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閑話:辺境の若き狼8

 少し待つと完全装備のクロガネとブレスト殿が来てくれた。ブレスト殿はまだ少し眠そうだな・・・・この後の予定を考えると早朝しか時間が無かったのだすまない。他に影響を出さない為に結界はブレスト殿に頼み審判は父上にやって貰うことになった。今日でクロガネと最後の日で寂しいが、最後の日だからこそクロガネとブレスト殿から学んだことを全て使い、成長したことを証明する!手に馴染んだ愛用の武器を握りしめ深く息を吸い、ただクロガネを倒す事だけを考えるんだ。


「始め!」


 今までずっとクロガネと手合わせをしていたから、クロガネの強みや動きは分かる。素早さと柔軟さそして風魔法や雷魔法による瞬間的な加速に風魔法の足場による空を飛び回る縦横無尽の動き。これらすべてを重ね合わせて対処が難しい絶え間のない攻撃をしてくるのだ。俺はまだ全ての動きに対処できる訳では無いが、ある程度予測は出来るし速さには間に合わないがそれは魔法を使って補う。そして、クロガネは俺には力では勝てないから絶対に空中に行くはず!


「さぁ、これはどうする?」


 やっぱりな。それは父上との模擬戦で見たから予測が出来た。俺は腰を少し落とし身体強化を強めると武器を少し浅く持ち直すと降ってくる矢の軌道をしっかりと見極め、武器だけを動かすんじゃなくて体と武器を一緒に動かす!一つ一つ正確かつ丁寧に捌いて行けば防ぐことが出来るが・・・・やっぱり来たか。


 矢の軌道を自由自在に動かせるクロガネに対してこの動きで長い間防ぐことは出来ないし、こっちが先に魔力切れを起こしてしまう。なら、クロガネを空中から落とさないとな。前にあの空中に浮いている魔法について詳しく教えて貰ったから対策は考えておいた。土塊を撃ち出すために魔法を使うとそれを阻止するために、矢が飛んで来るがそれはスキルで防げる。俺の魔法は速さが無いから直接当てる事は無理だが、当てる必要が無い。あの魔法は風の足場を作って浮いてるから、足場が耐えきれない重量を掛けてやれば良いだけ。


「いったぁあああ」 


 土塊を空中で崩し大量の土を落とすとそれと一緒に土煙が生まれ、その隙に絶対攻撃してくると思っていた。クロガネにだって弱点はある。それは一撃の攻撃力の無さだ。スキルを使ってる最中であれば俺にダメージを与える事すら・・・・む、姿と気配が消えたな。クロガネも俺の弱点を突いて来た訳か・・・・さすがに攻撃をしてくれば俺だって気付け、ぐぅう


 防御を貫通する程の威力を持った攻撃も出来たのか。いや、顔面に対する蹴りは普通だったし二撃目が来ない。ということはあの攻撃は一撃か短時間しか出来ないのかだろう。だが、このまま何度も攻撃されれば一方的にダメージが蓄積されてしまうな。クロスボウによって攻撃をしないと言うことは、俺の防御を突破する攻撃はナイフでしか出来ないってことだ。来るしか無いと分かっているのであれば、俺は落ち着いて待てばいい。


意識を集中させ迎撃する準備を整えておけばいずれ・・・・来た!


 堂々と正面から来るクロガネだが恐らくこの動きは俺の動きを誘っているだけだ。だが、それを理解したとしても俺はそのまま武器を振り下ろす。クロガネに当てる必要は無いただ地面に当てれば良いだけ。


 発動した広範囲攻撃魔法は大地を割りそれを防御したクロガネに攻撃したが、これも偽物か・・・・一撃当てれば俺が完全に優位になるのだがその一撃を当てさせてくれないな。


 さて、どうするか。まだ魔力も体力もあるが消耗戦では分が悪い。何かしらきっかけを作らなければ・・・・ん?なんだあの手に持っている物は。前に見た飛び道具と形は同じだが色が違うぞ。何か奇襲を仕掛けてくるつもりか?警戒はしたが、飛び道具からは水が大量に出現するだけで攻撃力が無い。だが、何かしらの意味はあるはずだが今の内に仕留めに行く!


