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帰りはモドリ草

 昼食を食べ終えた俺達は特に疲れてもいないのでさっさと後片付けを済ませると、初めて訪れた燃える森を探索することにした。


「木属性と火属性は相反する属性なのに、こうやって共存するなんて不思議だよな~」


 燃える植物という生物という在り方を否定したような存在に、少し面白くなり燃える葉っぱをつまみながら言う。火とは遥か昔からあるものだが、火は肉体を焼き魂を焦がし命を奪うものであり恐れられてきたものだ。火を扱えるのは知性のある者か火属性に適応した者のみで、魔物であれば理解できるけど植物という火が弱点である存在が火に適応なんて不思議だ。


「実は共存しているわけじゃないんだぞ」

「え?」

「その植物達は火属性を養分に出来るよう体を作り替えたんだ。つまり、こいつらにとって火は餌であり外敵への攻撃手段でもある。だから、共存じゃなくて木は火の上位にあるんだ」

「んへぇ~弱点を餌にするなんてとんでもないな」


 弱点を克服するだけならまだ分かるけど、弱点を克服するだけじゃなく餌とししかも身に纏うなんてどんだけ逞しいんだよ。


「この世界の生き物は生きていれば必ず魔力が宿ったものを口にするだろ?人間なら肉や果物に空気、植物なら大地に巡る魔力とかな。長期的に魔力を取り入れていれば良し悪しに関わらず絶対に魔力の影響を受けるもんなんだ。この木達は大地に宿る火の魔力を長期的かつ継続的に吸い取っていたからそういう道に進化したんだろうな」

「じゃあ、雷の魔力が宿っている大地に普通の植物を植えたらそのうち雷の植物になるってことだよな?」

「その植物が適応出来るかによるがその通りだ」

「なんかいつも使ってるし身近なものだからあんまり考えたこと無かったけど魔力って凄いんだな」

「そうだぞ~魔力はこの世界を作り出しすべての現象を起こす世界の力だからな。そして、法則を操り改変する力でもあるから魔法ってのは強力なんだ」


 魔力は万物に宿っていると言われ、大地を潤す雨、命を奪い燃やす火、季節を告げる風、気付かないほど小さな虫にでさえ魔力は宿っている。この世界で起こる全ての現象には魔力が絡んでいて、魔力が無ければ何も起きず命も生まれない世界となってしまうだろう。俺は昔から自覚出来るほどの魔力を持っていて、小さな頃から魔力と親しんでいたからあんまり意識してなかったけど、魔力って不思議で凄いもんなんだよな~


「魔力か~魔力って不思議だよな~」

「何を今更」

「俺たちがこうして生きてられるのは魔力のおかげで必要不可欠のものなのに、意識をしなければ目に見えないし、人によっては感じられない。無いようであって、無ければ困るのに触れず味も匂いもしない。殆どの人は魔力を操れず本当に存在するのかと思ってしまう程さりげなくささやかなのにこの世界を作っているなんて不思議だろ?」


 俺は大量の魔力を身に宿しているからこうやって魔力を感じ見る事が出来るけど、魔力の少ない人間は魔力を感じることも見ることも触れることも出来ない。傍にあり欠かせないものなのに知覚が出来ないのだ。


「そうだな~魔力を知覚するには魔法を使うのとは別の才能が必要だからな~確かに世界の全てとも言えるのに感じられないのは不思議だ」

「だろ?」

「まぁ、魔力ってのはこの世界の全ての魔法師が生涯を掛けて研究をしてるが、未だにその仕組みや効力、構成になぜ属性が現れるのかとか全く分かっていない謎の物質だからな~魔力の全てを知ってるのは神ぐらいだろうな」

「魔女は?」

「魔女もこの世界の逸脱した存在ではあるが魔力に縛られた存在だ。だから。この世界の全てであり始まりである魔力をすべて理解してるとは思わないな。ヘルメアなら・・・・いや、あの人自身が神秘というか例外中の例外だから微妙そうだな」


 俺達冒険者や魔法を使う者は魔力を自由に操り支配していると思いがちだけど、それは違う。魔力が無ければ命は無く、魔法は無く、現象も無い。どんな事にも魔力が関わりどれだけ偉大かつ強大な存在、例え古代竜エンシェントドラゴンや魔女でさえ魔力に囚われ支配されているのだ。俺達はただ魔力に生かされた中でほんの一部の魔力を扱っているだけ。


「それじゃあ、本当に魔力の全てが分かるのは神だけなのか~」

「クロガネも研究してみるか?」

「いや、面倒くさそうだからいいや」

「そうか」


 魔力、それは魔法を探求するものが辿り着こうとする真理なんだろうけど、俺は別に魔法を探求するつもりはない。俺にとって魔力は全てに宿り全て作り出す神秘の存在であり、そこにあって当たり前の命の力であり戦うための道具でしかない。魔法を研究し魔法を作り出す魔法師達は生涯を掛けて、魔法の根源である魔力について研究すると聞くけど俺は研究者じゃないからそんな面倒なことをするつもりはないぜ。


