追加の護衛依頼
俺達は調査に向かうためシュナイザー様(そう呼べって言われた)と一緒に食堂を出て玄関ホールに来ると、そこには俺より少し大きな辺境伯に似た金髪の髪をしている子供が居た。その子供は俺達の事を見ると駆け寄って来て
「父上!」
「テサウ、お客様の前だぞ」
「あ、すみません・・・・」
「失礼した。この子は俺の息子のテセウだ。テセウ、自己紹介を」
「お客様の前で見苦しいお姿を見せてしまい申し訳ありません。シュナイザー家長男テサウ・シュナイザーです」
「丁寧なご挨拶をありがとうございます。三級冒険者ブレストです」
「五級冒険者クロガネと申します」
「冒険者様でしたか」
「テセウは11歳だが、そういえばクロガネ殿の歳を聞いてなかったな」
「恐らく10歳です」
「恐らくとは?」
「孤児なので」
「それは、すまない。てっきりブレスト殿の兄弟だと」
「いえ、ブレストは兄みたいなものなのでお気になさらず」
ベルグが拾われてから5年だから多分それぐらいだろ思うんだよな。まぁ歳なんてどうでも良いし、それにしても最近ブレストと良く兄弟だと思われるな~そう言われるたびにブレストがにやけるのが少し恥ずかしいけど、兄弟と言われて悪い気はしないな。
「その歳であそこまでの実力とは、恐れ入ったな」
「いえいえ、ブレストに沢山の事を叩きこまれましたから」
「・・・・クロガネ殿は五級なんですよね?」
さっきまで貴族っぽく振舞っていたのに、急にガキの顔になったな。それにこの目は知ってるぞ。ベルグに構われている時にほほを膨らませながら駄々をこねていたガキの目だ。憧れの父親が年下のしかも庶民で孤児の子供を褒めたから嫉妬してるな。
「そうです。日々精進の毎日です」
「なら、俺と手合わせをしてくれませんか?」
「テセウ!お客様に何を言っているんだ」
「父上が褒める程の実力を見てみたくなりまして・・・・」
「そうだとしても失礼だ。謝りなさい」
「・・・・ごめんなさい」
「いえいえ、大丈夫です。期待して下さったのは有り難いのですが、俺の戦い方は正々堂々とはかけ離れていますので期待には沿えないと思います」
俺の戦い方って騎士とか戦士みたいに正々堂々じゃなくて、どちらかと言うとシーフやアサシンのような戦い方だからきっとつまらないと思うぜ。
「父上から戦いというのはどんな手段を使おうが最後に生き残っているの方が勝ちだと言われています。どのような戦い方でも俺は見てみたいです」
おいこら父親、ガキになんつーこと教えてんだよ。いや、確かにこの町は常に戦いの中に居るからそういう教育が必要なのは分かるけど、まだガキだろうが・・・・それに貴族としてそれはそれでどうなんだ?ブレストも同じ気持ちだったのか二人してシュナイザー様の方を見ると気まずそうな顔をしながら
「いや~なんかすまん」
「いえ」
「テセウも我儘を言うんじゃない。二人はこれから俺からの大事な依頼で森に行くことになっているんだからな」
「では俺もその依頼に同行させては頂けないでしょうか」
「テセウ!」
あ~これはもうムキになってるな。父親に褒められて大事な依頼も任されるなんて、息子からしたら良くは思わないだろうな。ガキってのは親からの関心を欲しがるものさ。それにしても大事な依頼ってことに強く反応したな。
「森は危険ですので・・・・」
「俺は幼い頃から領主になるために鍛錬を積んでいます。足手纏いにはなりません」
「はぁ・・・・お二人共無視して構わない」
「父上!」
「・・・・森には沢山の魔物が居り、危険に包まれています。一歩間違えれば命を落とすことを理解してその言葉を発していますか?」
少し考えた様子を見せたブレストは、テセウの前にしゃがみ目を合わせながら問う。その真剣な目に決して怯む事無く、堂々とした態度で
「命を落とす覚悟はしています」
「それは嫉妬という感情だけでそう言ってるのか?」
「・・・・それは・・・・」
「なら駄目です」
一時の感情に流されて後のことを決めるなんて絶対碌な事にならないからな。しかもそれが悪い感情で命に関する選択なら尚更な。でも、テセウからは嫉妬以外の感情も感じるんだよな。ブレストは立ち上がり離れようとすると大きな声で
「正直に言うと!確かにクロガネ殿に対する嫉妬の気持ちはありましたが・・・・本当は俺も父上の役に立ちたいんです!森がインセクトが大量に出現する時期に入ったことは使用人達の話で聞きました。父上は砦の警備に忙しいのにも関わらず森の対処にも追われています。次に領主となるのは俺です!だから、森でのことは少しでも協力したいんです!」
「だそうだ。どうしますか、シュナイザー様」
「テセウ・・・・すまんな俺が不甲斐無いばかりに心配をかけた。そこまで言うならば、許可してやりたいがブレスト殿はどう思う?」
「まぁ森の調査ぐらいなら俺が常に傍に居れば守り切る自信はありますよ」
「本当なら使用人の誰かを付けたいんだが生憎人手がな・・・・砦にキメラが大量に来ちまって使用人達をそっちに連れて行かないといけないんだ」
