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好きな物

 これ以上頭が混乱することを聞きたくなくて、暫くの間全身を湯の中に浸からせてたが流石に長い間入ってると少し体が熱くなりすぎるな。ブレストは平気そうだけど、一旦上がるか~


「ん?もう上がるのか?」

「これ以上入ってたら熱くなりすぎる。ブレストはよく入ってられるな」

「俺は慣れてるからな~のぼせる前に一旦あっちにあるベンチで休んできな」

「のぼせるって何?」

「ん~長い時間湯に浸かっていると頭に血が上ってくらくらすることがあるんだ。それをのぼせるって言うんだ」

「なるほど」


 のぼせるって意味が分からなくて聞いてみたけど、長い間湯に入ってるとそういう事が起きるのか。


「のぼせた時は危ないからすぐに立つんじゃなく、這うように風呂から出て涼しい場所で体を休めると良いぞ。服が置いてある場所に水が置いてあるから、水分補給もしておけよ」

「まだのぼせて無いから大丈夫だよ」


 幸いまだのぼせた時の症状は出て無いから俺は風呂から上がり言われた通り隅に置いてあるベンチで一休憩することにした。湯の中に居る時は常に体が温められていて直ぐに体温が上がってしまったけど、一旦湯から上がると裸の所為もあるだろうが徐々に体温がさ下がっていき、段々落ち着ていて来た。湯船がある部屋は湯の熱で温められてはいるが、暑い程では無いので熱い体からすれば心地よいくらいだ。


「あの一番大きなやつ以外にも色々な風呂があるんだな~」


 ベンチに座りながら休み改めてこの部屋の中を見ると風呂と言っても色々な種類のものがあることがよく分かる。俺達が入っていた場所は色が付いておらず、澄んだ色の湯だったが右隣の湯は気泡が出ているし、左隣の湯は湯気がそこまで出て無いから他の湯よりも温度が低いみたいだ。それ以外にも、木の樽のような物や湯の中に勢いよく湯が噴き出している物など様々で数えてみると全部で7つも浴槽があるみたいだ。


「ブレスト~」

「なんだ~?」

「あの木の樽入ってみても良い?」

「良いぞ~だけど深いから気を付けろよ~」


 体温が下がってきたので一番気になっている木で出来た風呂に入ってみよっと。近づいてみると意外と大きく、俺が入ったら余裕で頭まで浸かっちまいそうだ。横に付いている螺旋階段を使って上から覗いてみると、手すりと階段が付いていて簡単に出入りが出来るようになってるみたいだ。


これなら俺が入っても大丈夫そうだな


 足を滑らせないよう気を付けながら入っていくと、中は木の匂いが充満していてまるで森の中に居るようだ。湯の温度は丁度良くて、周囲が見えなくなくて少し閉鎖的に感じるけど狭い所に居るのは何処か落ち着くからこれ良いな~


「木の壁しか見えないけど、周囲が見えなからこそ落ち着くよな~狭い場所とか好きだし」


 物珍しさで入ってみたけど思いのほか快適で普通の風呂より好きかもしれないな。暫くの間肩まで浸かって、偶に底まで降りて全身を湯の中に浸からせたりと遊んでいると、外からブレストの声が聞こえた。


「クロガネ~俺は先に上がるぞ」

「それじゃあ俺も上がる~」

「まだ時間に余裕があるから好きなだけ入ってても良いんだぞ」

「いや、十分楽しんだからもう大丈夫」


 俺は木の風呂から上がりブレストと一緒に更衣室に戻ると予め用意しておいた大きなタオルを籠から取り出すと


「おらおら~」

「ぬお~自分で拭けるって!!」

「そうか?しっかり拭かないと風邪引くからしっかり乾かせよ」


 全く俺はガキじゃないんだから・・・・俺はタオルをブレストから奪うように貰うと濡れている身体を頭から順番に拭いていく。それに全身が濡れてるのは俺だけじゃなくてブレストもだろ?ブレストもタオルを取り出して全身を拭いてるけどそういえば・・・・


