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植人の町

「いやいや、飯屋が無いってどういう事なんだ?」

「正確に言うと無いという訳じゃないんですけどね。だけど、あの店は店主の気分で開いているので数カ月に一回開くかどうかなんですよね」

「え、それは・・・・商売として成り立っているのか?」


 気分で店を開いてしかもその頻度が数カ月に一回ってそれは商売として成り立たないだろう。もしかしたら飯屋が副業なのかもしれないけどさ。


「その方は本業が農家ですので、特に問題ないそうですよ」

「飯屋が無かったらこの町の人達はみんな自炊をしているってことなんですか?」

「いえ、自炊・・・・と言うのも変ですが私達の種族の特徴でして」

「あっ・・・・思い出した・・・・植人種って確か・・・・」

「えぇ、私達は食事を必要としませんので皆さんの言う食事処は需要が無いんですよね」


 そうだった植人の特徴の一つとして、俺達で言う肉や魚などを食べるという食事を必要としないのだ。彼らは豊かな土と清らかな水、そして太陽の光が俺らで言う食事なので、肉や魚を食べられない訳では無いが食べる必要が無いのだ。その特性上水と光さえあれば何百日も活動できる持久力が植人の強みでもある。なので地上では持久力で植人に勝てる者はそうそう居ないが、逆に日が届かない地下などでは栄養の補給が出来ないのが弱みだな。それでも、水さえあれば数カ月は活動できるんだけどな。だから昨日俺達だけが食事を取って二人は食べていなかったのか・・・・確かに食事の必要が無いんじゃ食事処が出来る訳が無いよな。


「そうだった・・・・」

「この国は外からのお客さんも少ないからね。昔からそうなんだよ」

「宿屋も無いみたいだし、暫くの食事は自分達で作るしか無さそうだな」

「仕方が無いよな~」

「野菜や果物でしたら市場で売ってますので、そこでしたらご案内出来ますよ」

「あ~この森は色々な植物があるから野菜や果物は豊富なんですね」

「はい、私達もあまり食したりはしないのですが偶のおやつや外国に売ったり一部の住民さん達が買われてますね」

「それじゃあ、まずは市場を見に行きたいですね」


 ウォルマの町で果物は沢山食べたけど、あっちの森とこっちの森じゃ全てが違うし物珍しい果物や野菜もあるかもしれないな。美味しいものなら何でも好きだし、好き嫌いは無いから何でも食べるぞ~


「じゃあ、まずは市場に行きましょうか。師匠行ってきます~」

「あぁ、ゆっくりしておいで~」


 行き先が決まった俺達はまだ日が昇り切っておらずまだ少し暗い外に出ると、多くの人達が道を行き交い話したり物を運んだりしていた。どの人も体の何処かに植物が生えていたり衣服が葉っぱや花、そして木で出来ているものなので見た目も華やかだな~普通の衣服も良いけどああいう完全に植物から出来た服も良いよね。


「みんな忙しそうですね」

「この時間帯にやるべき事をしておかないと、昼の日光浴の時間に間に合いませんからね」

「そういう理由だったんですか」


 なるほど、昼の日光浴つまり俺達で言う食事の時間に間に合わせるためにこの時間から忙しなく動いている訳か。俺達であれば直ぐに終わる食事だけど、聞いた感じだと日光浴はかなり時間を必要とするのかな?変わっている町並みを見ながらペシェさんの案内で進んで行くと、昨日は咲いていなかった家の花が開いていたり蔦が伸びたりしている。夜と昼じゃ家の見た目も変わるのか・・・・


「家の植物が昨日とは違いますね」

「ここの家は全て生きている植物ですから朝と夜では姿が違うんですよ」

「全部生きてるんですか!?」

「はい、私達が住んでいる家はよくある木材を加工して作った家では無くて生きている植物を魔法で家の形にしているんです。なので、年数が経つにつれて成長しますし、模様や花などが変わったりするんですよ。生きてるが故に壊れる事無く長く持って季節によって葉の色も変わりますし、年中飽きないお家なんです」


