フロアボスがデカすぎる
ダンジョンに入って二日目。階層を下りていくごとに敵は段々強くなっていってるけど、ドール系統が変わる事は無いから対処は楽だ。街の中を走ることは慣れているし、ダンジョンにも少し慣れてきたから今日は昨日より早く階層を下りることが出来た。そして、今俺達は十層ボスの順番待ちをしている。
「次の次だな」
「ボス待ちってよくある事なのか?」
「人気があるダンジョンならよくあるな」
「へ~」
「中に入って戦闘を始めると扉が閉まる仕掛けになっているんだが、その前に全員で一緒に入ることも出来る。だが、その場合ボスのドロップ品をどう分けるのかが問題になるんだよな~他にも強いパーティーを頼ることで実力の無い者が先に進んだりと、色々と問題になることが多いから前の組が終わるまでボス部屋には入らないのがマナーだな」
「なってみて分かったけど、冒険者って色々ルールがあるよな」
「そうだな~冒険者は自由の象徴でもあるが大きな組織の一員でもあるからルールは結構あるぞ。暗黙の了解とかもあるし、冒険者になる時は誰か指導役が居た方が良いんだよ」
「俺はツイてるな」
「そう言って貰えて嬉しいぜ」
ブレストが居なきゃ依頼を読むことも冒険者になることも出来なかった。教え方は分かりやすく丁寧だし、偶に変な事を言うけど色々な事を知っている。本当に凄いと思う。
「終わったみたいだな」
「ここのボスってジャイアントドールだよな?」
「そうだ、俺は手を出さないからクロガネ一人で倒すんだぞ」
「おうよ!」
順番が来たので俺達は立ち上がりボスへと続く扉の中に入る。ボス部屋は大きな円形の形をしていて中央には、見上げる程大きな顔の無いドールがその体格に合った大きな剣と盾を持っていた。あれブレスト三人分は余裕にあるだろ・・・・膝の高さが俺の身長とと同じくらいだな。
「でっか」
「デカいから一撃は重いが動きは鈍い。危なくなったら助けてやるから、安心していけ」
「助けなんて要らないし!魔法は使っても良いんだよな?」
「おう、だけどあんまり使うなよ~」
「分かってるって!」
ブレストは壁に寄りかかり手を振り、俺はジャイアントドールに向かって走りだした。それに反応しダンジョン部屋の扉は閉まり動き始めたジャイアントドールは、剣で横薙ぎをしてきたが遅すぎる。横から迫る剣を軽く飛んで避け足元まで行き、右膝裏を切る。身体強化によってかなりの威力になっているはずだが、少し傷がついただけだった。
思ったより硬いな・・・・おっと
深く傷が付かなかったことは不満に思っていると、勢い良く足元に居る俺を盾で潰そうと振りかぶってきたので大きく後ろに飛び避ける。
遅いけど、威力は馬鹿みたいにあるな~てか、盾ってそういう風に使う物じゃないだろ!
盾の表面で押しつぶそうとした所為で、姿勢を落としたジャイアントドールの背中に飛び乗り肩関節目掛けて新しく覚えた魔法を籠めて勢い良く刺す。刺した瞬間バンッという轟音と共に刹那に光る鋭い稲妻が奔り、肩はまるで燃えたように黒く焦げていた。
よしっ上手くいった!
雷を籠めた斬撃は有効だったようで、右腕は機能を失い剣を落とした。
なら、もう一本!
左手は盾を地面に落とし肩に留まっている俺を虫を潰すかのように、迫ってきたので俺は方から頭に飛び移り避ける。そして、そのまま左肩に移り同じように肩にナイフを突き立て左手も使えなくする。
「よし、もう戦う手段は持ってないだろうけど念のためにっ」
両手が使えなくなったことで暴れられても面倒だから両膝も同じように壊し、膝をついた所で胸にあるコアを正面から雷のナイフで貫いた。コアを貫かれたジャイアントドールは、泡のように消滅していき部屋の中央には大きな宝箱が現れた。
「勝利!」
「お疲れさん、良い戦いだったぜ」
「だろ~さてお宝~!」
「こらこら」
壁に寄りかかりながら見ていたブレストに手を挙げた後、出て来たお宝に近寄ると呆れ顔をしながらやって来くると俺の頭を掴み
「罠の確認忘れるなよ」
「はーい」
ダンジョンの中に出現する宝箱の殆どは何かしらの罠が仕掛けられている。だから中身を安全に取るには罠の仕組みを理解し解除する技術が必要なのだ。冒険者の訓練が始まってから罠の勉強もしたので、ある程度の罠は解除が出来るし見つけられる。
「突っかかり無し、箱の固定無し、鍵穴の細工無し魔力も感じない。罠は無さそう!」
「おう、それじゃあ開けてみろ」
俺は念の為後ろから宝箱の蓋を開け中身を見てみると、中には剣の柄が地面に刺さる様に入っていた。なんだこれ?罠では無さそうだし・・・・引っ張ってみるか。
「いよっと・・・・・デカおもっながっ」
「おぉこれは・・・・」
柄を宝箱から抜いてみるとブレストの身長程はある剣が中から出てきた。いや、どう考えても宝箱の大きさと合わないだろ!
