旅立ちの日
起きて外を見てみると、空は明るく太陽は高い位置にあった。昼間で寝ちまったみたいだな~・・・・ブレストは居ないし何処行ったんだ?探しに行こうとベットから立ち上がると、扉が開きブレストが帰ってきた。
「起きたか」
「何処に行ってたんだ?」
「飯の調達だ、腹減っただろ?」
「めっちゃ空いてる!!!」
起きる前までは腹は空いていなかったが、起きてからは何でも良いから腹に入れたい程腹が空いてる。実はブレストを探すよりも何か食べに行きたいと思っていたんだ。
「色々買ってきたから、好きなだけ食べろ」
「ありがとっ後で金渡す!いただきます!」
ブレストは収納から、熱々の肉串や野菜と肉が沢山挟んであるパン、具材が沢山入ってるシチューはどれも出来たてで美味い!次から次へと出てくる食い物を、かきこんでいく。こんなに腹が減ったのは三十日ぐらいまともに食べれなかった時以来だ。
「金のことは気にせず、食え食え。あんなに魔力を消費したんだ回復するためには沢山食え」
「すげぇ腹減ってるけど、魔力と関係あるのか?」
「魔力を持った人間にとって魔力は生命力みたいなもんだからな。枯渇すれば命取りになるし回復するためにはエネルギーが必要だから魔力を沢山使うと腹が減るんだよ」
「なるほど~だから、冒険者ギルドの食い物ってあんなに大盛りなのか」
「そうだ、魔力を大量に身に宿している奴らは総じて大食いだから」
冒険者ギルドの中にある食堂のメニューはどれも大盛りで普通の人は食べれないだろって量なのだ。沢山食べられるからよく使ってるけど、そういう理由だったのか。
「食べ終わったら、持ち帰った物の査定と鑑定をしに冒険者ギルドに行くぞ」
「はーい」
ダンジョンから帰って来た時に説明されたけど、冒険者ギルドでは謎の魔道具や武器についている付与などを鑑定してくれる鑑定士か鑑定の魔道具を置いてるらしい。だから、ダンジョンから持ってきた物を鑑定して貰って買い取ってもらうのだ。あのクロスボウが気になるから俺は残った飯をかきこむ。
「よし、終わった!」
「はい、ごちそうさま」
「ごちそうさま!」
これはブレストに教えて貰った食事の挨拶。聞いたことの無い言葉だけど教会とかの奴らも同じような事をしてるから多分同じ意味だと思う。
俺達は立ち上がり宿を出て冒険者ギルドに着くと中にはそこそこの人が居たが、査定の場所はダンジョンが在る街なだけあって沢山あるので問題ない。なので俺達は自分が使う分は残して殆ど買取に出して、クロスボウと鞄は鑑定してもらう事にした。
「今回鑑定させて頂きますメルルです。今回はこちらの二つの物を鑑定するという事でよろしいでしょうか?」
「そうです」
「畏まりました。それでは早速鑑定させて頂きます」
そういってメルルはクロスボウと鞄に目をやる。鑑定とは一部の人間が持っているスキルの一つで物の性質や使い方を調べることが出来る力だ。初めて鑑定を使う人を見るので俺はじっくりと見ていると、一瞬目の色が明るくなったような気がした。
「申し訳ありません。鞄の方は鑑定が出来たのですが、クロスボウの方は鑑定が弾かれてしまい呪いが無いことしか分かりませんでした」
「そうなのか・・・・」
「現在このギルドには私以上の鑑定能力を持つ魔道具も人もおりませんので、大変申し訳ありませんが鑑定不可とさせて頂きます。王都であれば、私以上の鑑定士が居りますので、どうしても鑑定をしたい場合はそちらに行かれることを推奨させて頂きます」
「ありがとう、鞄の方が分かっただけで十分だ。それで、鞄の詳細はどうだった?」
「こちらの鞄は大容量のマジックバックになっています。効果としては、時間停止、生物不可、種類制限なしですね」
「なるほど、良いものだな」
「鑑定書をご入用でしょうか?」
「いや、大丈夫だ」
「承知いたしました。査定が終わるまで、暫くお待ちください」
