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拍子抜けからの模擬戦

 竜だと思われてた魔物の正体がただの大きく成長したトカゲだったことに拍子抜けはしたが、何故ここまで大きくなったトカゲが今まで発見されなかったのか調査する必要はある。なので、手分けして周囲を調査して何故どうやってこのトカゲが現れたのか調べることにした。


「見た所地面に潜って進んでいたから、今まで目撃情報が無かったみたいだね」

「あっちの方に大きな穴が有ったからそこから出てきたんだと思うぜ~」

「茂みの方にボアを食べた痕跡が有ったから、地面に餌が無くて出てきた感じかしら」

「あそこまでデカくなったら餌も大量に必要だからな」

「他の動物達は特に影響を受けてないみたいね。影響が有ったのはここら周辺の木がなぎ倒されたくらいね」

「穴が何処まで続いてるかは、ギルドの調査員に任せましょう。取りあえず、現時点で分かったことをギルドへ送っておくわね」


 サリームさんは鳥型の魔道具に調査報告書を入れ、ギルドへと飛ばす。見たことが無い魔道具だったので聞いてみると、あれは緊急用に使われる魔道具で中に手紙を入れて魔力を籠めるとギルドに自分で帰ってくれるんだって。クソ高いから普段は使わないんだけど、今回みたいな一刻を争う時は使うそうだ。さて、取りあえず俺達が調べられる範囲の調査は終わったので、後は帰るだけなんだが・・・・


「さて、調査が終わったことだしクロガネ君ブレスト、手合わせをしよう!」

「さぁ帰るぞ~クロガネ。この時間なら十分庭園の開園時間に間に合うぞ」

「お~」

「えぇぇ折角誰も居なくて自由に場所を使えるのに勿体ないよ!それに歯応えがある相手が居なくて君達も不完全燃焼だろ?さぁさぁ!その熱を私にぶつけたまえ!どんな痛みもどんな攻撃もすべて私が地母神のように受け止めてみせるさ。さぁ私を高ぶらせてくれ!」

「・・・・」


 銀に輝く美人による満面の笑みなのに、どうして少し気持ち悪く感じるんだろうか・・・・多分言葉が原因なんだろうけど。ブレストも面倒くさそうにしてるし、さっさと帰ろう。


「気持ち悪い台詞を吐くんじゃありません!」

「ぐへぇ!」

「はぁ・・・・申し訳ないんだけど、どうかうちのイリスの相手をしてくれないかしら。このまま帰ると面倒なのよ・・・・勿論ただとは言わないわ」

「そうだな、もし相手をしてくれたら何か持っている素材を何か渡そう。何か欲しい物は無いか?」


 サリームさんが興奮しているイリスさんの頭に勢い良く杖を振り下ろし、ノランさんが交渉をする。ブレストは少し悩んだが何やら欲しい物が有ったらしい。


「あ~・・・・純度の高いナイトパールはあるか?」

「それなら丁度持っている」

「いや、手合わせの対価としては高すぎるか」

「そんな事ないさ!ブレストが真面目に戦ってくれるなら喜んで譲ろう」

「ん~あ~まぁいいか。交渉成立だな」

「やったね!それじゃあまずクロガネ君から!」

「頑張れクロガネ。相手は何やっても死なないから殺す気で行って大丈夫だぞ」

「あぁ全てを受け止めよう」


 えぇ~なんか戦う事になったんだけど・・・・まぁブレストが欲しい物を手入れるためだし、二級冒険者と戦う機会なんてそうそう無いから自分の力を試すためにも頑張るけどさ。絶対に俺とイリスさんって相性最悪なんだよな。


 トカゲの所為で多くの木が倒れ開けた場所が既にできているので、俺はイリスと少し距離を空けて向かい合う。ブレスト達は倒れた木をベンチにして観戦席を作って楽しむみたいだ。


