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閑話:辺境の守護者4

 さて、今日は待ちに待った模擬戦だ!この模擬戦はテセウに強者相手にする戦い方を教える為だが、二人の実力を俺が確かめる為でもある。クロガネ殿の戦い方は森で見たからある程度は分かっている。ブレスト殿の戦い方も報告書で知ってはいるが、実際に見るのは初めてだから楽しみだな。おぉ、結界も張れるのか・・・・本当に多才だな。


「それでは・・・・・開始!」


 ほぉ~自慢の素早さで突っ込んでくるかと思ったが慎重だな。確かに自分より格上の相手であれば少しの判断ミスや油断が命取りになる。相手の動きが分からないのであれば待つのが定石だな。んじゃ、こっちから行かせて貰うぜっ!


 ふっ良い反応速度だな。次の攻撃も予測して反撃までしてきやがったな。だが、待つだけじゃ俺には勝てないぜ?


ほ~無詠唱で絶え間なく大量の矢を作れるのか。普通なら相当魔力を使うはずだが、効率が良いのかそれとも特殊な魔法なのか疲れる様子が無いな。だが、威力はそこまででも無いし対応できない速さと数じゃない。


 っ気配が一瞬消えたな。だが、戦闘中であれば見失う訳が無い。一瞬で俺の背後に現れたクロガネ殿を蹴り飛ばすと文句を言われてしまった。足癖は悪くてなんぼさ。そのまま追撃しようと思ったらなんとクロガネ殿は空中を浮かんでいた。


「空を飛べるとはな」


 空を飛ぶ魔法は幾つかあるがどれも高等な魔法だ。俺も光属性の適性があるから、空を飛ぶ羽の魔法を習得しようと友人に頼んで教わったのだが、これが全然出来なかったんだよな~あの嬢ちゃんは簡単に出来たみたいだし、これは才能の問題なんだろうな。別に羨ましくは無いけど・・・・人間だれしも一回は空を自由に飛びたいと思うだろ?


 クロガネ殿を見る感じだと翼も強風も使っていない。一体どうやって空を飛んでいるんだ?それより、クロガネ殿はどうでる?


 なるほど、空中から魔法とクロスボウによる絨毯爆撃って訳か。魔法の矢の威力も上がっているが、何よりも気を付けなければならないのはあのクロスボウだな。あれは気配を消しながら直撃したら確かに俺にダメージを与える威力を持っている。矢の雨を対処しながら次の手を考えていると、いつの間にか俺の足に闇の鎖が絡めとられていた。


 あの矢はこの鎖を仕掛ける為の陽動で、本命は動きが止まった所に高威力の矢の攻撃か。なるほど、大胆だが繊細な作戦だな。


 俺を拘束する闇の鎖と雷を纏いながら俺に向かって高速で向かって来る矢、そして雷と風による無数の矢を俺はスキルを使って全てを切り捨てた。その驚いた顔は初めて見たな。でも、驚いてる暇はあるのか?俺は一瞬の隙を突きスキルで身体能力を強化し、ひとっ飛びでクロガネ殿に肉薄しようとすると空中に糸が巡らされていた。それに引っ掛かった俺にスパイダーの糸による網が飛んできたが俺はそれもスキルを使って切り裂く。そして、そのままクロガネ殿の首元を掴み地面に叩き落とした。


 ふ~慎重なクロガネ殿が飛んできた時の対策を何もしてないとは思ってなかったが、よりによってワイズスパイダーの糸って恐ろしいな。あの網には粘着質の糸と鋼すらも切り裂く糸が混じってやがったぜ。普通の奴だったらバラバラだったぞ!


