閑話:永く生きる者達
俺はボンゴ。ただのドワーフだ。元々俺はこの国から遠く離れた場所に在るアンドムっつうところで生まれ育って、ドワーフらしく鍛冶屋をやってたんだ。だけど、ある日冒険者が持ってきた氷の魔剣に魅入られちまって俺も作ってみてぇと思っちまった。それから、俺はドワーフ特有の力強さと土魔法を活かし八十年ほど冒険者として活動して、鍛冶の鉱石が沢山手に入るこの地に店を構えて七十年だ。未だに俺が望むような魔剣は作れてなくて少し頭を悩ませていると、ある日太陽の光に似た髪の奴が俺の店を訪ねてきやがった。
「ん~この剣で良いかな」
「おい、武器をそんな風に選ぶんじゃねーよ。お前も冒険者だろ?」
元冒険者だったからかドワーフだからかは分からねーが、俺は武器を適当に選ぶやつは見過ごせねぇ。武器っつうのは冒険者の命みたいなもんだ。自分が窮地に陥った時は、活路を切り開く矛となり襲われた時には命を守る盾にもなる。そんな大事な武器を適当に選ぶなんて、冒険者としてどうなんだ?わしの目でも分かるがお前さん中々の実力の持ち主だろ?
「冒険者ですけど・・・・」
「ならもっと慎重に選びやがれ。武器の大事さを分かってねーのか?」
「いや~すみません。ちょっとブラフというか体裁を保つためにもつ剣を探してて・・・・」
「はぁ?どういうことだ?」
ブラフだと?騙すために持つ武器だってのか?
詳しく聞いてみるとこいつはブレストと言い、普段は魔法で作り出した剣を使って戦うんだそうだ。だから、普通の剣を自分より格下の相手にしか使わないんだと。本当なら剣を持つ必要すらないが、冒険者として活動するうえで武器を持ってないのは印象が良くないそうだ。
まぁそりゃそうだろうな。どんなに強くとも冒険者で武器を持ってねー奴のぱっと見の印象は悪い。魔法が使えるとはいえ、見てすぐに分かる武器ってのは信用するうえで大事なもんだ。
「体裁用の剣を持ってたんだけど、ここに来る道中で折れちまって新しい剣を探してたんだ」
「なるほどな・・・・珍しい戦い方をする奴もいるもんだな」
少しの間冒険者として活動したがそんな戦い方をする奴なんて聞いたこと無いぞ。ふむ・・・・興味深いな。
「武器はなんでも使えるので、この剣でいっかな~って。勿論剣の切れ味や品質をしっかり理解して買おうと思ったんですからね!全てとても良い剣だってことは分かってますからね!」
「ふん・・・・見掛けようの武器だとしても使ったりするんだろ?」
「まぁ一応」
「なら、ある程度の物が良いだろ。少し待ってな」
俺は奥の倉庫から最近俺が作った武骨で拘った装飾をして無いが、切れ味と頑丈さを重視した付与を掛けた鉄とミスリルを少し混ぜた剣を持って戻った。
「これはどうだ?」
「・・・・軽くて振りやすいですし切れ味は文句無しですね」
「ミスリルを混ぜてるから魔力の通りも良いし頑丈だぞ」
「素晴らしい剣だと思いますけど・・・・俺が持つには少し過剰じゃないですか?」
「これぐらい持っておかなきゃ、逆に怪しまれるぞ。明らかに強い雰囲気を持ってるのにそこそこの剣を持ってたんじゃ何かタネがありますよって言ってるようなもんさ」
気になるような武器を持ってない奴ほど警戒しろって冒険者の中じゃよく言われることだぜ
「そういうものですか・・・・じゃあこれにします。いくらですか?」
「金は要らねーその代わりにお前さんの魔法剣を見せてくれ」
「え?は?俺の魔法剣はこう言ったらあれですけど作ることは出来ませんよ?」
「俺は魔剣が大好きなのさ。作れないって分かっていても、見てみたい」
「まぁ良いですけど・・・・」
変な顔をしたブレストを連れ俺が普段武器の試し切りに使っている広間に案内し、早速魔法剣を見せて貰ったが・・・・なんだこの魔法剣は?俺が見てきたどの魔剣とも違い異質だ。全て魔力で構成されているのに、魔力の圧を感じず気配もない。魔力が固まっているだけなのに、切れ味と頑丈さは俺のより優れている。しかも自由に魔法を付与出来るだと?んな魔法聞いたことねーぞ。
だが、こういう魔法剣もあるんだってことを知れて良かったぜ。魔法によって構築か・・・・普通は無理だが術式を組んで・・・・何?他の形にも変えられるだって?見せてくれ!!
