表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
189/191

剣筋はしなやかに

 ブレストはイビルフライの時の様に自身へ結界を張る事無く爆裂樹の元へ歩き出しあと一歩で反応範囲へと入る場所まで立ち、背後で観察する俺に説明するように話し始めた。


「爆裂樹の種攻撃で厄介な部分は無数の細かな種が同時かつ広範囲でランダムに襲って来る点だ。だからこれさえ何とかしちまえば怖くなんかない。普通の対処法としては支援魔法を貰い火耐性と打撃耐性が高い鎧に包み盾を構えたタンクが種を受け止める方法や結界など魔法を使い防御する方法がある。どちらも種による同時攻撃を耐えることが前提の手法だ」


 ブレストの言う通り種の攻撃を耐える事が出来るのであればその方法で種を回収するのが効率よく安全だ。だが、種は一つ一つが骨を砕き岩を割るほどの威力があるのでそれを無数の同時攻撃で耐える防御なんて本職のタンクでなければ無理だ。


「それでは防御力が無い者が回収するのであればどうするか。それは簡単で攻撃する事によって種の勢いを消すんだ。この種は岩をも砕きめり込むほどの頑丈さを持っているから剣や魔法で攻撃したって傷付きやしないからな」


 そう言ってブレストは腰に携えている剣を抜くとそのまま爆裂樹の反応範囲に入る。足を踏み出した瞬間その振動を捉えた爆裂樹はそれに合わせ実っている実を一つ落とした。そしてその実が地面に接触すると強烈な破裂音と共に実が弾け周囲に全てに無数の種が弾け飛ぶ。それを見たブレストは剣を構えると前へと足を進め右に左にとステップを踏むかのように動きながら高速で飛んで来る小さな種を全て綺麗に剣を振りかぶり種を全て叩き落としてしまった。


カンカン カカカン キーン カカカ


 剣に種が当たり甲高い音を響かせる。


「確かに無数の種は脅威だが全てが同時に来る訳じゃない。その弾道とどの種が一番早くどの順番で自分に当たるのかそして、自分の身体が何処にあるのかを瞬時に分析して判断するんだ。分析出来ちまえばこうやって体を動かして種を捌けるんだ」


 さも簡単そうに俺の方を振り返っていうブレスト。俺はその光景と技術に愕然としながらも出た言葉は・・・・


「キッ」

「キ?」

「キッッッッモ!!!!!!!!」

「酷くないか!?」


 嘘だろあの高速で飛んで来る無数の種を剣で全て捌き切るとか一体どうなってるんだよ。剣の動きは俺でも見えないくらい早かったし何であの小さな種に的確に剣を当てられるんだよ!!いや、その技量は凄いし尊敬もするけど流石にそれはキモさが勝つぞ!


「何で全部捌けるんだよ・・・・」

「流石に全部じゃ無いぞ。剣で捌き切れないのは体を動かして避けて、体が抜ける隙間が無いなら剣で作ってるんだ。全てを捌く必要無くて自分に当たらないモノを正確に判断して自分に当たるモノだけを処理する。これは爆裂樹に限らず色々な戦闘で役に立つぞ」


 言ってることは分かるしどういう動きをしてるのかも理解してる。だけどそれを実現させるには相当な腕が無ければ無理だ。


「いや、分かるけどさ・・・・何であのほぼ同時に来る種を剣で捌けるんだよ・・・・」

「さっきも言っただろ同時じゃ無いって。来る順番が分かってるならそれに合わせて剣でなぞれば簡単に撃ち落とせるんだ」

「そんな速度でナイフは振れません~」


 順番が分かったとしてもその速度でナイフを振るなんて無理だよ。例えば12発が一秒で来るなら12発の攻撃を1秒で繰り出さないと駄目なんだろ?


「早く振る必要は無いんだ。クロガネは一撃一撃は鋭く次の攻撃に繋げる動作も滑らかだけど、一撃が硬いんだよ」

「硬い?」

「そう、一撃で確実に傷を負わせようとしているから剣の軌道が真っ直ぐかつ正確なんだ。良い事でもあるんだけど、武器は鋭さだけじゃなく柔軟性も大事なんだ。よく見てろよ〜」


 そう言ってまたブレストは爆裂樹へと近付くとそれに反応し2つの実が地面へと落下し弾け飛ぶ。それをブレストは焦る事無く前へと進み体を動かしながら手首をしならせまるで蛇のように柔軟かつしなやかに剣を動かし種を叩き落とした。