「父上俺は一人でも身を守れます!」
「ん~でもな~」
危険な森にまだ11歳になったばかりの息子を護衛も無しに行かせるのは不安だよな。いくら俺達が居るとは言っても、赤の他人でほぼ初対面みたいなもんだしな~難しそうにシュナイザー様が悩んでいると、部屋の隅に居た茶髪のメイドがこっちに歩いて来た。
「シュナイザー様、大変恐れながら申し上げます」
「ロシェかどうした?」
「私はテセウ様の侍女でありますので、私が護衛に着くのはどうでしょうか?」
「ふむ・・・・メイド長、ロシェが抜けても仕事は回るか?」
「はい、大丈夫です」
「なら、テセウの護衛はロシェに任せよう」
「その大役任されました」
なんかこの流れはテセウを調査に連れて行く感じだな。ブレストが良いなら別に良いけど、あのロシェって人も一緒に行くみたいだけど、あの人歩き方が完全に戦士の歩き方だから大丈夫そうだな。
「ブレスト殿クロガネ殿、俺の息子が我儘に付き合わせてしまって申し訳ないが頼んだ。勿論報酬は増額させてもらう!」
「未来の辺境伯の為ですから構いませんよ。ロシェさん俺と二人で護衛となりますが大丈夫ですか?」
「えぇ護衛の心得は学んでおります」
「心強いです。てことでクロガネがメインで戦って貰うが大丈夫か?」
「いつものことじゃん」
「ま、確かにな」
「連れてってくれてありがとうございます!足手纏いにならないよう頑張ります!」
「それじゃあ、早速調査に向かうから準備をしてきてくれ。野宿をするつもりだからそのつもりでな」
「分かりました!」
「畏まりました」
二人は返事をすると速やかに家の奥へと向かった。
「はぁ本当にすまない」
「いやいや、覚悟を感じましたからね」
「まだ早いと思ってたんだがな・・・・子供の成長ってのは早いぜ」
「中々戻ってこないからですよ」
「仕方が無いだろ。俺が居ねーと駄目な場合もあんだからよ」
「テセウ様に我慢を強いてしまった我々の所為でもありますけどね。力不足を実感します」
「サピロは良くやってくれてるぜ。俺がガキだった頃の父上より帰って来れてるからな。こっちは父上が居るから安心だと思ってたが・・・・サピロの為にも出来るだけ帰るべきだな」
ありゃ、先代の辺境伯はまだ存命なのか。てっきり亡くなったのかと思ってたぜ。
「父親は大変ですね」
「だな・・・・ブレスト殿はそういった相手は居ないのか?」
「俺は弟兼息子みたいなのが居るので十分です」
「誰が弟兼息子だ。弟子だろ!」
「またまた~照れちゃって」
「頭撫でるな~!」
弟は分かるけど息子になったつもりは無いぞ!
「良い関係を築けているのだな。重ねて言うがテセウのこと頼んだぞ」
「勿論です。守るだけであれば上位竜以上が来なければ何とかしますから」
「ははっその言葉を聞いて安心したぜ」
それからブレストとシュナイザー様は色々な事に話を咲かせ、俺はサポロと呼ばれた人とテセウについて聞いてみることにした。
「あの~サピロ様で良いですか?」
「呼び捨てで結構ですよ」
「じゃあサピロさん。テセウ様って実戦経験ってあるんですか?」
「護衛数人と一緒に町の付近でボアやゴブリンと戦ったことがありますね。それ以外は無しです」
「野宿の経験は?」
「無いです」
「なるほど~」
貴族のガキって自分の身の周りのことが出来ないって聞くけど大丈夫かな~
「身の回りの事はご自身で出来るように訓練していますし、ロシェが付いていますので大丈夫です」
「あ、そうですか」
「私も一つ質問を宜しいでしょうか?」
「どうぞ」
「何故私にそれを聞くのでしょうか」
「それは・・・・一番テセウ様の能力に詳しいと思ったからです」
「それは何故?」
「だって、人物に対する鑑定眼持ちでしょ?」
近づいて俺達を見た時に見えたあの一瞬の目の光、あれはプリトのギルドで見た鑑定を使った時に見た光とほぼ同じだった。鑑定眼にも種類があって強さや物のみだったり人のみだったりと色々なんだけど、サポロさんの光は前に見た時より深みが有ったから強さはサピロさんの方が上だろうね。図星だったサポロさんは少し目を開くと
「何故それを」
「なんとなくそうだろうなって、当たりでしょ?」
「隠しても無駄ですね。正解です」
「やったね」
「バレてしまったので話しますが、テセウ様は平均的な11歳より頭一つ抜けています。斧術に関しての才能はシュナイザー様にいずれ匹敵すると言っても良いですが・・・・・」
「経験が足りないと」
「そうです」
「なら、大丈夫そうかな」
体力の心配をしてたけど、サピロさんが言うんだったら大丈夫そうだね。お、そんな事を話している間に二人の準備が終わったみたい。それじゃあ、早速森へ行くぞ~!
「父上行って参ります!」
「あぁ気を付けてな。ブレスト殿とクロガネ殿の言う事を必ず聞くんだぞ」
「はい!」
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