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この森の過去

「んふふ、そう言ってくださって光栄ですが私は中のモノしか弄れませんので外部への干渉は全く出来ないんですよ。魔法も少し得意なだけですから」

「中を弄れるだけで十分でしょう。この町の中に入ったらどんな強者も無力ですからね」


 笑いながら謙遜するけど、これで外部へ干渉できる力が有ったらとんでも無かったぞ。ブレストの様に幅広く応用に利く強力な魔法を使えたり、フォルネーラさんの様に一つ一つの魔法が人知を超えていたりシュナイザー様のように剣術とスキルによって人外じみた力を持っていたりと強さの種類は色々ある。スターリア様はその中でも特殊な状況下に置いて他者を寄せ付けない程の強力な力を使えるタイプだな。


「前にペシェさんがこの大地の植物の調整をガーディアンツリー様が調整していると言っていたことにも納得ですね。意思がありその力を持ってすれば、町の環境を整えるなんて指を動かす程度の労力で済むでしょう」

「ふふ、大地への糧の供給は私の魔力で行ってますから大丈夫ですよ」


 そうだな、ガーディアンツリーに意志があるのであれば今までの疑問は全て解決するな。俺達が話していないのに、大地の糧の件も把握しているみたいだし常に会話は聞かれていると考えて良さそうだ。


「今までの疑問が全て納得しました。それにしても驚きましたよ。スターリア様のような存在が居るなんて全く知りませんでした」

「町の名前から察するに、スターリア様が町を作ったんですか?」

「そうですね~そうとも言えるしそうとも言えないと言う感じです」

「??」

「この話をすると長くなってしまいますから、休みながら聞ける場所に案内しますね。お時間はありますか?」

「大丈夫です」


 町にスターリア様の名前が付けられているぐらいだから、町を作った人なのかなと思ったけど変な返答が帰ってきたな。詳しく聞くために俺達は本体に向かって歩いて行くスターリア様について行くと、大きな枝が上から伸びてきた。


「私のお気に入りの場所に案内しますね」


 そう言って枝の上に乗ったので俺達も続いて乗ると、枝は力強く動き出し俺達を乗せたまま遥か高くに伸びる枝の元まで運んでくれ手を伸ばせば葉っぱに届きそうだ。そしてガーディアンツリーの天辺まで来るとそこには、細かな枝によって編まれ作られた机やベンチが置いてある小さな休憩所が作られていた。


「ここが私のお気に入りの場所なんです」

「素敵な場所ですね」

「青空がこんなに近いなんて」


 ガーディアンツリーはこの森にあるどの木よりも高いから何も遮る事無く周囲を見渡すことが出来る。視界を遮るものが無い青空はいつも見ている空より大きく広く感じてしまうな。俺達が来た道を見れば遠くに砦がよく見えるし、ここからだと国境で森が変わってることがよく分かるな~まるで線を引かれたかのように色が違う。


「どうぞお座りください」


 壮大な光景に見惚れていると、スターリアさんがベンチに座ったので俺達は真ん中にあるテーブルを囲むように座った。木だから座り心地は堅いのかなと思ったけど、小さな枝を使って編み込まれているから意外と撓って柔らかいな。


「このような素敵な場所にご招待いただきありがとうございます」

「いえいえ、お話をするなら落ち着いた場所が必要ですからね。私達にとって太陽の光は命を繋ぐ恵みの光のようなものですから、全身に浴びれるこの場所はゆっくり休めてお気に入りなんです。気に入ってくださった様で良かったです」

「確かにこのような場所があるのであれば、俺も入り浸ってしまうでしょうね」


 こういう時のブレストって口が上手いよな~俺もこの場所がとても素敵な場所だとは思うけど相手は目上の人間で言わば町長みたいなものだろ?だから、口を滑らさない為にも少し黙っておこう。


「この町に居る間は私に話し掛けてくれればいつでもご案内しますよ」

「ありがとうございます」

「そうだ、私としたことが忘れてました。人間は私達と違ってあまりに多くの陽差しを受けると体調が悪くなってしまうんですよね?」


 ニコニコと笑っていたスターリアさんだが思い出したかのようにハッとした後急いで魔法を使うと俺達の頭上に枝が伸びてきて、直接当たっていた陽射しを葉で遮ってくれた。


「いえいえ、長時間じゃなければ大丈夫ですよ。それに今の季節であれば特別陽射しは強くありませんから」

「そうなんですか?」

「ですがお気遣いありがとうございます」

「すみません、あまり人間の方とこうやって接することはあまり無くて・・・・もし何かあったらすぐに言ってくださいね。ペシェも何か気付いたら言ってくださいね」

「はい」


 この町が出来た頃から居るのだから多くの事を知っているのかと思ったけど、こうやって直接人と関わる事はあまり無かったのかな?あまり人間が来る場所でも無いし、冒険者や商人はこう言ったらなんだが金になること以外興味ないもんな。