 かなりの勢いで投げたつもりだったが、魔法で上手く衝撃を和らげたみたいだな。俺を見る目は冷静だが、俺の攻撃が分からず接近したくないって顔してるな。まぁ、そんなこと構う訳が無いんだけどな!そのクロスボウは確かに高威力だがそれだけじゃ俺を倒すことは出来ないぞ!視界を遮ったとしても、正面から来るなら余裕・・・・


ん?手ごたえが無いな。闇魔法で作った作った分身か・・・・随分精巧なものをつくるもんだ。一撃食らっちまったがその威力じゃ俺を倒すのは無理だぜ。


 次はそっちから来るみたいだ~良し来い!うお、空を飛ぶと言うより空を跳ねると言った方が正しいのかその魔法は。速いし軌道がころころと変わるから対処しづらいな。ん~その魔法良い魔法だな~羨ましいぜ。おっと、俺の力に気付いたみたいだな。そう、俺のスキル爪天撃そうてんげきは体や武器の動きに合わせて三つの斬撃が発生する攻撃スキルだ。威力もあり魔法のように飛ばすことも出来る。単純だが強力なスキルと言えるだろう。どう対処するつもりだ?


 なんだよ、またそれかもう見飽きたぜ。


 何度も見た魔法の矢をいつも通り対処しようとするとまるで意思があるかのように、矢が曲がり俺の斬撃の隙間を通って来やがった。同じような芸当を見たことがあるが、近接戦をしながら無数の魔法を操った状態でそれをこなすとは天晴だ。


 あぁ、こんなに速くて楽しいやつは久々だ!一切隙を見せず止まらない攻撃、確実に俺にダメージを与える威力!もっと見せてくれ!だが、クロガネ殿はもう魔力と体力切れに近いな。


「何だよ楽しかったのに終わりか?」


 息を上げるクロガネ殿を揶揄うと、一瞬俺の事を睨み大きく息をするとまるで最初から居なかったかのように気配と姿が消えてしまった。は!?嘘だろ、一切油断もしていなかったのに俺の感知に引っ掛からない。障害物も無い平らな広場で見失うなんてあり得ない!


 どこだ?魔力も一切感じねぇ!


 俺のスキルは直感と五感を強化してくれるが、匂いも音も気配も魔力もクロガネ殿の存在する証明となる物が一切感じられない。


 どこだどこだどこだ・・・・・後ろだ!!!!


 殺気を感じ本能的に攻撃を防ぐがそこには誰も居ないし、攻撃を防いだ衝撃があったのにそこには何も無い。風の動きもナイフの音も魔力さえ感じられないのだ。また来るどこだ・・・・そこか!!!!!


 俺はスキルを全力で使い気配を察知したクロガネ殿を紙一重で首を掴み持ち上げた。今俺は死んでいたかもしれない、今俺は明確に死を感じた。久々に感じた濃密な死の気配に俺は恐怖を感じ思わず、本気を出しクロガネ殿を殺すところだった・・・・すまない。


 条件反射で殺そうとしてしまった事をテセウに怒られてしまった。本当にすまないと思っているんだ。まさかあそこまでの恐怖を感じるとは思わなくてつい体が反応しちまったんだよ・・・・クロガネ殿は笑って許してくれたが、自分の未熟さに落ち込むぜ。はぁ、気を取り直して次はブレスト殿だな。


 対峙して改めて思うがまるで強そうに見えないのが不思議だよな。歩き方や姿勢それに全くと言っても良いほど隙が無いのにブレスト殿が発する雰囲気が、威圧感を感じさせない。だが、三級冒険者であることと、今までの功績が強者だと言うことを裏付けている。油断すれば俺も簡単にやられてしまうだろう。


まずは小手調べだな。


 ふむふむ、その剣は軽いように見えるが丈夫で切れ味が良い中々の品物だな。そこにブレスト殿の腕前が重なり三級として遜色のない強さになっているが、俺の剣の腕には届かない程度だ。・・・・本当の実力はそんなもんじゃ無いだろ?互いに身体強化と剣の腕前だけで戦っていたが、このままだと俺に押し負けるぞ?


 俺の戦い方は全身を使った体術と剣術による合わせ技による獣のような絶え間ない攻撃だ。今のブレスト殿ではその全てを防ぎ切ることは無理だろう。守りに徹していたブレスト殿は距離を取ると笑った。


お、ようやく本気を出してくれるみたいだな。それじゃあ、俺も。


さぁ行くぞ!!!


