変異体
変異体それは、動物や魔物中でごく稀に生まれる通常個体より遥かに優れた特殊個体に付けられる名称だ。変異体は強大な魔力をその身に宿し、自由自在に魔法を操り、個体によっては通常ではありえない特殊能力を獲得している事もある。その強さは、普通の奴らと比べ物にならない。あんなのが居たらアーマーブルを倒すのが邪魔だし、危なすぎる!俺は体勢を立て直しクロスボウを構えるとまた
「やばっ!」
また飛んできた雷霆を避けすかさず矢を撃ちこむと、まるで鉄にでも当たったかのようにように甲高い音を鳴らして弾かれてしまった。予想してたより次の魔法の発動が早いな。あの威力をポンポン撃たれると、少し面倒だな。
「俺が相手しようか?」
「いや、俺がやる!」
「そうか、じゃあ俺は手を出さないでおくぞ」
ブレストなら魔法剣でこの群れを一掃できるのに、盾を張って防御に徹しているのはこの群れの対処を俺に任せてくれているからだ。その信頼を裏切る訳に行かないし、変異体が居たからって何だってんだ!
「周りの奴らが邪魔!!!」
変異体に集中できるよう、俺は魔力をクロスボウに籠め矢を連射するのではなく空へと放ち矢の雨を降らせる。そして、その一本一本を制御しアーマーボアの頭へと直撃させ風穴を開けた。もう一度同じことをしようとしたが、それを変異体が許す訳も無く。もう一度あの雷霆を撃つが今度は余裕をもって回避できた。
「来るって分かってるなら。避けんのは簡単なんだよ!」
あいつの攻撃には短いが必ず角に魔力が集まるという予備動作がある。それさえ気を付ければいくら速い攻撃でも避けることは簡単だ。逆に言えばそれを見逃したら、ヤバい事になるけどな。避けた時の余波だけで分かるほど高威力の雷霆、あの威力は俺じゃ防御しきれないし当たったら丸焦げ確定だな。
「数はかなり削ったな・・・・ん?なんか違う」
雷霆を避けながら着実に群れの数を減らしていき、避けるのにも慣れた頃今までとは明らかに違う魔力が変異体の角から感じ咄嗟に距離を取る。すると、今までのような一直線による雷霆では無く、俺の矢のように分裂した雷霆が放たれた。
「それ分裂するのはズルくないか!?」
絡みつくかのように俺を追いかける雷霆に、足場を作り出し空中を飛び回り逃げるが何処までも付いて来るのにまた変異体から魔力の気配が。
この雷霆をどうにかしないと!
俺はクロスボウに闇の魔力を籠め追いかけてくる雷霆と同じ数だけで矢を装填して撃ち出し、相殺すると今にも打ち出そうとしている変異体に三発風を纏わせた矢を放つ。すると、魔法を止め取り囲んでいたアーマーブルが少なくなったことで自由に動けるようになった変異体が雷を纏い瞬時に移動し避けた。
「その巨体で速く動けるのか・・・・」
雷の魔法を使っているからある程度は予測してたけど、思った以上の速さだな。体の硬さや身体能力も通常個体と格が違う。まずは、あの動きを封じないとなっ
また俺を追跡する雷霆を撃とうとしているので、俺は魔法を発動する暇を与えないように矢を撃ち込み常に移動させる。
何発か矢を当てているが傷を与えられてない所を見ると、あの皮膚を貫くにはかなり魔力を籠めないと駄目そうだな。俺の矢を警戒してくれている今は良いけど、そのうちダメージを与えられないと気付いて動きを止めそうだな。まぁそれが狙いなんだけどさ。
「ブルルウゥ」
お、こんな攻撃へでも無いって顔だな。立ち止まった変異体は角に魔力を集め始めた。俺もクロスボウに魔力を集め闇の矢を作り出していく。あの速さで当てるのも面倒だし、相手が油断してくれているうちに一撃で仕留める!変異体の天を貫く雷霆が放たれるのと同時に、俺も闇の魔力を大量に込めた矢を放つ。圧倒的に雷霆の方が早いが、俺の矢と衝突した瞬間矢は雷霆を飲み込むような大きな狼の形を変え雷霆を全て吸収し己の魔力へと変え、変異体の額を一直線に貫いた。
「ふ~クロスボウの縛りが無ければもっと簡単だったんだけどな」
あれ?相手の魔法を飲み込むことは考えたけど、狼の形なんかにして無いんだけどな・・・・変なの。息の根が止まっていることを確認した俺は残っているアーマーブルに矢の雨を降らし、群れを一掃するとブレストの元へ戻った。
「おつかれさん」
「時間掛かり過ぎた~」
「最初から必殺の一撃で済ませておけばいいのに、泳がせるからだぞ」
「だって、どれくらいの強さか確かめたかったんだもん」
