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次の国へ

朝からテセウと模擬戦をやって昼にはパーティーと俺の全力を籠めたイヤーカフを作って、さらには昼過ぎから夜まで地道な錬成をして魔力も体力も集中力も使ったから少し疲れてはいるけど、ベットに入った俺達はそんな疲れを忘れて話すことに夢中になっていた。


「へ~学院は寮で同室の奴が居るのか」

「あぁ、自分と同じか少し下程度の家柄の者が同室となるのが普通なんだ」

「変な顔をして・・・・もう同室の奴が分かってるのか?」

「本当は当日になるまで分からないんだが、父上が言うには第三王子であるアルフリート殿下が同室となる予定なんだそうだ」

「え、王子と一緒なのか!?」


 確かこの国の辺境伯家は実質的には公爵ほどの権力を持っているけど、位で考えるなら辺境伯は真ん中ぐらいなんじゃなかったっけ?普通は公爵かもしくは王族は特別な部屋が用意されているんじゃないのか?


「父上と国王様が学友でな。同年代で辺境故に貴族世界から遠ざかっていて、どこの派閥にも属しておらず身を守れる実力を持った者となると俺しか居なかったようでな」

「何でそんな面倒な条件があるんだ?王子ならどんな奴でもちやほやされるだろ?」


 第三王子とは言えどこの国の国王になるかもしれない奴なら、どんな奴でも仲良くしようとするし危害なんて加えようとは思わないだろ?


「貴族世界と言うのは面倒なものなんだ。現在次期国王に一番近いのは第一王子のミネラ王子と言われているのだが、この方は清廉潔白と言う言葉が似合う程の人格者なんだが貴族の権力を縮小させようとしているんだ」

「それは・・・・かなりの反感を買うだろ」


 俺からすれば威張り倒して平民を迫害するようなクソ貴族共の権力が無くなるのは嬉しいけど、当人からすれば冗談じゃ無いと言うだろうな。


「この権力縮小の流れは現国王から始まったんだが、それをよく思わない貴族共が野心のある第二王子に取り入ってあることないこと吹き込んだのだ。その所為で第一王子派と第二王子派で分断されてるのが現状だ」

「うへ~」

「俺達辺境伯と言うのは国防を任され内部とは関りが薄いから、派閥争いになる事が無い俺が同室に選ばれたって訳なのだ」


 辺境伯という立場は強いから他の貴族から圧力を掛けられることも、権力を使って命令させられることも無いから微妙な立場に居る第三王子の傍に居るには適任って訳か。いくら学院の中だとしても武力による嫌がらせが無いとは限らないし、ある程度の事なら対処できるテセウなら護衛にもなるもんな~


「俺としては新しい事を学ぶことを楽しみにしていたんだが、色々と大変そうで少し不安だ」

「テセウならどんな事が有ったって大丈夫だって!もしも、ヤバい事になったらイヤーカフが守ってやるからな」


 学院の中でテセウの命に危険が迫る事はあまり無いだろうけど、もしその時が来たら必ず俺のイヤーカフが守ってやる。そんな目に遭わせたやつにはそれ相応の仕返しをするように本気でやったんだから、しっかり機能してくれよ!


「そうだったな。とても心強い」

「テセウは大変だよな~俺はそんな面倒ごと御免だぜ」 

「俺はまだマシな方だ。本来であれば学院に居る間に多くの繋がりを作る必要があるんだが、俺達の領は独立しているから協力関係や取引相手だけで済むからな」

「そういうのもあるのか~」


 聞くたびに思うけど、そんな面倒で陰湿しかも規則や身分で縛られている貴族はつくづく俺には合わないな。まぁ、天と地がひっくり返っても俺がそんな立場になる事は無いんだけどな。


「俺の話ばかりではつまらないだろう。クロガネはこれからフォレシアに行くんだろ?すぐ隣の国だが俺は行ったことが無いんだ」

「おう、取りあえずの目的地はフォレシアだな。町まで遠いらしいから朝早くから出て行くんだけど、楽しみだぜ」

「そうか、フォレシアは危険な魔物が多く居ると聞いている。大丈夫だとは思うが怪我が無いように祈っておこう。ところでフォレシアでは何をするつもりなんだ?」

「ん~特別な薬草があるらしいからそれを採取したり、特別な薬とかを探す感じかな。あんまり決まって無いけど、依頼をしながら国を楽しむって感じだ!」


 フォレシアにはブレストも行ったことが無いので何があるのかは全然分からないんだよな~あんなに言われたら気になってフォレシアの特徴だけは調べたけど、そこまで詳しくは調べて無いんだよな。


