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スパイダー・トラップ

 幾たびの襲撃を護衛の人達は危なげなく、切り抜けていきあっという間に日が落ち辺りは暗くなり、背の高い木々に囲まれている所為かいつもより暗く感じる。森は昼間より動物の気配が静かになり、風が葉を揺らす音が聞こえてくる。馬車の先頭には松明が付けられ、護衛の人達はランプを持って歩いているが少し開けた場所に到着すると


「今日は此処で野宿となる。焚き火を作るが近付き過ぎないように」

「おう」

「はーい」

「了解」

「周囲の警戒はしてますが、馬車からあまり離れないようにしてください」


 流石は冒険者と衛兵を目指している人なだけあって、野宿には慣れているようで次々と自分達の荷物から野宿用の食糧や水を出して護衛達の目が届くところで休み始めた。夜番は護衛がしてくれるみたいだから、俺達はゆっくり休めそうだな~


「この森は魔物の数が多いとは聞いてたが、本当に多いんだな」

「マーダーベアも居るなんて驚いたぜ」

「あんなのを毎日相手してらそりゃ強くなるだろうな」

「坊主、怖くなかったか?」

「うん、平気」

「おうおう、中々肝が据わってるな」


 そりゃ同じ冒険者だからな。


「怖くなったらいつでも俺達の所に来いよ。兄ちゃんと一緒に守ってやるからよ」

「うん、ありがとう」

「明日も朝が早いですし俺達は先に寝させてもらいますね」

「あぁ」

「ゆっくり休めよ。体力が持たないだろうからな」


 完全に俺達ウォルマに用事がある一般人だと思われてるな。そんなに冒険者っぽく見えないか?・・・・いや、確かにブレストは物腰柔らかいし体も普通の冒険者と比べればそこまで厚く大きくはない。歩き方もしっかりと見極めないと、一見弱そうに見えるしな~俺も一回それで騙された。俺達は馬車の中に戻ると


「念の為に木の上で休んでくる」

「おう、いってらっしゃい。夜は寒いからこれ持ってけ」


 ブレストは人から見えないように収納から深く暗い緑色のブランケットを取り出す俺に渡してくれた。


「ん、ありがとう。・・・・これ凄いふわふわで柔らかいな」

「フラッフィーシープの毛で作ったブランケットだ。気に入ったか?」

「うん、手触りが気持ちいい。俺も欲しいな」

「現地で買った奴だから簡単に手に入ったけど、フォレシアと真反対だからな~う~ん・・・・オーポートに行けば見つかるかもな」

「オーポート?」

「オーポートっていう港町があるんだよ。そこは商業の中心ともいえる町で、大陸の至る所から物が集まってくるんだ。そこで手に入らない物は無いと言える程にな」

「へ~そんな面白そうな所があるんだ!」

「オーポートならフォレシアを抜けた先に在るしアルカナのついでに行ってみるか」

「おう!」


 港町ってことは、話で聞いた海ってのがあるんだろ?確か見渡す程水が沢山あってその上には船が泳いでいるんだよな!しかも、水なのにしょっぱくて飲めない水だって聞いたぜ!うわ~楽しみだな~水が沢山あるってどんな場所なんだろう。海にしか居ない魔物とかも沢山居るだろうし今からワクワクして来たぜ!


「楽しみだな」

「うん!」


 俺は楽しみ過ぎて少し大きな声を出してしまった。俺は慌てて口を押え、気配を消しみんなのことが見下ろせる近くにある大きな木に登り柔らかなブランケットに身を包んだ。


 警戒は護衛の人達がやってくれるけど、念の為に自分達でも警戒しておかないとな。俺は気配を探り何か不審な動きがあればすぐ動けるようにしながら、眠りに落ちて行った。

 次の日の朝、小さな気配を感じ目を覚ますと俺の膝の上には小さなリスが乗って俺を見つめていた。そんな風に俺のことを見つめても何も出ないし、食べ物じゃ無いぞ。


「キュキュ」

「食べるものは沢山あるだろ。ほら、どっか行きな」

「・・・・」

「はぁ・・・・ほら、これやるから」


 俺はマジックバックからドングリと松ぼっくりを取り出しリスに渡すと、ドングリは頬袋に入れ松ぼっくりは手に持ってどっか行ってしまった。


気配を消してたとはいえ、あんなので生きられるのか?


