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次の国へ

 挨拶周りを終えた俺達は最後になるババルさんの朝飯を食べていた。今日で最後だと言っておいたからか、いつも以上に豪華なメニューになっていて肉たっぷりのブラウンシチューに焼き立てほかほかの柔らかいパン。そして、新鮮な野菜とピリッとしたら辛さが病みつきになる種類豊富な野菜を刻んだらサラダ。どれも美味しくて、この宿を離れるのが名残惜しいぜ・・・・


「お前達今日王都を発つんだろ?」

「あぁ、お世話になった」

「飯、美味しかったです!」

「そりゃ良かった。確かフォレシアに行くんだよな?」

「そのつもりだな」

「乗合の馬車を使っても町を幾つか通らないと着かないだろ。冒険者ってのは、そんな遠い所までよく行くもんだな」

「見たことが無い場所に行けて楽しいですよ」

「危険と釣り合わないしそんな金もねーよ・・・・だけど、知らない食材は少し興味あるな」


 町から町へ移動するのだって、馬車で数日かかるのがザラだ。しかも、その数日間には魔物や動物、盗賊にも襲われる可能性があるから移動は命がけなのだ。もし戦う力を持たない人が街から町へと移動するには、安全に移動するためには冒険者を雇うしかない。だけど、それでも危険なのは変わりないし冒険者を雇う金だって馬鹿にならないからな~だから、こんな気軽に町から町へと移動できるのは冒険者かよっぽどの強者、もしくは行商人ぐらいだろうな。


「まぁ危ないから行ってみたらどうかとは言えないけどな」

「王都周りも盗賊が次々湧くから外出るのもおっかないし、外国なんて以ての外だな」

「ある程度戦えないと、旅になんか出られないからな~ある程度戦える冒険者でも不注意や予期できない事で簡単に死んじまうし」

「乗合馬車なら護衛が居るだろうが、お前達も気を付けろよ」

「はい、いざとなったら自分の身は自分で守りますから」

「うん!襲ってきた奴は全員殺す!」

「・・・・どういう教育してんだお前は」

「・・・・色々あるんすよ」


 俺だって戦えるから大丈夫だと宣言したつもりだったんだけど、何で二人共微妙な顔してるんだ?変な二人は放っておいて、最後になるババルの飯を腹一杯食べなきゃな!


「それじゃあ、また機会が有ったら世話になるぜ」

「ありがとうございました!」

「おう、また来いよ」


 食べ終えた俺達は忘れ物が無いか最終確認をして、宿を出た俺達は乗合馬車が集まっている広場へとやって来た。ボロボロな馬車から、豪華な馬車まで様々な馬車が詰まっているが、今回俺達が乗る馬車は住民達が移動する時に使うよくある普通の馬車だ。


「馬車って色々あるんだな。あんな高そうなの誰が乗るんだ?」

「ある程度金を持ってる商人とかが使うって聞くぜ」

「貴族は乗らないのか?」

「貴族は自分で馬車を持っているから、こういう運び屋は使わないのさ」

「へ~金持ってるな~」


 馬車によって値段や護衛の質がはっきりと分かれていて、より安全な旅をしたいなら高い金を払う必要がある。今止まってるあの鉄とガラスそして木で作られた丈夫そうな馬車は見るからに高そうだ。護衛達も鎧を付けて鍛えてるのが分かるし、安全さで言えば一番なんだろうな。


 俺達が乗る馬車を見てみると、思っていたより乗客は多く俺達を含めれば八人も居る。そして、驚いたのは働きに来た男や働きに出る男だらけだと思ったが、そんな事は無く。親子も普通に乗っていたのだ。子供は俺より少し年下ぐらいの子で、そんな年で街を行き来するなんて凄いな~俺達は時間になったので動きやすいよう最後に乗り込みフォレシアに行くための中継地点の町へ出発だ!


「馬車の中に座るってこんな感じなのか」

「ずっとこんな感じが続くが、もし尻が痛いなら俺の膝に乗るか?」

「そんな子供じゃない」


 笑顔で手を差し出してきたのでそれをはたき落としてやる。前は屋根に乗っていたから、そこまで揺れとかは感じなかったけど馬車の中に座るとこんなガタガタ揺れるんだな。ずっと乗ってたら尻が痛くなりそうだけど、これも初めての体験だし楽しもっと。


「あら、君は馬車に乗るのが初めてなの?」

「え、まぁこうやって乗るのは初めてかな」


 しっかりと乗るのは初めてだから間違って無いよな。俺に話し掛けてきたのは親子連れの茶髪の女性だ。子供は少し暗い茶色の色をして父親は緑色の髪をしている何処にでも居そうな親子連れだ。だけど、俺に話し掛けてくるなんて珍しいな。

