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森の調査一日目

 テセウ様が対処できない魔物は俺が処理をしながら、森の中を進んで行くけどやっぱり森を歩くことに慣れていないテセウ様は木の根に足を取られなりしてスピードは落ちてしまうけど、安全が第一だからね。それに、ブレストが後ろから森の中で歩くコツを教えているから段々良くなっている。ロシェさんの歩き方は安定しているし元々冒険者だったのかな?


「そろそろ日が暮れるな。クロガネ周囲に気配は?」

「小動物とかボアはいるけど、俺達を襲ってくるような奴は居ないよ」

「この先は?」

「ん~先を進むと魔物が沢山居るね」

「なら、今日はここまでだな。視界が悪く明かりの無い夜の森で、戦い続けるのは悪手だ。野営の準備をするぞ。クロガネは周囲の警戒、ロシェさんは野営が出来るように整備、テセウ様は俺と一緒に薪と食料を確保しに行きます」

「はーい、感じられる範囲に居てね」

「そんな遠くには行かないって」

「畏まりました」

「了解です」


 俺はロシェさんの護衛兼周囲の警戒だな。テセウ様はブレストが一緒に居れば大丈夫だろうし、俺の感知範囲内に居てくれれば駆けつけられる。本当なら俺達には収納やマジックバックがあるから、食べ物なんて確保しなくても良いんだけど恐らくテセウ様に森ではどういう風にすればいいのか教えるためだな。ブレストって面倒見良いよな~


「クロガネ様」

「何ですか?」

「クロガネ様はどれくらい冒険者をなさっているんですか?」

「半年ぐらいですね。それと様は付けなくて大丈夫ですよ」

「いえ、私はあくまでテセウ様の侍女ですから。半年ですか・・・・ブレスト様とは長いのですか?」

「いや半年前に会って俺を鍛えてくれたんですよ」

「そうですか・・・・」


 まぁその出会いってのがスリをしたことってのは黙っておこう。少し不安そうな顔を見せるロシェさん。自分の主をよく知らない冒険者に任せるのを良く思わないのは当然だ。


「俺、スラムで暮らしてたから分かりますけどブレストほどの善い人はそうそう居ないと思いますよ。子供が傷つくことを嫌いしますし、教え方も丁寧でテセウ様を危険に晒すような真似は絶対にしませんよ。それにブレストが一緒に居れば、上位竜だって問題無いですから」

「そうですか」

「まぁ、でもすぐに信用するのは無理だと思うんでじっくり見極めて下さい」

「そうさせて頂きます」


 人を信用するのはすぐに出来るものじゃないからこの調査を通じてブレストの事を分かって貰えると良いな。だから、ブレストは何時もみたいに変な事をしないでよ。ほら、今も見えないからって木を使った変な戦い方を教えないの。テセウ様はもう正統派の戦い方を学んでるんだから俺達みたいな自由な戦い方は合わないと思うぞ。


「薪と飯の確保終わったぜ~」

「こちらも整地が終わりました」

「襲ってくる気配は無し。立派なボアだな」

「おう、テセウ様が頭を一発で仕留めたんだぜ」

「それでは私が血抜きと処理をさせて頂きます」

「お願いします」


 ロシェさんはブレストが担いできた大きなボアを、よろめく事無く受け取ると手際よく血を抜き皮を剝ぎ部位ごとに解体をしていく。大量の血が流れるから匂いを拡散しなように風魔法で空中へと匂いを巻きあげとくか。テセウ様は血の匂い少し当てられているけど、ロシェさんはどの手順も迷いが無いみたいだしやっぱり慣れてるみたいだよな。そんなテセウ様は少し離れた場所で薪を組み、火を付けていた。ブレストはと言うとそんな姿を見守りながら、肉に薪と一緒に集めた香草を揉み込み焼く準備をしていた。


 みんなで協力した肉は確かに町で食べるもの比べると、少し劣ってしまいはするが一日の疲れを癒し腹を満腹にするには十分だ。臭みはブレストが使った香草で抜けているし中々美味いと思うぞ。


「アツアツで美味い~肉を食べてるって感じがして良いな」

「なるほど、そちらの香草は臭み抜きに使えるのですね」

「外で食べる分には十分だな。だが、ブレスト殿何故携帯食料を食べないのですか?我々は何日も森の中で生活出来るよう沢山持ってきたのですが・・・・」

「それは単純に携帯食料の節約です。携帯食料ってのは食糧が確保できない場合や落ち着いて食事を取ることが出来ない場合に食べるのであって、普段から食べるものでは無いのです。本当の非常時に携帯食料が無いんじゃ、意味が無いからな」

「なるほど」

「今は襲われる危険も無いし料理をする余裕もあるのであれば、こうやって狩りをして食料を確保をするのが冒険者の基本なんだ。勿論狩りが何時も上手く行く訳では無いし、体力の温存という意味で狩りをしない冒険者も居るがな」

「状況に合わせた食料の確保が大事ということですか」

「そういうことです」

 