「クロガネらしいな。俺も学院を終えた後ならばフォレシアに行く機会があるからもし面白い場所があったら手紙で教えてくれ」

「え、テセウも行くことあるの?」

「フォレシアと貿易の道を結んでいるから父上は年に一度フォレシアに出向くことがあるんだが、後継者として学ぶために同行することになっている」

「なるほどな~それじゃあ、面白い場所見つけておくよ!」


 なるほどな~テセウは町から出れないと思ってたけど仕事の一環で他国に行くこと無くは無いのか。


「有難い。だが、クロガネが楽しむついでで構わないからな」

「おう!初めての外国、楽しみだな~」

「クロガネは昔から外国に興味があったのか?」

「そうだな。プリトに居た時は外に出るなんて考えられなかったけど、外から来る奴らをよく見てたし冒険者達の話を盗み聞いて外の世界に思いを馳せてたもんだ。ベルグは昔外に出たことがあったみたいで色々な話を聞かせて貰ったし、昔から心の底では旅をしたいと思ってたんだ」

「そしてブレスト殿と会った訳か。美しい出会いだな」

「実はそんな綺麗な出会いじゃ無いんだぜ。きっかけは俺がブレストの荷物を盗んだことだからな」

「そうなのか!?」

「そう言えば言ってなかったな。じゃあ、少し長くなるけど聞くか?」

「是非」


 俺とブレストの出会いが綺麗で美しい物だと思ってたみたいだけど、実はそんな事は無いんだぜ。驚くテセウに俺達の長い出会いの話をしていると、あっという間に時間は過ぎていきいつの間にか眠ってしまい朝になっていた。外で鳴る小鳥の声で目覚めた俺はまだ寝ているテセウを起こさないようゆっくりと、起き上がり窓から外を見てみるとまだ薄暗い。


「ん~寝ちまってたのか。まだ暗いけど天気が崩れる感じは無さそうだし良い出発日よりだな」


 体を伸ばしているとゆっくりと起きたテセウが目を擦りながら俺を見て


「おはよう、早いな」

「おう、おはよう。出発の準備があるからもう少し寝てても大丈夫だぞ」


 起こしちまったと思って、優しく言うと首を振りながらベットから降りて起きて準備をし始めてしまった。


「いや、起きる」

「そうか」


 俺は準備を始めたテセウを気にせずマジックバックから冒険用の服を取り出し着替えて、武器と防具に不備は無いか確認した後装備し魔力の滞りや体の不調が無いかを確認すれば準備完了!


「準備完了っと。あとは部屋に戻って荷物を回収すれば大丈夫だな」

「そうか、部屋まで送ろう」

「いや・・・・そうだな」


 わざわざそんな事をしなくても良いと思ったけど、最後なんだし一緒に行くか。朝が早く静かな館の中を何も話さずゆっくりと歩き、俺が泊まっている部屋の中に入ると既にブレストは起きていた。


「寝坊しなかったみないだな。テセウ様おはようございます」

「ブレストもな」

「おはよう」


 俺は部屋の中に置いておいた荷物をマジックバックの中に入れ忘れ物が無いか確認してお世話になった部屋を後にした。そして俺達はゆっくりと歩き玄関ホールに行くとシュナイザー様とリリー夫人そしてまだ眠そうにしているが、しっかりとぬいぐるみを抱いて立っているララ様とルウ様が居た。


「おはようございます」

「おう、おはよう」

「ふふ、ララ、ルウお別れの挨拶をするんでしょ」

「うん、クロガネバイバイ」

「元気でね~また来てね!」

「はい、また会いましょう」

「大丈夫だとは思うが、フォレシアの魔物達には気を付けろよ」

「植物が沢山ある国だから楽しんでね」

「クロガネ、これを受け取ってくれ」

「牙の記章ですか?ありがとうございます!」

「友人の証だ。元気でな」


 シンプルな作りだが精巧な作りの牙が掘られた記章を受け取り大事にマジックバックにしまい、最後の挨拶をして俺達は館を後にするのだった。


「「ありがとうございました!お元気で!」」

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