緊急依頼 ドラゴン発見?
素敵な宝石や装飾品を見た俺は次の日の朝からやる気に満ちていて、早速依頼を受けに行こうと思ったが連日働いてるから今日は休日だと言いつけられてしまった。
全然疲れて無いんだけどな~・・・・でも、王都を見て周るのも楽しいから良いけどさ
この湧きたつやる気の行き先を無くしてしまって、ちょとモヤモヤする~とか思ってた。だけど、ババルさんのトロトロになるまで野菜と大きなボア肉が煮込まれた味の深いブラウンシチューを食べたらモヤモヤなんて吹き飛んてしまった。本当に何時食べても美味しい料理が出てくるし、ババルさんって天才なんじゃないか!?
「それじゃあ今日は何処に行こうか?職人通りとかは行ったからな~城の裏とかは住宅地だしな。ん~庭園でも見に行くか?ここのはかなり力が入ってるから見ごたえあると思うぞ」
「行ってみたい!」
庭園なんてそんな贅沢なものを見れるんだ!庭園ってほらなんか偉い人が集まってお茶とかを飲むんだろ?街の女たちが言ってたぜ。俺達は庭園に行こうと宿を出て向かおうとすると、後ろから気配がして振り返ると満面の笑みのイリスとそのパーティーメンバーが居た。
「・・・・朝早くから偶然だなイリス。悪いが俺達は行く場所が有ってな、さらばだ」
「いやいや、ブレスト君全くもって偶然なんかじゃ無いよ。何やら庭園に行くつもりのようだが、ちょっと私達の話を聞いてくれないか?」
「はぁ・・・・クロガネすまん!なんか面倒ごとがあったみたいだ」
イリスは笑顔のまま逃げようとするブレストの肩を掴み、決して離そうとしない。その様子にブレストは溜息を付くと、俺に謝った。
「すまないねクロガネ君、ちょっと面倒ごとが起きてブレストに手伝って貰いたいんだ。出来れば君にも手伝って欲しいんだけどね。勿論報酬は出すよ」
「俺も?」
「そう、君も」
俺とブレストに頼みごとなんて一体何事だ?
「ここじゃ人気が多すぎるから少し落ち着いた場所で話せると良いんだけど・・・・」
「ババルに聞いてみるか」
俺達は宿に戻るとカウンターで記録を付けているババルさんが居た。
「ババルさん、ちょっと大部屋空いてるところ無いか?少し借りたいんだが・・・・」
「悠久の誓いか・・・・右の突き当たりが空いてるからそこを使いな」
「ありがとうございます」
「感謝するよ」
俺達の後ろに居る悠久の誓いを見たババルさんは一瞬で事情を理解したらしく鍵を投げて渡してくれた。部屋に入ると早速ブレストがイリスに質問をする。
「それで、何の用なんだ?」
「実は昨日夜遅くにメルアの森で竜を目撃したとの情報がギルドに寄せられたんだ」
「種類は?」
ブレストは面倒くさそうにしていたが竜という言葉を聞き、真剣な顔へと変わった。竜と言えばこの世界の頂点に立つ魔物だ。物理攻撃や魔法攻撃を全て防ぐ鱗を纏い、軽い魔法一つで村を破壊し恐怖を与える動く天災とも言われている。竜にも種類があるが上位竜ともなれば二級以上の冒険者が必要だ。そんなのが王都の近くに来てるのか?
「夜の出来事だったから、属性も種類の判別も出来ていないんだ。ただ、歩いていたという事だから不幸中の幸いで木竜か土竜の可能性が高い」
「その二つでも上位竜となれば脅威度は変わらないだろ。防御と生命力が高い分その二体の方が厄介な時もある。それに上位竜が近くに居ると知ったら王都中がパニックになるぞ」
「そうなんだよね~だから、この情報は一部の者しか知らされてない。属性も種類も分からないなんて無駄なパニックを起こすだけだしね」
「なるほど、上位竜の討伐経験がある『悠久の誓い』に緊急の調査依頼が来た訳か」
「その通り。そこで頼みがあるんだがブレストとクロガネ君にこの調査を手伝って欲しいんだ」
「俺は分かるが、クロガネはまだ五級だ。そんな危険な依頼を受けれる訳が無いだろ」
「ギルド長からは必要だと思う人材を好きに採用して良いと言われてるからそこは大丈夫だよ。私でも気配を追えない程のクロガネ君ならきっとこの調査に役に立つだろう」
俺の名前を出したことによってブレストはイリスを殺気交じりで睨みつけるがイリスは涼しい顔をしている。危ないって言うけど、俺はこんな機会滅多に無い事だから、この依頼を受けたいと思ってる。何事も経験だって言うだろ?危険だってことは承知してる。
「・・・・イリスの勘はどう言っている」
「何とも言えないね。前に上位竜と戦った時に感じた危険な感じはしないけど、竜という情報が嘘だって感じもしない」
「俺は受けよう、ただクロガネは留守番だ」
「やだ!俺も行く!」
「駄目だ、下位竜ならどうとでもなるが上位竜ともなると守り切れる確証が無い」
「守って貰わなくても自分の身は自分で守れる!俺はお荷物じゃない!」
「そういう話じゃないんだ。今回の相手は不確定で不測の事態も起き得る。まだクロガネには早すぎる」
「危険だと思ったらすぐ逃げるから!」
「近づくのが危ないんだ」
一歩も譲らずないブレストに俺はムカついて来たけど心配してくれてるってのも分かってる。だけど、俺は行ってみたいんだ!
