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閑話:辺境の若き狼7

 クロガネが居ない間はブレスト殿に色々と教えて貰いながら過ごしていると、二人は本当に俺達の日程の半分で帰ってきた。こうやってまじまじと見せつけられると、本当に足を引っ張っていたのがよく分かるな。もし次にクロガネと森に入る機会があるのであれば、次こそは足を引っ張らないようにしないとな。


 昨日からクロガネに我が館に泊まって貰っているが、ブレスト殿は今砦の方に行っていて・・・・あっ知っているか。なに心配せずとも・・・・何も心配していないか。まぁ、うん信頼してるってことだよな。さて気を取り直して今日の訓練は動きを繋げる訓練か。確かにクロガネの言う通り俺は今まで型の練習をしていたから、一つの動きで区切ると言うこと無意識にやっていたな。その所為で隙と遅さが生まれていたのか・・・・なるほど。


 朝食が出来たことだし今日の訓練はここまでだな。さぁ飯にしよう!ん?勿論クロガネも一緒にだぞ?クロガネは我が家の指南役であり客人なのだから衣食住に苦労させないさ。お、丁度ブレスト殿も帰ってきたようだし話を聞きながら食事としようか。



 それから俺は毎日クロガネからの指導を受け、自分に不足している部分を多く学び庶民の生活がどういうものなのかを教えて貰った。クロガネの話はこの町しか知らない俺にとって新鮮で面白く、そして何処にでも行けるクロガネを少し羨ましくも思った。本当は俺と一緒にこの町で働いて欲しいが、こんな自由なクロガネを縛り付けるのは彼の人生を腐らせてしまう。だから、この貴重な時間を大切に使うとしよう。


 父上とクロガネそしてブレスト殿の模擬戦は、まるで別次元の戦いで解説されないと何が起きて何を考えているのかが分からなかったが、あれは本当に俺の成長につながったと思う。あんな戦いをする強者達はみな自分の強みを理解しそれを最大限に利用している。俺の強みはと聞かれると、少し迷ってしまうが俺が生まれた時から持っているこのスキルは俺の強みと言えるはずだ。逆に弱みは魔法と速さなんだが・・・・二人共魔法を感覚に使うからな。父上も魔法は気力だ!とか言うし、魔法は学院で学ぶしか無いか。


 模擬戦で学んだことを活かしながら鍛錬をしているとまたクロガネと父上はまたダンジョンに行ってしまった。短い間だがクロガネが居ない間も絶やさず何時もの訓練をやっていると、ブレスト殿が様子を見に来てくれた。


「今日もやってますね~」

「うむ、継続は力だからな」

「うんうん、確かにそうですけど実際に出来る人は少ないものです。偉いので俺からのご褒美として魔法をお教えしましょう」

「ん?前に魔法は教えられないと」

「俺が使ってる魔法は無理ですけど、普通の魔法ならお教えできますよ。テセウ様はあのウォリアーの動きを再現しようとしてますよね?」

「うっ、バレてたか」

「見てれば分かるものですよ。あいつが使ってた土魔法であれば再現できますしアレンジも可能なので」


 魔法で悩んでいたがここに来て救世主が現れたか。流石の俺もブレスト殿の魔法を使えるとは思っていないが、ウォリアーの魔法は使いたいと思っていたのだ。俺達は訓練場を借り武器を使って魔法を発動する際のコツや、土属性の魔法は鋭さでは無く硬さそして重量を活かす戦法を取るのが良い事を教えて貰った。


「魔法師みたいな正当な魔法じゃないんで詠唱は必要ありませんが、魔法を構築する速さと発動させる強度は必要になりますから注意です」

「なるほど」

「戦士にとって武器は魔法師の杖と同じ意味を成します。魔力を安定させ物体に魔力を通す第二の手みたいなもんですね」


 そう言ってブレスト殿は持っていた剣を地面に指すと直線状に幾つもの岩が隆起した。


「土魔法を使っているから分かると思いますが、土魔法は実際にある大地を利用して魔法を発動させるので魔力の多さより物体を操る力、魔力の方向性が重要になります。その方向性を決めるのが」

