広場の獣人達
町を進み辿り着いた広場は、使い易いように地面は平らにしてあるが植物に満ち溢れ中央には水汲み場と噴水が作られ植物で溢れていた。よくある広場じゃなくてこれは、森の中に作られた公園って感じだな。緑あふれている空間だからこそ、冒険者が立てているテントが異物に見えて目立ってるな。
「テントの数は4つか、思ったより多いんだな」
「まぁ、そうか?」
ダンジョンの中で大量のテントが張られている姿を見たことがあるので、4つしか無いのは寂しく少ない感じがするけれど冒険者ギルドの感じからすれば多い方か。それにこの場所に居ると言う事は最低でも四級以上の実力を持っている冒険者ってことだもんな。俺の探知だとこの広場には9人の冒険者が居て、その中でも特に目立つのは左に纏まっている何かしらの皮を使ったテントの冒険者達だな。
「んで、挨拶する?」
「いえ、別に冒険者同士交流しなくても大丈夫だろ」
「まぁそう言うよな」
ブレストは必要が無い限りはそこまで積極的に交流することが無い。俺もこの見た目だからあまり話し掛けにはいかないけど、冒険者の話と言うのは結構重要なことやその土地で活動している冒険者にしか分からない事も有ったりするのでそういう時はブレストが聞いてくれたりする。今回はこの町の事は住民であるペシェさんが教えてくれているし、ギルド職員は森の魔物に詳しいようだったしそっちで聞けば良いもんな~
「今回は俺達が泊る場所を確保するために来ただけだ。あの木の影とか良さそうだ」
「え、私達の家に泊まらないのですか?」
「ここには一ヶ月くらい滞在するつもりですし、その間ずっとお世話になる訳にはいかないだろ」
「え~そんな短い間しか居ないんですね。それなら尚更私達の家に泊まってくださいよ。部屋は余ってますし、師匠も楽しそうでしたし」
「いや、しかし・・・・」
この町に宿は無いからこの広場でテントを立てて生活をするか、誰かの家にお世話になるしか無いけれど生活の快適さで言うならばペシェさんの家でお世話になった方が良い。だけど、ブレストの性格上依頼では無いのに同じ家で生活するのはあまり好まないだろう。俺はどっちでも良いけどな~植物の家は興味をそそるものが沢山あるし、テントで生活するのは初体験だから楽しそうだろう?
「む~まぁそこまで言うなら無理強いはしませんが、テント生活が辛くなったらいつでも来てくださいね」
「はい、その時はよろしく」
取りあえずの間はテントでの生活をすることが決まったみたいだな。王都で買ってきた大きなテントを使うのも良さそうだし、魔法屋にあった簡易的な植物の家を作る魔道具を買って使っても良さそうだ。どうしようかな~何処にするかどのテントを使うか考えていると、左のテントに動きがあった。左の少し大きめなテントの中から体格の良い虎の姿をした獣人と、しなやかな体な体躯をした豹の獣人が出てきたのだ。
「獣人だ」
「ホントだな」
獣人は俺の街でも何回も見掛けているから知っている。だけど、今まで見てきた獣人の中でも、上位に当たる強さと気配を感じるな。力強い気配を感じたとは思ったけど獣人なら納得だな。
「この森で獣人は辛くないか?」
「え、何で?獣人は森が得意・・・・あぁそっか」
「そうですね~」
ブレストは出てきた獣人達を見て怪訝そうに首を傾げ、すぐには理由が分からなかったけど獣人の特徴を思い出して納得した。獣人は獣がそのまま二足歩行をしている姿と、耳や尻尾など一部獣の特徴を持った姿の二つの種類があるがどちらも人間を上回る身体能力と五感を持っている。獣のような感覚と身体能力は森で活かせるものばかりなのだが、この森は特殊過ぎるのだ。
「獣人の敏感な鼻にはこの森の花粉と匂いは辛いだろうな。感じ取り過ぎて眩惑が効きやすいだろ」
「普通の森なら獣人の本領発揮出来るんだけどな~」
