納品完了!
「二つとも浄化の魔法が掛かっているので、汚れなどは気にしなくても大丈夫です。それと、俺の魔力が入ってるので一緒に寝ると眠りのお守りぐらいにはなると思います」
「素敵な贈り物をありがとうございます」
「ルウ、ララ大事にするんだぞ」
「「は~い」」
念のために二つのぬいぐるみに掛かっている魔法をシュナイザー様とリリー夫人に説明しておく。二人のお守りになるように考えながら作ったから、もしかしたら予想外の動きをするかもしれないけどシュナイザー家の人達を傷つけることは絶対にしないから大丈夫だと思う!俺の説明を聞いてリリー夫人は丁寧にお礼を言い、シュナイザー様は近くに居たサピロさんに目配せをしたがサピロさんが首を振ったので少し笑っている。
俺が作った物は基本的に鑑定出来ないからな~でも、鑑定出来ないからって物凄い効果を持っている訳じゃ無いんだぜ。
「お兄様~」
「見てみて良いでしょう~」
「あぁ、とても精巧なぬいぐるみだな。ふむ、見た目より凄く柔らかいのだな」
「そうなの~」
「モフモフ!可愛いよね~」
双子はテセウに自慢するかのように見せ、それに笑いながらぬいぐるみを触ると見た目より柔らかい質感に驚いてくれたみたいだ。
「そうなのですね。ララ、ルウ、母様にも触らせて頂戴」
「はーい」
「どうぞ!」
「うふふ、ありがとう。あら本当だわ。まるで羊毛の様に柔らかいのですね」
呼ばれた二人は嬉しそうにリリー夫人の元に行き、ぬいぐるみを触らせてあげると柔らかな質感に驚いた顔をした。
「錬金魔法のおかげか」
「はい。羊毛の柔らかな性質をウルフの毛皮に合わせたので、見た目は本物様ですけど、質感は柔らかにすることが可能なんです」
「ふむ・・・・こうやって次々と錬金魔法で作られたものを見てしまうと、俺の町にも一人は錬金魔法を使える人材が欲しくなるな」
「そうですね・・・・付与魔法を使える方は高齢で引退されてしまったし、魔道具を揃えるためにも付与魔法か錬金魔法を使える方が一人でも居て下さると良いですね」
「サピロ、今回の移住者希望者に有望な奴は居たか?」
「残念ながら・・・・錬金魔法は高度かつ必要となる素養と才能が多いですから、熟練した方は中々見つけられません」
町の中に居て欲しい人材としては、居るか居ないかだけで生存率に関わる薬師に食料の確保のための農民そして道具を作る鍛冶職人に魔物達と戦う衛兵か冒険者、もしくは狩人。それに、魔道具などを作れる付与師か錬金術師だな。これらの人々が集まっている町は安定すると言っても過言じゃ無いだろう。
だが現実的な話をすると狩人や薬師、鍛冶職人までなら集まるだろが魔法を使える人材はそうそう居るものじゃない。俺達が今まで出会ってきた冒険者やシュナイザー様達を見ていると魔法はありふれている物に見えるが、本来は学院や師匠に習わなければ魔法は使えないし、そもそも魔力を持っていなければ使えないのだ。しかも魔力を持った人間は少なく、魔力を持っていたとしても魔法を使えない人間は山程いる。魔法と言っても種類が沢山あるし、付与魔法と錬金魔法は長年修行しないといけない魔法だから、数が少なくどの町でも囲い込んでいるから中々見つからないんだよな。
「そんな目で見ても、俺は留まりませんしこの館にあるような魔道具は今の俺には作れませんからね」
「そうなのか?クロガネの様子を見ていると十分作れそうなんだが」
「空間を維持したり、結界を展開したりする魔道具は構造が複雑かつ魔法も複雑なんで今の俺じゃ無理だな」
無理だと言う俺にテセウは不思議そうに言うが、今まで作ってきたものは構造と効果が単純な物ばかりなんだ。俺の魔力の所為で効果が強力になっているけれど、錬金魔法で作った構造物と言う点でみるなら、初歩の初歩だな。
「そうなのか」
「錬金術師は欲しいが、こういうのは巡り合いだからな。・・・・ついに明日で別れか寂しくなるな」
「クロ~」
「いなくなるの寂しい!」
「俺も寂しいですけど、そのぬいぐるみを俺の代わりだと思って可愛がってくださいね」
