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魔法を教わろう!

「それじゃあまず、錬金魔法の基本を教えてあげましょう」

「はい!」

「ちょっと待った。魔法を教わるのは良いがその前にギルドからの依頼を終わらせないと駄目だ」

「あら、何故この場所に来たのか分からなかったけど、ギルドの依頼で来たのね」


 そうだった今俺達はギルドからの依頼を受けてる最中だから、魔法を教わるよりすべきことがある!魔女様に会えたので、メルアの森に現れた規格外の大きさのディグリングリザードのこと掘った道が魔女様の領域に繋がっていたことを伝える。すると魔女様は何てことの無いように


「あぁ少し前に植物を急成長させる肥料を撒いたからそれの影響でしょうね」

「やっぱりですか・・・・」

「地面の中に居た動物達も大きくなってしまったけど、別に何の害も無いから放っておいたのよね~そっちに行ってしまったのね。うふふ」

「お願いですから実験で生まれたものを森から出さないでください!」

「面倒ね~弱いのだから良いじゃない」

「魔女様にとってはそうだとしても、一般人には危険なんです!」

「はぁ~放っておいても五月蠅そうだから対処しておくわよ。ラピス」

「はい、お呼びでしょうか」


 魔女様が誰かの名前を呼ぶと一瞬で魔女様の後ろに現れた蒼眼が特徴的なメイド服を着た美人さんが現れた。まるで人形のように綺麗で・・・・いや人形だこの人。


「前に撒いた肥料の影響を受けてしまった動物達の対処をしてちょうだい」

「それは処分でしょうかそれとも影響を取り除く方ですか?」

「森から出ないようにさえすれば何でも良いわ」

「畏まりました」


 そう言って一度お辞儀をすると来た時と同じように一瞬で姿を消した。


「ホムンクルス・・・・じゃない。オートマタですよね」

「そうよ、私が作ったオートマタ」

「人間と見分けがつかないな」


 ホムンクルスは生物寄りだけどオートマタは魔道具のような物だ。だから、簡単に見分けることが出来るけど、さっきのラピスというオートマタはしっかり見ても人間と間違えるレベルだ。ダンジョンで嫌になる程オートマタを見たけど、あんな綺麗で人間のようなものは見たこと無いぞ。


「あの感じだと自我がありますよね」

「えぇ、私が作った最高傑作の一つで生き物と同じように自我があるわよ」

「はぁ、もしアルカナの人間が見たら泣いて崇めますよ」

「何度か来たことがあるわよ。うるさいったらありゃしないわ」


 あのオートマタも錬金魔法によって作られたのかな?そうだとしたら、凄いな・・・・


「これで貴方達の依頼は大丈夫でしょ?」

「そうですね」

「じゃあ、魔法の話に戻りましょうか。錬金魔法というのはさっきブレスト君が言ってたけど、物を対価にして新たな物を生み出す魔法なの。だから、無から何かを作り出すことも出来ないし対価に比例した物しか作れないの」

「なるほど・・・・」

「私は魔力だけで作っているけど、普通は無理だから何か鉱石や宝石、木材などを使うしかないのよ。だからお金が掛かる魔法だけど、今必要な物を即座に作り出せるし作り方によっては強力な道具になるわ。そして、この魔法使うために何より必要な物は素材の力を見抜く力よ」

「素材の力を見抜く?」


 素材の良し悪しじゃなくて、力を見抜くってどういう事だ?


「素材にはその素材特有の力が有るの。例えば木であれば生き物との相性が良く水分を吸ってしまう。鉱石であれば硬さと魔力の親和性と抵抗力。その素材がどの魔力を持っているのかを理解しなくてはこの魔法を習得することは出来ないわ」

「難しそう・・・・」

「あまり難しく考えることは無いのよ。こういうのは直感で案外何とかなるから」

「それを聞いたら全ての錬金魔法の使い手が発狂するな」


 思っていたより難しそうな錬金魔法に少し落ち込んでしまったが、魔女様は笑いブレストは呆れ顔だ。


「だって知識を付けるのは必要だけど、結局は自分の勘と感じる力で素材を見抜かないと駄目だもの。さっきの試した感じだと素材から何が出来るかが想像できているし、属性も見抜いてるから最初の条件はクリアしてるわ。次は・・・・」


