞ」
「ここか・・・・」
「特に変化は見られませんね。普通の森です」
うっとおしいブラックスパイダーを倒しながら、インセクトマンと遭遇した場所に到着したが周囲にはこれと言って大きな変化はない。魔物が死んでいたり、見慣れない植物がある訳でも無いしロシェさんの言う通りただの森なのだ。
「取りあえず周囲の調査をしよう」
「はーい」
俺は一旦三人から離れ木の上に登って周囲を見渡してみたり、地面に何か変な魔力が無いかなど色々調査してみたけどこれといって不審な点は無い。魔物の動きも変わっていないし、マジで普通。
「ん~普通過ぎるな」
「なにもありませんね」
「そうだな・・・・クロガネ、インセクトマンはどっちの方から向かって来てたんだ?」
「ここから東の方だね」
「ここら辺には何も無いみたいだし、先を行くか」
周囲の調査が終わり合流するとブレスト達も特に異常を見つけられなかったみたい。魔物を引き寄せるような物も無いし、インセクトマンが来た方向を調べるのが良さそうだな。俺達はその場を後にし、また森の奥へと進んで行った。ここまで来ると、マーダーベアやキラーマンティスなど危険な魔物が現れてくるが、群れで行動をする魔物は居らず皆単体で来てくれるから処理は楽だぜ。テセウ様に戦闘経験を積ませてあげたいけど、流石にこいつらは荷が重いな。
「あ、フラワーディアだ」
「お、珍しいな。テセウ様戦って見ますか」
「ブレスト様それは・・・・」
「あぁ、是非」
フラワーディアを発見した俺が報告をすると、ブレストはニヤリと笑い戦ってみるかとテセウ様に聞くとロシェさんが止めようとしたのを遮るようにテセウ様が答えてしまった。
あ~あ、人が悪いな・・・・
テセウ様はいつも通りバトルアックスを構えフラワーディアに突撃するとそれに気づいたフラワーディアは角に付いている蕾を咲かせ頭を振ると、忽ち催眠効果のある花粉と香りが舞い突撃していたテセウ様はまともにそれを食らい倒れるように眠ってしまった。
「あーあ、ブレスト酷いだろ」
「ブレスト様・・・・」
「こういうのも大事な経験だろ。ほら、クロガネ逃げる前に倒してこい」
「はーい」
フラワーディアは角にいくつもの蕾を持った魔物なのだが、危険を感じるとその蕾を咲かせ催眠効果のある匂いと花粉を放出するのだ。そして、相手が寝ている内に逃走するという臆病な魔物なので、俺は逃げられる前に一瞬でフラワーディアに近付き首を切り落とした。まんまと眠ってしまったテセウ様はブレストが起き上がらせ気付け薬を飲ませると一瞬で目を覚まし
「はっ俺は一体何を・・・・確かフラワーディアから良い匂いがして・・・・」
「眠らされてしまっていたのです。お怪我はありませんか?」
「ロシェ、俺は大丈夫だ。だが・・・・」
ロシェさんが心配そうに付いた泥を払い、立ち上がったテセウ様は倒されているフラワーディアを見て大きく溜息を付いた。
「まんまと眠らされてしまった訳か・・・・」
「もし俺達が居なかったらそこら辺をうろついている魔物の餌になってましたよ」
「・・・・失態だ」
「魔物と戦うのであればその生態と特徴をしっかりと把握しておかなければなりません。もし、全く知らない相手と戦う場合はどんなに格下に見えたとしても慎重に立ち回る必要があります。これで分かりましたか?」
「あぁ痛い程にな」
「テセウ様は冒険者ではありませんが将来魔物と戦う事が多くあるでしょう。ですから、魔物に関する知識は集めておいて損は無いですよ。分からないのであれば俺達に聞けば良かったのにそれをしなかった。何故ですか?」
「・・・・あれぐらいであれば俺でも倒せると油断をしていた」
「魔物との戦闘は常に命懸けです。その小さな油断が致命的なミスになりますよ」
戦いますかと聞いたのに戦うと言ったのはテセウ様だ。知らない魔物であれば、俺達に対処法を聞けばよかったのだ。それをせず弱そうに見えたからと油断したのは大きな失敗だな。その油断が命を落とすものとなるのはこれでよく分かっただろう。