「ブレストの心配は分かるよ。だから、今回はうちのノランをクロガネ君に付けるからそれならどうだい?」
「ノランの実力を疑う訳じゃないが・・・・」
「俺はそれで良いと思う!な?ブレストお願い!」
「・・・・はぁ絶対に俺かノランの傍から離れるなよ」
「うん!」
しつこくお願いをしたら最終的にはブレストは折れてくれた。ノランさんというのは、前に会った時にイリスの手刀を落としていた女の人だ。俺達は討伐と調査の準備を進め、事は急ぐという事で早速メルアの森へと向かった。
「取りあえずここまで来てみたが大きな気配は感じられないな・・・・クロガネはどうだ?」
「ん~小さな魔物とか動物の気配はするけど大きな気配は感じない」
「私も同じく。いくら気配が薄い木竜や土竜だとしてもこの距離まで近づいて気配が感じられないとなると、上位竜は無そうだけど・・・・」
竜ほど大きな存在ならいくらこの森が広くても、少しは感じると思うんだよな~
「魔力の乱れも感じられませんね~」
「なんだ、前と全然違うじゃないか」
そういうのは悠久の誓いの魔法士サリームさんと双剣使いカザリさんだ。サリームさんは淡い水色のローブと魔石を沢山つけた杖を持ち、カザリさんは鎧を一切着けず踊り子のような恰好をしている。編成と装備から見てイリスさんは盾役なんだろうけど、少しバランスが悪そうに見えるがここまでやって来たという事は相応の実力があるのだろう。
「この様子だとレッサードラゴンかな」
「あんまり油断するなよ。何が来ても可笑しく無いんだからな」
俺達は油断せずに森の中を少しづつ進み、竜の痕跡が無いかを調べていく。竜と戦ったことがある悠久の誓いの人達が言うには、竜が現れた時はその場所に大きな影響をもたらすらしい。例えば、植物達が枯れたり逆に異常かつ急激な成長を遂げる事や、魔物や動物達が恐慌状態になるなど、その竜の属性によってさまざまだ。でも、この森にはどの特徴も現れていない。
「木竜や土竜なら植物達に影響するはずなんだが・・・・」
「全くと言って良いほど変化が無いわね」
「レッサードラゴンだとしてもここまで影響が無いなんて変ね」
「ん~もう騒ぎを立てて誘き出した方が良くないか?」
「駄目よカザリ。ここまで影響が無いと考えると高い知能を有した上位竜以上の存在だってことも考えられるんだから」
「はいはい」
上位竜以上ってことは古代竜ってことか?ブレストに聞いたこの世界で手を出してはいけない存在の一つなんだけど・・・・
「古代竜なんか出てきたら、俺とクロガネは逃げるからな」
「それは私達もだよ」
「逃げれなければ交渉するしか無いな」
「話を聞いてくれればだけどね」
全員顔を顰めながら警戒を強めながらゆっくりと森へ進んで行くと、森の奥から大きな物が動く気配がした。
「前方400m先でなんか大きいのが動いた」
「あぁ私も感じた」
「竜か?」
「いや、なんか大きいだけで気配と魔力は強くない」
「ふむ・・・・行ってみよう」
「勘はなんだと?」
「私達の身に危険は無いよ」
少し考え込む様子を見せたがイリスは進むことを決断したようだ。今この合同パーティーのリーダーはイリスだから従い、俺達は気配をがする方に慎重に進んで行きドンっと木が倒れる音がした先に居たのは・・・・
「トカゲだな」
「トカゲね」
「なんだつまらない」
「ここまで成長するなんて珍しいわね」
「柄と鱗からしてディグリングリザードだろうけど、まぁこの大きさなら竜と見間違えても可笑しくないわ」
大きな気配の正体は、滑らかかつ鈍く光る褐色の鱗を持つ、体高3mはある大きなトカゲだった。脅威的な存在じゃなくて安心したけど、何だかな~
「あ、こっちに気付いたみたいよ」
「向かってくるわね」
「サリーム、よろしく」
「は~い」
サリームさんは杖を前に構え、素早く丁寧に魔法の詠唱を開始し魔力を丁寧に編み込み強力な氷魔法を発動させ巨大なディグリングリザードを氷漬けにしてしまった。
「おぉ~ちゃんとした魔法初めて見た!」
「ふふっどうだったかしら私の魔法は」
「規模も威力も凄い!滅茶苦茶カッコ良かった!」
「あら、ありがとう」
「俺もブレストも詠唱とかしないからしっかりと魔法使う人初めて見たぜ!」
やっぱちゃんとした魔法は凄いんだな~俺がいつも使う魔法とは威力も規模も違うぜ。
「ふふ・・・・貴方もなのね・・・・どうして私の周りには自由に魔法を使える人が多いのかしら。普通は詠唱をするものでしょ?イリスは何となくで使うしブレスト君は強力な魔法剣を予備動作無しに出現させるし・・・・何でなのよ」
「あれ?」
「あ~気にしないでやってくれ」
「いつもの発作だから」
褒めたつもりなんだけど、何で落ち込んじゃったんだ?
読んで頂きありがとうございます!
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