そろそろ次の町に行くか
毎日錬金魔法を練習しながら依頼をこなし、王都で行っていない場所は段々と無くなってきた。王都付近にある森や山には依頼で行って知らない素材にも沢山であえて王都の生活にも慣れてきた頃にブレストは突然
「王都にも慣れてきたな~そろそろ次の街に行くか」
「いきなりだな。ブレストって何時もはどれくらいで次の街に行くんだ?」
「ん~一ヶ月から長くて三ヶ月だな。ダンジョンが在る街だと攻略に時間が掛かったりするし、商業のが豊かな街だと店を見て周るのだけで時間が掛かるからな」
「そうなのか~」
てことは、俺を訓練している長い間プリトの街に居続けたのは珍しいのか。そろそろ王都に着いてから早くも一ヶ月半ぐらい経つもんな~王都の殆どの場所に行ったし、見たことも無い食べ物も食べたし確かにブレストの言う通りそろそろ次の街に行っても良いかもな。
「俺も王都は十分満喫したし、次の街に行くのは賛成だぜ!」
「そうか、なら次は何処に行くかな~違う国に行くのもありだな」
「外国!俺初めてだ!」
俺達が今居る王都はジュエラ王国という名前の国の王都だ。今まで知らなかったけど、実は俺が生まれて育ったこの国は他の国と比べると小国なんだって。だけど、ダンジョンと豊かな鉱物資源で小国でもそこそこ金は持っている国らしい。小さな国なのにそんな資源を持っていたら他の国に狙われないのかなと質問したらブレストは笑いながら答えてくれた。
実は昔は狙ってくる国が多くあったけど、錬金の魔女フォルネーラさんがこの国に住んでからはぱったりと狙う国が無くなったんだって。どんな大国や小国でも魔女が居る場所に手を出すことはしないみたい。だから、この国は長年平和でいられるんだそうだ。
「そんなに楽しそうにするなら、国を越えてみるか。ここから近い国だと・・・・フォレシアかコロッセアのどっちかだな。クロガネは行きたい国とかあるか?」
「アルカナって遠い?」
「アルカナか~ここからだと幾つか国を跨がないと無理だな。アルカナに行くならフォレシアを通っていくのが一番早いかな」
「ならフォレシアで!ブレストは行ったことあるの?」
「いや、フォレシアは一回も行ったことが無いな。俺も楽しみだぜ」
「俺も!今回も護衛依頼を受けていくの?」
「ん~どうしようか。歩きだとかなり時間が掛かるし馬を借りるのもな~少し金は掛かるけど乗合の馬車も出てるし今回はそれにするか」
長い距離を進むなら馬車か馬に乗るのが一番だ。依頼を受けないで移動するならこのどちらかの移動手段が良いんだが馬車はマジックバックや収納があるからと言って持ち歩くのは流石に無理だし、馬は街に居る間面倒見てあげないといけないから少し難しいんだよな。徒歩で移動するって手段もあるけど、今回は乗合の馬車で移動するみたいだ。目的地と手段も決まったことだし、出発の準備を整えないとな。
「了解!それでいつ出発するんだ?」
「ん~乗合の馬車の予定を見てみないと分からないが大体三日後ぐらいだな」
「じゃあ、それまでに沢山美味しい物を買い貯めておかないとな!それに、世話になった人達にも挨拶しなきゃな」
「だな」
折角マジックバックがあるんだから、王都で気に入った菓子や飯を沢山入れて旅の間や他の街に着いた後でも食べれるようにしておこっと。あ、確か水の在庫が少なくなってきてたから水も補充しておかないとな。他に必要な物はなにかあるかな?
「イリス達も帰って来てるし挨拶しておくか」
「街を離れると聞いたら、また模擬戦を申し込んでくるかもな」
「その時は逃げるさ」
あの模擬戦の後から何度か悠久の誓いの人に会ったりしたけど、美味しい依頼や良い狩場など色々な事を教えて貰ったので街を去るとなればしっかりと挨拶しないとな。イリスさんはギルド長から説教されたのに懲りる事無く会うたびに模擬戦をしないかと誘ってくるけど、すべて断っている。確かに良い経験にはなるけど、会うたびにやってたら注目を浴びるし手の内を晒すだけだろ!
「あはは、逃がしてくれるかな~」
イリスさんはあの後からブレストにかなり目を付けてる感じなんだよな~
「まぁそれは何とかなるさ。クロガネは個人的に挨拶したい人とか居ないのか?」
「う~ん、殆どブレストと関りのある人しか居ないからな~」
「じゃあ、明日一緒に挨拶周りするか」
「おう!」
いきなりだが、街を離れる事を決めた俺達は旅の準備として、市場や大通りにある屋台やお店に行き必要な物資や気に入った物を補充していく。そして、乗合馬車の予定を確認し終えると今日はもう日が暮れてきているので、挨拶は明日だな。ババルさんが作ってくれた野菜と肉がたっぷり入ったサンドイッチを食べて俺達は眠る。そして次の日の朝、俺達は早速別れの挨拶へと向かった。
まず最初に訪れたのは、冒険者ギルドだ。この時間ならイリスさんと会う事が多いからいるんじゃないかな~と思って覗いてみると、丁度依頼を見て話しているところだった。話し掛けようとすると、先にイリスさん達が気付いたようだ。
「おはよう、君達も依頼を受けに来たのかい?」
「いや、今日はイリス達に用が有ってな」
「なんだと?それはつまり私と模擬戦をやってくれると言う事だね!」
「違う」
「え~なら私達に何の用だい?依頼なら少し待ってもらわないと無理なんだが・・・・」
「実は俺達王都を出ることにしたから、その挨拶にな」
「えっ行ってしまうのかい!?私はてっきりまた王都に戻って来たから活動拠点をここに置くのかと思っていたのだけど・・・・」
「そりゃブレスト君は移動を続ける冒険者だからずっと居る訳無いだろう」
「次は何処に行くつもりなんだ?」
「最終的にはアルカナに行くつもりだから、フォレシアを通っていくつもりだ」
「アルカナね~懐かしいわね~」
「サリームさんは行ったことあるんですか?」
アルカナは噂だと魔法大国で色々な魔道具を開発しているらしいけど、悠久の誓いも依頼とかで行ったことがあるのかな?
