錬金の魔女
警戒していたのに一切気配を感じさせなかった女は俺達を深い霧で包み込み視界が無くなってしまい隣に居た筈のブレストさえ見えなくなってしまった
「クソっ何だこの霧!ブレスト!?何処に居るんだ!?」
返事が無いし気配も感じられない。この霧の所為で自分が何処に立っているかも分からない。不味いな、こんな状況で襲われたら対処のしようが無いぞ。武器を構え最大限に周囲を警戒しながら周囲を警戒していると、段々霧が薄くなってきた。
霧は薄くなってきたけど、自分の居場所が掴めない。一体何が起きてるんだ?
今自分に何が起きているのかが理解できず、ただ焦りだけが積もっていく。一体何が出てくるんだ?あの女は一体どこから出てくるんだ?霧が薄くなり緊張が限界に達した時霧が晴れ、その先に女が見えた。
見えた瞬間俺は魔法を使い距離を詰めそいつの後ろに回り首にナイフを向ける。
「お前は誰だ。何が目的だ。ブレストを何処にやった。もし話さなければ首を落とす」
何時でも斬れるように警戒しながら周囲を見てみるが、さっきまで居た森とは打って変わり洞窟のような場所によく分からない机や綺麗に壁に飾ってある鉱石や宝石。天井には煌びやかに光る魔道具が設置されていて視界は良い。どれも高級感のある家具ばかりだ。さっきまでの景色と違っているのは転移されたか今までの森が全て幻だったかだな・・・・そんなことが出来るのは魔女ぐらいだろうが、ブレストに何かしたなら魔女であろうと敵になる。
「答えろ」
「あら、素敵なナイフね」
「何を言って」
「大丈夫よ、貴方のお兄さんはもうすぐ来るから。あの人無駄に魔法への抵抗が高すぎるのよね」
首にナイフを当てられているというのに全く気にしていない女。話している内に、俺の目の前に紫の霧が現れその中からブレストが出てきた。
「はぁいきなり転移させるなんてこれだから魔女は・・・・クロガネ、大丈夫だからナイフを下ろせ」
「ん、分かった」
ブレストの無事を確認した俺は素早く女から離れブレストの傍へ行った。改めて女をよく見てみると、細いが豊かな体型をしていて白いローブと柔らか毛糸で作られた服に何やら変な瓶や石や魔道具を付けている。髪は深く暗い紫色をして顔はすっと線が通った綺麗な顔をしている。
「住処に招いてくれたと言う事は歓迎してくれていると思っても良いのかな?錬金の魔女フォルネーラ・ハイム様」
「えぇ、歓迎するわ。少し強引なお誘いになってごめんなさいね。驚かせちゃったかしら?」
「俺は少しですみましたけど、クロガネはこういうのに慣れて無いんですから」
「うふふ、ごめんなさい」
ブレストの態度と魔女の態度を見るからに、敵対する気は無さそうだな。
「いや、俺もナイフを向けてごめんなさい」
「良いのよ、気にしないで。立ち話もなんだから、座ってお話しましょうか」
そう言いながら何も無い床に指を振ると、床から黒く艶やかなテーブルとイスが作られもう一度指を振ると、テーブルの上に宝石のようなティーポットとティーカップが作られた。まるで粉々に砕けた物が元通りになるかのように、物が現れたのでマジックバックや収納を使った訳じゃない。僅かだが魔法の気配がしたから、これが・・・・
「錬金魔法・・・・」
「流石は錬金の魔女ですね。空気中の魔力だけでここまでの物を作るなんて」
「褒めてくれてありがとう。だけど、もっと対価を少なく出来るはずなのよね~」
俺達は石で出来ているはずなのにまるでクッションのように柔らかいイスに驚きながらも、席へと着くと錬金の魔女手ずから良い匂いのする紅茶を入れて貰った。
「ありがとうございます」
「ありがとうございます。・・・・美味しいっ」
「気に入ってくれたようで良かったわ」
「この紅茶久々に飲んだな・・・・やっぱり美味い」
「あら、彼女まだ持ってたのね」
「お気に入りだから少しずつ飲んでいるそうですよ」
「そうなの、来たら何時でもあげるのに」
ん?紅茶の美味しさに夢中になってたけど、ブレストと錬金の魔女には共通の知り合いが居るのか?
「それで、俺達をここまで転移させた理由を聞いても良いでしょうか?」
あ、それは俺も気になってた。ただお茶をするだけの為に俺達を転移させた訳じゃ無いだろうし、もしかして森に入ったことを怒られるのか?
