町から町へ
夕刻に着いた馬車は何度か魔物や動物の襲撃を受けたが、護衛が上手く捌き乗客は少し動揺しているが誰一人怪我する事無くこの馬車の最終地点である町に到着した。王都の近くにあるから栄えてるのかと思ったけどそうでも無いんだな~
「お兄ちゃん、おにんぎょうありがとね~」
「おう、じゃあな~」
「最近物騒ですから道中お気をつけて下さいね」
「えぇご心配ありがとうございます」
頑丈な石の人形をが結構気に入ったらしく、あの後も目を輝かせながら遊んでくれたロマ達家族に別れを告げ俺達は次の馬車に乗るために、探してみる。馬車の案内をしている係が居たので聞いてみると返ってきた返事は
「暫くの間馬車が出せない?」
「あぁ、魔物に馬車を壊されちまってな。護衛の奴らも怪我しちまったし暫くは無理だな」
「はぁ・・・・そうか」
「まぁ何時になるか分からないが待つんだな」
他の町に行く馬車は無事で動いているが、フォレシアに向かうために通る町に行く馬車だけが動いていないらしい。馬車が壊れちまったものは仕方が無いけどよ~どうすっかな。この町で時間を潰すしかないかな?
「どうするブレスト」
「ん~いつ馬車が治るか分からないし、護衛が怪我してるんじゃ時間掛かりそうだな」
光魔法で治療できる奴がこの町に居るとは思えないし、ポーションとかを使えば比較的早く治るけど、あれって結構な値段するしな。馬車は部品を取り換えたり丸々新しい物に変えてすぐに修理することは出来るけど、人間はそう簡単には行かない。少しの切り傷でさえ、致命傷に繋がるし怪我した後の高熱を乗り越えなきゃ死ぬことだってある。そうなると、乗合馬車が復活するには時間が掛かるだろうな。
「まぁこの町を楽しむのも醍醐味だろ。一応ギルドもあるみたいだし護衛依頼が有ったらそれをやる感じで」
「はーい」
俺達は馬車が集まる広場から離れ俺達は町を見て周る事になったが、そこまで活気のある町じゃなさそうだ。小さな家が並び、商売をしている家は宿や食事屋だらけで野菜とかしか売ったりしてなさそう。
「王都の近くなのにそこまで活気が無いんだな」
「王都の近くだからこそだろうな」
「ん?あ~王都に人が流れちまうのか」
「そういうこと。こういう言い方は良くないが、若い奴にとってこの町で生活するよりは王都で一発当てて金持ちになりたい奴とか華やかな王都で仕事したい奴が多いんだよ」
王都の方が働く場所も金もあるからな~稼げるならそっちに行くのが当然だよな。
「まぁ王都もそんな甘い場所じゃ無いけどな。裏路地には沢山の奴らがうろついてただろ?あの殆どが地方から来た奴なんだ」
「馬車で一日なんだから無理なら帰ればいいのに」
「大見得切って家を出たから戻りづらいってのもあるんだろうが、まだ一発当てるのを諦めきれないんだよ。まだ若いんだから、やり直せるし一歩戻るのも大事なんだがな~これも若さゆえにか」
「若いって・・・・ブレストってたまにジジイみたいなこと言うよな」
ブレストってまだ16か17ぐらいだろ?あいつらと殆ど変わらないだろ。
「なんだと~俺はまだピチピチだぞ!」
「ブレストくらいなら奥さんが居ても可笑しくないだろ?そういった人とか居ないのか?」
「なんだそのいい年した子供を持つ母親とか親戚の奴らが言うようなセリフは・・・・俺は旅をするのが楽しいからそういうのはいいんだよ」
「そうなのか~」
ブレストは見た目は格好良い好青年だし頭も良いし、三級冒険者ってことで収入は十分だからモテると思うんだけどな~まぁもしそういう奴が出来ても俺は別に気にしないぜ。
「ほらほら、変な話してないでギルドに着いたぞ」
「・・・・なんか普通だな。五月蠅いだけで」