魔力は魔力、それで良いじゃんか。


「逆にブレストは魔力について研究しないのか?」

「俺は冒険者だぞ?」

「あんなに魔法を作っているのに?」


 俺は魔法は便利なもので使えれば良いと思ってるから魔力なんて研究するつもりはないけど、ブレストは分厚い魔導書を埋め尽くすほどの数の魔法を作っている。よく俺も読ませて貰ってるけど、どの魔法もブレストの拘りを感じられるし、いつの間にか新しい魔法が書き足されているし魔法が好きなんじゃないのか?


「魔法を作るのは趣味みたいなもんなんだよ。魔法は好きだけど魔力を研究しようとは思わないな」

「そうなんだ~」


 ブレストが作る魔法はどれも不思議でかっこ良く見たことのないものばかりですごく面白いのだ。パイルバンカーって書いてあった魔法は高威力かつ見た目もカッコ良かったし、前に言われて分からなかったレールガンってのは長距離からの狙撃して相手を粉砕するんだって。俺では思いつきもしないような発想や仕組みが沢山あって勉強になるんだよな~あれは全て趣味だったのか。


「魔法を作るのは楽しいぞ~クロガネもやってみるか?」

「ん~楽しそうだけど難しい事はわからないぞ」


 魔法の概要は教えてもらったけど今でも魔法は感覚で使っているから魔法の作り方なんて知らないし、正しい魔法をつくれるとはおもえないんだよな。


「別に難しい事を書けって訳じゃないんだぞ。自分の考えた魔法をただ書けばいいのさ。別に魔導書なんて弟子を取るかや世間に公表しない限りは見せたりしねーんだからよ」

「そんなんでいいの?」

「あぁ、そうだぞ。俺のだって魔法の形や仕組み、それに効果なんかは書いてるけど理論的なもんは書いてないだろ?」

「確かにー」


確かにいつも読ませて貰ってるブレストの魔導書は今まで読んできた魔導書と違って小難しいことは書いてなかった。だからこそ、沢山の魔法の図鑑みたいな感じで読めて面白いんだよな


「魔導書なんて自分専用のメモ帳みたいな認識で良いんだよ。どうせ俺の魔法は他のやつには使えないしな」

「メモ帳って・・・・それ聞いたら魔法士が怒るぞー」


魔法士の宝であり財産そして人生を捧げ、ものによっては何代も継承される魔法士の魂とも呼べる魔導書をメモ帳扱いしたブレストの呆れながらも、少し興味が湧いてきたな。確かに誰かに見られる訳じゃないなら、自由に書いちまえばいいか。


「まぁ興味は湧いたから考えておくよ」

「おう」


魔法のことについて色々話ながら歩いてはいるが、一応森の中なので絶えず魔物は襲ってきてはいるのだがブレストが瞬殺しちまうから出番無しだ。なので俺は最後の依頼品であるモドリ草を見つけることにした。


まぁとは言っても・・・・



「あ、みっけ」

「モドリ草だな」


簡単に見つけてしまったモドリ草。これは植物の成長薬になる植物で種が埋まった所を何者かが通った道を塞ぐように急速成長する不思議な植物なのだが、一刻もすれば枯れてしまうという惑わす気があるのか無いのかよく分からない植物なのだ。


「だけどこれ弱々し過ぎるなー」


この性質から見つけるのは物凄く簡単なのだが、もう一つ特徴的な性質があってそれは踏んだ者の魔力の量によってその効能の強さが決まるのだ。


「どっかの小動物が踏んだんだろ」

「ブレストが踏んでくれれば十分なやつになるんだけどなー」

「埋まってる場所が分からないとなークロガネいつもの索敵でみつけられないのか?」

「そんな万能なやつじゃないっつーの」


無茶言わないで欲しい。獣や魔物みたいに存在が分かり易ければ見つけられるけど、植物は周囲の植物に馴染み溶け込んでしまうので単一の種類を見つけ出すなんて、よっぽど特徴的な植物じゃなきゃ無理だ。モドリ草なんて、踏んだやつの魔力を吸って成長するからそれまで気配無いし見つけるのはむーりー


「ブレストの魔力を張った索敵はどうなんだよ」

「クロガネと同じで魔力と動きが無いと無理だな」

「だよな~」


 俺達は雑談をしながらもモドリ草の種が埋まっている場所を探しながら周囲を歩き、時間をかけようやく見つけて採取できたので町へと戻ることした。

読んで頂きありがとうございます!

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