「懐かしい雰囲気を感じたから、ちょっとお話ししたかっただけよ」
「はぁ、そんな事だと思いましたよ・・・・初めまして俺はブレストです」
「話は聞いてるわ。それに、可愛らしい坊やも居たから思わず転移させちゃったわ」
え、まさかの話がしたかっただけで転移させたのか!?転移魔法ってすっごく大変で高度で他人を遠くまで飛ばすのは魔力を滅茶苦茶使う魔法って聞いたんだけどお話の為だけに使うとか流石は魔女と言ったところか・・・・てか、懐かしい雰囲気?俺と話したかったってなんでだ?
「俺は分かりますけど、クロガネもですか?」
「だって、こんな素敵な髪と瞳を持っているんですもの。お話したくなるのは当然でしょう?」
「魔女様でも俺の神と目って珍しいんですか?」
「えぇ私も結構長く生きているけど初めて見るわね。その色は染めたりはしていないのでしょう?」
「はい、生まれつきです」
生まれた時からこれだったから捨てられたんだよな。まぁ誰が何と思おうとも俺はこの色結構気に入ってるんだぜ。闇に溶け込めるし、俺は夜が好きだから夜の色である黒が好きだ。装備とか武器とかも黒ばかりだし。
「錬金の魔女様でも見たことが無いのか・・・・」
「髪や瞳の色というのはその人の魔力の属性や性質が強く表れるの。私なら闇と雷の属性が強いからこのような色をしているけど、闇属性しか持っていない人だとしても、純粋な黒になることはまず無いの。どうしても、成長過程で大気にある魔力を吸って体に取り込むから色が混ざるはずなのだけど・・・・」
なんか魔女様俺のことを獲物を狙うような目で見て無いか?
「実験はお断りしますよ」
「え~駄目なの~?」
「駄目です」
「じゃあ、実験は諦めるから目を頂戴!」
「良い訳無いでしょう」
「ちゃんと、代わりの目玉は作ってあげるわよ。サービスで魔眼とか鑑定眼が付いた目玉にしてあげるし良いでしょ?」
「却下です」
「そんな~」
なんかお菓子でも貰うかのようなノリで目玉を要求されたんだが・・・・いや、代わりを作って貰えるとしてもあげないからな!?ブレストは魔女様に怯む事無く断ってくれて助かった~・・・・
「ここに来る人達は私の作品を喜んでもらってくれるのに・・・・」
「確かに錬金の魔女様が作られる義足や義眼は全て生身より高性能で本当の手足のように動かせますけど、クロガネにそう言うのは要りません!」
「残念ね~じゃあ、髪を一房ならどうかしら?代わりに貴方達が欲しい物を作ってあげるわよ。なんなら私の技術を教えてあげても良くてよ」
「クロガネに危害が行くような実験には使用しないと約束できますか?」
「勿論!契約してあげても良いわよ」
「クロガネ、何か欲しい物はあるか?錬金の魔女様が作ったものは高性能だし殆どの物を作って貰えるぞ」
なんか口を挟む暇なく交渉が進んで行ってしまった。何か欲しい物か~ナイフは今使っている物で満足だし、クロスボウも十分。何か欲しい魔道具と言われるとう~ん・・・・そうだ。
「魔法を少し教えてくれませんか?」
「勿論良いわよ。でも、そんな事で良いの?私に作れるものなら何でも作ってあげるわよ?」
「最近もっと色々な魔法が欲しくなることが多かったし、あまり凄い武器や防具を貰っても俺じゃ使いこなせないと思うので魔法でお願いします!」
最近買ったナイフやダンジョンで手に入れクロスボウでさえ完全に使いこなすことが出来ていないのに、新しい物を貰っても宝の持ち腐れになるだけだと思うんだ。だったら、魔女様から魔法を教えて貰った方が有用だろ。魔女様は強力で特殊な魔法を使うって言うしな!
「それじゃあ何の魔法を教えましょうかね~属性は何を持ってるのかしら」
「雷と闇、そして風です!」
「ん~私が一番得意な魔法は錬金魔法なんだけど・・・・一回試してみましょうか」
錬金の魔女様は何処からか、鉄と木を取り出してテーブルに置いた。
「これを見て、何が作れると思う?」
「・・・・剣とかの武器ですかね」
「それじゃあ、これは?」
次に出したのは煌めく赤い色の宝石とガラス片だ。宝石なら装飾品とかだけど、この宝石からは火の魔力を強く感じる。何となくだけど・・・・
「爆弾」
「あら、見る目あるわね。資質はあるようだし錬金魔法を教えてあげましょう」
「錬金魔法か~いや、良い魔法だとは思うんだがなんか心配だな・・・・」
「何よ、しっかりと学べば安全だし便利で使い方によっては街を更地にだって出来るんだから」
「だからですよ」
お~錬金魔法って何かを作るだけの魔法だと思ってたけど、そんなに火力が出る魔法なんだ楽しみ!
読んで頂きありがとうございます!
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