 可愛いリスに癒されながら姿を消し馬車に戻ると既にブレストは起きていた。


「おはよう」

「おはよう、よく眠れたか?」

「・・・・可愛らしい起こされ方はしたな」

「??」

「朝飯食べたらすぐに出発だろ?少し用を済ませてくる」


 俺は木の上から見えた薬草や食べ物になる果物を集めマジックバックの中に入れ、馬車に戻ると丁度みんな食べ終わった頃だった。俺もあんまり美味しくない干し肉を食べ俺達はまた出発した。大きな木や茂みから現れる動物達は護衛達が真っ先に見つけてくれ対処してくれるから、俺達は寛いでいる。馬車から見える景色は狭いけど、俺が見たことがある森と全然違うから楽しい。


 あの木変な葉っぱの形してるな~お、今の水色の小鳥綺麗だな。あの小さな赤黒い木の実は毒がありそうだな。え、甘酸っぱくて美味い?あれも採っておけば良かったな。


 新しい物を楽しんではいるが警戒は緩めていない。近づいて来るものは常にとらえて・・・・!?今まで全く気配も動きも無かったの俺達が通った瞬間、魔力と動いた気配がそれにこれは!


「ブレスト!」

「!」


 俺が叫ぶと同時に意味を理解したブレスト共に、馬車を飛び出し俺は屋根に乗りブレストは御者の隣へと走って近付き武器を抜いた。


「なんだ!?」

「囲まれてる!」

「は!?そんな気配は」

「なんだなんだ」

「どうしたんだ、坊主。怖くなったのか?」

「危ないから出てこないで!」


 突然弾かれるように馬車を飛び出した俺達に、困惑しながらもぞろぞろと乗客たちが下りてきてしまった。すぐに護衛達に状況を教えたいんだけど、もう敵の罠に入ってしまってるからそんな暇は無い。少し焦っていると出てきてしまった乗客の後ろに木の上から現れる白い糸。


 危ない!


 乗客の方に駆け出し、今にも乗客の首に巻き付こうとする糸をナイフで斬り裂き、木の上に隠れている奴に向かってクロスボウを撃った。


パンッ


 破裂する音を出し腹に穴を空けながら木の上から落ちてきたのは人間の腕程はある蜘蛛だ。


「ハンギングスパイダー!」

「全員馬車の中に戻って!スパイダーに囲まれてる!」


 木の上から落ちてきたハンギングスパイダーを見て、顔を青ざめ首に手を当てる乗客達は急いで馬車の中に戻っていた。


よし、俺もブレストも人を守るよりも殲滅する方が得意だから守る人間は少ない方が良い。


 これで護衛の人達にも今の状況が伝わっただろう。護衛の人達は俺達が突然出てきたことによって驚いていたが、流石経験を積んでいるだけあってすぐに状況を理解し陣形を組み死角が無いよう背中を合わせ警戒をする。


「数はどれくらいだ」

「9体!」

「多いな」

「こんなに群れるなんて可笑しい。どこかにリーダー格が居るはずだ」

「クロガネ」

「一体だけ突出して魔力が多いし、少し離れた所で俺達を見てる。多分だけどそれがリーダー格だと思う」

「その前にこっちを何とかしないと駄目だな。もう糸で罠が仕掛けられているから下手に動けないぞ」


 俺達は出来上がっている罠に自ら跳び込んだ状態だ。木の上に潜んでいるスパイダー達はいつ俺達の首に糸を伸ばして来ても可笑しくない。隙を見せれば鉄の剣ですら斬りづらい糸が首に巻きつけられ死ぬ。仕掛けられる前に攻撃したいのに、そこら中に捉えにくい糸が張られ下手に動いたら捕まってしまう。なら!


「糸は全部風で斬り裂く!」

「その後は俺が何とかしよう。クロガネはリーダーの方へ」

「分かった」

「頼む!」

「守りは任せろ」


 俺は魔力を集中させ風の刃で糸を斬り裂こうとすると、それを察知したハンギングスパイダー二体が俺に糸を伸ばしてきたが護衛の二人が糸を剣で弾いてくれた。


よし!今だっ


 俺が発動した風魔法は暴風の刃となって周囲へと襲い掛かり、周囲に張られていた糸を斬り木々や茂みを揺らし隠れ潜んでいたスパイダー達を露わにする。


「見えた!」

「よくやった!」

「クロガネ、行け!」

「おう!」


 糸が切れた隙に俺は少し離れた場所に隠れている魔物の元へ走り出した。

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