「私はクエリック学院の卒業生なのよ」
「クエリックって歴史に残る魔法師を何人も輩出している超名門じゃないか。凄いですね」
「いえいえ、私はあの学院の中では本当に下の下でしたのであまり誇れないんですよね・・・・あはは」
「いやいや卒業しただけ凄いですよ」
「私達の中だとアルカナに行ったことがあるのはサリームだけだからね。私達も機会が有ったら行ってみたいと思っていたんだよ」
「まぁそんな機会中々無いけどな」
あ、そっか。悠久の誓いはこの国に所属しているから外国にそう簡単に行くことは出来ないのか。
「模擬戦が出来なくなってしまうのは悲しいが、君達の旅路の成功を祈ってるよ」
「ありがとう、町を出るのは明後日だから何かあったら言ってくれ」
「あぁ、それまでは厄介な依頼が来たら頼らせてもらうよ」
悠久の誓いと我を告げた俺達は次は街の中に居る人達に挨拶しに行くことにした。いつも通り職人達の金槌の音や客を呼び込む活気のある声に包まれた、職人通りにあるボンゴの店に到着し中に入るといつもは裏に居るボンゴがカウンターで帳簿を見ていた。
「よう、こんな時間に来るなんて珍しいな。何か必要な物でもあるのか?」
「いや、今日は街を出るつもりだから挨拶に来たのさ」
「なんだ、もう行っちまうのか」
「もう王都は十分見たからな」
「ソロじゃなくなったから、放浪は止めるのかと思ったがそうじゃないんだな」
「俺はブレストの旅に付いていきたくてパーティーを組んだからな!」
「なるほどな。旅をするのが良いが武器の手入れを忘れるなよ」
「おう!ボンゴさん色々教えてくれてありがとう!」
「ボンゴも元気でな」
「達者でな。どうせ俺は此処に居るだろうから生きている間にもう一度顔を見せろよ」
「そうだな」
ボンゴの店には度々訪れ、武器の手入れの仕方や解体用のナイフなど色々な事を教えて貰ったので一番お世話になったと言っても良い。ボンゴの寿命はとても長いけど俺達の寿命は短い。動けなくなる前にもう一回顔を見せに来ないとな。
次の人は、依頼をこなすために必要な道具や戦闘に使えそうな道具を補充するためにお世話になったナタリーの道具屋だ。
「いらっしゃい、何か入用かな?」
「残念だが、今日は街を発つ挨拶に来たんだ」
「そうなのかい。君達の質の良い素材を提供してくれるから残念だね」
「ナタリーの売り物は全部質が良くて、俺達も名残惜しいがこれが俺達だからな」
「私は王都にずっと居るだろうから、死ぬ前までにまた来な」
「そうだな。動けなくなる前にまた顔を出すよ」
ナタリーもボンゴと同じように寿命の長い種族だ。俺達がジジイになったとしても、きっとナタリーは今のままなんだろうな。長命種の人達が、羨ましいのか悲しいのか嬉しいのかはまだ分からない。きっと旅をすれば分かるのかもな。
「またな」
「あぁまた」
俺達はまた会おうと話し、店を後にするのだった。最後に挨拶に向かったのは、紫霧の森だ。あの後も、何度か訪れて錬金魔法のコツやアドバイスを貰ってお世話になったのでフォルネーラさんにもしっかり挨拶しないとな!相変わらず見ているだけで疲れてくる、紫霧の森に入るといつも通り深い霧に包まれあっという間に、フォルネーラさんの住処に到着だ。
「いらっしゃい。今日はどうしたのかしら?」
「王都を離れることになったので、その挨拶に来ました!」
「あら、そうなの。ヘルメアと同じように弟子も放浪するのね」
「えぇこの世界を見尽くすのが目標ですから」
「俺も世界を見て周りたいので!」
「人の生き方にとやかく言うつもりは無いけど、死なないように気を付けなさいね。もし体の一部を無くしたら私の所にいらっしゃい。特別に義肢を作ってあげるから」
「気を付けます!」
「冒険者が体を失うのは珍しくないですからね・・・・気を付けます」
「そうしなさい。クロガネ君は錬金魔法の練習を怠ったら嫌よ」
「勿論練習は続けます!」
「うふふ、貴方達には少し興味を持っているのだから死んじゃ嫌よ」
ニッコリと微笑みながら言うフォルネーラさんは優しげだけど少し怖さを含んでいる。俺達は苦笑いしながら頷き、餞別としてフォルネーラさんの美味しい紅茶を貰い俺達は宿に戻るのだった。
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