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領主館

 俺たちはゆっくりと歩いて領主館の前まで来ると、ブレストは何やら綺麗に包装された物を収納から取り出し身なりを整え飯を食べたことによってついてしまった匂いを取るために浄化を掛けて貰って門番をしている衛兵さんに声を掛けた。


「こんにちは、辺境伯様に招待された冒険者のブレストとクロガネなんだが・・・・」

「お話は聞いています。身分証と招待状を拝見させて頂きます」

「どうぞ」

「・・・・確認しました。ご案内いたします」


 うわ~堅苦しいっ門番をしている衛兵は綺麗な鎧と一切乱れる事の無い立ち姿、そして人を見極める為の鋭い眼光。そして堅苦しい口調・・・・完全に俺は場違いだろ。塀の中にある領主館は丁寧に整えられ、手間が掛かっているのがよく分かる庭が広がっており、流石は貴族って感じだな。衛兵が領主館の扉を開けると、中には数名のメイド達が玄関ホールに待機をしていた。


「お待ちしておりました。ブレスト様とクロガネ様ですね?領主様は食堂にてお待ちしております。こちらへどうぞ」

「はい」


 メイドさん・・・・で合ってるんだよな?姿は良くあるロングスカートのメイド服だが、その立ち姿に歩き方が完全に歴戦の戦士って感じなんだが。他のメイドさんも気配の消し方だったり足音の消し方が一般人じゃないし、領主が変だと仕えてる人まで変な人になるのか?それとも、これが普通で貴族にのメイドになるにはある程度戦えないと駄目なのかな?どっちなんだろうと悩みながら後を付いていくと、大きな扉が開かれ、その先には辺境伯様が椅子に座って待っていた。そしてその隣はピシッと背筋を伸ばした辺境伯と同い年のように見える蒼髪金色の瞳の眼鏡を掛けた男が立っている。


恐らくだけど、この家の執事かな?俺とブレストは片膝を付き頭を下げ


「よく来たな。歓迎するぞ」

「本日はお招きいただき光栄です。こちらは辺境伯様からすれば大したものでは無いかもしれませんがこちらを」

「あぁ今回は俺個人の食事会だから、そんな畏まった態度はとらなくて良いぞ」

「いえ、英雄と言われるほどのご活躍をなされる辺境伯様にそのような態度を取る訳にはなりません」

「俺は堅苦しいのは苦手なんだよ。楽させてくれ」

「畏まりました」


 俺達は立ち上がると席へと案内され、辺境伯の隣に立っていた蒼髪の男が献上品をブレストから受け取るために俺達に近付いた時、眼鏡に遮られた金色の瞳の奥が一瞬光ったような気がした。今の光方を前に見た気がするな・・・・少し気になりながらもテーブルは六人程度が座れる大きさで上座に辺境伯が俺達はテーブルを挟むように対面している。


「それじゃあ、早速飯とするか」

「シュナイザー様」

「良いんだよ、どうせクロガネ殿には俺の性格がバレてるからな」


 貴族とは思えない言葉遣いと気安さで話す辺境伯にピシリと眼鏡をした真面目そうな蒼髪の男が咎めたが、当の本人は笑っている。冒険者ギルドで見せた威厳は何処に行ったのか・・・・そんな様子の辺境伯にはぁと小さな溜息を付き一歩後ろに下がると、次々と料理が運ばれてきた。


「色々と話したい事はあるが、まずは腹ごしらえからだ。自慢じゃないが、俺の料理人は中々の腕だぞ」

「有難く頂かせてもらいます」

「頂きます」

「おう、食え食え」


 運ばれてきた料理は肉が中心だが、ただ肉を焼いただけでなく様々な野菜と組み合わせ色鮮やかによそられていて味を飽きさせないように沢山の種類のタレがある。今すぐにでも食らいつきたいけど、いくら気安い領主だとしても貴族の前でそんなマナー違反な事をしたら駄目だ。俺は落ち着きながら肉を切り分け口に入れると、肉の旨味と甘味そして少しだけ酸味が効いたタレが絡み・・・・一言で言うとクソ美味い!


