静かな平原
空が明るくなるまで夜番をした俺は、ブレストを起こしマジックバックから出来立ての朝飯を取り出し食べ、朝の鍛錬を一通り終わらせるとブレストに浄化の魔法を掛けて貰い俺達はまた道へと戻り町へと走り出した。
「今日もクロスボウ縛り?」
「おう、次の町に着くまではクロスボウだけで戦うように」
「はーい」
昨日の戦いでアーマーブルを貫通させるにはどれだけ魔力を籠めれば良いか分かったし、どれくらいの魔力でどれくらいの威力になるのかはかなり掴んできたな。でも、相手がどれくらいの硬さなのかは全然出来て無いからもっと練習しないと。偶に毛皮を持っているのに、馬鹿みたいに固い奴とか居るんだよな~お、フォレストスネーク発見!
「よいしょっと」
「お、今のは良いな」
「スネークって見た目はヒョロヒョロしてうねうねしているから柔らかいのかと思ってたけど、結構硬かったりするよな」
「鱗もあるし、蛇は全身が筋肉で出来てるからな」
「蛇革の服とか鞄とかは王都で沢山見たけど、肉って美味いのか?」
「チキンみたいな味であっさりとして美味いぞ」
「マジか」
「今度スネークで何か作ってやるよ」
「やったぜ!」
ジャイアントスネークとかになれば、人間を軽く呑み込めるほど大きくなるし大量に肉を確保できるんじゃないか!?スネーク系統なら皮や血、毒は結構高く売れるし肉は自分達で食べれられるなんて・・・・なんて良い動物なんだ。マジックバックの容量はまだ余裕があるし、森に入れば沢山捕れるんじゃないか?二人なら森の中に入っても、危険は殆ど無いしな。
「ちなみに積極的に戦いに行くつもりは無いからな」
「え、なんで分かったんだ?」
「目がギラついてたぞ」
「マジ?」
そんな分かりやすかったのか。
「でも、冒険者なら魔物や動物は積極的に狩りに行くべきだろ?」
「実はそうでも無いんだぞ。よくある勘違いだが、冒険者はあくまで人の害になる動物や魔物を討伐し、ギルドに寄せられる依頼をこなすのが仕事だ。だから、人の害にならない時はそんなに討伐しないし、金や何か必要な物が無い限りはそんなに討伐しないんだぞ」
「え~そうなの?」
「勿論、冒険の障害になったり遭遇したやつらは倒すけどな。この世界は色々な動物や魔物が居て、そして沢山の種族が居てその微妙なバランスで成り立っているんだ。冒険者が必要のない魔物を狩りつくしてしまえば、バランスが崩れたりするから討伐する必要があるかどうかしっかり見分けるのも大事なことだ」
「分かった!」
見つけた魔物や動物は金になるから何でも倒した方が良いと思ってたけど、そうでも無いんだな。生き物のバランスってのはあんまり分からないけど、つまりは何でもかんでも狩りつくすのは駄目ってことだよな!