「頑張れ~クロガネ君イリスなんて殺しても死なないから自由にやっちゃっていいよ~」

「あぁ何なら毒を使っても構わないぞ」

「切り刻んじまえ~」

「ちょっと!私への応援は無いのかい!?」

「ある訳ないでしょ」

「そうだそうだ~」

「くっもういい!さぁ始めようか!」

「両者準備は良いな?・・・・始め!」


 開始の合図と同時に俺はいつも通り空中に雷と風の無数の矢を作り出し撃ちこんだ。出来る限り最速の物を作り撃ったが当然のように全て盾で防がれてしまった。まぁこれが当たる訳ないよな。俺は想定通りだと驚くことなく、闇魔法で音と気配を消し雷魔法を纏い最速で背後に周る。


「良い速さだね!」

「っ」


 俺の全力の速さだったけど、当然の如く振り向き剣を振り下ろす。それを避け懐に入ろうとしたがそれを盾が防ぎ俺は勢い良く盾を蹴り、後ろに飛び退きながらクロスボウから雷の矢を連射する。勿論それを盾で防御しようとしたが矢の軌道を曲げると一瞬で斬り伏せられてしまった。


「矢を制御するなんてやるね~」


やっぱこれぐらいじゃ駄目か~んじゃ取りあえずいつもの全力でやってみるか!俺は何時も使っている魔法の矢とナイフによる息を付く暇もない怒涛の連撃を試してみることにした。風の足場も使って立体機動を行うが背後や死角から迫る魔法の矢にも難なく盾と剣で防御しきるイリス


「おぉ~空まで飛べるのか。楽しいね~!」

「え~あの速さと精度で風で作った障壁を設置できるの・・・・」

「自分の強みをしっかりと活かしてるな」


 かなりの攻撃をしているつもりだけど、体がブレる事無く息が上がる事が無いようなので効かないとは思うけど、騙し手を加えてみる。


さぁどう反応する?


 ボスで使ったナイフの延長する風の魔法を突然使ってみるが難なく防がれてしまった。


「おぉ危ない危ない」

「どこがだよ・・・・」


 やっぱりな~俺の攻撃って騙したり見えなかったりするもので相手を翻弄するのが主なんだけどこれはイリスのスキルと相性が悪すぎる。どれだけ隠したり気配を消しても勘で気付かれてしまう。う~ん・・・・取りあえず使える手は全て使って見るか。自分の姿を闇魔法で隠し、幻を作り魔法の矢や見えない刃を繰り出すがどれも防がれてしまう。なら、油断を誘うのはどうだ?俺はわざと姿を現しイリスの攻撃を受けて姿勢を崩し、追撃を誘ってみた。


「おっ隙あり」

「やばっ」


 このタイミングなら絶好の追撃チャンスのはずだ。さぁ来い。俺は内心笑みを浮かべながら焦った顔をして剣が俺に振りかざされた瞬間、強力な無数の見えない風の刃を一瞬で作り出したが、イリスは笑みを深め俺から距離を取ってしまった。


「危ない危ない、騙すなんて悪い子だな~」

「え~攻撃してよ~」

「その誘いに乗ったら私はバラバラさ」

「精々傷が付くぐらいだろ」


 ん~駄目か。やっぱりイリスには今の俺の技量じゃ搦手が効かないな。困ったな~実力差は天と地ほどもあるけど、このまま何も出来ないってのは嫌だからあれを使ってみるか。


 搦手が駄目なら全ての力を使って突破してやればいい。俺は闇魔法で気配を薄めながら、悟られないようにクロスボウへ魔力を集めていく。鋭くそしてどんな物も貫通できるよう力強く五発あれば足りるだろう。さて、行くか!


「お、次は真っ向勝負かい?受けてたとう」

「感謝するぜ!」


 こんなに強いなら遠慮なんか要らない。俺は風・雷・闇の全ての魔法を体に纏い正面から攻撃を仕掛けることにした。ナイフには雷の魔法で威力を高め襲い掛かる剣は回避し死角から怒涛の魔法の矢をぶつける。そして、偶に搦手を入れてイリスの勘をこっちに集中させるんだ。


「おぉこんなに動けるなんて想像以上だよ!君ならすぐに三級に上がれるよ」

「それはどうも!」


 決してイリスが気付く暇をを与えちゃ駄目だ。魔法の矢をぶつけながら俺は見えない鎖を周囲に展開し、周囲が無数の鎖で囲まれ準備は完了した。俺は今まで気配を消し魔力を溜めておいたクロスボウをイリスに向けた。その瞬間余裕そうに笑顔を受けイリスが初めて驚愕の表情を見せた。


 おっやっぱこれは流石に驚くよな!まずは一発!