鞄は鑑定できたけどクロスボウは駄目だったのか~残念。スキルのことについても教えて貰ったけど、同じ名前のスキルでも所有者によって強さが違うらしい。だから、ここの人じゃ無理なものでも高位のスキル持ちならもしかして分かるかも。まぁ呪いは無いみたいだし一回使って見て自分で調べた方が早そうだけどね。
「良かったなクロガネ、大容量のマジックバックなんて大収穫だぞ」
「おう、これで道具とか色々持たなくて済む!」
「クロスボウは残念だったが・・・・試してみるか?」
「そのつもり~それ凄く気になってるし使って見たいんだよね」
もしボスが使ってたみたいに使えるなら、強力な武器になるし一目見た瞬間から気に入ってたんだよな!もし、難しくても使いこなして見せる。
俺達は暫くの間査定が終わるまで話し合い、金を受け取ると俺の代わりのナイフを探しに行ったが特に気に入るものが無くて残念だ。
「本当にそれでいいのか?」
「うん、前のやつと似てるし特別好きな訳じゃ無いけど使えるし」
「王都に行く予定だし、王都で代わりのナイフを探すか」
「おう!」
武器を探したり飯を集めたりしながら、数日間を過ごしダンジョンを突破した俺は晴れて旅の許可を貰えたので旅の準備も進めていく。俺が居なくなっても良いように、出来るだけ手を回しておかないとだから・・・・あの人に話しておくか。そんな事をしていると、あっという間に街を出る日になってしまい最後の挨拶に行くことにした。
「よう、元気してるか?」
「あ~クロガネだ~」
「元気みたいだなリジー」
「うん!」
「クロガネ~リンゴ食べる?」
「大丈夫だマルロ、自分達で食べな」
「は~い」
「今日はどうしたんだ?」
「街を出るから最後の挨拶にな」
「そうか・・・・生き残れよ」
「クロガネは強いから大丈夫だよ~」
「僕も体を鍛えてるから、次は僕がみんなを守る!」
病気で倒れたマルロは薬が効いたようであっという間に元気になって今では兄達と勉強に行くぐらいだ。リジーは最初の頃は外に出られないくらい辛そうにしてたけど、スラムのガキ共の強さを舐めちゃいけない。どんどん元気になっていき、笑顔がこぼれる様になった。街を出ることを伝えると、少し寂しそうな顔をしたがすぐに笑顔になり喜んで見送ってくれた。こいつらは・・・・もう大丈夫そうだな。飯を渡し最後にベルグの元へ向かった。
「よう、生きてるな」
「俺は早々くたばるつもりは無いぜ」
「じゃなきゃ困るからな」
「どうしたんだ、今日街を出るんだろ?」
「最後の挨拶に来たんだよ。前にも言ったけどハゲの店とかに話しておいたから金持ってくの忘れるなよ。それと、新しいガキ共にはルールを絶対守る様に言い聞かせること!もし、スラムの奴らだけで解決できないヤバい事に巻き込まれたらバンクスのバルドに話は通してあるからそっちに助けて貰え。金は前に渡したのが沢山あるから考えて使えよ。それと・・・」
「分かったって!お前は俺の親かっ!」
「こんなよぼよぼのジジイの子供なんて居る訳ないだろ」
「んな心配しなくても俺達は今まで通りやっていくさ。お前はお前の道を進んで行け」
出来るだけの準備や手は回しておいたけど心配なものは心配なのだ。
「分かってるよ」
「ほら、さっさと行きなバカ息子」
「分かってるよクソ親父」
「じゃあな、元気でやれよ」
「おう」
俺を生んだ奴らのことは少し覚えているけど、俺の親はベルグだ。こんなスラムに残していくの凄く心配で寂しいけど、背中を押してもらったんだ。ベルグが驚いて腰を抜かすぐらいの冒険者になって、必ず帰ってきてやる。俺は濡れた目を拭いながら、ブレストとの待ち合わせ場所へ走った。
「挨拶は済んだか?」
「おう、バッチリだ。時間には間に合ったよな?」
「少し余裕があるくらいにはな、じゃあ依頼主の所行くぞ」
「おう!」
丁度この街から王都までの護衛依頼が来ていたので、他のパーティーと合同でその依頼を受けることにしたのだ。街から遠く離れるのは初めてで期待で胸を膨らませながら依頼主の元へ向かった。
「さぁ、王都行くぞ!」
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