王都に到着!
森を抜け晴れた視界の先には、草原の中に何物も通さないという意思を感じる立派な石の城壁に囲まれたオレンジ色の屋根が特徴的な街並みが広がり、何よりも白く輝き雄大に主張する大きな城が現れた。そして、王都と同じように輝き主張するあの変な山が右側に見えた。
「すげぇ~あれが王都か!」
「ふ~ここまで来れれば後は楽だな」
森を抜けた先は草原が広がっているのでもう奇襲される心配は無い。周囲を見渡してみたけど危険そうな魔物や動物も居ないみたいだし、後は王都に着くだけだな。よく見てみると、城壁の門の前に人が並んでみたいだ。
「門の前で沢山人が並んでるみたい。何やってるんだ?」
「王都に入る人間を審査してるんだよ」
「へ~」
「あの数だと着いてから暫く掛かるな」
「それでも、少ない方だと思いますよ」
「だな~前に祭りの時期に来たことがあるんだがあの時は半日ぐらい待たされたぜ」
街の中に入るのに半日も掛かるって、王都って特別なんだな~俺達は一応警戒しながら並んでいる列の元まで行き順番が来るまで休みながら待つことにした。暇なので周囲の景色を見ていると、森の中で見たあの変な山が気になったのでブレストに聞いてみる。
「な~ブレスト」
「なんだ?」
「あの山何なんだ?ここからでも分かる程大きな鉱石と宝石が地面から出てるのが見えるし、その近くにある霧掛かっている紫の森なんて変だろ?それに、あの森を見てるとなんかぼやけて見えるっていうか、何か重なって見えるんだよな」
「あ~あれはメジュル鉱山だ。この国で最も宝石や鉱物が採れる山なんだが・・・・」
「そうなんだ。後で宝石取りに行こうぜ!」
宝石ってキラキラして高く売れるから大好きなんだよな~あんなに大きな宝石ならすげぇ値段になるだろうな。でも、あんなに大きな宝石が残ってるってことは、あの山には何か危険があるのかもな。
「やめておけ坊主」
「それは絶対にダメだ」
「悪いことは言いませんから止めておいた方が良いですよ」
危ない山なのかなって思っていたら掃滅の旗とマテバさんは、顔を顰めながら俺を見て言う。顰めた顔に恐怖を浮かべるほど、あの山は危険なのか?一体何が居るんだ?
「あの鉱山には錬金の魔女が居るんだよ」
「ブレストさん様を忘れてるぜ」
「あぁすまん」
「あそこはこの国じゃ一番の禁忌の場所だ。絶対に面白半分で立ち入ったりしちゃいけねぇんだ」
「あの土地は錬金の魔女様の領域ですから、素材を取るのもご法度ですね」
「もし魔女様の機嫌を損ねれば王都だけじゃなくここら一帯が更地になるだろうな。だから、近づいちゃならねーんだよ」
「魔女様の領域なのか・・・・じゃあ駄目だな」
魔女、それは人の領域を超え神秘にまで到達した魔法使いの事を指す言葉だ。ブレストに教えて貰ったけど、この世界で手を出してはいけないものは三つありその中の一つが魔女だ。魔女達にはそれぞれ特徴を表す名称が付けられていて、その殆どが一人で国を滅ぼせるほどの力を持っている。だから、魔女を怒らせれば生きては帰れないし周囲の被害は相当なものになるので決して触れてはいけない禁忌だそうだ。
魔女に会ったことは無いけど、ブレストでも嫌がる相手に俺が敵う訳がないので大人しくしておくか・・・・宝石欲しかったけどな、残念。
「そうそう、触らぬ神に祟りなしだ」
「王都に住んでいる者は決して近づこうとしませんからね」
「魔女様を怒らせる訳にもいかないからな」
「・・・・」
魔女の事を語る掃滅の旗とマテバさんは、話すのもおっかないと言った感じだがブレストはそんなでも無さそう。面倒だな~って顔をしてるし魔女の事を話してる時も普通だったし魔女が怖く無いのかな?
「でも、そんなに怖い魔女がなんでこんな王都の近くに居るんだ?」
少し気になったんだが、そんなに怖がられている魔女が居る場所の近くに国の中心地である王都を作る訳ないし多分だけど後から魔女が来たんだろ?