 そう言って取り出したのは変哲もないただの石の塊だ。特別何かを感じる訳じゃないし魔力だって強くない。


「これの形を変えてみましょう」

「俺、土属性持ってないんですけど」

「錬金魔法は雷と闇の魔法、それと魔力の操作を使うの。まずは雷の魔法を使って解体する。こういう風にね」


 魔女様は石を手に持つと、石の周りに眩い雷撃が現れ石は塵のように崩れ去ってしまったが石であった物はまだ手の中にある。


「そして、形を想像して決めたらまた雷魔法と闇魔法で作りなおすの。闇魔法は全てを飲み込む魔法故に物をくっつけてくれるのよ。最後に雷魔法で仕上げをしてっと」


 また手の中に雷撃と闇の魔法を感じると、あっという間にまた石が作られただの石だったのが綺麗な鳥の姿へと変貌していた。


「すげぇ・・・・」

「これは石を全く別の物質に変えず形だけを変えているけどこれも立派な錬金術なのよ。最初から別の物に変えるのは難しいからまずは形を変える事から始めるの」


 俺もマジックバックから石を取り出して真似てみるが、力が強すぎたのか塵も残らず消えてしまった。


「あれ?」

「強すぎね。全ての物質は小さな粒で構成されてるの。それを一つ一つ丁寧に解すように魔法を掛けるの。一見すると凄まじい力を掛けてるように見えるけど繊細な魔法なのよ」

「なるほど・・・・」


 コツを教えて貰った後も今持っている石を使って何度も試してみたけど途中で形が崩れてしまったり、消してしまったり、分解した後の物質を保つことが出来なくて失敗続きだ。


「練習あるのみね。練習している間に報酬の髪を貰うわね」

「どうぞ」

「変な所を切らないでくださいよ」


 魔女様はハサミを作り出し俺の髪の毛を一房切った。


「丁度伸びてきたところなので結構切っても良いですよ」

「あらそうなの、じゃあ遠慮なく」

「クロガネ、髪は安売りする物じゃ無いぞ」

「え~所詮は髪だろ?」

「髪には魔力が宿っているから魔道具の材料にもなるし希少な色の髪は高値で取引されるんだ。魔術師の中には髪に宿る魔力を失わないように一生髪を切らない人だっているんだぞ」

「へ~今度金に困ったら売ろうかな」

「あら、その時は是非買わせて頂戴ね」

「はい!でも、もし売ろうとしても黒なんてみんな嫌がるし売れないだろうな~」


 黒は不吉の象徴であり悪の色ともされてる。王都に来てから俺の髪の色を見て顔を顰めたり嫌な顔をする人を結構見たし、いくら珍しくても売れ無さそうだ。


「あら~こんな素敵な色なのに見る目が無いのね。私もこれぐらい純粋な黒髪になりたかったわ」

「え~魔女様のは十分綺麗な色だと思いますよ」

「ありがとね」

「クロガネ、もしかしてあの本のこと気にしてるのか?」

「いや、全然」

「どんな本を読んだの?」


 ブレストは図書館で読んだ学ぶことが一つも無い闇の魔導書の事を言うと、魔女様は大笑いし始めてしまった。


「うふふふ、まだそんな事を言ってる人間が居るのね。はぁ~可笑しい。闇というのは生き物が生きていく上で必要な物なのにそれを否定するなんて、歴史は繰り返されるのね」

「まだまだ多数派だと思いますよ。その思想を持ってる人が」

「はぁ~面白かった」

「闇ってそんな大事なものなんですか?」


 俺はてっきり邪魔者なのかと思ってたけど・・・・


「えぇとても大事なものなのよ。闇というのは、全てを飲み込む力を持っているから恐れられるけど、案穏や鎮静、精神そして夜を司るものでもあるの。夜というのは生き物を眠りに就かせ、安らぎを与えるもの。暗き世界は心に鎮静をもたらし、騒然の世界は静寂へと包まれ休養を得るの。闇が消えれば、常に光に照らされ案穏の無い世界へと変わるでしょうね」

「生き物は睡眠なしには生きていけないからな。闇属性を持った人間が悪って言うのも人間が歴史を改竄した結果だからな~」

「ブレスト君も知ってるのね」

「歴史の改竄ってなにを?」

「よく聞く神話だと闇の神が世界を征服しようとしたとされているけど、事実は全く逆で光の神が闇の神に攻め入ったのよ」

「まぁ攻めたのは神じゃなく、光の民だけどな」


 え、それってあの本に書かれてた内容の真逆じゃん


「光の神から生み出された光の民は傲慢で世界の全ては自分達のものであり、力の源である太陽が消え必ず迎えてしまう夜を嫌っていたの。そして夜を消そうと闇の民へと攻め入ったのよ」

「闇の民は争いを好まずただ虐殺され続けどんどん数を減らしてしまったが、それを不憫に思った闇の神が自身の民と夜と共に姿を消したの」

「さっき夜は安穏をもたらすものなのに夜が消えたら・・・・」

「そう、全ての動物は体と魂を休める時間を失ったの。最初の内は夜が無くなったことで喜んでいた光の民も一生訪れない眠りの時間に精神と魂は蝕まれていくのに、力の元になる光はあるから力を補給されて気絶することも出来ない地獄を経験することになったの」


疲れるのに一生眠れない生活なんて想像しただけで辛いな。


「やがて人々は魂の摩耗に耐えられず発狂しだし、光の神に頼ったの。お願いです、夜を返してくださいってね。自分達でやった事なのに責任を取らないで戻してくださいなんて都合が良すぎるわよね」

「光の女神は願いを聞き入れたのか?」

「光の神は闇の神と姉妹なんだがその姉妹の民に手を出したことによって光の神も自分の民を見限っていたが、あまりにも悲惨な状況に願いを聞き入れ隠れてしまった闇の民と闇の女神を見つけ出して頭を下げてお願いしたんだ」

「心優しい闇の住人達はその願いを聞き入れたが、二度と虐殺を受けないよう遥か遠くの安全な大陸に移り住み、光の民達は罰として今後一切神の力を頼れなくなったのよ」

「神の力?」

「神聖魔法と呼ばれる神の権能を借りる特別な魔法のことだ」

「それでも懲りない光の民は自分達が仕出かしたことを子孫達に伝わらないように都合のいい神話を作り出したのが今一般的に出回っている話ね」

「なんだそりゃ」


 罰を受けたのに全く懲りてないじゃんか。話を聞いた限りだと全て光の民が悪いし闇の民は何も悪いことをして無いのに今でも不吉とか言われるのは納得いかないぜ。


「ほんとうにどれだけ年月を重ねても愚かよね」

読んで頂きありがとうございます!

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