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二級と三級

「ブレスト!頑張れ~!」

「おう、偶には良い所見せないとな!」

「さぁさぁ君とは一度しっかりと戦って見たかったんだ!私も全力で行かせてもらうよ!」

「お手柔らかにな」


 ブレストは魔法剣で戦うことは知ってるけど、いつも軽く一撃で倒しちゃうからしっかりと戦う所を見るのは初めてだな~二人は向き合いノランさんの合図で戦いを始まった。まず最初に動いたのはイリスさんだ。俺の時は受けることメインにしていたのに今回は攻めに周るみたいだ。俺に蹴りを入れた時に使っていた光魔法による加速で、盾と剣によって攻撃する。ブレストはその攻撃を慌てる事無く丁寧に何時も腰に付けている剣で捌いていく。


「イリスさん速いな~」

「イリスはタンクだけど、アタッカーでもあるのよ」

「私達は結構バラけて動くから、仲間が狙われた時にすぐ傍に行けるようにあの速さが必要なのさ」

「ほんと頼りになるリーダーよね~」


 俺以上のスピードで鋭く正確な剣筋を見せるイリスさんは流石だな。一方ブレストはと言うと


「お~怖い怖い」

「む~余裕みたいだね。これならどうだい!」

「危なっ」


 光の魔法による剣撃も余裕そうに捌いている。そんなブレストを見てイリスさんは笑みを深めると一瞬で雰囲気が変わった。圧倒されるほどの魔力の圧と、肌がピリピリする程の魔法の気配を感じた次の瞬間イリスさんは光り輝く魔法の翼と、白と銀に統一された煌びやかな鎧を纏っていた。


「おいおい、いきなり過ぎないか?」

「随分余裕そうだから、これぐらい良いでしょ?」

「あら~やる気になってるわねイリス」

「ここ最近強いやつと戦って無かったから鬱憤が溜まってたんだろうな」

「地形は変えないでよ~」


 姿を変えたイリスさんに向かって呆れ半分で言葉を掛ける悠久の誓いの人達。あれは流石のブレストでも不味いんじゃないか?


「はぁ、まぁ取引したんだから真面目にやりますか」


 そう言ってブレストは使っていた剣を腰に戻し収納へとしまう。そして、十本の色が異なった魔法剣がブレストの周囲に現れた。


「お、やる気になってくれたみたいだね!」


 そう言ってイリスは空に浮かび上がりブレストに突撃するが、それを魔法剣たちが許さない。魔法剣達は舞うように空中へと飛び上がり、空を飛ぶイリスへと襲い掛かる。軽く飛び上がっているので一つ一つの威力は無いように見えるが、そんな事は無く一つ一つがイリスがしっかりと防御しなくてはならない程重い。その証拠として、イリスはブレストに近付けていない。


「あの魔法・・・・前に少し見たことがあるけど本当に不思議な魔法よね~」

「ただ魔力を具現化させ固めただけでは無いようだな」

「恐らく固有のものか独自の形態の魔法なんでしょうけど、威力の割には気配が薄いのよね」


 息を付く暇を与えない剣達にイリスは翻弄されていたが、剣を掲げるとその剣から光弾が放たれ襲い掛かる剣達を全て弾きブレストに急接近する。それに驚く事無く至近距離に近付いたイリスの目の前に光の盾が現れ攻撃を受け止めた。そして、地面から無数の槍が現れ襲い掛かるがそれを空を飛んで避ける。


「ん~やっぱりそれ厄介だね」

「それはどうも」


 イリスの攻撃を防いだ盾や槍も全てブレストの魔法だ。ブレストが使う魔法は剣だけじゃなくて、状況に合わせた多種多様な武器を作り出せるから本当に厄介なんだよな~そして、その武器は魔法で作られているから・・・・


「んじゃ今度はこっちの番だな」

「くっ!」


 空中に無数の属性を纏った武器が現れイリスに襲い掛かる。炎を纏った剣は、当たると爆発を起こし雷を纏った槍は、他の武器とは比べ物にならない程のスピードで翻弄している。そう、ブレストの魔法で作られた武器は思い通りの魔法を付与できるのだ。ただ一つの魔法であれば対処は簡単だが、火と風が混ざり合い爆発を起こし、雷と水で効果を上げるなどその組み合わせは無数かつ自由。あれを対処するのは大変だぞ。