シュナイザー様の言葉を聞いてぬいぐるみを貰って上機嫌だった双子が涙を浮かべ寂しそうにするので俺は二人の頭を撫で慰める。最後の思い出を作るために、二人に色々な話を聞き、俺も自分の今までの冒険の話を沢山してあげる事にした。寂しそうにしていた二人は冒険の話に目を輝かせ、恐ろしい魔物の話には私達が倒すと威勢が良くなったりと楽しい時間を過ごしていると・・・・
「んむ・・・・」
「まだ起きてる・・・・」
「明日の朝お別れは言いに行きますから、その為にも今日は寝た方が良いですよ」
「んぅ・・・・」
「・・・・」
話している内にパーティーで元気よく走り周っていた二人は眠くなってしまったようで、目を擦りながら襲い掛かる睡魔と戦っていたので俺は優しく頭を撫でているとやがて睡魔に負けて眠ってしまった。
「あらあら寝てしまいましたね。貴方、私は二人を寝室に移して来ますわ」
「あぁ、それなら俺が運ぼう」
「お願いします」
「それじゃあ、俺は残りの魔道具を作ってきます」
「俺も一緒に行こう」
「俺も良いか?」
「ご自由にどうぞ~」
双子が眠ったことによって俺はテセウとブレストと残りの作業を終わらせるために倉庫へと向かい、リリー夫人とシュナイザー様が双子を寝室へと運ぶために食後のティータイムは終了となった。二人を長い間待たせるのもあれだし、夜になって少し肌寒くなってきたのでさっさと済ませよう。俺達は急ぎ足で倉庫へと向かい、中に入るとさっきと同じよう自分がやり易い場所に移動させ地面へと座った。
「さて、やりますか」
「魔力はもう大丈夫なのか?」
「おう、飯食べたから回復したぜ。それに、後はこれだけだからそんなに沢山の魔力は要らないんだ」
錬成を始めようと一つ鉄のインゴットを手に取ると、それを見たブレストが思い出したかのように聞いて来た。
「そう言えば、一つ一つ錬成しているが一度に全部錬成することは無理なのか?」
「無理じゃ無いけど一度に全部の錬成をするとなると、それだけ大量の魔力と一つ一つを区別するための繊細な魔力操作が必要になるから、今の俺じゃ無理だね」
熟練した錬金術師であれば一度に大量の錬成を行ううことが出来るけど、俺はまだ細かな操作が甘いから分解は出来るけど、一つ一つ細かく錬成するのが無理だろうな。
「んじゃ、さっさと終わらせるから少し待っててな」
俺は二人の注目を浴びながらも気にせず、集注して次々と錬成をしていく。流石にこの数をこなすと、この錬成に慣れてきてスピードも上がったしコツを掴んだから魔力の消費も少しだけだけど削減出来るようになってきた。今はこの簡単な魔道具で満足だけど、もっと改良して行く行くは火力も上げたいな~
「相変わらずの速さと集中力だな」
「クロガネはこういった作業が得意のようだな」
「コツコツ毎日同じことをするのが得意ですから、一つの事に集中するのも得意なんですよ」
「クロガネは本当に多彩なのだな」
「本人はその自覚が無いみたいですけどね」
まさかこんな大量に作ることになるとは思ってもいなかったけれど、結果として錬成の速度が上がって戦闘中にも問題無くこれを作れるようになって、しかも金も大量に手に入るとかウハウハだぜ。金はある程度溜めて、なんか珍しい物とか宝石とかがあったら使うようにしよっと。
外部の情報を遮断し自分の世界に入って作業している俺は二人の会話を一切聞こえる事無く作業しあっという間に注文された数を作り終えた。
「よし、終わり~」
「先程より早くなっていないか?」
「慣れましたからね」
あっという間に終わった作業にテセウは驚いているが、俺は気にすることなく錬成した投げナイフを纏まった場所に集め分かりやすく置いておく。
「それじゃあ、シュナイザー様に報告して今日は終わりだな!」
「あぁご苦労さん」
「お疲れ様」
俺達は倉庫に鍵を掛け、問題が無いことを確認した後館へと報告に戻るのだった。
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