 これが俺が今撃てる最大の威力を持った矢だ。魔力を何層にも固め雷とか風で強化し闇の魔法で魔力と気配を消したこの矢は、風を切り裂き盾に当たった瞬間途轍もない衝撃音を放ち爆発する。この攻撃を盾で防いだイリスは初めて体勢を崩した。


 よし次!


 用意して置いた鎖を四分の一を強化し顕現させ操りイリスの腕と足に巻き付かせ拘束する。勿論イリスならこんなのすぐ壊せるだろうが、その一瞬が命取りだ。俺は拘束した瞬間二発目を放つ。イリスは急いで鎖を引きちぎり盾で防御したが今度は体制が整っていないから少し吹き飛ばされる。


「くっ!」


 すぐさま俺は次の四分の一を使い今度は鎖を刃へと変えイリスを襲わせる。それを剣で対処している間に三発目。今度は盾で受ける事無く避けたので、逃げた先に一瞬で距離を詰め至近距離による四発目。


「良い攻撃だけどそろそろ品切れかな!」


 流石にこの攻撃にも慣れてきたようで、しっかりと足を踏み締め盾で受けて剣で反撃して来たが俺はそれを風の防壁で防ぎ威力を利用し距離を取ると残りの鎖全てを顕現させイリスを囲い込む。その瞬間俺は体を強化していた身体強化・風・雷の魔法を全て消し、自分の気配を隠すことだけに魔力を注ぎ込んだ。そして囲い込んだ鎖を壊される前に、全て爆発させる!


 ドンッ


 地面が揺れる程の衝撃が起こり土埃が舞う。そしてその爆発と土埃に紛れ背後を取った。俺が全力で気配を消せばイリスのスキルとはいえ気付くのが難しいと言っていた。しかも今は爆発した鎖の魔力と土埃で気配が追いにくいい。撃つなら今!!!


 完璧なタイミングで撃った矢はイリスの背後を完全に取ったと思ったが、イリスが笑みを浮かべながらこっちを振り返った。


あ、負けたな~


 その笑みを見て負けたことを確信した俺は、光のように高速で移動してきたイリスの蹴りを風の防壁で防御し吹き飛ばされるのだった。


「クロガネ大丈夫か~」

「防御したから大丈夫~」


 吹き飛ばされて地面に転がっていると、ブレストが笑いながら俺の様子を見に来てくれた。


「どうだった二級相手は」

「強すぎだろ~全く敵わなかったぜ」

「まぁでもお前は良く戦った方だぜ」

「ん~悔しい!次は勝てるように頑張らないと!」


 いくら相性が悪いとは言え最後のは完全に素の力量の差だ。もっともっと頑張らないとな。俺は立ち上がりイリスの元へ行くと満面の笑みで俺を抱き上げ


「いや~楽しかったよ!!最後のあの攻撃は私でも少し驚いてしまったよ。その歳でそこまでやれるなら今後が楽しみだよ。また手合わせしてくれっ」

「やっぱり二級って本当に凄いんだな。貴重な体験をありがとうございます。それはそれとして、手合わせは暫くやりたくないです」

「ええええ」


 悲鳴を上げるイリスさんをスルーして俺は他の人達が待機していた観戦席へ行く。


「クロガネ君中々良い戦いだったよ」

「クロガネ君は闇の魔法が得意なのね~・・・・あははは、何であんな規模の魔法を使えるのよ・・・・」

「おう、良い戦いだったぞ」

「ありがとうございます」


 悠久の誓いの人達に褒められ少し照れながら木に座る。さて、次はブレストの番だ!しっかり戦ってるブレストって見たことが無いから楽しみだな~ 

読んで頂きありがとうございます!

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