「あ、ちなみにゴブリンについては話は別だからな。あいつらは世界や人にとっても害獣でしかないから見つけたら即殲滅だ。あいつらは一体でも残ってれば、すぐに数を増やしやがるからな慈悲は一切掛けるなよ」
「了解!」
ゴブリン達は家畜を荒らすし、人を襲い自分達の繁殖の為に人を巣に攫ってしまう。攫われた人間は永遠にその巣でゴブリン達に使われ、逃げ出すことも出来ず唯一助かる方法は死か冒険者達に助けられるしかない。助けられたとしても、精神が崩壊してしまいまるで生きる屍のようになってしまう人が殆どだ。ゴブリンがやたらに動物を殺すせいで森は荒れるしゴブリンは絶滅させるべきなのだ。
「まぁこんなこと言ってるが、絶滅させるほど狩らなければ割と自由なんだけどな」
「じゃあ!」
「今回は町に行くのが目的だから駄目。変異体のこともあったし、平原の環境が少し変わってるかもしれないからそれを調べるためにも森には入りません」
「は~い」
多くの魔物や動物達が住んでいる森や平原に何か大きな変化が無いかを調べるのも、冒険者の大事な仕事だから仕方が無いよな。さっきのブレストの話であったように、平原に変異体が現れたからには何か平原に変化が起きてるのかもしれない。アーマーブルは普段こんな街道の近くに出現しないのに、群れが来たという事はここら辺の動物や魔物が殲滅されてる可能性もあるし、追い立てられた動物達が他の場所に逃げ込んでる可能性があるもんな。
「んじゃ先を急ぐぞ」
「おう!」
俺達は昨日と同じ速さで走りながらも、平原の様子に注意しながら進んで行く結局町に着くまで森から魔物や動物が襲い掛かってくることは多々あったけど、平原からは空を飛ぶイーグル系統しか襲ってこなかった。アーマーブルの群れの所為で、殆どの魔物が蹂躙されちゃったのかもしれないな。
「結局殆ど襲われなかったな。あんまり練習できなくて残念だぜ」
「う~ん、街道沿いだから襲撃はそこまでないはずだが明らかに少なすぎるな・・・・ギルドに報告した方が良いだろうな」
「了解!」
俺達はそこまで人一人分程度の防壁に囲まれた町に到着した俺達は冒険者カードを見せて町の中に入る。中は外から来た人々をもてなすような町では無く、ただ人々が生活するための町のようだ。多くの住宅が並び、店による活気では無く働く人々の活気で満ち溢れているって感じだ。
「王都の近くの町とは全然違うな。店があんまり無い」
「まぁ殆どの町はこんなもんだぞ。町の外から来る人間なんて冒険者か旅をしている人間ぐらいだし、そんな少ない奴らを相手して金を稼ぐより何か作ったり畑をしたり狩りをして稼いだ方がずっと安定するんだよ」
「なるほど」
王都やダンジョンが在る街であれば、物や道具、そしてダンジョンや依頼を求めて人が集まり、金も集まりけど何も有名じゃない町に冒険者が訪れるのって依頼か次の町へ行くための通り道に使うことぐらいだもんな。そんな奴らが沢山金を落としてくれるとは思えないし、そんな奴ら相手に何かするより自分で何かした方が良いもんな。
「この町にもギルドはあるだろうから、さっさと報告して次の町行くぞ」
「了解!」
俺達は人が働き作業をしているのを横目に見ながら町の中央へと進んで行き、ギルドを見つけ中に入ると中は寂しい程人が居らず前回の町とは天と地もの差があるな。
「ギルドの報告は俺がしてくるから、依頼と地図を見てきてくれるか?」
「はーい」
俺は言われた通り依頼ボードを見に行くと、どれも簡単だが人気が無さそうな依頼ばかりだな。ボアの討伐なら狩人で良いし、ティエロン草とか見つけにくいし数も無いから集めるのは大変だけど値段は安いという割に合わない。護衛の依頼も特になさそうだな。依頼は面白いのが無かったので、次に俺はギルドが保管している地図を見に行った。
今居るのがここだから。あと二つ町を過ぎないとフォレシアに辿り着かないな。まずフォレシアに行くには国の国境の近くに作られた町ウォルマに行かないといけない。この国の辺境とも言われる町らしいが、周囲を森で囲まれているから魔物の襲撃が絶えない町だとも聞いた。そんな街なら面白い物や依頼が沢山ありそうだな。次の町までこの距離だと一日も掛からなさそうだな
「クロガネ、終わったか?」
「おう、ブレストも終わったの?」
「おう、念の為に冒険者に調査を依頼させるってさ。報告も終わったし次の町行くぞ」
「はーい」
ここに長く居る理由も無いので、さっさと俺達は町を出て次の町へと急ぐことにした。次は金になる魔物が沢山出てきてくれると嬉しいな。
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