 へ~植人が植物を操る魔法を得意としているのは知っていたけど、まさか植物を家に変えることも出来るなんて知らなかったな。住めば住むほど味が出て部屋も多くなり季節によって模様が変わる家か~どこかに定住するつもりはまだ無いけど、もし住むんだったらそう言った変わった家が良いな。大きな家だったらガキ共も一緒に住めるだろうし、長い間持つのであれば俺が死んだ後でも何代に渡って住んで貰えるし飽きもしないだろう。家が大きくなるのも利点だな。まぁそんなことあり得ない話だがちょっと植物の家に惹かれながら進んでいるとある事に気付いた。


「あれ、道端とかに沢山花が咲いてたり木が植えてあったりした気がしたんだが・・・・無くなってるな」

「あ~あれは寝ている町の人ですよ」

「え」


 じゃああの道を遮るように立っていたあの大きな木って寝ている住民だったのか?!


「よく居るんですよ。家に帰るのが面倒になってしまって道端で植物の姿になって寝てしまう人が」

「そうなのか・・・・随分と不用心ですね」

「町の中であればガーディアン様が居ますから大丈夫なのでみんな好きな所で寝たりしてしまうんですよ。かく言う私も昨日は遅くなってしまったので森の中で寝ようかなと思ってましたし」

「えぇ・・・・」

「まぁ、この町で少し過ごせばそれくらい普通だと思いますよ」


 いくら植物の姿になれば気配を消して自然と同化できるからと言って、森で寝るのはお勧めしないぞ。でも、町の至る所で寝ちまう気持ちは分かるけどな。俺もプリトに居た時は安全な住処以外にも人が来ない高い建物の上とかで昼寝をしたりしたもんだ。


「それとさっきから気になってたんですけど、敬語止めませんか?」

「いや、そういう訳には」

「助けて頂いた身ですし、私はそう言うの全く気にしませんので楽しむ為にも敬語は止めません?」

「そう言うのであれば」

「良かった。それじゃあ行きましょう!」


 案内してくれたペシェさんとは何度も話すことになるだろうし、年齢は分からないけど敬語を止めてくれと言われたならそれに従うか。それに年上の言う事は・・・・これ以上は止めておこう。ようやく着いた市場は、傘のような形をしていて丸くなっており、葉っぱと枝で作られている広い場所だった。ペシェさんは入り口で中を指さして元気良く紹介してくれた


「ここが市場です!」

「お~・・・・・」

「ここが市場・・・・?」


 市場と言えば人が多く商人達の客引きの声や客の声で賑わっているイメージが有ったんだが、案内され場所は確かに店がいくつも並んではいるが盛り上がりが無い。客もそこそこ居るし店主もいるけど、良い意味で熱気が無くゆっくりとした空気が流れている。どちらかと言うと憩いの場と言った方が良いのかもしれない。


「市場ですよ?あれ、お二人が考えていたものと違いましたか?」

「いや合ってはいるんだが、想像の斜め上を言ったというか」

「もっと騒がしいものかと思ったというか」

「あ~なるほど。合っている様で良かったです」


 ブレストも俺と同じように今まで見てきた市場の熱量との違いに戸惑っている様だ。今は普通で言うと朝市と言うことになるが・・・・稼ぎ時のはずなのにゆったりとしてるな。


「それじゃあ中に入りましょう」


 不思議な市場に俺達はペシェさんの案内で入ってみると、店主達はゆったりとした様子で俺達に話し掛けてきた。


「ペシェちゃん久しぶりだね」

「どうも~今日はどんな感じですか?」

「今日もいつも通りだね~」

「変わった事と言えばオーエの爺さんがまた家具を作り始めたくらいかね」

「ミモザの嬢ちゃんに子供が出来たのもそうだな。だから店は休みさ」

「あらおめでたですね。後でつわりに効くもの持って行きましょう」


 てっきり店の営業が始まるのかと思ったら、ペシェさんと世間話を始めてしまった。俺達は別に話を聞くのが楽しいから良いけど、客の前でそれは良いのか!?

読んで頂きありがとうございます!

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