「今後気を付ける。教えて頂き感謝する」
「分かって頂けて良かったです。それじゃあ先に進みましょうか」
ブレストは段々と魔物が強くなって来ているから、少しでも油断をさせないようにさっきの失敗をさせたんだろう。厳しいように見えるけど、これは全てテセウ様の為なのだ。少しの油断が死に直結するそれがこの世界だ。そこに強者も弱者も身分も関係ない。
「ロシェ、そうブレスト殿を睨むな」
「睨んでおりません」
「さっきのは俺に教えるためにやった事だ。感謝はすれど怒る事などしてはならない」
「分かっております」
まぁ少し過激な方法をしたことによってロシェさんからブレストに対する評価は下がったみたいだけどそれは・・・・仕方が無いよな。主を少しとは言え危険なことをさせたんだから怒って同然だ。
「あはは、クロガネなんか変な反応はあるか?」
「前方からフォレストウルフが三体来てること以外なし」
「そうか~」
「フォレストウルフなら俺が」
「それならお任せしますね」
テセウ様が対処するとのことで俺は手を出さずいつでも助けられる位置に着き、戦闘を見守ることにした。テセウ様はいつも通り構えるが、その目に油断の文字は無い。しっかりと相手の動きが見えているし、狙いも分かっている。フォレストは三方向に別れテセウ様を取り囲みながら走り周り一斉に襲い掛かったが、大きなバトルアックスで周囲を一閃し三体同時に首を跳ねて戦闘は終了した。うん、安定感が増した感じだね。
「フォレストウルフはまず弱い奴から狙うからな。この中なら俺だろう」
「お見事」
「これくらいは出来ないとな」
魔物との戦闘にはだいぶ慣れてきたんじゃないかな?さっきブレストが気を引き締めたのもあるけど、サポロさんが言った通り才能は十分あると思う。後は経験を積んで鍛錬を続けていくだけだね。何も異常を発見できず、夜になってしまったので今回は俺が先に寝てブレストが夜番だ。時間になって起きてブレストと交代してしばらく経つとまた後ろから動く気配が
「夜更かしは良くないですよ」
「十分に寝たから問題は無い」
「そうですか」
明日に支障が無ければ特に言う事は無いな。昨日と同じように特に話す事無く、ゆっくりと錬金魔法の練習をしていると
「今日は大変迷惑をかけた、すまない」
「ん?何のことですか?」
「フラワーディアの事だ」
「あ~あれですか。気にしなくて良いと思いますよ。冒険者なら誰しもが同じようなミスをしますから、経験が少ない人なら尚更です」
「だが、経験を少ない事を言い訳にして良い問題では無いだろ」
少しのミスが命取りになるのだから確かに経験が少ない事を言い訳にし続けたらいつか死んでしまうだろうな。
「そうですけど、テセウ様なら大丈夫でしょう」
「何故そう思うんだ?」
「だって、あの失敗を深く受け止めて学んだじゃないですか。だから、もう同じような失敗は二度とするつもりは無いんですよね?」
「勿論だ」
「なら大丈夫でしょう」
失敗をしても学ばず何度も繰り返してしまう人がいるけど、テセウ様は一度失敗したら二度と失敗しないよう冷静に分析して対処法を見つけていくタイプだ。だから、もう大丈夫だと思うんだよね。これは俺の直感だけどな。
「その信頼に答えられるよう努力していくつもりだ。そこで何だが、俺に魔物の事を教えてくれないか?」
「俺はブレスト程博識じゃないですよ?」
「そうは思えない立ち回りだった」
「そうですか?じゃあ、俺が知ってる範囲でなら」
俺は森の中に出てくる魔物を中心に、一つ一つ丁寧に特徴と対処法を教えていきテセウ様は持ってきていたメモにそれを書き記していく。俺が話した内容がそうやって残されるのは少し恥ずかしいけど、ちょっとした面白い事を混ぜながら朝が来るまで話し続けた。
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