クラッシャーギガント
ジャイアントキリングベアを倒した俺は少しの休憩を挟み、水場によく居るという事で川か池を探すことにした。水の気配は分かり易くてすぐに見つかると思うけど、生き物にとって水と言うのは生命線であり生活の場だ。つまり、沢山の魔物達が水場付近に居る訳で・・・・
「うわ~・・・・クラッシャーギガントは居たけど周囲に魔物が居過ぎだ。今仕掛けたら大混戦になっちまうな」
目的のクラッシャーギガントを見つけることは出来たけど、水を求めてやってきた魔物が多すぎる。今の所互いにやり合う様子は無いし、周囲の魔物が居なくなるまで様子を見ないと駄目だな。
「だな~」
「孤立するまで少し待たなきゃ駄目だな」
「それじゃあ時間掛かり過ぎだろ。集まってくる魔物は全部相手してやるから行ってこい」
「え」
「大丈夫だって、ほら行ってこい」
え~混戦の中に入って相手を倒すのは好きだけど、自ら混戦を起こしてその中心になるのは嫌なんだけどな。ブレストが言うなら本当に直ぐに倒してくれて混戦には成らないんだろうけどさ~はぁやるしか無いか。俺は準備として鎖を作っておく。
「んじゃ行ってくるけど本当に直ぐに倒してくれよ!じゃないと俺死ぬからな!」
「任せとけって」
俺はその言葉を信じ茂みから飛び出るとクラッシャーギガントへ急接近する。鈍くノロいクラッシャーギガントはまだ俺に気付いていないが、水を飲んでいたウィンドホークは俺に気付き魔法を使おうとしたが音も気配もなく出現した剣に貫かれた。他にも俺に気付いた魔物達は居るが全て一度にブレストによって倒されてしまった。
相変わらずエグイな~
ブレストの魔法に感服しながらも俺はクラッシャーギガントの首元へとナイフの一撃と共にクロスボウを放ったが皮膚にはかすり傷すら付いていない。
「ウルゥウウウウ」
ようやく攻撃されたことに気付いたクラッシャーギガントは低く響く唸り声を上げながら俺を認識した。
「よしデカブツこい!」
クラッシャーギガントは二メートル程度の人型で、魔法や石化の瞳や毒の息と言った特殊な戦い方をする魔物では無い。だが三級の魔物として指定されているからには相応の理由がある。その理由とは・・・・
「グルガァアアア」
雄叫びと共にクラッシャーギガントは両腕を大木のような大きさに変化させると地面を叩きつけた。俺はそれを見て空へと逃げると地面は鈍い音を放ちながら振動し周囲の石や岩は崩れ去った。
「ふぅ~危ない」
これこそがクラッシャーギガントが三級に指定されている理由だ。こいつは、両腕を変化させるスキルと身体を強化するスキル、そして振動を扱うスキルを持っていてその腕から放たれる打撃は地面を揺らし相手を粉砕する程の威力を誇る。理性も無く暴れまわるからこいつが暴れた後には砕け散り砂と化したモノと地面に赤黒い染みが残るのみ。クラッシャーの名に違わない破壊力を持った魔物がクラッシャーギガントなのだ。
「まずは・・・・あっぶな!!」
地震は効かないと理解したクラッシャーギガントは空中に居る俺に向かって拳を振りかぶる。それと同時に風と一緒に振動波が俺に飛んできた。それを風の足場を作りより上に向かって逃げるが、格闘家顔負けのラッシュを繰り出し次々と破壊力を秘めた振動派を飛ばしてくる。
やばいやばいやばい、これ避け続けられない!!!
俺は何とか空を飛び回り避けてはいるがこの振動波は風の刃と違い線では無く面に対する攻撃、つまり隙間が無いのだ!腕がブレて見えてしまう程のラッシュと同じ数の振動波の数は空を埋め尽くすほどで俺が抜けられる場所は無くやがて追い詰められて当たっちまう。不味い、あれを止めないとだけど避けるのに精一杯だし近付けもしない。
あぁもう、本当は違う使い方をしたかったけど仕方が無い!
