薬を買って明日に備えよう
「その毒が効かないんじゃ、インフェルノマッシュの毒も効かなそうだね。・・・・こんなこと言うのは薬師としてどうかと思うけど解毒薬居るのかい?」
「ブレストは使うし、万が一の時や襲われてる人を助ける為には必要だと思う」
「そうかい、それじゃあ他には・・・・」
ライフさんに勧められた薬を次々と買っていき、この周囲にいる魔物に対する薬を一通り買えた。薬の数を見て思ったけどこの森毒性生物が多すぎないか?確かに森には毒を持った生き物が沢山居るものだけど、普通はここまで多くはならない。何か毒を持った生き物が生まれる要因があるんだろうか?
「これで大体の毒は何とかなるはずだよ。もし、手持ちで対応できないならすぐに私所に来なね。何とかしてやるさ」
「その時はお願いします」
「ライフさん、この森毒を持った生き物多すぎませんか?」
分からないことは聞くのが一番!ライフさんは薬師だけど魔物についても詳しく何より遥か昔からこの町に居るみたいだから何か知ってるかも。
「あぁ、それはね。この町と言うか私達植人の性質が原因なのさ」
「ん?どういう事なんだ?」
ブレストは言っている意味が分からなかったようで、首を傾げながら言う。俺もよく分からないな。何で町と植人の所為で毒を持った生き物が増えるんだ?
「ん~話が少し長くなってしまうけど良いかい?」
「あぁどうせこの後することは無いから大丈夫だ」
「それじゃあ、お茶でも飲みながら話そうかね」
そう言ってライフさんが手を振ると木の枝が部屋の奥へと伸びて行き、ティーポットとカップそしてテーブルに椅子が運ばれてきた。俺達はそれを有難く使いながらライフさんの話を聞くことにした。
「昨日スターリア様の所に行ってきて私達植人の歴史について聞いたとペシェに聞いたよ。と言う事は私達植人の性格について知ってるね?」
「穏やかかつ戦闘には向いていないと聞きました」
「その通り、一部の植人は冒険者をやるほど活発だったりするけれど大多数は戦いに向かず平和主義なのさ。よく言えば争いを好まない穏便な種族だけど、悪く言えば抵抗する術を持たず変化が乏しい種族とも言えるね」
「それは・・・・」
「良いのさ。植人である私が言うんだから」
ライフさんは自虐的に笑う。確かに植人はその性質の所為で昔に大きな事件となったけれど今はスターリア様達、つまりガーディアンツリーとなった人達が守っているからもう問題は無い筈だ。
「確かに色々な問題はあるかもしれないがスターリア様がそれを解決したはずでは?」
「まぁね。植人の生存については大体は解決したけど、森の環境はそうとも言えないのさ」
「ん?正常に戻った筈では?」
「こんなに植物が生い茂って、生き物も沢山居る森なんて中々無いだろ?かなり豊かな森だと思うけど・・・・」
一回この森は壊滅する程の被害に遭ったみたいだけど今はそんな痕跡は何処にも無くただ豊かな大自然が広がっている。森の環境は全く問題無いと思うんだけど・・・・
「森自体は再生したけれど、この森は未だに生態系が歪なのさ。ここで問題を出そうかね。森の中で頂点の捕食者は誰だと思うかね?」
「それは肉食の魔物だろう」
「俺もそう思う」
森の中には沢山の生き物達が居るが、頂点と聞かれれば生き物の肉を食らい魔法を使う魔物が頂点だと誰もが答えるだろう。
「そうだね。それじゃあ、肉食の魔物の獲物はなんだい?」
「下位の魔物か動物だな」
「その下位の魔物が食べるものは?」
「植物だ」
「その通り」
頂点の魔物が下位の魔物を食べ、下位の魔物が植物を食べる。これはどんな場所でも起こる当たり前の連鎖だ。
「それじゃあ、頂点の魔物を狩るのは誰だい?」
「それは・・・・人種か同じ頂点に存在する魔物だ」
「そう、普通は頂点同士が競い合い縄張り争いをすることによって肉食の魔物のバランスは保たれる。だけどこの森では頂点同士の争いが起きないんだよ」
「???魔物同士で共闘なんて殆ど無いしあいつらは捕食する本能が強いから争いが生まれないはずがない」
大体の魔物は獲物を殺し食らう事を一番に行動する生き物だ。故に闘争本能が強く争う事を止められない。同じ種族だとしても襲い食らうというのに他の魔物と協力もしくは共存なんて無理だ。