「魔法剣って範疇を越えているな」

「あれを全て操っていると言うから驚きだな。普通あんなの頭が大変なことになるぞ」

「あれ一つ一つが強力な魔法なのに予備動作も詠唱も必要ないってどういうことなの?」


 イリスは無数の武器達に追われ、光の魔法を使い武器を弾き防いだりしているが防戦一方だ。そんなチャンスをブレストが見逃す事無く、新たな魔法剣をイリスの頭上に作り出した。その剣は一瞬光ると、大量の水を発生させイリスを閉じ込める水の牢獄を作り出した。そして、その牢獄に向けてほとばしる稲妻を纏った槍を構えた。


「降参するか~?」

「私を舐めないでくれたまえ!!」


 水の牢獄に囚われたイリスは全身から魔力を放出し全ての水を吹き飛ばすと、驚異的なスピードで近づきブレストの首へ剣を振りかざし、それをブレストは魔法剣を作り出し受け止め大きなハンマーを作り出し手に持つ。そのハンマーを下から上へ振り上げイリスはそれを盾で受け止めたが爆発が生じ、イリスを吹き飛ばす。


「おお~流石二級だな」


 吹き飛ばされたイリスは空中で態勢を整えると、勢い良く地上に向けて光を纏った剣による落下攻撃をしかけた。ブレストは避けたが、その衝撃で地面が抉られ避けたブレストを追撃するイリスの剣からは風を切り裂く光の刃が放たれている。ブレストは手に片刃の細長い剣を作り出すと、それを全て受け流し始めた。


「なんだあの剣」

「知らない形だな」

「あの細い剣じゃ普通は受け止められないんだが・・・・流石は魔法剣と言ったところか」

「私は動きながら魔法剣を操れることに驚きですよ」


 イリスの剣を受け止めながらも、死角に魔法剣を作り出し攻撃し続けているブレスト。この様子だと決着がつかなそうだな~って思っているとイリスがいきなり空へと飛び上がり剣を胸に構えると、圧倒されるほどの魔力を放ち始めた。


「あの馬鹿!」

「ちょ!手合わせでそれは駄目ですよ~!」

「ははっあいつ聞いちゃいないな」

「おいおい、ここら辺を更地に変える気かよ・・・・」


 ブレストは呆れながらも初めて詠唱を始めた。ここからじゃ声が小さくて聞こえないが、ブレストもイリスに負けない程魔力を放ち始め両者共に圧が最大になった時、力が衝突した。天より振りかざされる大地を焼く裁きの光線に対し、ブレストは俺達を包み込む七つの大きな柱を作り出し結界を張りそれを防いでいる。


「はぁ~ブレスト君助かったよ」

「イリスがすまないね」

「全く・・・・ちょっとお仕置きが必要ね」


 守ってくれたブレストにお礼を言うと、サリームさんは杖を構え詠唱を始めた。そして、イリスの魔法が終わった瞬間巨大な氷の礫で攻撃し、カザリさんとノランさんも一緒に魔法を発動する。


「いたたた、ちょっとみんなが攻撃するのはズルくないかい!?」

「お黙り」

「地形は変えるなって言っただろ」

「イリス、それは流石にやり過ぎだ」


 イリスさんは突然攻撃してきた仲間に驚き叫ぶが、サリームさん達は抗議の声をぴしゃりと黙らせ冷たい目を向けている。


「イリス、俺も同意見だからこの手合わせはこれで終わりだな」

「なんでだい!?これからが楽しいんじゃないか!」

「うるさいぞイリス。ブレスト君が防いでくれたからよかったが私達まで巻き込むところだっただろう」

「うっ・・・・」

「はぁ、うちのリーダーがごめんなさいね。勿論報酬は支払うわ。ナイトパールは幾つか持っているから、好きなのを選んで頂戴。それとやり過ぎてしまったお詫びとして、他に欲しい物が有れば何でも言ってちょうだい」

「んじゃ遠慮なく・・・・これが良いな」


 空中で駄々をこねているイリスさんを放っておいて、サリームさんはマジックバックからナイトパールを取り出し、ブレストが選んだ。ナイトパールはまるで夜の星空を閉じ込めたような丸い宝石で、俺も欲しくなっちまうほど綺麗だ。


「他は何かあるかしら?」

「ん~光属性の宝石とか無いか?」

「それならセフィライトがあるわよ」

「それは高価すぎるだろ」

「うちは光属性だらけだから使わないのよ。だから気にしないでちょうだい」

「そうか・・・・なら言葉に甘えて」


 セフィライトと言われた宝石は、透明だが中心に翼のような紋章が淡く光る宝石だった。色鮮やかな宝石が好きだけど、繊細な宝石も良いよな~

 未だに駄々をこねているイリスさんをノランさんが手刀で叩き落とし、引き摺りながら俺達は王都へと戻るのだった。

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