背に腹は代えられないと俺は攻撃用に作っておいた闇の鎖を発動させ、クラッシャーギガントへと襲い掛からせた。それに気付いたクラッシャーギガントは振り返り拳を振りかぶり一発の振動波で無数の闇の鎖は粉々になってしまったが、これで少しは隙を作れた。俺は視線が外れている内にクラッシャーギガントへと急接近し膝を斬りつける。
ズバッ
よし、浅いけど傷はついた!
攻撃されたクラッシャーギガントは振り返りながら振動波を纏った左の拳で殴り掛かるが俺はクラッシャーギガントを飛び越えまた背後へと周る。
振動波は攻撃範囲が大きく近接戦でも途轍もない脅威だ。普通の拳であれば正面で攻撃を避け続けられるけど、あれは無理。拳を避けても不可視の振動波飛んできて体中を破壊して死んじまう。だから絶対に正面からやり合っては駄目だ。幸い拳の動き速いけど体自体はそこまでの速さじゃない。十分後ろに回って攻撃出来る。
ザシュ
先程付けた傷をなぞり抉る様に斬り付けると少しだが血が流れた。よし、この調子!振り返られたら足の隙間、頭上、体の横を通り抜け背後へと周る事を繰り返していくと少しずつだが傷とダメージを負わせることが出来ている。これなら何とかなりそうだな。
「グオオオオォォォォ」
クラッシャーギガントの両膝の裏は深く血を流す一本の線が深く刻まれている。まだ浅いけど繰り返せば膝を両断できるはず・・・・俺はもう一度斬り付けると同じ様に背後へと周ろうとした。
正面を避けて・・・・振り返らない!?拳の先は・・・・やば、離れないと。
急に行動を変えたクラッシャーギガントは両拳を地面へと向けている。それを見た俺は急いで離れると拳が地面へと当たりその地点を中心とした周囲に空気を震わせ衝撃波を発生させた。
ふ~あぶね~そりゃ生き物なんだから効果が無いと分かったら行動を変えてくるよな。流石に切断まで行くには見通しが甘すぎたな。だけど、手を抜いても相手を舐めてもいない。距離が離れてしまったが俺は冷静に魔法の矢を作り出し、傷目掛けて飛ばす。無数の魔法の矢にクラッシャーギガントはもう一度地面へ振動波を纏った拳を叩きつけ衝撃波を発生させ魔法の矢を書き消したが、大きな隙が生まれてしまった。
両膝がガラ空きだっつーの!
魔法を使う時間が生まれた俺は素早く背後に周り両膝を雷の魔法と風の魔法をナイフへと収束させ左の膝裏を両腕を使い強く踏み込み斬り付けると、切断まではいけなかったが殆ど切れているような状態まで持って行くことが出来た。
「グアガアアアア」
痛みで叫びながら片膝を付き跪きながら暴れ殴ってくるが頭上を飛び越え正面に周ると悲鳴を上げるクラッシャーギガントの喉元を斬り裂いた。傷から大量の血が吹き上がりどう見ても致命傷だけど油断しては駄目だ。血を大量に失い始めて朦朧としながらも拳を振りかぶってくるので俺は距離を取りクロスボウへと魔力を籠め額を撃ち抜いた。
「よし、終わりだな」
「お疲れさん、危なげは無かったな」
「神経は使ったけどな~」
ふ~ジャイアントキリングベアにクラッシャーギガントどっちも攻撃を常に避け続けながらの戦闘だったけど断然クラッシャーギガントの方が辛かったな。範囲は広いし少し間違えば体はぐちゃぐちゃになるし、こいつ相手じゃ防御力なんて意味をなさないもんな~
「だが良い戦いだったと思うぞ」
「でも時間掛かったな~参考までに聞いておくけどブレストならどう倒す?」
「あの形態になる前に首を斬り落とす」
「おっけ~聞いた俺が馬鹿だった」
クラッシャーギガントが身体強化していない時は全ての力を防御に回していてジャイアントキリングベアの毛皮より何倍も硬いのだ。だから、あの形態にして肉質が柔らかくなってから倒すのが定石なんだが、それを無視して首を落とすとかアホか。
「何だよその反応」
「参考にならないからだよ!」
「え~先手必勝これ大事だろ」
「そうですね~」
俺は適当に返事をしながらクラッシャーギガントをマジックバックの中に入れた。
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