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森の異常

 俺はブレストが首狩りトンボの素材を収納し、首狩りトンボが荒らした死骸を燃やしている間の護衛と周囲の警戒のためにテセウ様の傍に行くとロシェさんとテセウ様は同じように驚いた顔で俺を見ていた。


「首狩りトンボをいとも簡単に倒すとは・・・・」

「辺境伯様からクロガネ様の事はお聞きしましたがここまでとは」

「あいつは速さと飛ぶことが厄介なだけだから、それを封じちまえば結構簡単に倒せますよ」

「いや、それを何とかするのが難しいから厄介なんだが・・・・」

「あの動きを止めた糸はスパイダーの糸ですか?」

「そうです。ワイズスパイダーの糸が丁度手持ちに有ったので使ってみました」


 ロシェさんの言う通り首狩りトンボを絡めとったのは、ワイズスパイダーの粘着質の糸だ。粘着質では無い糸は目に見えない程細く鋭いけど、相手の動きを封じるのには向いていないから粘着質な糸を使ったけど目に見える程太く、そのまま仕掛けたらいくらインセクト相手でもバレちゃうから闇魔法を使って姿を消しておいたんだよね。あいつの風の刃を全て相殺したのも、罠を壊されるのを防ぐため。罠を仕掛け終わったら相手が罠に突っ込んでくれるように誘導してあげれば、倒すのは簡単だぜ。


「斬られたのは闇魔法による幻影か・・・・凄い精度だな」

「かなり練習しましたからね」


 幻影ってバレたら罠の意味が無いからな。幻影を斬った瞬間に闇魔法を解除して、前に戦ったワイズスパイダーみたいに四方八方に巡らせた糸を中心部にかき集め逃げることが出来ない領域を作りだしてみたけど、上手くいって良かったぜ。あの巨体じゃ包囲網は抜け出せない。それに粘着質の糸は頑丈だし、もし切れても羽に絡みつくから失敗しても動きを鈍らせることは出来ると思ったんだよな。


「なるほど・・・・父上が褒める理由が分かるな」

「そんな大したことじゃないですよ」


 ブレストに付いていくならこれぐらいできて当然だし、罠を使わなくてももっと簡単に倒せるようにならないと。


「そうか・・・・ブレスト殿もクロガネ殿も息を吸うように魔法を使われるんだな」

「じゃないと、隙が大きすぎますからね」

「魔力感知にはある程度自信がありましたが、クロガネ様の魔法は気付けませんでした。ブレスト様もあの大量の死骸を一度に燃やせるほど魔法を簡単に使われるとは・・・・三級冒険者というのは凄いのですね」

「ブレストは三級に居るだけで、実力的にはもっと上ですからね」


 俺達は常に動く立ち回りをするので、詠唱時間は邪魔でしかない。大きな魔法を使う時はどうしても詠唱しないといけないけど、出来るだけ詠唱無しで使うのが一番なのだ。俺の場合は何となくある程度の魔法を使えるから困って無いけど、これから魔法を覚えていく上で動きながらでも詠唱出来るようにならないとな。


「あ、魔物だ」

「どちらですか?」

「右後方距離は100m、血に引け寄せられたロックリザードですね」


 少し雑談をしていると、血に引き寄せられたロックリザードが近付いて来るのを感じた。その言葉を聞いた二人は一瞬で戦闘態勢に変わり、武器を構えるが俺がさっさと倒した方が良いかなと武器を構えると、いつの間にか後ろにいたブレストが


「ロックリザードならテセウ様に任してみよう」

「良いの?」

「おう、これから先にを進むためにもある程度の実力は把握しておいた方が良いだろ。テセウ様いけますか?」

「勿論だ」

「守りはお任せください」


 そう言うなら俺は手を出さないでおくか。いつでも助けに入れるようにクロスボウに予め魔力の矢を装填しておいて、ロックリザードが来るのを待つ俺達。さて、先手はどうするのかな?


 テセウ様はバトルアックスを手前に構えながら慎重に魔法の詠唱を始めた。聞こえる言葉からすると土属性の身体強化と破壊力の強化だね。ロシェさんも土魔法の防御力強化を唱え盾を前に構えいつでも行ける。


 茂みが揺れ飛び出してきたロックリザードに仕掛けに行ったのはテセウ様だ。力強い踏み込みと共にバトルアックスの重さを活かした、正面からの振り下ろしは綺麗に背中に入ったが頑丈な岩で守られているロックリザードには致命傷にならず岩の装甲を削っただけだ。二度目を繰り出そうと体を捻りながらバトルアックス持ち上げると腹を目掛けて尻尾の攻撃が来たがそれをロシェさんが盾で防ぎ、その隙に寸分違わず同じ場所へ二度目の攻撃を叩きこむと、岩の装甲を貫通し断ち切った。


「お見事でした」

「ふぅこれぐらいは出来ないといけませんから」


 おお~なるほど。テセウ様はバトルアックスによる力強く叩き潰すような戦い方をするのか。俺より大きいけどあの体で岩の装甲を破れれば十分じゃないか?