「それでは、お話しの場も整えられたことですし先程の質問についてお答えしますね」

「町を作られたのかと言う話ですよね」

「はい、その話をする前に私達植人の事を少し詳しくお話しする必要がありますね」


 そう言うとスターリア様はテーブルに向かって魔法を使うと、テーブルの上に様々な植物や植物で出来た人型が現れた。


「ご存じでしょうが私達は魔力を持った植物が進化し知恵を身に付けたことによって、一つの理性のある種族となりました。進化のおかげで見た目は人間の形に似ていますが、その本質で言うと人間とはかけ離れ植物と近い存在です。元が植物でしたのでその行動も植物に近く、日に当たり水を浴び大地から糧を貰うだけで満足をしてしまう種族でもあるんです」


 スターリア様はテーブルの上にある植物や木の人形を器用に動かし分かりやすいように俺達に説明を始めた。植人が物欲が薄く自然の中に居れれば良いという考えの種族と言うのは、今日一日町を周った時に俺達も感じたことだな。


「その為生まれた植人達は町や国を作ろうとは思わず、ただ生まれた場所で生活すると言う事を続けていました。ですが、遥か昔この森である事件が起きたのです」

「事件とは?」

「この森で生まれたある魔物が植人達を大量に捕食してしまったのです」

「ある魔物?」

「最初が何だったかは分かりません。ですが、全てを噛み砕く大きな口に、僅かな魔力でも見つけ出すずば抜けた嗅覚を持ち、ありとあらゆるものを踏み潰す強大な魔物、その魔物を私達は大地を食らう者、ガイアズジョーと名付けました」


 表情を暗くしながらスターリア様はテーブルの上にその魔物姿を作り出してくれたが、ドラゴンのような尻尾を持ち顎が異様に大きく体は木々を薙ぎ倒す程の巨体でそれを支える為に太く逞しく手足は言っていた通り岩を踏みつぶし大地を蹂躙しただろう。


「アースドラゴンに少し似ていますね・・・・」

「恐らくは近縁の魔物だと思います。それが、私達を捕食したことによって、大量の魔力を蓄え進化したのがこの魔物だと思われます」


 ブレストの言う通り、姿形は少しアースドラゴンに似ているが顎の大きさなどが少し違う。魔物は大量の魔力を何かしらの手段で手に入れた時ごく一部が上位種や特殊な種に進化することがある。変異種とは違って、同じ種族で特殊な力を持つのではなく進化をすると、全く新しい種族に生まれ変わり力を身に付けるのだ。植人はみな大量の魔力を持ったことによって進化した種族だから、その体には大量の魔力が宿っている。その魔力を食らった魔物がこいつに進化したってことか。


「私達は好戦的では無く戦いに向いていませんので、魔物に捕食されてしまう事は偶にある事だったんですが、今回は一度に大量の植人達が捕食されてしまった事によって最悪の事態を引き起こしました」

「進化ですか?」

「それもそうですが、この森の生態系が狂ってしまったのです。本来であれば植物を食らう魔物は肉を食らう魔物に食われるという食物連鎖の関係にあったのですが、ガイアズジョーは力を付け過ぎた所為で肉食の魔物を悉く殺してしまったのです。その所為で草食の魔物が異様に増え、森は次々と食われていきそれを狩るはずの魔物は殺されてしまう。人間もこの森に入って来ませんから、誰もガイアズジョー止めれなかったのです」


 たった一体の魔物でこの広大な森の生態系が崩れるなんて・・・・いやあり得るか。高位の魔物はたった一体で地形を変え、町を変え地図を変えるほどの影響持つことがある。ドラゴンなんかはその最たるものだろうな。


「そして厄介なことに、ガイアズジョーは私達植人を食らえば力が増すことに気付いてしまい、私達に執着し積極的に狙うようになり抵抗手段の無い私達は次々と数を減らし絶滅の危機に瀕してしまいました」


 あ、この話・・・・さっきブレストが言ってた通りになってる。


「そのまま全滅するかと思われましたが、ある一人の植人が立ち上がり残りの植人達を纏め上げ最後の抵抗を始める事になったのです」

読んで頂きありがとうございます!

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#悪ガキと転生冒険者

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