そりゃダンジョンが在る街や王都みたいに大きなギルドがあるとは思ってなかったが、外観はほぼ酒場みたいに見えるぞ。ここからでも聞こえるバカ騒ぎしてるしギルドのマークが無きゃ普通に酒場と勘違いするだろうな。
「まぁこういう町のギルドなんてそんなもんだ」
俺達は中に入るとすぐにギルドの受付と素材の買取をしている場所が見え右手には依頼を張ってあるボードが見えた。そして、思った通りガラの悪そうな冒険者共が酒を持ってバカ騒ぎしてるな。
「はぁ・・・・うるさ」
「ん~目的の町までの護衛依頼は無さそうだな。一応受付嬢にも聞いてみるか。少し待っててくれ」
そう言って俺を残してブレストは受付嬢の所に行ってしまった。暇だしなんか面白そうなものねーかな。どいつもこいつ同じような奴ばっかなだな~女の話するなら体を綺麗にしないと無理だろ。町の女達って結構そういう所に厳しいんだぞ。あ、なんか目が合った。うわ、なんか下卑たにやけ顔浮かべながら仲間と話してるな~あぁこっち来るしこの後の展開が読めるんだが・・・・めんどくさ
「おう、きったねぇガキが何でこんな所に居るんだ?」
「ここはお前みたいなガキが来る場所じゃねーんだよ。帰って母ちゃんに甘えてな」
「ぎゃはは」
「中々良いローブ着てるじゃねーか。金持ってるなら俺達に分けてくれよ」
「だな。お前なんかが金持ってても仕方が無いだろ?俺達が有効利用してやるよ」
「そこらに居るチンピラより酷いな。くっせぇお前らにやる金はねーよ」
「はぁ?」
「穢れた色のガキが調子に乗るんじゃねーぞ」
「冒険者様を怒らせたらどうなるか見せてやるよ」
うわ~武器を抜きやがったこいつら煽りに弱すぎだろ。周りで見てる奴らはニヤニヤと楽しんでやがるし、こいつら揃いに揃ってクソだな。ただ力任せに振った姿勢も足捌きもなってない剣なんかに当たる訳ないだろ。
「クソ」
「ちょこまかしやがって」
「大人しくしやがれ」
馬鹿の一つ覚えみたいに振る剣を軽く避け続けながら、俺は歩き受付嬢の所まで行くと呆れ顔のブレストが見てくる。
いや、これ俺は悪くないからな。
「これ俺が伸しても罰則にならないですよね?」
「えぇ、相手側が先に武器を抜いていますので殺しても責任は問われません。もしギルドの物が破損した場合全て相手側に請求されます」
「殺すなよ~」
「は~い」
「ごちゃごちゃうるせぇな!!!」
ギルドの確認も取れたことだし、襲い掛かる四つの剣や拳、斧を避け四人それぞれに一発づつ腹に身体強化を乗せた一発を叩きこみ壁まで吹き飛ばす。小さい俺でも身体強化を使えば、大の大人を吹き飛ばすくらい簡単な事だ。
「あ~うるさかった。それで、護衛依頼は有ったのか?」
「無いらしい。これは依頼無しで歩いた方が良さそうだな」
「お、初めての依頼も何も関係無い冒険!楽しみだな~」
「先程の争いに関してはこちらで処理しておきます」
「お願いします」
「お疲れ様です。んじゃ、宿を探すか」
受付嬢さんが伸びた奴らを処理してくれるらしいし、もしまた暴れたとしても受付嬢さんの方が何倍も強いから大丈夫だろ。俺達はさっきまでの喧騒までと打って変わって静まり返るギルドを後にした。
「王都の冒険者とは大違いだな」
「まぁ此処に居る大体の奴らは、王都で冒険者としてやっていけなかった奴らの集まりだからな。そりゃ質は落ちるさ」
「なんでこんなに集まってるんだ?」
「王都に人を取られて、働き手や若手が少ないから力仕事や魔物に関する依頼は冒険者を頼るしか無いのさ」
「あ~それでいっぱい集まってる訳か」
王都の近くなのに、少し離れるだけでこんなに違うもんなんだな~まぁこういった違いが面白かったりするんだけどな。俺達は運良く空いていた宿屋に泊まり一夜を過ごすのだった。
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