助けを求める者は?
「う~ん、流石危険だと言われるだけあってどの魔物も強力だな~」
「ちょっと今までと比べると色々と格が違うよな」
俺達は襲い掛かってきたフォーアームズベアを収納に仕舞いながら、現れる魔物達に少し溜息を吐きながら愚痴を漏らしていた。このフォーアームズベアは名前の通り腕が四本生えているベアなのだが格闘家顔負けの武術を使うという凄く特殊な魔物なのだ。巨体から放たれる一撃は軽々鎧を破壊し戦闘センスも高いと三級になりたての冒険者を幾人も葬ってきた魔物だ。他にもサーベルタイガーにギガントイーター、マンイーターなど肉食系の高位魔物が山程いる。一体一体が強力な魔物で、大変だぜ。
「このペースだと町に着くのは夜になりそうだな」
「魔物を無視すれば時間通り辿り着けると思うけど、どうする?」
「ん~こいつらは高位なだけあって高く売れるしクロガネが相手するのにも丁度良いから無視は無しの方向で」
「丁度良いって・・・・結構苦戦してる方だと思うんだけど」
「それが丁度良いんだよ。今まではクロガネにとって楽勝過ぎたんだ。少し手こずるぐらいが成長に繋がるってものさ。危なかったら助けてやるからよ」
そうは言うけど、どいつもこいつも俺の攻撃をものともしない奴らばかりなのでもし大量に襲い掛かってきたらいくら何でも対処できないからな。
「それ次のお客さんだぞ」
「こいつら好戦的過ぎだろ」
ブレストが差す方向から何かが来ているのは俺も探知済みだ。大きな足音と巨体それに森の中を迷い無く掛ける速さそして雷の魔力を離れても感じるってことは・・・・
「サンダーライガーか」
「お、良い獲物じゃ無いか。分かってると思うが毛皮は傷つけるなよ~」
「また無茶言うよ」
茂みから飛んで来る雷を避けならどうしようかと、考えているとサンダーライガーはその姿を見せた。全身に雷を纏い常に放電し時折近くの草や木がバチッと音を立てながら炭と化すことからその雷はかなりの出力があることが分かる。しかも雷属性に対する圧倒的な耐性を持っているから、俺の雷魔法じゃ無理だな。風魔法は・・・・あの雷が邪魔で効果が薄そうだな。ということは、闇魔法しか残されて無いよな。
「ガゥアアア」
咆哮と共に空から強力な雷が振ってきたのでそれを避け俺はクロスボウに闇魔法を装填し、俺を追うように降ってくる雷を掻い潜りながら放つ。勿論サンダーライガーは向かい討つために口から雷魔法を一直線に放ち矢を落とそうとしたが、矢は狼の形に変わり雷を飲み込みながら進んで行く。そして、矢はサンダーライガーに到達した闇の狼は形を崩し触手のように絡みつくと体絡みつき体の雷を飲み込んで行く。
「グルゥウウ」
それを振り解こうと体を揺らし暴れまわっている所に俺は気配を消しナイフを魔力に集め、懐に入ると一瞬で首を跳ね飛ばそうとしたが・・・・
「やっべ」
思い通りにはいかずナイフが首の三分の一で止まってしまった。俺は急いで風魔法を使いナイフを押すがサンダーライガーは大きく体を振り俺を振り回すと、自分に向かって空から極力な雷を落とそうとしている。
俺もろとも行く気かよ!いや自分は雷に対する耐性があるもんな!!