「いつも使ってる体を乾かす魔法は使わないの?」

「ん?そう言えば言ってなかったな。この中では魔法は一切使えないぞ」

「え」


 魔法が使えないって・・・・魔法を制限する魔法がこの空間に掛かってるのか!?それにしては、あの特有の変な感じがしないんだけど・・・・


「嘘だろ!?だって魔力を制限されてる感じは無いし、魔力をかき乱すあの嫌な感じもしない。それにこの部屋の中に魔力が十分あるじゃん」


 魔法を制限するなら魔力を吸い尽くし枯渇状態にする方法や、魔力操作をかき乱して魔法を発動させない方法があるけどそのどれもが感じないし、この空間には魔力が満ちている。こんな魔法を使うのに絶好な場所で使えないなんて信じられない。試しに闇魔法を使おうと魔力を操作しようとするが、いつもなら体を動かすように動く魔力が一切動いてくれない。


「本当だ・・・・魔力が動かない」

「ちなみにスキルも使えないからな」

「だから収納も魔法も使わないのか・・・・いや魔法封じの魔道具も無い訳じゃ無いけどこんな自然に使えなくすることって可能なのか・・・・」

「まぁ師匠が作った魔道具だからな」

「・・・・なるほど」


 もう放浪の魔女ヘルメアは何でもありってことだな。はぁ・・・・規格外過ぎて会うのが楽しみな反面ちょっと怖いぜ。


「あ、でも暖かい風を出して髪を乾かす魔道具ならそこにあるぞ」

「もう良いです」


 これ以上魔道具に驚きたくない俺はさっさと体を拭いて水気を取ると、パーティー用の服へと着替えブレストは温かい風が出る魔道具で髪を乾かしていたので俺は姿見の前に立って変な所が無いか確かめてみる。


「う~ん、服は凄く綺麗だな。しっかりとしているのに防具屋で作ったから動きやすいし、防御力もちゃんとあるからもしもの時に動けるようになってるけど・・・・俺が着るとなんだかな~」

「そうか?俺はよく似合ってると思うぞ」

「なんか・・・・見慣れないというか俺がこんなの着てるのが信じられないというか、俺が着るには高価すぎる気がする」

「そんなこと言ったって・・・・冒険者が使う武器屋防具の方が何倍も高いだろ?まぁ今回の服は防具屋で作ったから同じぐらい高いけどよ」

「いや~それを言われちゃうとそうなんだけど武器や防具は必需品で命を預ける物だろ?」


 確かに一流の冒険者が使う防具や武器は、貴族が着る服の何倍もの値段が付いてることが普通だけどそれは冒険者に必需品だから仕方が無い事だ。それに防具や武器は命を預ける物だし、特殊な効果が付いたり魔物の素材を使ってるから高価になるのは当たり前だ。だけど、ただの服にこんなに金を使うのは勿体ないというか・・・・


「なんか贅沢な気がするんだよ」

「・・・・まぁ贅沢品ではあるけどな」

「だろ?金が勿体ないというか他に金を使う物がある気がしちまうんだよ」

「なるほどな~・・・・クロガネは今まで生きる為だけに金を使ってきたから生きる事に関するもの以外に金を使うのは抵抗感があるのか」

「・・・・そうかも」

「だけど、もうお前は立派に金を稼いでる冒険者なんだから、欲しい物は欲しいって言って良いし、自分には似合わないからって我慢しなくても良いんだ。勿論破産しない程度って条件は付くけどな」

「・・・・金は使ったら無くなるだろ」

「無くなったらまた稼げば良いんだ。その力をクロガネは持っているんだからな」


 ブレストの言う通り今まで金は凄く貴重な物で、金があったら服なんかじゃなくて生きる為の食べ物を優先していたからこういう物を買ったり着たりするのに慣れてない。


「今まで生きる為や仲間に使ってただろうけど、今はクロガネが好きなことやりたい事に金を使っても誰も文句は言わないし責めたりしないんだ。短い人生なんだから自由に使って精一杯楽しんだ方が良いと思うぞ」

「そう思う?」

「あぁ、俺も好きに使ってるからな!折角の旅なんだし楽しく行こうぜ!」

「・・・・じゃあ、そうする」

「そうしろそうしろ。それに、似合わないって言ってるけどクロガネはそういう綺麗な服好きだろ?」

「・・・・うん、好き!」


 似合わないと言ってたのはあくまで自分の事で、服のデザインと色は夜空のようでとても好みなのだ。だけど、こんな綺麗で素敵な服は自分には合わないと思ってたけど、そう考えるのはもう止めだな!どうせどんな服を着てても、俺は疎まれ嫌悪されるんだからもう開き直って自由に着てやる!


「だよな。さて、そろそろ髪も乾かし終わったからそろそろ行くか」

「おう!」

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