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リリー夫人の庭園

 残り一ヶ月で鍛え上げる為に毎日のように朝から夜まで鍛錬の指導を行っていたが、今日はテセウが学院に行ったあと勉強について行くための個人授業があるので空き時間が生まれてしまった。特にやる事も無いし、依頼をしに行くほどの時間も無いので俺は領主館の敷地を探索してみようかなっと。


「結構長い間この館に居るけど、この館は広いし敷地も広いから全部は見れて無いんだよな~」


 俺が用があるのは客室と中庭それにシュナイザー様の執務室と食堂ぐらいだから、日々その往復で館を探索するような時間が無かったのだ。こういう大きな館って入ったことが無いから、探索するのってワクワクするんだよな~この感覚は未知のダンジョンを探索する気分と同じ感覚だな。流石領主が住んでいるだけあって屋敷は三階建てで地下もある。中庭だけ空間が空いた大きな四角の形をしていて部屋数も多く使用人達の部屋もあるので、館の中には常に多くの人が居る。


「まぁ流石に客の分際だから、流石に全ての部屋を覗く訳にはいかないけど寝室に行かなきゃ良いよな」


 流石に寝室の近くに行くのは失礼かつ無礼な行為だからしないぜ。夜の間に気配を感じ取ってたから寝室が何処にあるのかは把握済みだしな。この館程度の大きさなら何処に誰が居るのかを感じ取る程度楽勝さ。ちなみに今は執務室にシュナイザー様とサピロさんが居て、一階の隅の部屋にテセウと講師が居る感じだな。気配を探れるということは、魔力を感じることも出来るってことなんだけど二部屋ほど魔力を全く感じられない部屋があるんだよな~


「恐らく何か大事なものを仕舞っている部屋が居るんだろうな」


 あ~シュナイザー様が大事にしまっておくような物って絶対高価で貴重なものだろうな~一族代々継いでいる装飾品とか武器とかありそうだな。あんなに厳重にされたんじゃ入りたくなっちゃうじゃ無いか~見たいな~入りたいな~でも盗みたい訳じゃないぜ。なんか隠されてる物って見たくなるだろ?


「う~もっと分からないように隠してくれよ~・・・・いやそれはそれで暴きたくなるな」


 入念に隠されるほどその正体と中身を見たくなる。これは小さな頃から持っている本能と言うか性分なんだよな~。いつもは、溜まった欲求をダンジョンで罠を見つけたり、気配を消している魔物達を見つけたり知らない場所を探索して発散してたけど最近は鍛錬ばかりで出来て無かったから、欲に負けそうになっちまう。


「あ~止め止め。知らない場所でも見てこよっと」


 流石の俺でもそれがやっちゃいけない事だと言うことは分かっている。暴きたくなる欲求を何とか抑えつけ気を晴らすために、領主館を出て敷地の探索に向かう事にした。


「この敷地も広いよな~表は来客用に整えられた庭園になっているし、裏に周れば衛兵達の訓練場と宿舎があって訓練場もあるし逆に何が無いんだ?」


 風に乗って僅かに感じる藁の匂いと動物の匂いからして馬を世話するための厩舎もあるみたいだな。馬は森を掛けるのには向かないが、物資を運ぶためには頼りになるし、道が整備されているから町から砦や他の町に行く移動手段としても使える。だから、裕福な貴族は大切に育てていることが多いらしい。


「衛兵達の訓練を見に行くのはつまらないし、宿舎や詰所は気になるけど流石に邪魔になるよな」


 ここに居る衛兵たち相手ならば気配を消して魔法で姿を消せばよっぽどの事をしなければ、詰所とかに潜り込んでもバレないと思うけど色々と問題になりそうだから止めておこう。あ~~~もう、さっきから忍び込んだりすることばかり考えてる気がする!


「はぁ・・・・そう言えば、館の東には行ったことが無かったな。行ってみよっと」


 知らない場所があるという探求欲と隠されたものを暴きたいという欲望を感じながらも、俺は館の東側に向かうのだった。予め気配を探っておいたので、そこには四人の気配と色々な魔力が点在していることを知ってはいるが何をやっているかまでは分からない。植物の匂いが強くなってきているし、リリー夫人の気配がある事から庭園か植物園のどちらかだと思うけどな。


 館の角を曲がるとその先にはガラス張りにされているドーム状の建物と、柵に囲まれた中に色とりどりの植物が育っていた。


やっぱり予想通り、植物園かな?