五感が鋭いというのはどんな場合も優位に働く訳ではなく不利に働くこともある。この森の眩惑は花粉と匂いによって起きている事だから敏感に感じ取ったら眩惑に掛かっちまうだろうな。そんな事を話していると、左のもう一つのテントから犬耳をした僧侶と蛇の姿をした魔法師が外に出てきた。
「珍しいな」
「獣人の魔法使いか・・・・蛇獣人だったらまぁあり得なくはないか」
獣人は他の種族と比べると魔力を持っていることが少なく、持っていたとしても量が少ない事が多い。だから、魔力が大量に必要な魔法師はあまり居ないんだが・・・・蛇獣人は魔力が多い傾向があるらしい。全てが獣人によって構成されたパーティーに驚いてると見ていることに気が付いた獣人達がこっちを見てきた。
「見過ぎたか」
「そうだな。さっさと場所を決めよう」
軽く会釈をして俺達はその場を離れ、木陰にブレストが持っている仮のテントを立てていると俺達の元に歩いてくる気配がした。この気配はあの獣人二人か
「よう、兄ちゃん達」
「ちょっと良いか?」
渋く深く力強い声と軽快で人の良さそうな青年の声だがこちらを探るような意志を感じる声だ。だけど、嫌な感じはしないな。
「構わない」
「そうか、まずは自己紹介からだな。三級冒険者大地の狩人のライガーだ」
「同じく三級冒険者シャザールだ」
「三級冒険者ブレスト」
「五級冒険者クロガネ」
やっぱり三級冒険者だったか。虎獣人がライガーで豹獣人がシャザールって名前なんだな。さっき見過ぎたことに対して何かあるのかな?
「ブレストにクロガネか。よろしく」
「あぁよろしく。それで俺達に何か用か?」
「用ってのはそうなんだが・・・・」
「主に用があるのはそこのクロガネだな。念の為に聞くが二人共種族は人で良いんだよな?」
「そうだが・・・・クロガネに用だと?」
俺に用?見た目について言うつもりだったら何かしら良くない感情を抱いているはずだが、それを感じられない。この人達とは以前会った事も無いし、俺が盗みを働いたやつでもない。一体何の用だ?
「正確には用が有っただな」
「どういうことだ?」
「俺達の鼻が良い事は知っているだろう?その鼻で明らかに子供の匂いがしたから気になったんだよ。いくら高位の冒険者だとしても、この国に子供を連れてくるなんてとんでもないと思ったんだが・・・・冒険者ってことは10歳を超えているのか」
「体も小さいし、細いから訳ありの子供かそう言う種族なのかと思ったが違うみたいだしな。余計なお世話だったみたいだなすまない」
「なるほど、いやよく勘違いされることだ気にしないでくれ」
はぁ、また勘違いされたのか・・・・まぁ年齢については生み親がいくつまで育てたのか知らないし鑑定も弾いてしまうから調べようが無いから仕方が無く10歳を名乗っているだけだしな・・・・それにしても、心配されるようなことが多すぎる気がする。
「俺は気にするけどな~」
「すまんすまん、その代わり俺達は商人の護衛で来たんだが色々取引をするようで暫くこの町に居るから何かあったら頼ってくれ」
「そうなのか・・・・この森は君達には辛くないのか?」
「優秀な僧侶が居るからなんとかなってるぜ」
「まぁ積極的に森に入ろうとは思わないけどな」
「なるほど」
「それじゃ、またな」
そう言って二人は快活な笑顔を浮かべながら自分達のテントに戻って行った。特に問題が起きなくて安心したけど、何だか不満だな~
「うふふ、クロガネ君は他の種族から見ても幼く見えるんですね」
「ほら、言った通り痩せる必要なんて無いだろ?」
「む~」
二人は笑ってるけど、俺は面白くないぞ~でも、確かにこんなに子供扱いされるならもっといっぱい食べて大きくなった方が良いかもしれないな。
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#悪ガキと転生冒険者