閑話:スラムの人々
ある日ベルグが捨てられて痣や傷だらけの黒いガキを連れて来た。黒は闇の象徴であり不吉な存在なのに連れてくるとか何考えてんだよ・・・・まぁベルグは捨てられた子供を見過ごせないから仕方が無いんだろうけど、先が不安だな。怪我の所為で高熱を出し、こりゃ生きられるか微妙だなと思ったが何とか生き抜いたガキは見た目もそうだが中身もかなり異質だった。
ガキだって言うのに泣き言一つ言わず俺達の全てを暴き立てるような目で、見続けるこいつに少し恐怖を感じたが俺達を真似てあっという間に立派なスラムの一員となりやがった。自分より下のガキ共の面倒を見て、俺達の話を聞いてベルグが驚くような意見を言うこいつは俺達と何か違うのかもしれないとは思っていた。
ベルグは心配していたがさっさとスラムを出て一人で生活し始め、隠れ潜んでる孤児たちを助け俺達にも飯を分ける。そんな事を平然とやってのけるあいつが冒険者の才能があるって言われた時俺はあまり驚かなかった。だろうなって感じだ。
俺達を助けてくれたあいつはもうこの街には居ない。あんなガキに心配されなくても、俺達はやっていけるって見せつけてやるよ。帰って来た時、腰抜かして驚かせてやる!あの何時も落ち着いてる顔を崩せるかもと思うと、何だか笑えてくるな。
「マイク、どうしたんだいきなり笑って・・・・気持ち悪いぞ」
「気持ち悪いってなんだよ!さっさと仕事に行くぞ!」
ゴミのように道端に捨てられていたあいつは、拾った時から変な奴だった。弱っていたって言う事もあるだろうが、泣きもせず助けも呼ばずただ小さくなり耐えていたあいつを見捨てられなくなり、拾ってきたがそれからが大変だったな。スラムの連中は全員訳ありで来るもの去るもの拒まずだが、その中でもあいつは異質だった。
闇に溶けるほど黒い髪に黒い瞳、黒に近い髪を持った奴は居るが純粋な黒というのは長年生きてるが見たことがねぇ。話を聞いてあいつの親の面を見に行ったことがあるが、二人共明るい色をしていてあいつとは似ても似つかなかった。
まぁその親も、色々な所から借金してたらしいから今はどうなってることやら。バングスから踏み倒そうなんて馬鹿な奴らだ。
そんな馬鹿な親から生まれた子供は、驚くほど利口だった。俺達も生きなきゃいけねーから、色々な事をするんだがそれを見てあいつはすぐに理解して、流暢に話しやがった時には腰を抜かしたぜ。問題が起きた時は大人顔負けの意見を出していくつも解決しやがった。本当にあいつは凄い奴だよ。
「喜べガキ共今日の飯はパンだぞ!」
「「おぉぉ!」」
「俺はいいから他の奴に・・・・」
グゥ~
「お腹なった!」
「黒いの嘘ついた!」
「うるせぇ、黙って食え!」
「全員分あるんだから、しっかり食え。ほら、お前も」
顔を真っ赤にしながらパンを食った事もあったな。大人びてるが、中身はまだまだガキで背伸びをしちまう所が子供らしくてつい笑ってしまう。見た目の所為で最初は仲間達から怖がられてたが、あの優しさと利口さですぐに人気者になったんだよな。呼び名が無きゃ不便だとあいつに名前を聞いた時、化け物と答えてきて顔を顰めちまったからそれが名前では無いことに気付きやがったので、新しく名前を付けようかと言ったが断られちまったんだよな。なんでも、危ないことをするには名前が無い方が楽だって。だから、今の今まで黒いのとかあいつとか悪ガキとか呼んでたが、あいつが素直に名前を付けられるなんて、相当気を許してるな。
クロガネか・・・・聞いたことも無い言葉だが特別なあいつには似合ってると思うぜ。本音を言えば俺が名前を付けてやりたかったがな。