「こうやって手首を使って剣筋を滑らかつ動かすんだ。波線や文字を書く時みたいにな」

「なるほど・・・・」


 俺が分かりやすいように速度を落としながらやってくれたみたいで今度ははっきりとその剣筋を見ることが出来た。剣ってあんなしなやかな動きが出来たんだな・・・・・


「こうやって動かすと同時攻撃にも対応しやすくなるし、剣筋が読まれにくくなるから覚えた方が良いぞ。クロガネのナイフの太刀筋は自己流かつ今まで普通くらいの切れ味とクロガネの筋力だと力を籠めないと期待する威力が見込めないから、鋭く速い動きが癖になってるんだ。だけど、今はナイフの性能も良いし魔法やしなやかな動きだって身に付けたんだから癖を直しつつ新たな動きを学ぼうな」

「分かった!」


 確かに言われてみれば俺の力じゃ傷を付けるのも大変だから、鋭く速い一撃を繰り出せるように無意識に振ってたな・・・・あの動きが出来るようになったら戦術や戦法の幅が広がりそうだし絶対覚えてやるぜ!


「うん、良い返事だ」


 そう言ったブレストはまた前へと進み爆裂樹の実を反応させ種を叩き落とす。俺はその一挙手一投足を逃さないようしっかりと観察する。


なるほど、手首をああやって動かせばあの剣筋を描けるのか。腕じゃなくて肘も使ってるし体の動きに伴ってナイフを剣を動かす方法もあるのか・・・・あの種の隙間は無いぞどうやって捌くんだ?あぁ叩き落とした場所をなぞる様に体を動かして避けるのか・・・・ただ防ぐだけだったら姿勢を低くして攻撃の当たる面積を減らしても良さそうだな。空中に逃げるのは悪手だけど俺なら風の足場を使った立体的な動きが出来る。


 ブレストの動き全てが学びで何度も見たことにとって種の軌道や順番は判断出来るようになったけど、まだああやって動かすのは無理だな。


 俺は立ち上がりナイフを構え飛んで来る種の軌道を見ながら動きを試してみてるが、全然上手く行かないな。だけど、こういうのは繰り返し練習するのが大事だ。ブレストが避けるのを真似したり自分ならではの動きで避ける演習を行い、頭の中で自分がすべき動きを想像をする。それを繰り返していると、やがて爆裂樹が爆発音が聞こえなくなってしまった。


「ふぅ~裏にはまだ残ってるみたいだけど表はこれで全部だな。クロガネ回収を手伝ってくれ」

「ん?あぁ今行く!」


 しなるナイフの剣筋の練習に集中し過ぎて声を掛けられ終わったことに気付いた俺は急いでブレストの元に行き拾うのを手伝う事にした。裏にまだ残っている実が反応しないよう距離に気を付けながら落ちている大量の種をマジックバックへ入れて行き、ブレストは収納スキルを使って範囲収納をしていく。


「それ便利だな」

「まぁ制限はあるけど便利だぜ」

「どんな制限?」

「魔法が掛かってる物や魔力が大量に宿ってる物、それに所有者が決まっている物や生きている物は遠隔で収納は無理だな。それに射程は1メートル程度だ」

「へ~そんな制限があったんだ」


 ブレストの収納は少し離れた場所の物でも収納をすることが出来るけどある程度の制限が掛かってしまうらしい。そうだとしても便利で強力なスキルだと思うけどな。


「さっき俺の動きを見ながら動きを練習してたみたいだがどうだ?」

「ん~体の動かすことは出来るけどナイフの軌道を描くのがいまいちだな。どうしても少し角ばっちゃうし、柔軟な線を描くのが難しい」

「癖はそうそう修正できるもんじゃ無いからな~毎日コツコツ意識してやれば自然に出来るようになるさ」

「うん、練習する」


 さっきの動きを見て何が必要で何処を使うのかは理解できたから必要なのはそれを自分に当て嵌め体に叩き込む作業だ。これにはどうして時間が掛かっちまうけど意識すれば身に付くはずというか、絶対に身に付けてやる。そう決めながらも大量に落とし過ぎた所為で終わりが見えない種を二人でせっせと回収していった。




※大事なお知らせ

現在PCが壊れてしまい、執筆が難しい状況となってしまっています。経済的な理由もありすぐに新しいPCを購入するのは難しいため今後は更新が不定期となってしまいます。楽しみに待ってくださってる方には申し訳ありません。自分も色々と方法を模索してみますがご理解のほどお願いします。

読んで頂きありがとうございます!

コメント・感想・評価・ブックマークお願いします。

基本毎日投稿しており、時間は決まってません。

twitterで更新状況を発信しているので、宜しければフォローお願いします。

#悪ガキと転生冒険者

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