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工房の形は色々

  真夜中と言われるような時間まで町を走り周り、偶に美しい景色を見つけて眺めて時間を使った俺はブレストが居る広場まで戻ると二人を除いて冒険者達は眠りに就いていた。俺は人を起こさないよう気配と足音を消して、広場にある木に着地した。


「今お帰りですか?」

「!」


 突然聞こえてきた声にそっちの方を見てみると、犬耳をした獣人の僧侶が俺の方を向いて笑っていた。あれは確か大地の狩人の僧侶だよな?本気で気配を消していた訳では無いけど良く気付いたな。流石は三級だ。


「こんばんは、夜遅くまで起きているんですね」

「冒険者ですから」


 話し掛けられた俺は木から降りて、よくその人を見てみる。犬の耳に犬の尻尾そして白いローブを着ていて髪は茶色の癖毛、優しく穏やかな顔つきをしているけど一応警戒はしておくか。


「それでは」

「はい、おやすみなさい」


 それ以上何か言うつもりの無さそうなので俺は声を掛けられたことを不思議に思いながらも、一応軽くお辞儀をし別れを告げて自分のテントの中に入った。中にはまだ起きているブレストが光の魔法を使って中を照らし本を読んでいた。


「おかえり、町は楽しかったか?」

「おう、面白い場所が沢山あったぞ!今度ブレストも一緒に行こうぜ」

「それは良かったな。それなら今度は俺も一緒に行かせて貰おうかな」

「うん、行こう!」


 今日の小川の場所は是非ともブレストに見て欲しい美しさだった。あの水面の輝きはきっとブレストも気に入ってくれると思うし、満月までもう少しだからその時に一緒に行こうな!


「住民達に迷惑を掛けるようなことはして無いだろうな?」

「当たり前だろ。町を走る時だって寝ている住民を足場にしないようしっかり見極めて走ったんだから」

「普通は屋根とかを走らないんだが・・・・まぁそれは良い。それにしても、クロガネはよく植人達を見極められるな。あの植物の姿になってこんな植物だらけの場所に紛れ込まれたら見分けつかないだろ」

「ん~何となく」

「野生の勘的なやつか?」


 ブレストの言う通り植物の姿に変わられてしまうと、気配が周囲に馴染んでただの普通の植物にしか思えない程の気配になる。持っている魔力の気配を消え去る所為で初めてペシェさんと会った時に気配を見失って正面に立ってたとしても見分けられなかったのもその厄介な特性の所為だ。そして、そんな能力を持った者が森や自然あふれる場所で気配を消されたら見分けるのは厳しいというか不可能に近い。森に生えている木の一本一本の違いを見極めろと言われても無理だろ?だけど・・・・


「俺も最初はペシェさんに完全に騙されたみたいに全然見分けがつかなかったんだけど、町で植人と姿を変える姿を何度も見たから何となくだけど分かるようになったんだよな」

「つまり何か特徴があるってことか?」

「ん~そういう訳じゃ無いんだけど。なんか違うって感じるようになったんだ」

「ふむ・・・・そう言ったものは本人にしか分からない感覚の世界だからな・・・・」


 言葉に出来ないけど、ほんの僅かな違和感があるんだよな。この姿は違う、これは普通の植物じゃないって。


「でも、それは特別な才能だな。冒険者たるもの最後に頼りになるのは経験と知識と直感だったりするからその感覚を忘れず研ぎ澄ませていくのが良いと思うぞ」

「うん!そうするつもり」


 この感覚のおかげで危険を事前に察知できるから凄く助かってるんだよな~この違和感と言うか何かを見つけるという感覚は昔から持ってたけど、ブレストに鍛えて貰ってから強まってきたと感じてる。一体なんで違和感を感じられるのかは全く説明できないけど便利なのは間違いないのだ。


「それじゃあ、今日はもう夜遅いしさっさと寝るぞ」

「はーい」


 今日の夜の街についての話を少しした後ブレストに用意して貰った寝袋の中に入り体を温め俺は眠りに就いた。


 次の日の朝、俺達は植人の活動時間に合わせる為に早起きをして、外で鍛錬をしているとペシェさんが来てくれた。


「おはようございます~」

「おはよう」

「おはよう!」

「まだ早いかと思ったのですが、起きていらして良かったです」

「この町で生活するなら住民達と同じ時間に起きた方が良いと思ってな」


 ブレストの言う通り、町で生活する以上その町の生活に合わせて動いた方が町を感じられるし、色々な発見もあると思うんだよな。俺達の普段の起床時間は普通と比べても少し早いと思うがこの町はそれ以上に早い。体が慣れるまで少し掛かるだろうけど、その内自然とこの時間に起きれるようになると思うぜ。