 生えている植物達を踏まず荒らさないように気を付けながら、その場所に近付いていくとそこに生えているものがどれも薬になるものばかりと言う事に気が付いた。あれは熱に効く薬草だろ~あれは火傷によく効く花だ。それに、飲むと腹の中に入った毒を解毒してくれる樹液を出す木だな。どれも育てるのは難しいものばかりだし、生息地が全く違うのによくこれだけ元気に育てられるな。


 リリー夫人か庭師の技量に感心しながら近づいていくと、ドーム状の建物から視線を感じそっちを見るとリリー夫人がこっちを見ていた。目が合ったので、お辞儀をするとリリー夫人はドーム状の建物から出てきて俺の元に来ると


「これはクロガネ様、このような場所にどうされましたか?」

「いえ、空き時間が出来たので庭を拝見させて頂いてたんですけど薬草の姿が見えたのでつい・・・・もしかして、来ては駄目な場所でしたか?」

「いえ、そうではございません。ただあまり見ても面白い物は有りませんよ?」

「そうですか?どれも珍しい薬草だらけじゃないですか。これだけの種類を同時に育てるなんて凄いですね」

「クロガネ様は薬草の知識がおありで?」

「冒険者なのである程度はですね。特に金になるような物とか、特別な扱いをしないといけない物は把握してます」

「なるほど・・・・でしたらこちらへどうぞ」


 リリー夫人は少し考える様子を見せた後微笑みながら柵に付いていた扉を開けてくれたので、お言葉に甘えて中に入らせて貰うことにした。


「ありがとうございます」

「いえ、植物の事を知っている方なら歓迎です。ですが・・・・」

「勿論採ったりなんかはしませんよ。それに、触ったら危ないものもいくつかあるようですし、無暗に触ったりもしません」

「分かって頂けているようで何よりです」


 ここにある植物達は調合をすれば薬になるものばかりだが、薬は毒の面も併せ持つので素手で触るとかぶれる物や火傷のようなけがを負わせるものもある。俺は毒が効かない体質だけど、ここはリリー夫人の所有物だから無断に触るようなことはしないぜ。リリー夫人の案内で植物園を案内してもらうが、俺が知らない植物も沢山あって質問をすると答えてくれるので勉強になるな~


「あ、サワリソウだ。懐かしいな~」

「町中でも見掛けられる薬草ですね。ですが、懐かしいとは?」

「これって腹を壊した時に煎じて飲むと腹を整えてくれるじゃないですか」

「はい、サワリソウは腹痛や下痢、嘔吐などの体の中の不調を治す薬草ですね」

「俺は孤児なので、よく町中で捨てられた食べ物とか腐った物とかも食べていたんですよ。俺は幸い腹が強いのと毒が効かないので壊すことは無かったんですけど、他のガキ共は良く壊してたので俺が町中から採って煎じて飲ませていたんですよ」


 みんな段々慣れてくるけど最初の方は腐りかけの食べ物を食べるとよく腹を壊すんだよな。放っておくと命に関わる事もあるからこれを飲ませてたんだけど、苦いだの不味いだの言って嫌がるから無理やり飲ませてたのが懐かしいぜ~


「そうだったのですね・・・・」

「あ、こんな話をリリー夫人にするものじゃないですね」

「いえ、そんな事はありません。他に何を使っていたんですか?」

「え~と、そうですね。あ、そこにあるドクダミなんかはよく使ってましたね。煎じて良し、塗って良しで使い易かったです」

「ドクダミは匂いやその名前から害のあるものだと思われがちですが、一部の地方では薬草として重宝されますからね」

「それと町中にあるものだと~あ、あの刃のような形をした葉の薬草!名前は知らないですけど、切り傷とかに使ってました」

「チギリソウですね。葉を乾燥させすり潰しその後水で伸ばし患部に塗るのが一般的ですね」

「チギリソウって言うんですね~常に乾燥したやつを保管してました」


 使ってはいたけどその時は名前なんて気にしたことが無かったし、取ってくる時も見本を見せられてこれを採ってこいって言われたからな~


「クロガネ様は色々な薬草を使ってたのですね」

「俺の親父が言うには昔からの知恵だそうです。薬は滅多の事じゃ買えないから、そこら辺にある物を色々を試して今に至るって感じですね」

「なるほど」

「あまりにも酷い時は薬師の所に言って薬を買いますけどね」


 俺達の薬じゃ治らない時は金を持って良くしてくれているババアの所に行って、薬を買うことにしてる。俺達は薬の専門家じゃないから限界があるからな。


 庭で育てている薬草の話をしながら、一つ一つ見て行き最後にドーム状の建物に案内されるのだった。

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