大量に魔力を籠めれば簡単に貫けただろうけど、クロスボウで何処まで出来るのか知りたかったし新しい矢も試してみたかったんだよ。さっき使ったのは全てを飲み込む闇属性の性質を強くした矢だ。途中で矢の形が、魔力を食らう獣のように変わったのは予想外だったけど、あんなことも出来るのか~
「まぁ危なかった訳じゃないし別に良いが」
「逃げた人達は大丈夫?」
「おう、木の上に避難しているぜ。もう大丈夫だから降りてこ~い」
他の冒険者と話すときに俺が居たら面倒なことになるだろうから、俺は倒したアーマーブルを回収しながら聞くか
「助かりました・・・・心からお礼を申し上げます」
「はぁ・・・・死ぬかと思ったぜ」
「アーマーブルの群れが何でこんな所まで来るのよ」
「変異体が居たようだな。恐らくだが、あの変異体の所為で群れの動きが変わっていたのだろう。それにしても、あの群れを相手出来るとは・・・・凄いですな」
「どうも。どうやら怪我が無いみたいだな。アーマーブルは俺達が貰ってくが良いか?」
「あぁ勿論だ」
「流石にこの量を持って行くのは無理だもの」
「あちらに居る子にもお礼を言いたいのだが、よろしいか?」
「ん?あぁクロガネ」
ブレストに呼ばれたので一旦回収作業を止め戻ると、俺のことを見た冒険者達が驚きながらも頭を下げ
「本当に助かった」
「逃げろって言ってくれてありがとうね」
「あの数を相手するなんて凄いな」
「命の恩人よ」
「助けられて良かったぜ。見た感じだけどアーマーブルを攻撃したら群れが寄ってきたんだよな?」
「そうなのよ」
「あぁ逸れのアーマーブルが居る事は町の人から聞いていたが、まさか群れが来るとは・・・・」
そうだな~俺達もアーマーブルが逸れて一体居るのは知っていたけど。群れが襲ってくるとは思っても無かったぜ。
「恐らくだが、あの変異体はアーマーブルが攻撃されるのを感知しているんだろうな」
「それで寄って来た訳ですか・・・・はぁ」
「まぁ運が悪かったな。変異体なんて滅多にお目に掛かれないのにな」
「何はともあれ助けて下さって感謝します」
「心からお礼を言うわ」
「何かお礼をしてあげたいけど・・・・」
「冒険者は何かあった時は助け合いだろ?気にしないでくれ。それに俺達は大量のアーマーブルを手に入れたし儲けもんさ」
「そうか・・・・そう言って下さって助かる」
「流石にもう変異体と遭遇することは無いと思うが気を付けてな」
俺達はアーマーブルをすべて回収した後助けた冒険者達に別れを告げてまた次の町へと走り出した。
「変異体なんて初めて見たぜ。あんなに強いんだな~」
「今回はアーマーブルだったからまだマシさ。上位の魔物から生まれた変異体は街を滅ぼせるほどの力を持つこともあるからな」
「今回のは雷魔法を使うだけだったしな。普通はもっと厄介なんだろ?」
「変異体なら石化の瞳といった特殊なスキルや魔法を持っているのが普通だから、今回は運が良かったな。それにしても、変異体と出くわすとわな~アルカナで装飾品は揃えようかと思ったが、早めに揃えた方が良さそうだな」
「ん?何か買うつもりなのか?」
「クロガネの装飾品をな」
「え」
「石化や魅了、麻痺や毒とかを使う魔物や動物が多く居るからな。その対策の装飾品は揃えておいた方が良いだろ。道中良いのが有ったら買うぞ」
「絶対必要なのか?」
「特殊な魔物や動物は沢山居るから必須だな」
「は~い」
装飾品は好きだけどお金がなぁ~依頼をこなしたりギルドの依頼をこなして金は沢山あるんだけど、使うのが勿体ないって気持ちが邪魔をする。何かしらの耐性を付与された装飾品ってバカ高いんだよな~いや、ブレストが言うなら必要な物なんだろうけど!
「王都で繋ぎの装飾品を買おうと思ってたんだが、良いのが無くて後回しにしたのは失敗だったか」
難しそうに顔を顰めながら走るブレスト。そういうブレストは装飾品をそんなに付けて無いよな。
「ブレストは装飾品あんまり付けて無いよな。それで大丈夫なのか?」
「魔力を大量に持っているからある程度の魔法は殆ど効かないんだが、俺も必須な物は付けてるぞ。例えば右耳についてるピアスは魂の保護と精神魔法に対する耐性だし左のは高位の毒耐性だぜ。数が普通の冒険者より少ないのは俺は武器に付与が出来るから場面にあった耐性を付けれるからだな」
「・・・・狡くないかそれ?」
ブレストの魔法剣には色々な付与が出来る事は知ってたけど、耐性も付けられるのかよ・・・・なんか聞くたびに理不尽な魔法だって思うぜ。
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