「それは、錬金の魔女様が昔この国で流行したバラ病の治療薬を作り出し救って下さったから錬金術に必要な素材が採れるメジュル鉱山を差し上げたんだ。それから、錬金の魔女様はずっといらっしゃるんだ」
「バラ病って?」
「全身にバラのような模様が浮かび上がりやがて死に至る病だ」
「そんな病気が有ったんだ」
「あぁ、最後には体の至る場所が膨れ上がりそれはおぞましい病気だったそうだ」
そんな怖い病気を治した錬金の魔女って良い人じゃん。なのになんでこんなに怖がってるんだろう・・・・
「へ~そんな病気を治すなんて凄いな」
「あぁ凄い方だ」
病気を治したと聞いて、そんな凄い魔女さんなら会ってみたいけど近づくことも駄目みたいだしな~全力で気配を消してけば魔女さんに気付かれないんじゃないか?いや、ブレストにも気付かれる程度じゃ魔女さんに見つかるか・・・・残念だ。
そんな事を考えながら錬金の魔女が居る山を眺め待っていると、俺達の順番が来たようで冒険者カードを衛兵に見せて街の中に入ってみると俺が居た街とは違った賑わい方をしていた。衛兵たちに捕まえてきた盗賊を引き渡し、俺は街を眺めてみた、
「おぉ~沢山人が居る」
「相変わらずの賑わい具合だな」
統一された綺麗な建物に通りには頭に獣の耳、腰には尻尾を生やした獣人や、俺くらい背が低いずんぐりとした人など多くの人達で賑わっていた。プリトの街でもこれくらい人は居たけど、こっちは歩いている人達が穏やかというか落ち着いてる感じがする。
「これで依頼は完了で大丈夫ですよね?」
「はい、ありがとうございます。サイン書いておきますね」
「ありがとうざいます。それじゃ冒険者ギルドに報告しに行くか」
「俺達もここでお別れだな。ブレストさん坊主、快適な依頼だったぜ」
「またな!」
「あぁ機会がまたよろしく」
「バイバイ!」
依頼書にサインを貰った俺達は、掃滅の旗と別れ通りを進んで行く。
「ブレストは王都に来たことあるんだよな?」
「おう、少しの間だけだかな」
冒険者ギルドは通りを奥に進み町の中央に近い場所に在った。流石は王都の冒険者ギルドなだけあって、プリトのギルドより大きく立派だ。中に入ってみると、多くの冒険者が話していた。どの冒険者も強そうだし装備も良い物付けてるな~王都の冒険者の様子を見ながら依頼を報告し報酬を貰い俺達は宿へと向かった。着いた宿は火の絵が描かれた小綺麗だが素朴な宿で名前は丸焼き亭というらしい。もうちょっと他の無かったのか?
中に入ってみると、外と同じように綺麗だが温かさが残った木造となっていてカウンターには厳ついオッサンがグラスを拭きながら立っていた。
「ババルさん、どうも」
「ん?ブレストじゃないか王都を出たはずだが・・・・戻って来たのか?」
「はい、また暫くの間お世話になります」
「おう、それでそっちの坊主は?」
「クロガネ!よろしくっ」
「おう、よろしくな部屋汚すんじゃねーぞ」
「はーい」
部屋は艶やかに光る木の家具で統一されていて、二人で過ごすなら十分な大きさだ。俺達は偽装の荷物を下ろし一息つく。
「ふ~やっと王都に着いたな」
「本当に俺でも入れた!」
「言っただろ、それでどうだ?初めての王都は」
「みんな綺麗って感じ。それと冒険者ギルドに居た人はみんな強そうだった」
「王都には冒険者が集まるから、ある程度実力が無きゃ生活出来ないからな。自然と強い奴だけが残るんだよ」
「それと、色々な種族が居るよな!通りに居た果物屋は獣人だったし、トカゲみたいな人も居た!」
「リザードマンな。トカゲって言うと怒られるから言うなよ」
「はーい」
こんなにキラキラした場所に来るのが初めてな俺は、興奮が収まらずブレストに街で見かけたものを色々聞いてるとあっという間に外は暗くなってしまったので俺達は飯を食べて明日王都の散策に行くことになった。
ちなみに、宿の飯は滅茶苦茶美味かったぞ!豚の丸焼きなんて食べたこと無かったけど、部位ごと触感が違うし、ババルさんの特性のソースが沢山あって飽きる事無く全部食べ切っちまった。ブレストがこの宿を選ぶ理由が分かった気がするぜ!
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