 防御する仕草すらしない。一体何をしようとしているんだ?・・・・うおっ一体何処からこの槍が現れたんだ!魔法剣を使うとは聞いていたが全く気配を感じなかったぞ。しかも、無数に作り出せるのか厄介だな。だが、俺だって広範囲に攻撃で出来るんだぜ・・・・しまった!!


 魔法剣に好きな属性を付与できるのか。こりゃ魔法にも気を付けないとなっ!おいおい、弾いたんだから戻ってくるんじゃねーよ。てことは、破壊しないと意味が無いってことだな。


 クソッあの魔法剣は魔力の消費が無いのかよ!次々壊してるっつーのに、すぐさま新しいのが作られて近寄る隙が無い。なるほど、こんな魔法を使えるんなら三級の群れが相手だとしても楽勝だろうな。というか、こいつなんで三級なんだよ!すぐに二級に上がれるだろ。


 とにかく、あの剣を全て壊さないとな!よし、道が拓いた!


 普通の魔法師相手ならこの距離まで近づいちまえば大抵は勝てるんだが、ブレスト殿は戦士だから武器を使えるんだよな。しかも、次々とその場面に適した武器を変えてきやがるがやりずらい!近接戦をしている間にも絶え間なく魔法剣が飛んできやがるし、手数が多い。俺は爪天撃を最大限に使いながら対処していくが・・・・ここまで楽しい戦いは久しぶりだぜ!!おいおい、搦手まで使って来やがるのか本当に楽しませてくれるな。鍔迫り合いをしながら気分が高まり、俺はもっと本気にさせるためにある事を提案してみる。


「なぁ、この模擬戦賭けをしないか?」

「領主であるお方がそんな事して良いんですか?」

「領主だから良いんだよ。俺が勝ったらクロガネ殿を貰う」

「!!」

「あの強さと洞察力そして聡明さ。テセウも気に入っているみたいだしああいう奴が俺の領に欲しいんだ。手に入れてみせる!!」


 そう言って俺は獣の本能の真骨頂である獣神化を使い本気でブレスト殿を吹き飛ばした。さっき言った事は半分本気だ。善良で将来が期待できる子供をみすみす逃す訳が無いだろう?勿論本人の意思を尊重はするが、勧誘するぐらい良いだろ?


 うぉ・・・・あれがブレスト殿の本気か。


 俺の言葉を聞いたブレスト殿は表情を消すと、今までとは明らかに違う魔法剣を作り出した。受け止めてみて分かったがこれは、今までのと比べ物にならない威力を宿している。しかも、その剣技は何だ?見たことが無いぞ!


 本気になったブレスト殿は恐ろしい程強く何とか食らい付けてはいるがこのままだと俺が先に魔力切れで倒れるな。しぶとい俺に痺れを切らしたのかブレスト殿は、莫大な魔力を放ちながら天に魔法剣を作り出した。


おいおいマジかよ!あんなの食らったら一溜りもな無いぞ!!!あれが発動する前に止めねーと!


 俺に出来る全力の速さで魔法を止めに行った瞬間、俺達は気配も無く現れた無数の鎖によって捕らえられてしまった。


これは、クロガネ殿の!


 気付いた時には既に遅く俺達の首元にはクロガネ殿の分身によってナイフが突きつけられていた。


「模擬戦だってことだって忘れてるよな?全く良い大人が盛り上がって目的忘れてるんじゃねーよ・・・・お前らが本気で戦ったらここら周辺更地になるだろうが!」


 あ、そうだった・・・・楽し過ぎてやり過ぎてしまった事を反省しているとみるみるうちにクロガネ殿の顔色が悪くなっていき倒れてしまった。


「クロガネ!!!」

「魔力切れか!」

「上級マナポーションがあったはず!」

「早く飲ませろ!」


 さっきの戦闘で消耗しているのに本気で戦っている俺達に気配を悟らせず拘束する魔法なんて、魔力の消費が凄まじい筈だ。


本当にすまーん!!!


 クロガネ殿を助けた後テセウとリリーにとんでもなく怒られちまったんだよな・・・・反省してます。

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#悪ガキと転生冒険者

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