「美味しいっ」

「だろ?」

「肉も美味しいですがこのタレが絶品ですね。種類も豊富で飽きさせません」

「他の料理も美味いぞ。今回の食事はお前達の為に用意したものだから全て食べて構わないぞ」

「ここまでのご馳走を用意して頂けるなんてありがとうございます」


 うお~肉以外も果物の盛り合わせや、野菜を色々な模様に切ったサラダにキュウリやパプリカのオイル漬けなど沢山の料理がどれも美味しくてどんどん食べ進めちゃったけど、ここまで用意してくれたってことは面倒な依頼が待っているんだろうな~まぁ今は飯を楽しむか。

 大量に用意してくれた数々の料理は冒険者である俺達の胃袋に全て収まり、食後の紅茶を貰った後早速今日の本題へと入った。


「それじゃあ飯を食べ終わったことだし、早速本題と行こうか」

「分かりました」

「まず、ブレスト殿は今の状況をどの程度知っているかな?」

「クロガネが昨日の夜中に辺境伯様に」

「あ、その辺境伯様っての止めてくれ。堅苦しい」

「では、シュナイザー様に出会い、今の森の状況について調査の依頼を出そうとしたところまでは知っています」

「そうか、なら大体の事は知ってるな。昨日は曖昧にされちまったが、今回は正式にお前たち二人に森の調査を依頼したい」

「我々は冒険者ですので・・・・」

「勿論ギルドにはもう話し通してあるぞ」

「そうですか・・・・いくらシュナイザー様からの依頼とは言え私達も二つ返事で受けることは出来ません。詳しい内容を教えてくださいませんか?」


 俺達は冒険者だからギルドを通していない依頼をいくら領主から直接言われたかと言って受けることは出来ないのだ。これは冒険者ギルドは一部の勢力のみに加担しないという絶対的な規則だから、どうしようもない。ギルドを通しているなら、受けられるけどその詳しい内容は知らないとな。


「勿論だ。サピロ頼む」

「畏まりました。シュナイダー家の執事をしておりますサピロと申します。今回お二方に依頼をさせて貰う内容としては、現在この森で発生しているインセクト系統の大量発生に関する調査です。先日はクロガネ様が対応してくださいましたが、インセクトマンが出現する状況は明らかに異常です。あのような者が大量に出現してしまった場合この町に甚大な被害を受けるのは明らかですので、早急な調査をお願いしたいです」

「ふむ・・・・原因の予想はついているのか?」

「記録によると十数年に一度の頻度でこのような事案が発生していますが、対処に追われ詳しい調査は出来ていません。大量の死亡報告や森の動物の不審死も報告されていませんが、この時期に発生するインセクト系は総じて通常個体よりも賢さと強さが上回っており、人間を積極的に襲う習性を確認しております」

「なるほど・・・・特に多い種類は?」

「インセクトマンにスパイダー、マンティス、それにセンチピードそしてインセクトウォリアーです」

「ウォリアー?そんなのも出てくるのか?」

「はい、毎回一体だけ確認しています」


 インセクトウォリアーはインセクトマンの中に生まれる強力な上位種だ。虫の特徴が強化され、自分の身体から生み出された武器を使い三級冒険者が対処する魔物だ。そんなのが町の近くまで来るなんて・・・・


「ウォリアーは代々俺達領主が相手してるんだが、毎回大変でな」

「ウォリアーが出るのに三級と五級のパーティーに任せるのですか?」


 本来なら冒険者ギルドに依頼を出して複数のパーティーを集めなければならない事案だ。それを俺達だけって・・・・ブレストが眼光を強めると領主は笑いながら


「だってブレスト殿は強いだろ?今居る冒険者では無駄な犠牲が出るだけだ」

「・・・・そうですね。こんな危ない依頼を出すのは止めておいた方が良いと思います」

「それで受けて貰えるかな?報酬は危険な分多く出すぞ」

「原因の究明と対処も依頼に含まれますか?」

「いえ、森の調査のみです」

「・・・・クロガネどうする?」

「え、俺?」


 ブレストが受けるかどうか判断すると思ってたから吃驚したぜ。ん~今まで対処できていたならそんなに緊急性も無いよな。この広大な森を調査するのには時間が掛かるし危険も伴う。インセクトマン程度なら楽勝だけど、ウォリアーはどれくらい強いか分からないしな~・・・・でも、どうせ服が出来上がるまでこの町に居ないといけないし、何もすること無いから依頼を受けても良いんじゃない?


「良いと思うよ。インセクトマン程度なら大丈夫だしウォリアーって素材高く売れるんでしょ?」

「素材はギルドを通してうちが買い取ってやるぞ」

「インセクト系統の素材は有用ですから」

「クロガネが受ける気なら、俺も異論はない」

「有難い」

「善は急げってことで、早速俺達は調査に向かわせて頂きます」

「あぁ頼んだ。玄関まで送ろう」


 よ~し、調査の依頼は二回目だね!前回はドラゴンって言われれ行ったらリザードだったけど、今回は相手が明らかだから状況の把握と森への影響を調べれば良いんだよね?調べるのってなんかワクワクするんだよね。

読んで頂きありがとうございます!

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