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襲い掛かる香りの毒牙

 指示通り真っ直ぐ進み辿り着い訓練場は王都の訓練場と殆ど同じで、平らに整地された大地と壁際にはいくつかの訓練道具が置いてあるだけ。フォレシアにあるギルドだから訓練場も自然で溢れてるのかと思ったから残念だ。


「普通だな~」

「訓練場は何処行っても同じようなもんだろ」

「期待したのに~」

「ん~でも面白いものは見れると思うぞ」

「ん?どういう事」


 ブレストが笑いながら言うのでその視線の先を見ると、ナナンさんと知らないウッドマンそれとあれは・・・・


「エルフ?」

「だな」

「あの人がギルド長なのか~確かに森にあるギルドなら植人かエルフが適任だよな」


 長く煌めく艶やかな髪に、日焼けを知らない貴族の夫人よりも白い肌、筋肉が付くことを知らない長く細い手足と滑らかな体。そして特徴的な長い耳、老いを知らずその全てが美形という愛された種族それがエルフだ。彼らは森の中で生活し、世にあまり出る事が無いが冒険者になる者も一定数居る。エルフは元々狩りをしながら生活をしているため弓の名手であり、細い体には似合わない程の大量の魔力を持っているため魔法も堪能だ。長い寿命によって磨き上げられた技術は人間ではたどり着けない程の境地にまでいくとも言われ、上位の冒険者にエルフが何人も存在する。だが・・・・


三級より上なのは間違い無いけど、別格って訳でも無いな。今まで何人も強い人を見てみたけど、二級なのは間違いないがそれ以上では無いって感じだ。その三人は俺達の元までやってくると


「初めまして、このスターリアのギルド長を務めているフレンスよ。今日のテストを担当させて貰うわ」

「ギルド長直々にとは意外でした」

「ふふ、このギルドを預かる者ですもの私が判定を下さず誰が決めるの?」

「そうですね」

「それにこのギルドは人が少ないから私が試験官にならないとね。それじゃあ、テストの内容を伝えるわ」


 金色に輝く髪と紫の目を揺らし妖艶な雰囲気をだすフレンスさんは笑顔を浮かべながら、試験内容の説明を始めた。


「内容は単純、私と一対一の模擬戦を行います。模擬戦の最中はこの魔道具を付けて貰うわ」


 そう言ってフレンスさんは俺達に腕輪に三つの石が黄色い魔石が嵌めこまれた魔道具を渡した。


「この魔道具は結界の魔道具になっていて、どんな攻撃も三回まで防いでくれるわ。結界が壊れると魔石が壊れるから先に三つ壊したら合格。もしくは私が途中で合格と言えばテストはクリアよ。それと相手を死傷させた場合問答無用で失格だから注意してね」


 そんなルールが無くたって殆どの奴はギルド長を殺す事なんて出来なさそうだけど、二級がこのテストを受けた時の安全策かな。


「分かりました」

「それじゃあ、早速始めましょうか。シンリ、森を作って頂戴」

「分かりました」


 フレンスさんは一緒に来たウッドマンに指示を出すと、シンリと呼ばれたウッドマンは地面に手を付き魔法を発動させるとあっという間に地面に草が生え、木が生え訓練場は森の中になってしまった。


「おお~すげぇ」

「これは吃驚だ」

「森で活動することを考慮してテストはこの森を模した場所でやらせて頂くわね。それじゃあ、最初は誰にするかしら?」

「じゃあ、俺からで。クロガネ、あっちで待ってな」

「は~い」


 まずブレストから行くみたいだな。俺は言われた通りギルド職員の二人が立っている場所に行きブレストの応援をすることにした。平らで視界が開けている地形からからいきなり森の中のように変わってしまったが、死角が増え足場が増える森は俺としては平らな地形より断然戦いやすい。折角ブレストが最初に戦ってくれるんだから、よく観察してあのギルド長の弱点を見つけないとな!


「それじゃあ、ナナン結界を張って開始の合図を頂戴」

「分かりました。それではこれよりテストを開始します。両者構えて」


 合図と共にギルド長はマジックバックから様々な宝石で装飾され銀に輝く鉱石によって作られた長い鎖の付いた香炉、振り香炉と呼ばれる武器を構えた。ブレストはいつものように何も武器を構えず、立っているだけ。




「始め!!!」


パリンッ


 始めの合図が出された瞬間ブレストはギルド長フレンスの周囲に一瞬で三つの魔法剣を作り出し、素早さを重視して作られ剣はいとも簡単に当たり三つの結界を壊してしまった。


「合格よ」

「どうも」


 緊迫した状況の中始まったテストは俺の予想に反して、あっという間に勝負がついてしまった。。これじゃなんの参考にもならないじゃん。というか、フレンスさん完全に反応していたのに避ける素振りを見せなかったな。一体どうしてなんだ?