クロガネに冒険者の才能があると言われて驚くことは無かった。馬鹿みたいに身軽でガキにしては力が有り、そしてなによりあいつは魔法が使える。魔法っつうのは、魔力を身に宿したやつにしか使えず、魔力を持ったやつだとしても学院に行ったり師匠から学ばないと普通は使えないもんだ。話に聞いたところ武器を使って斬撃を飛ばしたりみたいな魔法っていうのは、出来る奴がそこそこいるが何も使わず風を起こしたり風の足場を作ったりするのは魔法士ぐらいなんだと。もしくはスキル持ちだがあいつにはスキルは無い。
このスラムには魔法が使える奴は居ねぇ、誰にも教わらずに出来るあいつは天才さ。
クロガネが連れてきた冒険者のブレストは、俺が見てきた冒険者の中では小綺麗で荒々しさが無いがああいうのが一番油断しちゃならないんだ。クロガネを使い捨てにしようとすれば、すぐに寝首を掻いてやると思ってたがあいつはクロガネを育て上げ二ヶ月で五級にしやがった。他のガキ共にも優しく学を教えたりしてるから、まぁ信用してやってもいい。
あいつが外の世界に憧れを持っているのは前から知ってた。そして、それが出来る才能がある事もな。だけど、あいつはこのスラムとガキ達にとって大事な存在で手放すのは惜しかった。だから、ずっと留めてしまったが・・・・もう自由にさせてやるべきだな。
自分の道を決めたクロガネは今まで見たことが無い程輝いていた。お前にはこの街だけじゃ狭い。お前はもっと大きくって世界に羽ばたけるんだ。引き留めた俺が言える台詞じゃ無いが、賢くてクソ生意気だが優しい俺の息子・・・・元気でな。
「なんだよベルグ、泣くなんて珍しいじゃねぇか」
「うるせぇ、黙って仕事に行け!」
「おっかねーな。まったく・・・・クロガネの口の悪さはあんたに似たんだな」
「俺の息子なんだから当たり前だろ」
わたしはリジー!メグ兄ちゃんにつけてもらったんだ!私はもうお姉さんだから、弟たちを守らなきゃダメなの。だけど、その弟がびょーきになっちゃったの。だから、すこしでもお金がほしくて行っちゃ駄目って言われてる所に言ったら、知らない人達に攫われちゃったんだ・・・・こうなった後のことは私でも知ってる。どこかに売られてみんなとバイバイしないといけないんだ。そう思って泣いてたら、黒いお兄ちゃんが助けに来てくれた!
知らないお兄ちゃんも一緒だったけど、私を檻から出してみんなの所に帰してくれたの。帰ったらみんな泣いてて私も治まってた涙がまた溢れ出してみんな一緒になって泣いちゃった。その後は疲れて寝ちゃったけど、起きたらお兄ちゃんにすっごく怒られちゃったんだ・・・・でも、お金が無いと薬買えないもん!そうだ、マルロの薬どうしよう!?って思ったら黒いお兄ちゃんがお金をくれたんだって!そのおかげで、マルロのびょーきも治ったの!ありがとう黒いお兄ちゃん!
黒いお兄ちゃんのおかげで、どこにも怪我しないで帰って来れたけど、それから少しお外に出るのが怖くなっちゃった。また怖い人に会ったらどうしようとか思うと、よく分からないけど足が動かなくなっちゃうの。だけど、黒いお兄ちゃんはいつでも助けてくれる訳じゃ無いし、私はお姉さんなんだから私が守らなきゃダメ!って頑張ってみたらお外に出れるようになったの!
クロガネお兄ちゃんは街から居なくなっちゃうみたいだし、次からは私達だけで頑張らないと!マルロもお兄ちゃんたちも孤児院に来ている先生に戦い方を教えて貰ったりしてるから、私も教わってきっとクロガネ兄ちゃんみたいになって見せるんだから!そういえば、最近私を助けに来てくれた時に一緒に居た怖そうな人達が私達に食べ物をくれるのはなんでなんだろう・・・・?
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