俺は慌ててナイフから手を放し距離を取ると離れた俺に向かって自分に落とそうとしていた魔法を放ってきた。俺はもう一度気配を消し分身を作り攻撃に当てさせ油断したところにもう一度懐に潜りナイフを掴み風魔法、雷魔法、身体教を使って全力で斬り裂いた。
「ふぅ・・・・危なかった・・・・」
「まだ完全じゃ無いのに切れ味を過信し過ぎたな」
「こいつがこんなに頑丈なのも予想外だった」
「全身が筋肉みたいなものだからな」
はぁ、柔らかい喉だったら切れると思ったんだけどな。まさかナイフが埋まっちまうとは思わなかったぜ。普通のナイフじゃ無いから大丈夫だったけど、鉄のナイフだった雷を流されて感電して死んでたな。このミスはもうしたら駄目だな。
「魔力に揺らぎがあるから切れ味が良く無いんだ。もっと形と魔力を一定に保たないとな」
「は~い」
簡単そうに言うけどそれ凄く難しいんだからな。まぁ頑張るけどさ。俺の技術不足を実感しながらも少しでも上手くなれるよう、道中遭遇する魔物達はそれで相手していき少し時間は掛かってるが、問題無く順調に進めてはいる。この調子なら言った通り夜には着きそうだな。昼食を挟みながら進み日が段々と落ちてきた頃、視界の先に大きな木が見えてきた。
「あれが町か」
「まだまだ距離はあるけど、あの大きな木は間違い無いだろうな」
フォレシアの事を調べた時に分かったことはフォレシアの森には必ず大きな木が中心に立っている事だ。それを目印にすれば町に辿り着く頃が出来ると書いていた。そして、何故あんな大きな木が町の中心に立っているかと言うと・・・・!!!
「ブレスト!!」
「うおっなんだ」
「ここから左前方距離はかなり離れてるけど、何かが魔物に追われてる!」
「何か?人間じゃ無いのか?」
「人型みたいだけど、気配が少し特殊なんだよ。だから判別がつかない!けど」
「なるほど、そういう事なら急いだ方が良さそうだな。案内頼む」
いつもならはっきり分かるんだけどこの森の気配の濃さの所為と初めて感じる気配に断言はできないけど、人が襲われているはず。この自然の迷宮とも言われる森に慣れてもいないのに入るのは自殺行為なんだが、今回は緊急事態だから仕方が無い!だけど、念の為に迷子予防は作っておいてっと!
急ぐぞ!
俺達は道を外れ襲われている気配の方に一直線で森を突き抜けていく。道中気になる花や植物そして数々の魔物達と遭遇したが今は構っている暇は無し!襲い掛かってくる魔物はブレストに処理して貰って、森を進むとあと少し辿り着くというのに気配が消えてしまった。
っ・・・・間に合わなかった?
気配を感じられなくなったが生きていることを信じ突き進むと、襲っていた魔物の姿が見えてきた。鈍色に輝く立派な剣のような角を生やし四本足で歩き、すらりとした体躯ソードディアか!魔物姿は見えたけど襲われていた人の姿は見えない。襲っていたとは思えない程優雅に目の前にある木を食べようとしてた所を雷の棒手裏剣を装填したクロスボウで頭を撃ちぬき、すかさずブレストが首周辺に魔法剣を出現させ両断した。
「クロガネ、襲われていた奴は何処だ?」
「分かんない、ここら辺で気配が消えたんだよ」
「あいつの角には血は付いていなかった。まだ生きているんじゃ」
「魔法で殺したら血は付かないだろ。それにソードディアは肉を・・・・」
襲っていた魔物は倒したが襲われたはずの人間が見つからず、周囲をくまなく見渡し探しているとふと、ある違和感に気付いた。何で襲っていたはずのソードディアが急に木を食べようとしたんだ?いくら獲物を倒した後だとしてもそんな急に態度が変わるものか?・・・・・あれ、この木。
「ブレスト」
「なんだ?見つけたのか?」
「この木だ」
「はぁ?」
「この木が襲われていた人型だ」
急に変なことを言い出した俺をどうかしたのかと心配そうに見るが、俺の言いたいことが分かったのか思い出したように木を見つめる。
「あ、もしかして」
「うん、恐らくだけどそうだと思う。すみません驚かせましたか?俺達冒険者なんですけど」
「こんなこと言うと余計に変に見えるが怪しいものでは無いんだ。最小限にしたがこいつの血で他の魔物が寄って来かねないから取りあえず安全な場所に移動しないか?」
俺達は懐から冒険者証を取り出し冒険者であること示し警戒を解こうとしているが、傍から見れば木に話し掛けてい変な二人組である。だけど、俺の勘と違和感が正しければこれが正しい筈だ。
「・・・・あれ?」
「ん~?」
「もしかして間違ってる?」
「いや、違和感を感じるし俺の勘がそうだって言ってるんだけど・・・・」
ここまでしてうんともすんとも言わない木にブレストは首を傾げるけど、いや本当に当たってるはずなんだって!
でもどうして答えてくれないんだ?
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#悪ガキと転生冒険者