 店で商品を選んでる時や冒険ギルドで依頼を選んでいる時など人と関わる事はまあまああるけど、俺に話し掛けてくる人は殆ど居ない。みんなこの髪の色を見て避けるのに・・・・


「そうなのね。見た所お兄さんとお出掛けかしら?」

「え?ん~」

「そうなんです」

「やっぱり!私達は王都で商売をした帰りなの」

「そうなんですか、何を売っているんですか?」

「私達が作った野菜よ。育ちと味が良いって贔屓にしてくれているお店があるの」


 なんか話し始めちゃったけど、お兄さんとお出掛けって・・・・始めて言われたぞ。確かにブレストは俺より年上だけど顔が違い過ぎるだろ。それに笑顔で答えるブレストもどうかと思うけどな。よくよく考えてみると、俺達の今の格好はそれぞれ防具を着ているが、茶色のローブで隠しているから冒険者には見えないか。


「それは良いですね。お子さんもお家のお手伝いですか?」

「私たち二人共家を空けてしまうから、一人残しておくのは心配で一緒に連れきているんです。そうだ、自己紹介が遅れましたね。私はキャツそれと夫のノームそれに息子のロマです」

「どうも」

「俺はブレストでこっちが」

「クロガネです。よろしく」


 夫のノームさんは少し無愛想だけど、俺を見る目に嫌な感じはしないし俺達と話すことが不快な訳では無さそう。ロマは暇なのか少しいじけた顔をしている。これくらいのガキには長い時間大人しくしておくのは辛いよな。


「お二人は何処まで行かれるつもりなんですか?」

「フォレシアまで行くつもりです」

「まぁそんな遠くに?ご兄弟二人で大変じゃない?」

「旅には慣れているんで大丈夫ですよ」


 その後もブレストとキャツの話は続いてるが、ロマは母親を取られて不機嫌そうだ。ノームさんは機嫌を取ろうと抱き上げたりして気を引こうとしてるが、あれは無理そうだな・・・・う~ん、そうだ。


「ロマ、少し見てみろ」

「・・・・なに?」


 長い間乗るんだからここで機嫌を損ねて泣かれても大変だし、俺はマルロに話し掛け偽の鞄から拳より少し大きな石を取り出してロマに見せる。不機嫌そうだが俺のことを見てくれたので、そのまま石に魔法を掛ける。雷が起きると同時に石はどんどん崩れていき、跡形もなくなった後崩れた石が巻き戻るかのように、磨き上げたようにツルツルな石の人形が俺の手に作られた。毎日練習を続けてフォルネーラさんに教えて貰ったりした結果石を崩し新たな形にするまでは出来るようになったのだ。


 まぁまだ簡単な形にしか出来ないんだけどな。今作り出したのも手足と体はあるけど細かな装飾は無いし、細長い球体が繋がったような形の人形だ。ブレストが教えてくれたから関節を動かせるようにはしてあるけど、そこまで面白みの無い人形だ。でも、石が突然人形に変わったってインパクトはあるだろ。


「おぉぉぉすげぇ!人形になった~!」

「ほら、これやるよ」

「ほんとに!?ありがとう!」

「まぁまぁ魔法が使えるなんて凄いわね!」

「おぉ、石が人形に変わりやがった」

「こんな坊主が魔法を使うなんてな」


 うわ、ロマの機嫌を取ろうと思ったら乗客全員が俺に注目しちまった。普段何気なく使ってるから、忘れがちだけど魔法を使える人間って少ないんだったな・・・・これは少しやらかしたな。


「魔法を使えるな二人の旅でも大丈夫でしょうね」

「えぇ、凄く頼りになる弟です」

「ねぇねぇワンさんとかも作れる!?」

「悪いな、とっておきだから一日に一個しか作れないんだ」

「え~残念」

「あら、そんな物を頂いても良いのかしら?」

「魔法で作ったと言っても元は石だから貴重で特別な物じゃ無いので、どうぞ」

「ありがとうございます」


 本当は石があれば幾つでも作れるけど、こういうのはもう一回を受け入れると、次々にお願いされるからこう言っておけば納得してくれる。それに、ロマだけじゃなくて他の乗客に強請られても面倒だからな。


 俺は視線から逃げるように、外を眺め遠ざかっていく王都に少し寂しさと次の見知らぬ場所への期待で胸を膨らませた。

読んで頂きありがとうございます!

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