「武器と言うことか」

「そういことです。熟練になれば必要ありませんが武器を振りかぶる事によって魔力の行き先と魔力を伝達するのを補助しているんです」


 なるほど、戦士はみな魔法を発動させる時に届きもしない刃を振ったりしているがそういう意味があったのか。動きで魔法がバレてしまうが、必要な動作だったのだな。


「魔法師は魔法を放出するのが得意なので、遠距離攻撃が多才ですけど戦士はみな魔力放出が苦手なんですよね~」

「それは俺もだな」


 俺も例に漏れず魔力を放出することが苦手なのでクロガネの様に魔法の矢を遠くまで撃つようなことは出来ない。精々岩を飛ばすくらいだな。


「練習すれば武器を使った魔法を使い易くなるから練習あるのみです」

「了解した」


 これを自分のものにすれば欠けていた部分を補うことが出来るはずだ。そして、また一歩クロガネに近付くことが出来る。魔法の勉強はクロガネを驚かすためにブレスト殿が内緒にしようというので、驚いた顔を見たい俺はそれに同意した。二人が帰って来て依頼が終了すると言った時は動揺してしまったが、父上の好意とクロガネとブレスト殿の希望で後一ヶ月期間を延ばしてもらえることになって安心したな。


 いや、後一ヶ月と言う短い時間でスキルを常に発動できるようにするだと!?流石にそれは無理じゃないか!?え、体力が切れたらすぐに起こしてやるから安心しろ?体力を増やすためにスキルを使った状態で走り込みと手合わせもやるだと・・・・これ俺死なないか?


 いや、厳しい指導を希望したのは俺だ。死ぬ気でやるぞ!!!


 初日はほんの数分で体力切れを起こし何度も倒れてしまい起こしてもらうというのを繰り返していくと、段々とスキルで使う体力が減っていき、体が慣れたのか疲れづらくなってきた。一週間もすれば、模擬戦中はスキルを保てるようになり二週間経てば一日中保つことが出来るようになった。その間の特訓の事は・・・・まぁ過酷の一言だったな。だが、その過酷な日々のおかげでスキルの効果が強くなり数回発動するだけで体力切れを起こしていたあの頃とはもう違う。残された時間は短いが、最終日に俺と本気の模擬戦をしてくれないか?


 


 時が経つのは早くあっという間に最終日となってしまった。起きた俺は気合を入れながらいつもの装備といつもの武器を持ち訓練場に行くと、父上とサピロが待っていた。


「もうお前も12歳か時間が経つのは早いもんだな。もっと成長を見てやりたかったんだが・・・・あまり見れなくてすまない」

「いえ、父上の仕事の重要性は理解していますし時間を何とか作って俺達の事を気に掛けてくれていたのは分かっています。だから、謝らないでください」

「そうか、ありがとな。この数カ月で本当にテセウは見違えたな。もう大人になっちまったみたいだ」

「もう12ですから大人です!」

「俺からすればまだ子供だよ。逞しくなるのは良いが何か自分じゃどうしようも無い事が起きた時は俺を頼るようにな」

「はい。ブレスト殿とクロガネに利用できるものは最大限に使えと言われましたから!」

「・・・・正しい事を教えているんだがなんだかな~」


 二人は俺に目的の為ならば人道に反さない限りありとあらゆる手段を有効に使う事を教えてくれた。親の力だと言われたとしても、そんなの気にせずもしもの時は頼らせて貰うつもりだ。


「テセウ」

「なんでしょう?」

「クロガネ殿達と会えて良かったか?」

「はい!!俺の人生で最高の出会いだというくらいに!」

「そうか。ならその出会いを大事にしろよ。今は無理だとしても後々この町に住んで貰えるよう手回しも大事だからな」

「はい!」


 確かに今は旅を楽しむことを目的としているが、何十年経った後どうなるかは分からない。この町を気に入ってくれているのであれば、俺の町に住んでくれるかもしれないからな。その為に色々な事をしておかないとな。これは二人に学んだことだ。


 そうだな~クロガネはプリトのスラムに残してきた仲間の事を気にしていたから俺の町に招いても良いな。この町でなら職や住まいには困らないから生活していけるはずだ。あとはクロガネが好きな本も集めて宝石屋も有った方が良いかもな。これらは町の役にも立つし無駄にはならない。


「「ふっふっふっ」」

「お二人共・・・・」


 似た者同士の親子に呆れるサピロであった。

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#悪ガキと転生冒険者

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