「ああ普通はそうだね。だけど、獲物が沢山居る状態だったらどうだい?」
「獲物?上位の魔物数が増えたら必然的に下位の魔物が減るはずだ」
ブレストの言う通り捕食者が増えると言う事は狩られる魔物も増えるはずだ。だから自然に下位の魔物は減り、獲物が減ったことによって上位の魔物同士の戦いが起こり数が減って下位の魔物数が増える。この流れが普通だ。
「あぁ普通ならね。だけど、この森は命を育てる環境が整い過ぎているのさ。大地に魔力が多く植物は枯れることも数が減る事も無く、たった一日で急成長する奴らが沢山居て、それを糧とする草食動物は食事に困らないから数をどんどん増やしていく。その所為で上位の魔物は獲物に困らず、同じ位に存在する魔物と戦い競争するよりも下位を捕食する道を選んだのさ」
「お互いを競い合うよりも簡単に捕食できる獲物を選んだ訳か」
自分と同格の相手と戦って死ぬか生きるかの争いを繰り広げるよりも、簡単に狩れる獲物を選んだ方が確かに合理的だけど・・・・それだと、森に存在する魔物の数が膨大かつ強力になってしまわないか?
「しかも人間が来ないから狩られる心配も無い。順調に育つ環境の出来上がりってか」
「その通り、だからこの森は強力な魔物が多いんだよ」
「どうりで、道中大量の肉食の魔物達に襲われた訳だ・・・・普段下位の者達を狩りまくってるから俺達も完全に獲物だもんな」
「数が多いと思ったのは純粋に森に居る魔物の数が多いのか~・・・・」
魔物が育つために最適な場所になっているから三級以上の魔物がポンポン出てくるわけか・・・・
「ある程度魔物が育つ前に人が狩ればここまでにはならなかったんだけど、植人は戦えないからね・・・・どんどん数が増えてその状態が昔から続いて今ではこのありさまさ」
「普通は頂点に向かっていくにつれて数が減っていくにも関わらず、捕食者も被捕食者も同じ数になって今では魔物のパラダイスって訳か」
なるほど、この森の状況については理解したけれどもされが毒の多い生物と何の関係があるんだ?
「さて、ここで問題だよ。今の話と毒の話どんな関係性があると思う?」
「え」
「・・・・」
う~ん、毒と生態系に関連性なんて・・・・ブレストを見てみると、答えが分かっている様で俺のことを笑って見ている。む~毒・・・・毒は危険なもので種類によってはいとも簡単に生き物を死に陥れる。そんな危険な毒を何故生き物が持つのか。それは獲物を狩る為だ。毒を使えば対格差など関係なく獲物を殺し捕食することが出来る。スネークの毒なんかがそれだな。
他の理由は・・・・身を守る為だ。
動物は本能で動いているが馬鹿じゃない。自分に害のあるものだと覚えてしまえば、その後襲われ捕食されることが減らせる。毒を持った生き物が目立った色をしているのは相手への自分を食べたら大変なことになるぞと言う警告だ。それが生態系に何の関係性が・・・・あぁそっか。
「上位の魔物に捕食されないよう毒を身に付ける奴が増えたって訳か」
「正解だよ、下位の魔物達は上位の魔物達に次々と捕食される状況が続いた所為で毒を持つようになったのさ。毒の元となる植物は沢山あるし力では敵わないならば自分を食わせなければ良い、相手を少し鈍らせれば良いってね」
「ついでに言うと下位の魔物だけじゃなく、植物達が眩惑の効果を出しているのも同じ理由だな」
どちらも大量に捕食されてしまう状況だから、何とかあらがおうとした結果毒を持つ者が増えたって訳か。ふ~スッキリした!
「そしたら今度は毒をものともしない魔物が増えたりと本当に魔境と化していくんだけどね。こればかりは私達植人じゃ解決できないものさ」
「自然の摂理はどの種族でも止められないものだろう。初期であればコントロールすることは可能だろうがここまで進んじまったら、全ての魔物を一掃するか森が無くなるほどの変化が起きない限り無理だな」
最初に植人の所為と言っていたけど、これはどの森でも起こり得る事だから仕方が無いと思うぜ。
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#悪ガキと転生冒険者