「全く少しは遊んでくれても良いじゃない」

「こう言うのは効率的に終わらせるのが良いですから」

「つまらない人ね」


 フレンスさんは少し不満気だが、合格を出したと言う事はブレストは間違ってはいないのだろう。ブレストは笑いながら俺の所に来ると、


「ほれ、交代。頑張ってこ~い」

「頑張れって言うならもう少し手の内を明かさせてくれても良かったじゃん」

「はは、これもテストってな」


 も~楽しそうに言ってるけど二級と言う格上相手に戦うならもっと情報が欲しいんだけど!テストに合格しないと討伐依頼を受けることも出来ないんだから、絶対不合格になる訳にはならないのに!はぁ、文句言ってても仕方が無いし、今ある情報と場の優位性で頑張るか。


「それでは、次の方どうぞ」

「はい」

「それでは、テストを開始します、両者構えて」


 俺はナイフとクロスボウを構え、姿勢を落とし準備をする。


「始め!」


 合図と共に俺は右へと駆け出し木の影へと向かい視界を遮ると、気配を消し木の上へと駆け上がる。


 この勝負はどんな攻撃だとしても三回当てれば勝ちになるのだ。つまりどんなに威力が無かろうとも、どんなに卑怯な手を使っても良いと言う事だ。ならば、気配を消して奇襲を掛けて罠に嵌めてしまえば良い。気配を消しながらも、視線はフレンスに固定しているけどこっちの行動に余裕の笑みを崩していない。そして、振り香炉を回し始めたけど、何かされる前にさっさと決着付けるか。木の陰に罠を仕掛け隠れながら素早く近くの木まで近づくと、力強く踏み込み首に狙いを付けて飛び込んだ。


「ふふっ」


 こちらを視認していないはずのフレンスさんは笑みを浮かべなら、俺の攻撃を見ずに優雅に避けられてしまった。俺は地面に着地し追撃をしようと踏み込むと、周囲に変な匂いが漂っていることに気付いた。


 風を操って空気を滞留させているのか・・・・だからこの近くまで来ないと気付けなかった。仕組みは分かったけど、一体何が目的だ?


「さぁ私はどこかしら?」


 相手の意図が読めず少し様子を伺っていると、振り香炉から突然紫掛かった煙が立ち込めフレンスさんの姿を書き消し姿を消した。


なるほど、煙と香りを使う幻術使いか。と言う事はこの俺の周囲を漂っているこの変な匂いは精神に作用するものか。相手の動きを考察していると何処からともなく甘く蕩けるような匂いが全体に漂ってきた。この匂いは知っている。娼館などで使われている思考鈍くさせる香を強めた匂いだな・・・・幻術に精神に作用する香りか・・・・俺と相性最悪だな。俺の背後に気配を感じたがこれは幻術で作られた分身だ、本体は・・・・


「そこだな」


 雷の魔法と風の魔法による移動によって木の陰に隠れていたフレンスさんへと突撃する。まさか、一瞬で見破られるとは思っていなかったフレンスさんは驚きはしたが、流石は二級。すぐに後ろへと飛び香炉に何かを入れ次は黒い煙が立ち込める。攻撃の気配は無いということはあれも幻術の為だな。迷わず俺は煙の中に入り、距離を取ろうとしているフレンスさんの腹部に蹴りを一撃を入れ吹き飛ばした。


「足癖が悪いわね」


 これで一回、あと二回だ。幻術が利かないと判断したフレンスさんはすぐさま香炉に新たな香を入れる。煙は出てこないがフレンスさんは風魔法を使ったのは分かった。そして、漂って来る目には見えないが僅かに香る刺激を帯びた香り。これは毒だな。それも俺には効かないんだよな~毒だと判断した俺は、構わずナイフを持って突撃する。それを見て次々と香炉に新たな香を入れ、香炉を振り香りを漂わせていくフレンスさん。


 様々な香を独自で調合し同時に使う事によって相乗効果を生み出し、毒耐性を持っている人間にも効くようにしている訳か。風を操れば攻撃は必中するし普通なら厄介なんだが。即死するような毒じゃないとどれだけ混ぜても俺には効かないぞ。


 何十種類の毒による香りの結界の中に臆することなく入っていく俺に今までの笑みを消し、俺の攻撃を避け続けるフレンスさん。流石に避けに専念されると中々当てられないな。んじゃ、罠に誘導するか。

読んで頂きありがとうございます!

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#悪ガキと転生冒険者

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