 ブレストが言ってることは正しい。携帯食料はその手軽さから普段の食事であり、非常食でもあるんだ。怪我をして食料を確保できない時や、動くことが出来ない状態の時に食べるものだから狩りをして食料を確保するのは間違って無い。護衛依頼や複数のパーティーが関わっていれば基本は携帯食だけど、俺達は余裕があるしな。テセウ様はもっともらしい事を言うブレストに感心しているけど、本心は不味い携帯食なんか食いたくないだけだぞ。


「調査一日目が終わりだが何か気付いたことはあるか?」

「俺は特に無いかな」

「残念ながら私もです」

「あの首狩りトンボ以外はありませんね」

「俺もそんなところだな。まだここは森の浅い場所だし、進んで行けばもう少し何か分かるだろ。明日に備えて早めに寝るとしよう。夜番は俺とクロガネが交代で」

「俺もやります!」

「夜番は慣れている者じゃないと危険だから駄目です」

「危険は承知です!」

「危険って言うのは自分だけじゃなくて仲間の事も言っているんですよ。この役目は俺達に任せて下さい」

「・・・・はい」


 夜番というのは火を守り、仲間が寝ている間に危険が無いか常に警戒をしなければならないものだ。だから、探知能力に優れどんな魔物や動物が来ても対処できる実力が無ければ、無防備な仲間を危険に晒すことになってしまうから夜番はまだテセウ様には早いね。ロシェさんは寝ているテセウ様の護衛だから、夜番は俺とブレストでやらないとね。


「どっちが先にやる?」

「眠くないから先やるよ」

「おう、頼んだ」

「お願いします」


 そう言って各々持ってきたブランケットで身を包み次々と眠りへと落ちて行った。テセウ様は野宿慣れをしていないので地面にそのままというのが寝心地が悪そうにしていたが、やがて静かに眠りに就いた。


「さて、暇だから錬金魔法の練習でもするか」


 木の再構築で躓いている俺は錬金魔法を練習をしながらも決して周囲の警戒を怠らず、近づいて来る小さなインセクトやバットを音を立てないように追い払いながら過ごしていた。暫くして、一旦休憩するために錬金魔法を止めて夜の涼しさを楽しんでいると、後ろで動く気配がしたが敵ではない。


「少し隣良いだろうか」

「どうぞ」


 起きてきたのはテセウ様だ。初めての野宿で起きてしまったのかな?ゆっくりと俺の隣に座ると空を眺めながら


「涼しい夜だな」

「ですね」

「その・・・・今回は無理を言ってすまなかった。俺の惨めな嫉妬と我儘で二人の足を引っ張っていることは十分に理解している。クロガネ殿は何も悪くないのに喧嘩を売るような態度をしてしまった事本当にすまない」

「別に気にしてませんよ。自分の大切な人が誰かを特別扱いしたら嫉妬するのは当たり前のことですし、自分と同じぐらいの歳なら尚更です」

「大人なのだな。それに比べて俺は次期領主となるというのに情けない限りだ。民を導くためには冷静かつ合理的では無ければならないのにな」


 静かに溜息を付くテセウ様。貴族であるテセウ様と俺じゃ何かもが違うけれど、俺としてはさ


「それぐらい人間味に溢れてた方が俺は好きですけどね」

「は?」

「貴族様って傲慢で俺達庶民とは住む場所が違くて生まれながら偉くて立場が違う存在だと思うんですよ。だから、俺達とは全く違う生き物に見えるんですよね」


 王都にいた時に見た貴族様は立ち振る舞いに様相、それに俺達を見る目が冷たくて同じ人間じゃ無くて違う生き物に見えた。だから、この人達の事は一生分からないんだろうなって思えたんだ。


「だけど、テセウ様はこうやって民の為に行動して戦って悩んで嫉妬してって何だか親近感が湧くって言うか同じ人間なんだって分かるんですよ。俺としてはそういう人の方が俺達を導いて欲しいって思うしどういう人なのか分かるからこそ自分達の上に立って欲しいと思うんですよ。シュナイザー様も親しみやすいからこそ慕われてるんだと思いますしね」


 本当にあの人は気軽な感じなんだよな~考えている事のよく分からない冷たい奴より、たとえ打算であったとしても民の事を考えて何を考えているのか分かる人の方が上に立って欲しいって少なくとも俺は思うぞ。


「そう・・・なのか?」

「少なくても俺はそう思いますよ。それに、テセウ様はもう町のみんなに慕われていると思いますよ」


 町を出る時に歩いていたら次々に声を掛けられて外に出ると言った時みんな心配そうにしていた。テセウ様の為にって食べ物を沢山くれた人も居たし、守りの言葉を唱えてくれる人だっていた。俺達には耳が痛くなるほど、守ってくれと言ってたしここまでの事をしてくれるってことは今までの行動を見て町の人達は慕ってくれているってことだ。だから、変わろうなんて思わなくて良いと思うぞ。


「そうだと良いな」

「えぇそうだと思います」


 それから俺達はブレストが交代で起きてくるまで静かに空を眺め涼しい夜を過ごした。

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