「デカい剣だな~」
「こんなのもドロップするのかよ・・・・要らなっこんなの誰が使うんだよ」
「巨人族なら使うんじゃないか?」
「巨人族って本当に居るんだ・・・・てか、そんなことよりこれどうするの!?」
こんなデカい剣なんて俺には絶対に使えないしブレストだって使わない。持っていくにしても重いしデカいしでただの邪魔な荷物でしかない。
「あ~どうすっかな」
「俺、剣のことはよく分からないけどなんか凄い剣で高く売れたりしないの?」
「ん~ただの馬鹿デカいだけの鉄の剣だな。付与も無いし剣の切れ味もそこそこだからな~多分そんなに高くは売れないだろうな」
「本当に要らないっ邪魔な荷物になるだけじゃん!こんなの捨てようよ」
「・・・・まぁクロガネの初ボス討伐記念に俺が預かっておくよ」
「これ背負うの?」
いくらブレストでもこれを背負いながら走るのは大変だと思うけど・・・・そんな事を思っていながらブレストに手渡すと、魔法のように一瞬で邪魔な剣が何処かに行ってしまった。
「え!?何処行った!?」
「しまっただけだからそんな驚くなって」
「しまったって何処に!?」
「俺の収納に」
「スキル持ち!?」
稀に魔法とは違う特殊な力を持った人が居て、その特殊な力をスキルというって教わったけどブレストが持ってるなんて知らなかった。スキルは戦い向きのものから植物を育てるのに向いてるものまで本当に多種多様だけど、持っているのは珍しくてスキルを持ってれば良い職業に付けるんだって聞いた。収納スキルってすっごく冒険者向きじゃないか?
「おう、これ内緒な」
「勿論言わないけど・・・・吃驚した」
「バレたことだしお前の荷物持ってやろうか?」
「いい、自分で持つ」
「そうか」
もし何かあった時にすぐに荷物から取り出せるようにしておきたいし、ブレストに預けなくてもこれぐらいの荷物重くも無いし自分のことは自分で出来る!それに全て頼りっぱなしになるのも嫌だからな!
「それじゃあ、次の階層に行こうか」
「おう」
ボスを倒したことによって開いた扉に俺達は歩き出し第十階層を後にした。扉の先はセーフエリアで冒険者たちが休憩しているのは同じだが、階層の雰囲気ががらりと変わった。今まで石煉瓦による壁だったのがツルツルと輝くような白い石に変わり、まるで話で聞いた城のような雰囲気だ。
「雰囲気が違う・・・・」
「ここは十階層ごとに階層の雰囲気と敵が変わるんだ。これから先二十階層までは、オートマタが相手になるから気を付けろよ」
「オートマタってドールの進化版みたいな奴だっけ?」
「その通りドールの上位種だが甘く見るなよ。精度や反応速度、筋力に硬さと全体的に上がっているから油断すればやられるぞ」
「分かった、気を付ける」
「まぁ、次の階層に行くのは休んだ後だがな」
「今日は俺が先に夜番する」
「おう、それじゃあよろしく」
次の階層はオートマタか・・・・ドール系統は関節という明確な弱点があるけどオートマタも関節が弱点だと本に載っていた。でもブレストは硬さが上がるって言ってたし、俺の力で斬れれば良いんだけどもし駄目だったら魔法で何とかするしかないかな。風か雷をナイフに纏わせれば何とかなるだろうし、それでも駄目なら風の矢で貫通させるしかないかな。闇は・・・・思いつかない!
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