くそ、流石に逃げに専念したクロガネには追い付けないか。


 あっという間に一面水だらけになり俺も濡れてしまったが一体何を・・・・ん?あれいつもと違う棒手裏剣だな。それをクロスボウに装填し何か魔法を使うつもりか?だが、俺の防御があればある程度は・・・・地面に向けてまさか。雷魔法を使うつもりみたいだが、半端な威力であれば防御できる!


「ぐぅううう!!!」


 何だこの威力はまるで全身が雷に打たれたような痛みと衝撃に思わず声が漏れてしまう。これでは何処に居たとしても攻撃を食らってしまう。そして、俺が負ける!!クソッ近付けさせてもくれないか。俺の要塞化は強力な防御を誇るがその代わり防御を突破され攻撃を食らった場合体力を消耗してしまう。これでは先に俺の体力が尽きてしまう。


 地面は地雷が大量に有って動けない、かと言って跳躍をすれば撃ち落とされ逃げられるだけだ。俺にはこの距離を一瞬で詰める手段は無い。だが、このままやられる訳にもいかない。体力の消費を考えず全力で防御すれば、あの攻撃は耐えられるはず。だが耐えただけでは意味が無い。つまり、クロガネに近付く道を作る!!!


「これで、逃げ場も隠れ場も無い!!」


 大地を隆起し逃げ場のない正真正銘の一本道。身体強化を全力で駆け距離を詰めたこの一撃で!!!


「おらぁぁああっ消えた!?」


 クソ、焦り過ぎてその可能性を忘れていた!見失っている内にクロガネは俺の背中に張り付きナイフを首に突き付けるが終わりじゃない!!!!


「ぐぅうう」


 やっと一撃が入った。油断していたクロガネにとってこれは予想外のはず。今の内に追撃を決めれば勝てる!俺はバトルアックスを蹲るクロガネに振りかぶると、一撃腹にまともに食らったがなんのこれしき!クロガネは懐から黒い棒手裏剣を取り出し俺に投げつけるとそれは腕に変化し俺の攻撃をすり抜けあっという間に拘束されてしまった。


 身体強化は全力で掛けてるってのに全く動けない!クソ、まだやれるのに!


「そこまで!!!」


 父上の響く一声によって模擬戦は終了してしまった。結局俺は一撃入れられただけか・・・・中々効いたって?そうか、少しは届いたのだな。強くなったと認めて貰えたがやっぱりクロガネは強いな。父上が本気を出し掛けたあの技を出すまで追い込むことが出来なかったが、認めてくれたのであれば満足だ。俺をここまで鍛え上げてくれたクロガネに最大限の感謝を。


 


 さて、俺達はこの後用事があるしどちらも攻撃を食らってボロボロだから体を癒さなければな。なんと、ブレスト殿は回復魔法を使えるのだな。それではお願いしよう・・・・何故魔法剣を・・・・クロガネ!?


 ブレスト殿なんて事を!!!!!


 怒りに身を任しもう無い筈の体力を振り絞り全力の一撃を叩き込んだが、あの盾は破れない。それならば魔力を全て載せれば・・・・いくら恩人だとしてもクロガネを傷つけた罪は償って貰おう。心の底から湧き上がる今まで経験したことの無い熱く重く暗い感情に身を任せようとした時クロガネが叫び生きていることに安心し、その感情は消えてしまった。


・・・・一体どういう事か説明して貰おうか?


 なるほど、回復魔法を使うには人を剣で攻撃しなければならないのは理解したが、俺達を驚かせるためにわざと説明しなかったのだな。ブレスト殿は博識で善人だとは思うがそう言った悪趣味な行動は止めた方が良いと俺は思う。クロガネはブレスト殿に優しく笑って許しているが、そのような行動は人間関係に悪影響を及ぼしさらにはクロガネの印象まで悪くなってしまうのは、頭の良いブレスト殿なら理解して貰えるはずだ。


「説教は終わったみたいだな」


 む、つい言い過ぎてしまったな。あの場面を見た俺は視界が真っ赤に染まり鼓動も高まりまるで荒れ狂う獣のような感情が湧き上がってしまった。その感情は本来であれば忌避し称賛されるものでは無いが、俺はその感情が何処か安心しいつも以上に頭が澄んでいる感触がした。もうそんな状態になる事は滅多に無いだろうがな。


そうだ、時間が押しているのだから早く家に戻って準備をしなければ。

読んで頂きありがとうございます!

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#悪ガキと転生冒険者

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