「どうでしたでしょうか俺の戦い方は」

「うん、年齢を考えると十分過ぎますね。魔物との戦闘を想定した訓練もしてるみたいですし、ロシェさんのカバーも上手い。これならある程度は大丈夫そうですね。戦闘はクロガネに任せますが、もし戦闘経験を積みたいのであれば許可した魔物とであれば戦いますか?」

「是非お願いしたい。父上は実戦に勝る経験は無いと言っていたので俺も実戦経験を積みたいのでな」

「了解です。ブラウンベア、ロックリザード、フォレストスネーク、フォレストウルフ辺りはテセウ様に任せるとしましょう。分かったなクロガネ」

「はーい」


 それ以外は俺が倒して、テセウ様が戦える相手はテセウ様に譲って怪我しないように援護すれば良いんだな。分かったぜ!


「それじゃあ、奥に進みましょう」


 ロックリザードの処理をした俺達はまた森の奥へと進んで行く。調査の為に木々の様子や植物達の変化、魔物や動物達の動向を調べながら歩いているがさっきの首狩りトンボ以外には目立った変化はなさそうだな。魔物達は錯乱状態には陥っていないし一部の種類が異常な程数が減っている訳でもない。無害な小動物達も多くただ豊かな森なだけだ。インセクト系は多く襲ってきたけど、異常って程でも無い


「特に目立った異常は無いな」

「ブレストはこのインセクト系統が増える時期に関して何か予測がついてるの?」

「ん~そうだな~逆に訊こう。テセウ様は何か思い当たる点はありますか?」

「え、俺ですか?そうですね・・・・まだ全然森の事を分かっていないので、今まで学んだ内容でしかお答えできませんが単純に年々処理しきれていない魔物達がピークに到達した時にこのような状況になっている可能性も捨てきれませんし、何かの上位種が出現している可能性もありますね。」

「こんな広大な森だと、全てを網羅することは出来ませんからね。冒険者だって町を拠点をしている以上日帰りや一日程度で帰れる範囲しか行きませんから、処理しきれていないだけというのは十分あると思います。上位種が出現した場合、その配下となる魔物が増えるのも良くあるケースですね」


 お~流石は次期辺境伯、魔物の事を勉強してるんだな。さっきの戦い方を見て貴族は対人を想定した方の嵌った戦い方をすると聞いてたのに、テセウ様は完全に対魔物を想定した戦い方をしていた。やっぱり辺境伯って特殊なんだろうな。


「クロガネ殿はどう思いますか?」

「俺ですか?ん~冒険者や住民大量の被害が出ていないなら上位種へ進化した者が居るのは少し考えづらいですけど、その可能性は十分ありますし変異種が出現した可能性もある。誰かが辺境伯に敵意のある者が魔物を誘導してる可能性もありますが、頻度からしてそれは殆ど無いと言って問題無いと思います。何かしらの魔物が大量死した様子も無いみたいだし・・・・俺としては本来なら居ないはずの魔物が出てくるのが引っ掛かります」


 常に一定だった環境が変化するのであれば、何かしらの大きな原因があるはずだ。魔物が大量に増えた場合、増えた原因となった生き物が居るはずだ。魔物や動物は人間を餌にする種類も多いし、上位種に進化するためには大量の養分が必要となる。だから、何か変化が起きれば何か被害が出るはずなんだが・・・・それが見えない。


「本来居ないはずの魔物が出現した理由としては何があげられる?」

「森の環境の変化、近隣の環境の変化によっての流入、魔物の生態の変化や上位種の出現、人的要因かな」


 元々住んでいた場所に天敵が来たとか、餌となるものが無くなってこっちに逃げ込んできたとかだな。でも、そんな話一切聞かなかったしな~


「上出来だな。他にも色々あるが大体はその通りだ」

「なるほど・・・・」

「でも、それにしては数が少なすぎるよな」


 さっき遭遇した首狩りトンボ以外本来居ない魔物は見つかって無いし、そんな大きな変化があればもっと沢山見るはずなんだよな。


「確かにな。調査はまだまだ始まったばかりだからもっと調べてけば分かるだろ」


 それもそうだな。俺達は周囲を警戒し調査しながら、森の奥へと進んで行くのだった。

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