ブレストは旅を続ける冒険者だから、王都を去って行ったがすぐに戻って来たと思ったら新しい仲間が出来ただと?黒い髪に黒い瞳、黒に近い色を持った奴は居るがここまで純粋な黒は初めて見たぜ。なに、こいつに合ったナイフを探してるだと?坊主のサイズとなると・・・・あれが有ったな。
へ~中々様になってるじゃないか。ナイフの扱いも上手いがあの顔はしっくり来てないって顔だな。
武器ってのは不思議なもんで全く同じ技量を持ち全く同じ材料を使った剣を使った二人が居たとしても、武器と不思議な相性ってのがあるんだ。その相性が良い奴が圧倒的に強くなる。これはもう武器との絆や運命と言えるかもしれないな。でも、他に坊主に合いそうなナイフは・・・・いや、あれが有ったな。もしかしたらもしかするかもな。
ふっやっぱりな。使いこなせると思ったぜ。
そのナイフはあの変わり者エルフに頼んで取り寄せて貰った特別な素材が使われてるんだ。闇夜の涙で魔法剣を作れる奴なんてわしくらいだぞ!まぁ、鍛えてる間毎日体調を崩し夜は魘されるはで大変だったんだがな・・・・闇属性を多く持った魔法師でもそのナイフに触った瞬間体調を崩しちまうのに、何の影響も無いどころかナイフから上昇効果を得られるなんて相当闇属性に愛されてんなこの坊主。長く生きてるがこんなに面白い二人は始めてだぜ。
街を去ることは予想してたが、人間の一生は短い。俺は後百年ぐらいは此処に居るつもりだ。どんなにお前らがジジイになっても待っててやるからまた面白い物を見せに来てくれよ。
里を出たのはもう二百年以上前だったかな。私はエルフの中でも特に変わっていて、素材や魔道具に執着を持っているんだ。殆どのエルフは永い時を生きるから、物や人に対する執着が薄いが、そんなの私は勿体ないと思うんだよね。永い時を生きるからこそ、人間では見られない程多くの素材や神秘に出会えるんだよ!それを、何もせず森で過ごすなんて何と勿体ない。
森に居るが飽き飽きとしてしまった私は、里を飛び出し弓と魔法を使い冒険者として活躍してから、錬金の魔女様が住みついた近くの王都に私の好きな物を集める店を構えてみたら思ったより繁盛してしまい、今ではこれで十分食べていける。ここは流通も悪くないし出歩かなくても物が集まるって良い事だね。
見た目の美しさと扱いの難しさにひかれて開花水晶も一応店に展示してあるが、だれがこんな使いづらい物を買うんだろうね。とか思ってたら、小さな黒い子供が買って行っちゃったよ・・・・仕舞ったところを見るにマジックバック持ちらしいが、子供にあれを売って大丈夫だっかな・・・・まぁ責任は私に無いし別にいいや。
「おや、ブレスト君じゃないか。それに君は一昨日来たお客さんだね」
少し前までのお得意さんだったブレストと一緒に来たのはあの開花水晶を買った子供だった。表情を見るからに開花水晶を買ったこと黙っているみたいだね・・・・あの素材を見る表情はキラキラと輝いていたし、彼もきっと私と同じように素材の美しさに惹かれてしまったんだろうね。私も良くショックストーンを持ち帰って里のみんなに怒られていたよ。ブレスト共に居るという事は危ない事に使う事も無いだろうし、ここは内緒にしておいてあげるよ。
少し日にちが経った後私の店を訪ねてきたクロガネ君は少し長かった髪が綺麗さっぱりに整えられていた。なんと、珍しい髪だから伸ばしているのかと思っていたが違ったんだね!?一体何処で髪を切ったんだい?それとも誰かに売ったのかい?もしそうなら、余っている分私が買い取るよ?
「あ~魔女さんに髪をあげちゃったので無いんですよ」
「何!?魔女様にか・・・・ぐぬぬ、それではそちらに買取に行くことも出来ないじゃないか」
こんな純粋な黒なんて見たことも無いし、闇属性が宿っているというだけで希少な素材だというのに収集できないとは・・・・一部の連中は黒を忌避しているが、闇属性というのは便利で有能なんだぞ。それに黒というのはのまるで夜のようで綺麗じゃないか。
町を離れるみたいだが、人間なら数年や数十年したら髪も十分伸びるだろう。その時は私が買うから、絶対にまた王都に来てくれよ。待っているからな!
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