昼過ぎからは日光浴の時間
陽が昇りたての暗い時間から動き始め町の中を見てきたが、テントを張り終える事にはもう陽が空高く昇り陽射しが降り注ぐ昼時となっていた。朝飯は果物を沢山食べたから大丈夫だが昼飯はどうしようかと話していると、ゆったりと動いていた町の住民達の様子に変化が訪れた。広場から見えていた住人達は、次々と店から離れまるで誘導されるのかのように皆どこかに動き始めた。
「ん?あの人達は何処に行くんだ?」
「この時間になるともう朝の仕事は終わりの時間ですからね~みんな陽射しを受けに行っているんですよ」
「みんなも昼飯の時間ってことか」
「そうですね~」
「集団で動いているってことは、何処か決まった場所があるのか?」
「皆さん日によって好きな場所で陽射しを浴びているのですが、日当たりの良い広場があるのでそこで過ごされる方も多いんですよ」
「そんな良い場所があるのか・・・・」
「見に行ってみますか?」
「俺達が行っても大丈夫なのか?」
「はい、大丈夫ですよ」
この町の住人達が集まって日光浴をする場所・・・・気になるかと言われるとかなり気になるな。俺達が居る広場だって日当たりは良いし、植物だって沢山あるからゆっくりと過ごすには快適な場所だと思うんだけどここ以上の場所があるってことだろ?町の事をもっと知れると思うし、住人達も沢山見れると思うんだよな~
「それじゃあ、少し見させて貰おうかな」
「分かりました、案内しますね~」
俺達はテントを広場に置いたままペシェさんの後に続いて住民達が向かっている場所へと向かった。普通ならテントをあんな場所に置いておいたら、どうぞ盗んでくださいって言ってるようなものだけどこの町の治安は良いし何よりもスターリア様が居るから大丈夫だ。人の流れに流され、次々と集まってくる住民達と一緒に進んで行くと俺達がまだ行ったことが無い町の反対側までやってきた。こっち側は、ペシェさんの家があるエリアと違って開けていて建物や木が無い代わりに草原と、濡れた大地、湖や岩場など普通は同じ場所にあるはずの無い環境が広がっていた。
「なんだこれ、あり得ないだろ」
「この範囲でここまで環境が違うのはスターリア様が環境を調整しているからか」
「そうです」
場所によって環境が違うのは当たり前だが、町の中の一区画でここまで自然環境が違うのは有り得ない。だけど、この町はスターリア様によって環境を制御しているからこんな事が可能なんだろうな。二人で不思議な景色に驚いていると、次々に住民達が集まって来て、みんな各々好きな場所を行くと植物の姿に変わっていく。
「植物によって好む環境が違うからここまでの環境を用意してあるのか」
「はい、例えば水仙の方は水の上、サンフラワーの方は草原にと全ての住民に合った環境を用意して下さっているんです」
「俺達だったら草原かスターリアさんの所だな」
植人達の日光浴用に作られた区画は、建物や道などが無くて町の中に良くある背の高い木すらなくて見通しが良かったけど、次々と植物の姿をとっていく植人達によって広場はどんどん埋め尽くされて行った。
なるほど、やけにひらけていると思ったけど住民達が広々と植物の姿になる為か
植人の植物の姿の大きさは人型から想像出来ないほどの大きさを持っている事もある。例えばそこで休んでいるスリープケイブと言われる木は、ベアーなどの動物の寝床に使われるほど幹が大きく空洞になっているためとても大きく存在感のある木だ。他にも俺の身長以上の花を咲かせるラフランシアとか、本当に植物と言うのは多種多様なので、どの大きさでも伸び伸びと過ごせるように整えてあるんだな。
「ん~今日は雲一つない晴天ですから陽射しが気持ち良いですね~」
「ペシェさんも日光浴の時間ですよね?」
「そうですね~何時もはこの時間にゆっくりとしてますね。ですけど、今日は皆さんの案内がありますから大丈夫ですよ」
「いやいや、流石に大事な時間を削ってまで案内して貰おうとは思ってませんよ」
そうだな~日光浴の時間まで案内して貰うのは少し良くないと思う。だって、日光浴って植人にとって食事の時間であり癒しの時間なんだろ。つまり俺達は飯抜きで休憩もしないで案内しろって言ってるようなもんじゃないか!流石にそんな鬼畜な事はしないぞ!