「ふふ、是非町を楽しんでくださいね。それでは早速ペクさんの元へ行きましょうか」

「あぁ頼む」

「紙職人か~俺初めて見に行くな」


 王都やプリトにも紙職人は居ただろうけど、紙なんて高いものを買う余裕は無かったし用も無かった。そもそもブレストと会うまでは字を書くことも読むことも出来なかったんだから余計用が無かったのだ。でも今なら文字を読んだり書いたりできるし、本も好きだから紙は結構興味あるぜ。手紙に適したものがあると良いな~ペシェさんの案内で町を進んで行き町の中心からかなり離れた場所まで来た。この場所は家と家が距離を空けて立っていてその家の形も町の中央にある家と違って特徴的だ。


「まるで木が横になったような家だな」

「あれは蔦で編まれた家って感じだ。形も違うけど大きさが全然違うな」

「はい、この場所は自宅を作業場として使っている職人さんが住んでいる場所なので他と比べてると家が大きいんですよ」

「なるほど」


 職によっては大規模な作業場が必要になる場合もあるもんな。例えば火事場は専用の炉に剣を打つための鉄床に熱した鉄を冷やすための水場、他にも材料を置く倉庫など何かを作り出すには沢山の設備が必要になるので、自然と作業場は大きくなるものだ。と言う事は外から見ても何の為の作業場なのか分かるんじゃないか?ん~~あそこは丸太が沢山置いてあるから木工職人とか?あ、あそこは分かりやすいな円形の広場を囲むように8つの台座が置いてあるということは魔法師だ。あの設備は対価が必要な魔法を使う時に、その対価をあの台座に置いて円形の広場に魔法陣を書いて使うのだ。ちょっとしたクイズみたいで楽しんでいると、一際大きな家に到着した。その家はいくつもの木が集まったような見た目をしていて、裏には大量の紙が並べられていた。


「紙を干しているってことは・・・・ここか。あそこがお店だな」

「はい、そうですけど多分お店には居ないので少し待ってくださいね」


 看板が立っている扉の方へ行こうとすると、ペシェさんは俺達を止め作業場だと思われる方の扉に行くと戸を叩いた。


「ペクさーん、いらっしゃいますか?」

「居るよ、少しお待ち」


 すると中からこの町では珍しい少し歳老いた女性の声が聞こえた。少しすると、扉が開き中から年寄りとは言えないが、人間だと50歳はいっているだろう見た目の黄色掛かった緑色の髪をした気難しそうな女性が出てきた。


「ペシェかい、今日はどうしたんだい薬包紙が無くなったかい?」

「いえ、今日は恩人の方をペクさんのとこに案内をしに来たんです」

「ん?恩人ってどういうことだい?」

「森で薬草を採取していたらブレードディアに襲われてしまって・・・・そこを助けて貰ったんです」

「全くいくら再生力が高いからって一人で危ない所に行くんじゃ無いよ。これに懲りたら次は冒険者かライフに同行を頼むんだね」

「は~い」

「あんたら、この子を助けてくれてありがとうね。私はペク、ただの紙職人さ。ここに用があるってことは紙を作りたいんだろう?何でも言いな」

「いえいえ、冒険者としての責務を果たしただけなので」


 ペクさんは経緯を聞きペシェさんの頭を叩くと大きく溜息を付きながら叱ると俺達に感謝の言葉を述べならお辞儀してくれたけど、俺達は当然の事をしただけだからそんなに気にしなくて良いぜ。


「そうだとしても、助けてくれたのは変わらないだろう?ほら、外で話すのもなんだし中にお入り」

「お邪魔します」


 そう言いならペグさんは看板が立っている方の入り口に行くと中に招待してくれたので俺達は家の中に入ることにした。初めての紙工房、一体中はどうなっているんだろう?

読んで頂きありがとうございます!

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#悪ガキと転生冒険者

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