「いえいえ、一日くらいしなくても問題ありませんから」
「う~ん、いや・・・」
笑顔で大丈夫だと言ってくれるけど、別に俺達も今日一日で町の全部を見て周りたい訳じゃないし急いでも無いんだよな。ペシェさんの言う通り今日は絶好の日光浴日和だし・・・・そうだ!
「それなら俺達も今日は此処で日光浴にしようぜ」
「お、良い考えだな」
「丁度読みたい本とかもあるし、偶にはゆっくり過ごすのも良いだろ?」
「だな」
「ふふっ、そう言う事なら私は暫くゆっくりさせて頂きますね。ありがとうございます」
どう説得しようかと悩んでいたブレストは俺の提案に笑顔で乗ってくれたので、俺達の意図を理解したペシェさんは微笑みながら植人達の元へ行き植物の姿へと戻った。
「・・・・何度見ても姿が変わるのは不思議だよな~」
「そうだな~人型と植物じゃもはや別の生き物にしか見えないもんな」
「他に二つの姿を持っている種族ってあったっけ?」
住人達が姿を変えるのを何度も見たけど未だに慣れないな。植人種というのは、他の種族と比べても特殊な種族だけどこの世界には色々な種族が居るから他にも同じような種族が居るかもしれない。ぱっと思い付くのは、ホムンクルスだけどあれは人造の生き物だしな~
「それは、魔物でか?それとも人としてか?」
「どっちも」
「そうだな~吸血鬼が有名だと思うぞ。奴らは人の姿と蝙蝠の姿を持っているからな」
「あ、そう言えばそっか」
吸血鬼は青白い肌に尖った牙、エルフのような尖った耳に闇夜でもはっきりと輝く血のように赤い瞳を持ち、闇魔法に長けている種族だ。彼らは名前通り生き物の血を吸い糧とする種族で、血を吸われた者は吸血鬼となってしまうので危険視されている種族でもある。
「他には、ちょっと違うが擬態を使う魔物は沢山いるぞ」
「あ~確かに」
魔物の中には油断を誘う姿に擬態し獲物を狩る奴や条件が揃うと変身する奴が居る。こういった性質を持った魔物は本当に厄介で、見抜けず命を落とした冒険者は山ほど居るのだ。こう考えてみると意外と複数の姿を持っている種族って居るもんなんだな。
「魔物の種類は多種多様でその数特徴もあるからな。ほら、クロガネこのクッション使いな」
「ありがと~」
俺達はそんな事を話しながら丁度良い木陰を見つけると、クッションを取り出し地面に置いて寛ぎながら本を読み取り出した。朝買った残りの果物を昼食として摘まみながら話していると
「魔物と言えば、この森に居る魔物は本当に多種多様だよな。ここに来る間に何度も襲われたし、そりゃ危険地帯って言われる訳あるな」
「そうだな~クロガネが経験を積むには丁度いい環境でもあるな」
「げ」
「三級の魔物がこんなに豊富で、様々な環境が混在している場所なんて滅多に無いんだ。明日は紙の件があるから無理だが、明後日からは森に籠るからな」
「は~い・・・・」
「取りあえず三級の魔物を二体同時に相手出来るようになろうな」
「・・・・・」
「返事は?」
「は~い・・・・」
強くなる為の鍛錬は好きだけど、ここの森の魔物みんな強くて大変なんだよな~どいつもこいつも俺の斬撃を受け止めちまうし、三級って特徴的な魔物が多いからそれに合わせ戦いをするのは神経を使う。今は一体相手するだけでも、時間が掛かるのに二体相手出来るようにって・・・・頑張るしかないか・・・・
明後日から始まる特訓の為に束の間の休息を楽しもう。
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#悪ガキと転生冒険者